夏のオススメ過ごし方
二十四節気について
皆さんは「二十四節気」と言うものをご存知ですか?
二十四節気は節分を基準に一年を24等分して約15日ごとに分けたものです。
「春分」や「夏至」などはこの二十四節気に含まれています。
この、二十四節気を知りその季節の特徴と体調の変化を理解すること。
また、食材選びに活かすことは漢方。
すなわち、漢方薬、薬膳などの「養生学」に繋がっていくのです。
以下が二十四節気の名前と時期です。
今回はこの中の「夏」の養生についてご説明していきます。
夏の養生
まず、夏は五行説で言う所の「火」にあたる季節です。
火は「炎上、発熱」などの意味合いを持ちます。
この季節に不調が起きやすいのは「心」
「心」は、「気血水」の「血」を体に巡らすポンプ役。
「血」には栄養が含まれていますので体のすみずみまで栄養を運んで、精神も安定させてくれます。
そもそも夏は暑さによって気血が不足しやすい季節。
気血が消耗すると熱を持ち不眠、動悸、口渇(口の渇き)、火照り、口内炎、不安感、焦燥感などの症状が出やすくなります。
また、梅雨に多い湿気で余計な水分がたまり疲労感、むくみ。
冷たい食べ物、飲み物の摂り過ぎ、冷房などでの冷えにより血行不良やめまい、食欲不振などいわゆる「夏バテ」を起こしやすいのもこの季節の特徴です。
立夏
暦上での夏の始まりです、陽のエネルギーがぐんぐん増えていきます。
ゴールデンウィークがあるのもこの立夏の時期、新生活などで疲れた体を休めるには最適の期間ですがこう言った長い休みは生活リズムを乱し、心身のバランスを失わせるきっかけでもあります。
ゴールデンウィーク後に五月病になってしまった・・・なんてことにならないためにも食事をきちんととって「血(栄養)」を養いながら心身をしっかりと休めましょう。
この後に来る梅雨の時期は湿気が強まりどうしても体調に不調が出やすい季節。
この立夏でバランスを崩すとそのまま梅雨に突入してしまうので、季節の変わり目と言うことを踏まえてもしっかり養生して下さい。
夏バテと言えばこの漢方薬
夏はどうしても体力が落ちる、食欲不振になる、と言った「夏バテ」症状。
病院に行っても「夏バテですね」で終わってしまい毎年何とか乗り越えて気付いたら夏が終わっている…なんてことはありませんか?
漢方薬には、そんな夏バテ予防に効く漢方薬があるのです。
それが「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」
漢方薬には他にも補気作用(気を補う作用)がある漢方薬がありますが、清暑益気湯は中でも清熱作用(熱を冷ます作用)を含む夏にぴったりの漢方薬です。
更に体力消耗から来る貧血、食欲不振、暑さから来る動悸にも効果的。
これまで夏のなんとなくだるい感じ、に悩まされていた方は予防的に本格的な夏が始まる前のこの時期から取り入れてみると良いかも知れません。
まずは体力不足解消!
夏に向けて体力を増やしておこうと思った時。
食材では何を取り入れて行けば良いのでしょうか?
ここでおススメする夏の旬の食材は「えだまめ」
枝豆は「脾」の消化吸収を高め気を補う作用があるため「脾」の働きが弱くスタミナ不足の人に適した食材です。
また、立夏の項でもお伝えした通りこの時期の「血(栄養)」はとても重要。
このえだまめは「血」を補う作用もあるため夏の体力不足と血不足の両方に対処出来る食材です。
茹でて塩を振るだけでも出来る簡単調理で美味しくいただけますので、夏を迎える前にえだまめで体の準備体操をしてみませんか?
次は夏バテを予防しよう!
では、続いて体力の基礎作りが終わったら。
今度は夏バテを予防してみましょう。
夏バテ予防に良いとされている旬の食材は「冬瓜」
冬瓜には体にこもった熱を取り去り、津液を増やす働きがあります。
効果も様々で夏バテ、喉の渇き、多汗、乾燥タイプの便秘、イライラ、不眠など。
利尿作用もあるのでむくみ、水虫にも効果的です。
こうした夏バテに効く食材を積極的に取り入れておくことで、夏バテになりにくい体を作ることが出来ます。
食べたことのない方は生のシャキッとした歯ごたえと煮物などにしたときのトロっとした食感を是非楽しんでみて下さい。
小満
気温があがり、湿気も増えてくる季節です。
仕事、プライベート、学校、それぞれが始まりから発展へ、忙しくなってくる時期だと思います。
こう言った時期は忙しさ、疲れから胃腸に不調が出やすい季節。
飲み会、食事会の誘いなども、暖かくなって来ると増えてくるかも知れませんね。
また、この頃から「熱中症」が発生し始めます。
熱中症は、水分不足も勿論のこと不眠や栄養不足などからも引き起こされやすいもの。
なってしまった時の対応は大事ですが、熱中症を起こしにくい体作りを日々の睡眠と食事から作っていきましょう。
二日酔いになってしまったら
実は熱中症になりやすい要因の一つに「二日酔い」があります。
飲んでいる時は楽しいですが、その後にめまいや嘔吐、腹痛、下痢など様々な症状に悩まされるのがお酒の難しい所。
では、二日酔いになってしまった時、漢方薬で対処することは出来ないのでしょうか?
漢方薬で二日酔いに効くとされているのは「五苓散(ごれいさん)」です。
五苓散は、二日酔いと言うより利水(水分の代謝を正す作用)に優れている漢方薬と言えます。
また、暑気あたりにも適応があるため軽度の熱中症でも使用できる漢方薬です。
二日酔いに強いのは理由がある
駅の自販機でしじみのお味噌汁が売っているのを見かけたことはありませんか?
また、二日酔いにはしじみの味噌汁・・・なんてことも。
二日酔いの時は吐き気があり、食べ物を食べる気にならず汁物ならなんて気持ちになることもそうですが。
しじみが入っているのには実は薬膳的にも意味があることなんです。
しじみは酒の毒を弱める働きがあるのです。
そのため、二日酔いの時は摂取すると症状を和らげてくれます。
他にもしじみは熱を鎮め、炎症を抑える作用があり。
ほてり、喉の渇き、皮膚の腫れにも適している食材のため夏の暑さにも大変効果的。
二日酔い以外でも夏に積極的に取り入れていきたい食材の一つです。
胃の働きを強くするなら
この時期に出やすい胃の不調。
では、その胃の不調に対応する食材は無いのでしょうか?
夏の食材でおススメしたいのが「オクラ」
オクラは、「脾」と「胃」の消化吸収能力を高めてくれる食材です。
そのため、食欲不振、消化不良、胃炎の改善に適しています。
余談ですが、ねばねば繋がりの「納豆オクラ」
このメニュー、実はどちらも便秘を解消させる効果を持った食材の合わせ技。
便秘に悩んでいる方は納豆オクラを是非召し上がってみて下さい。
芒種
6月に入るこの時期は、季節で言う「梅雨」にあたります。
梅雨は誰でもご存知の通り雨の日が増え、それに伴い湿気も多くなります。
この湿気に「脾」は、とても弱く、不調が出やすい時期です。
「脾」とは消化吸収を担う器官のためここに不調が出ると胃腸に影響が出ます。
また、水分や栄養の代謝も担っているため代謝が悪くなり体もむくみやすくなります。
体内の湿気、水分を払うには適度な運動で汗を流すこと。
また、発汗を促す効果のある食材を摂る、水分代謝を整える食材を摂るなどで対処していきましょう。
実証?虚証?重要なのは使い分け
身体がむくむ、と言う症状は湿度の高い梅雨~夏の季節に大変多い症状です。
そして、このむくみを解消させる漢方薬も複数存在しています。
複数存在している→選び方が重要、と言うのがポイント。
むくみに使える漢方に防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)と、防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)と言う漢方薬があります。
これらはどちらもむくみに適用のある漢方薬なのですが、重要なのはそれぞれが全く真逆の「証」(体質)にあった漢方薬であるということ。
防風通聖散は、「実証」の方に有効的な漢方薬です。
便秘がちで食欲がある場合に使用し、身体が冷えたり食が細く虚弱な方は使ってはなりません。
逆に防己黄耆湯は汗かき、水太り傾向。
身体、膝に怠さを感じる人に有効的な漢方薬です。
名前も似ていて同じ「防」から始まるため。
間違えて使用してしまうことの無いように注意してください。
発汗を促す食材とは?
では、発汗を促す食材とはどのようなものがあるでしょうか。
この季節が旬の食材からオススメするとそれは「みょうが」です。
みょうがは、血行を良くして発汗を促し食欲増進、消化を助けるなどの効果があります。
この時期に気を付けたい冷たいものの摂り過ぎによる胃腸不調にも効果を発揮する食材です。
発汗を促しつつ、身体も温めてくれるので冷えからくる症状にも効果的。
生理痛、肩こりなどの改善にも役立ってくれます。
みょうが料理を作ったことが無い!と言う方はみょうがの漬物がそのまま売られていることもあるのでお近くのスーパーを探してみて下さい。
水分代謝を整えてくれる食材とは?
続いて水分代謝を整えてくれる食材です。
この季節のおすすめの食材は「とうもろこし」
とうもろこしは高い利尿作用を持つ食材です。
そのため、慢性的なむくみ、身体のだるさ、湿疹などの症状改善に効果的です。
また、食べる時には使用していない芯やひげの部分も同様の働きがあります。
ひげは特に「南蛮毛(なんばんげ)」と呼ばれる生薬になります。
フライパンなどで炒ると香ばしく食べやすくなるそうですが…私もまだ試したことがありません、とうもろこしは夏バテにも効果的な食材なので食べる時にはちょっと試してみても面白いかも知れないですね。
なお、とうもろこしには「脾」と「胃」を整えて消化吸収を高めるので消化不良食欲不振の改善にも適しています。
夏バテ気味の方にも最適の食材です。
夏至
一年の中で昼が長く、夜が短い「夏至」を含む時期です。
陽気もこの夏至が一番高まっている時期とされています。
梅雨を超え、本格的な夏に入り体も心も活発になる時期。
外出する機会も増えてくる頃ですが、夏の暑さ、熱が「心」はとても苦手。
陽気のまま活動していると「心」は弱ってしまいます。
身体にため込んだ熱や湿気は食べ物で代謝を促してあげることが重要。
また、この時期は湿邪、熱邪が混在しているため湿邪による下痢軟便。
熱邪による肌荒れ(ニキビ)、湿疹、アトピー性皮膚炎なども起こりやすくなる時期なので要注意です。
あせもに困ったらこの漢方薬
この時期に出来やすい湿疹と言えば、あせも。
汗をかく機会も多くなると汗が溜まりやすい所に出来やすくなります。
あせもにも赤みとかゆみを感じるものと、そうでないものがあると思いますが。
中でも赤みとかゆみが強く、分泌物の多い湿疹に効果的なのが「消風散(しょうふうさん)」です。
消風散は「皮膚風湿熱(ひふふうしつねつ)」と言う証に適応しています。
これは、風邪、湿邪、熱邪の3つが外から体内に侵入してきた時、または風邪と熱邪が体内で熱を起こした時に起こる病態。
湿邪と熱邪が多い夏には起こりやすい証と言えますね。
「心」の強い味方
「心」が弱りやすいこの季節。
「心」を助ける食材は無いのか?…あります。
まず、すもも、なつめ、もも、くり、あんずの5つは五臓の働きを整える「五果」と呼ばれています。
(ちなみに、春→すもも、夏→あんず、土用→なつめ、秋→もも、冬→くり)
夏のあんずはそのまま「心」の働きを高めてくれる食材。
不眠、物忘れ、情緒不安定などの症状を和らげてくれます。
また、あんずは他にも身体の潤い不足の解消に効果的。
酸と甘の五味を持つので津液を作り、喉の渇きや身体の潤い不足にも良いです。
ニキビに効く食材はありますか?
夏になり、身体にこもった熱によりニキビなど吹き出物も出来やすくなる季節。
そんな時におすすめの食材が「茄子」です。
この食材をおすすめするのは茄子がまず夏におきやすい口やのどの渇き、ほてり、イライラ。
利尿作用で消化不良や食欲不振、むくみ。
血の滞りをなくし、のぼせによる鼻血をとめる、など夏に起こりやすい症状に広く対応しているから。
そして、なんとニキビ(吹き出物)にも効果的だからです。
熱による腫れや嫌みが出た方は夏野菜を美味しく取りつつ改善が期待出来ますよ?
小暑
梅雨が明け、暑さがより強まっていくこの時期。
陽気の高まりで元気に過ごせる時期ではありますが、冷房を本格的に使用し始めるのもこの時期からでは無いでしょうか?
冷房は適度に使うことで熱中症対策になるため、必要なものですが。
直接当たったり、過度に冷やしすぎるのは体の冷えを招きます。
冷房を直接浴びることは体温調節機能の働きを弱めてしまうので使い方をよく考慮しながら使用していきましょう。
また、引き続き湿気は残っているため湿気を取る作用を持つ食材は積極的に取り入れていきましょう。
冷房病に効く漢方薬⁉
強い冷房で体が冷えてくると、頭痛がしたり腰痛がしたりお腹が痛くなったり…そんな症状を経験されたことのある方はいらっしゃいませんか?
そんな方におすすめしたいのが「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」
冷房にあたっていると夏なのに手指が氷のように冷たい!と言う方にもこちらの漢方がおすすめです。
この漢方薬を構成している殆どが体を温める、血行を促進する効果を持っているため冷えから来る腹痛、手指の冷えに効果があります。
この漢方薬は「しもやけ」にも効果があります。
冬に起きることが殆どのしもやけと、冷房で起きる冷えはどちらも寒冷によるものが原因。
夏の冷えも冬の冷えにも効果の期待出来るのが漢方薬の面白い所ですね。
冷房でお腹が冷えてしまったら
冷房に直接当たった後、その場を離れたのになんだか体に冷たさが残っているような気がする…そんな状況ありますよね。
そんな時、お腹を温めてくれる夏の食材が「らっきょう」です。
気の流れを活発にさせる効果のあるらっきょう。
気の巡りの滞りによって起こる症状の改善が得意な食材ですが、注目したいのは「温性」の食材であるということ。
食べると冷えが原因の症状を和らげてくれます。
特にお腹を温める作用が強く、毎日食べることで下痢や腹痛の予防にもなります。
夏だけど身体を温めてくれる野菜
夏に体が冷えてしまう原因の一つが、食材の涼性、寒性の多さにもあると思います。
旬の食材は季節を乗り越えるために必要な力を蓄えて生まれてきます。
なので、暑くて湿気の多い夏に熱や湿気をとる食材や体に涼しさや冷たさを与えてくれる食材やメニューが多いのは致し方ないことなのです。
しかし、食材で涼をとらずとも環境で涼をとれるようになった現代。
そう言った夏定番のメニューばかり食べているとお腹を冷やしてしまいがち。
そんな時におすすめなのが夏の旬野菜「かぼちゃ」です。
かぼちゃは、「脾」の消化吸収をサポートし気を補う作用があり。
そして、「温」性の食材で、冷えを改善する効果があります。
夏に冷えを感じる時はかぼちゃを取り入れて冷え対策をしていきましょう。
大暑
「大暑」は一年で最も暑い時期です。
学生の皆様は夏休み期間に入る方も多いのではないでしょうか?
冷たいもの、冷たい食べ物が特に美味しい季節ですが胃腸を冷やし過ぎないように要注意。
常温、または暖かいものも摂る様に心がけましょう。
この時期は「土用」と呼ばれる時期であり、簡単に言うと季節の変わり目です。
二十四節気には含まれていませんが、年に4回訪れます。
この土用はどのタイミングでも「脾」がとても弱まりやすい時期。
更に夏は季節柄「脾」が苦手としている湿気も多いため余計に負担がかかりやすくなる時期です。
冷え下痢の漢方 人参湯
外を歩いて暑かったのでキンキンに冷えたアイスを食べた、かき氷を食べた、ジュースを飲んだ。
その後すぐにお腹が下って下痢を起こしてしまった。
そんな夏によくある失敗に効くのが「人参湯(にんじんとう)」です。
下痢はストレス、ウィルス、慢性、急性、と原因や症状が多く分かれるため適用出来る漢方も多種多様にあります。
そんな中でも人参湯は冷たいものを食べるとすぐにお腹が下る、そんな症状の方に効果的です。
この漢方薬はメインの生薬が乾姜(かんきょう)、つまりショウガを使用していて体を内側から温めてくれます。
そのため、冷たいものを食べたことによる冷えに大変効果的なのです。
お腹が冷えて胃痛、下痢したら
美味しいメニューを食べて、冷えて、胃が痛くなって、下痢になって…楽しい思い出がちょっと残念な思い出になってしまいますね。
では、人参湯以外、食材で何か対策は出来ないのでしょうか?
この時期でそんな冷えから来る胃痛、下痢におすすめなのが「あじ」です。
あじは「温」性の魚で、身体を温める作用があります。
特に、胃の冷えを改善してくれるので先ほどから話題に出ている冷たいものを食べたらお腹が痛くなった!と言う腹痛、下痢、便秘に効果的。
「脾」と「胃」の働きも高めてくれるので消化不良や食欲不振の時に食べるのもおすすめです。
「熱」性果物とは?
では、何なら体を冷やさずに食べられるのか?
冷たいものがどうしても食べたくなりますよね、実は夏に旬を迎えるフルーツも寒性、涼性のものが多くお腹を冷やしやすいのです。
凄く暑い時はそう言ったもので食材で体を冷やしてもらうことは重要ですが、どうしても冷たいものを食べるとお腹が痛くなりやすい方は「さくらんぼ」を召し上がってみて下さい。
さくらんぼは時期的には大暑の頃からは外れていますが、果物の中では珍しい「熱」性の食べ物です。
温める作用で「血」の巡りが良くなり血行不良の改善にも役立ちます。
出典:現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖症状からチャートで選ぶ漢方薬 杉山卓也著
出典:新版 毎日使える薬膳&漢方の食材辞典 阪口珠未著 ナツメ社
出典:食べて体と心をととのえる二十四節気の漢方食材 櫻井大典著 株式会社晋遊社
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監修者 佐々木裕人(精神保健指定医、精神科専門医)