月経前に体調や気分が優れなくなることはよくあることですが、それが強い場合には「月経前症候群(PMS)」、または「月経前緊張症候群」と呼ばれます。月経前症候群(PMS)の主な症状には、以下のようなものがあります。
――これらが、月経の数日から一週間前位に始まり、月経直前にピークとなります。そして、月経開始と共に収まります。月経前症候群(PMS)は、女性の20~50%に見られると言われています。
月経前症候群(PMS)の症状が更に酷くなり、月経周期ごとに決まって強い精神症状を起こし、それが1年以上も続くような場合は、「月経前不快気分障害(PMDD)」と診断されることがあります。そして、その診断(PMDD)を受ける方が10~20代で発症されることが多いとされています。
月経前不快気分障害(PMDD)の症状としては、憂うつ感、絶望感、無価値感・罪悪感、怒り、焦燥感、対人葛藤…などがあります。
月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)が、なぜ一部の女性に起こるのか、その理由はまだ分かっていませんが、恐らく下垂体ホルモンと卵巣のホルモンの複雑な相互作用に、エストロゲンの急激な変動が何等かの影響を与えているのではないかと考えられています。なお、月経前不快気分障害(PMDD)の陰に、うつ病が隠れていることがありますので、注意が必要です。
月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)の治療は、大きく3種類あります。
1つは、漢方薬による治療です。以前は東洋医学は軽視されていた時代もありましたが、現代東洋医学も適切に評価されるようになり、その価値が再認識されつつあります。漢方薬のメリットは、やはり(通常の薬と比較して)副作用の少なさであったり、向精神薬でしばしば心配される依存性を懸念する必要がない点でしょう。女性のホルモンバランスを整える漢方薬を内服されることで、穏やかに改善を目指していくことが可能です。
2つは、ピルによる治療です。西洋医学的にホルモンバランスを整えようとすると、やはりピルを選択肢から外すことはできませんので、産婦人科の病院にご相談されることもよいでしょう。なお、当院は心療内科のため直接処方することはしておりません。
3つは、こころのお薬による治療です。うつ病に準じた治療として、うつ病用のお薬をお飲みいただく方法です。「うつ病のお薬」と聞くと、「怖いな」とか、「副作用が強いんじゃない?」「依存性は大丈夫?」といったお声を多くいただきます。当然のご心配だと思います。ご安心ください。あくまで、きちんとした研究などから作られたお薬ですし、国、厚生労働省の厳しい審査をくぐり抜けてきた、れっきとした「治療薬」です。本当に人体に影響が強いお薬なら、それが世の中の表に出てくることはありません。現在は、副作用が以前より起こりにくいお薬も出てきていますし、依存性も基本的にないとされています。これらのお薬による治療の最大の効果は、「一番効きやすい=改善しやすい」点でしょう。漢方薬、ピルも、もちろん優れた治療法ですが、効果の点ではうつ病のお薬が一番有効とされています。
そして、なにより、生活習慣の指導によってもかなりの症状の改善が期待されます。生活習慣の見直しを通して、体質改善を行っていくことも根本治療に繋がるでしょう。また、日常の様々なストレスが、症状の増悪要因になってしまっている可能性もありますので、その際はカウンセリングの併用も治療上有用になってくることでしょう。
当院では、精神科専門医が、豊富な知識と経験で、ご説明、ご提案をさせていただいておりますので、一度ご相談にお越しいただきますと幸いです。
今後とも、医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。