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【一気読み】睡眠障害総集編

 

睡眠障害について書かれた記事をまとめました、ご参考にされてください。

 

「ADHDと睡眠障害は関連があるのでしょうか…?」

 

実は、大人のADHDの方で睡眠障害を発症されている率は「5割以上」という報告さえ出ている程、

大人のADHDと睡眠障害の関係性は根深いものがあります。

それは単に「夜更かしをしてしまった」といったような生活習慣に拠るご理由だけではなく、

ADHDの方の特性の一つでもあります。

 

ADHDの方の中には、睡眠-覚醒を司る“体内時計”に若干のズレをお持ちの方もいらっしゃられ、

その結果としての睡眠障害を併発されてしまわれる方も少なくはありません。

 

通常「睡眠障害」と言うと、

①夜中ベッドに入っても中々寝付けない「入眠障害」、

②夜中に何度も目が覚めてしまい、その都度寝付けなくなってしまう「中途覚醒(夜間覚醒)」、

③早朝まだ暗いうちに起床していまう「早朝覚醒」、

④寝てはいるけれども全体的に眠りの浅さを感じてしまう「熟眠困難」、

この4つが挙げられますが、

ADHDの方の睡眠障害には「日中(昼間)の強い眠気」を訴えられる方が多いのも一つの特徴です。

 

昼間に眠気がおこる睡眠障害であり、ADHDの方との併発が多い病気として、

概日リズム睡眠覚醒障害や、睡眠時無呼吸症候群といったものが挙げられます。

 

「概日リズム睡眠覚醒障害」は、体内時計のズレにより、睡眠時間帯が乱れてしまいます。

睡眠時間帯が早くなる型、遅くなる型などの「型」がありますが、

睡眠の総時間は年齢相応のものに収まります。

 

「睡眠時無呼吸症候群」とは、睡眠中にのどの筋肉が緩み、気道を防ぎやすくなってしまい、

呼吸ができないので結果として睡眠が浅くなります。

その睡眠不足から、昼間に眠くなってしまいます。

ご本人は気が付かれていないことが多いですが、

ご家族から「いびき」をかなり指摘されるようであれば、注意が必要でしょう。

 

もしも日中の眠気が余りにも酷いようであれば、

時として、医師による投薬治療も必要になってくるでしょう。

ただ、ここで大切な事は、生活習慣が主な原因ではないからといって、

それを放置したままだと、睡眠-覚醒のリズムが益々乱れてしまうということです。

ご本人様の意識と努力が必要になってきますが、

まずは出来る限り生活習慣を整え、決まった時間にベッドに入ることを心掛けてみて下さい。

 

「大人の発達障害です、朝起きられなくて困っています」

 

ADHDや自閉スペクトラム症(以下、ASD)等の発達障害をお持ちの方は、

睡眠障害を併発してる場合が多いことが知られています。

 

例えば、ある程度目は覚めているのに、

「起きなくては」という気持ちすら起きずに、

そのまま目覚ましを止めて寝てしまうという背景には、

発達障害の方の特性の一つでもある「行動の転換(切り替え)」の苦手さが、

この朝起きるというシチュエーションでも起きてしまっている、

ということも十分にあり得るでしょう。

 

また、発達障害の方の持つ「過集中」により、

夜寝る前に行っていたことが中々切り上げられず、

夜更かしの習慣がついてしまい、

それが睡眠障害に繋がってしまうこともあります。

 

さらに、睡眠-覚醒といった体内時計(体内リズム)がずれてしまいやすいことも、

その原因の一つとして挙げられていますが、

ここで重要なことは、

もし睡眠に何かしらの困難や障害を感じられた時には、

一人で何とかしようと自己判断で対処するのでななく、

医師のアドバイスと協力が、改善への「鍵」となってくるということです。

 

医師の正しい指導の下で、早めに適切な治療を受けるのと同時に、

ご自分でできる「朝寝坊を防ぐ工夫」を下記に幾つかご紹介させて頂きます。

 

◎「時報タイプ」の目覚まし時計を使ってみる:時報機能をお勧めする理由は、時刻の情報と「起きなければならない」というこの2つが、リンクしている方が多いからです。その分かりやすい例として、目覚ましの音を止めたばかりの時にはまだ夢うつであっても、時間(時刻)を確認された途端、驚いて目が覚めた経験がある方は、比較的多いのではないでしょうか。スマホを目覚ましに使っている人は、時報アラームのアプリもありますので、良かったら試してみて下さい。

 

◎カーテンを開けて寝る:部屋のカーテンを閉めて寝る方が殆どかと思いますが、もし朝の起床に悩まれているようであれば、カーテンを開けて寝るという方法は有用です。人の身体は日光を感じて覚醒を始めます。目は閉じていたとしても、身体の方は目覚める準備を開始しているので、目が覚めた時に、より活動しやすくなります。

 

◎冬場は起きる時間に合わせて暖房をセットする:冬場の寒さは、暖かい布団への誘惑をより一層強めてしまいます。タイマーで起きる時間に合わせて暖房をセットしておき、部屋を暖めて活動しやすい環境を作っておきましょう。

 

◎毎朝観るテレビ番組を決めておく:特にASDの方の場合は、目的を持った“習慣化”が非常に有効です。例えば、朝に観るお気に入りのニュース番組を決めておくことで、起きた後すぐの行動として「テレビをつける」という習慣が入り、そのまま朝の支度を始めるという流れにも繋がりやすくなります。

 

◎前日の内に、その日の朝の支度を済ませておく:実行機能の課題から、ADHDの方の中には、朝起きて出掛ける支度をすることを考えると、つい「面倒くさいな」と思ってしまい、それが起きにくさへと繋がることがしばしばあります。ですので、前日の内に済ませておける朝の準備はされておき、朝行うことを出来るだけ減らしておく方法も有用です。

 

これらの方法は、あくまでも、毎日ある程度決まった時間に就寝されており、

それをされてもなお、どうしても朝が起きられない、という方を対象としています。

まずは、規則正しい起床-就寝を心掛けることが最優先事項であるということを、

どうか忘れないでください。

 

「『過眠』と関連がある病気を教えて下さい」

 

心療内科や精神科で扱う病気として、

「眠れない(=不眠)」が伴うイメージを持っている方は、

きっと少なくはないことでしょう。

 

しかし一方で、「眠りすぎる(=過眠)」に対しては、

「きっと身体が疲れているからだ」といった程度の、

比較的軽いイメージを持たれてはいないでしょうか。

 

実は「眠りすぎる(=過眠)」ことは、時として、

心療内科や精神科で扱う病気の“症状”の一つとして現れていることもあり、

時として注意が必要となってきます。

 

具体的には、

うつ病(非定型うつ病も含む)、躁うつ病(双極性障害)、ADHD、適応障害、

自律神経失調症、過眠障害、ナルコレプシー、起立性調節障害、

……といった病気が挙げられます。

 

(なお、過眠障害、ナルコレプシー、起立性調節障害に関しましては、

専門の睡眠外来のある病院にかかられることをお勧め致します)

 

また、その当人にとって、外界が余りにもストレス過多であったり、

辛い環境であったりされる場合に、

無意識的にその方の「こころ」を守るために、

心理的防衛機制として「過眠」が起きてしまっていることもあります。

その際は、医師との診察に加え、

心理師とのカウンセリングを受けていくことが、

過眠の症状からの回復や、その方にとっての辛さへの根本的な解決に対して、

大切な役割を果たしていくことになります。

 

「『物忘れ』の症状が起こる心療内科の病気を教えて下さい」

 

初診時のお悩みやお困りとして、

よく「物忘れ」についての訴えを耳にします。

「物忘れ」という症状は、心療内科・精神科においては、

様々な疾病(病気)が原因となって起こり得ます。

 

「物忘れ」が起こり得る心療内科・精神科の病気としては……

 

  • うつ病、躁うつ病や適応障害の「抑うつ状態」
  • 睡眠障害(睡眠不足や覚醒困難、睡眠薬の持ち越し等)
  • アルコールをはじめとした物質使用障害(アルコール性健忘等)
  • ADHD等の発達障害
  • せん妄(手術後や入院中によく起こります)
  • 離人症や解離性健忘
  • 急性ストレス障害
  • 若年性認知症(「若年性=65歳以下で発症」という意味です)

 

 

……まずは、このようなものが挙げられるでしょう。

 

中年期未満の方である場合、

頭部外傷やくも膜下出血といった

頭部(脳内)への明確なダメージが直前に発生していない限り、

「若年性認知症」である可能性は限りなく低いものと推察されます。

 

それより、うつ病、躁うつ病、適応障害の「抑うつ状態」に伴って、

記銘力・記憶力が一時的に落ちてしまう状態の方が、

成人~中年期の方の「物忘れ」が起こる頻度としては、

圧倒的に高いものと思われます。

この場合は、「物忘れ」以外の症状が出ていることや、

現在ご本人がストレス状況下に置かれていること等が、

同時に観察される可能性が高いです。

 

目下「睡眠」に対して何かしらの問題が生じている場合は、

その睡眠障害がキッカケとなって「物忘れ」が起こってしまっているケースも、

決して少なくはありません。

睡眠を「質」「量」共にしっかりと取っていらっしゃらない場合、

情報の記銘・保持・出力といった脳に対する一連の記憶作業が、

上手くいかなかったり、エラーを起こしてしまったりします。

 

そして、アルコールを頻繁に摂取されていらっしゃられる方の場合、

アルコール性健忘というものが、例え若かったとしても、充分に起こり得ます。

 

ですので、「物忘れ」でお困りでいらっしゃられる場合、

まずは、最近のご自身のストレスや気分、

睡眠や食事の状況といったものを振り返ってみられると、

何か気が付くことが出てくるかもしれません。

 

加えて、もし「物忘れ」に悩まれて、心療内科・精神科を受診される際、

上記の情報(ストレス・気分・睡眠・食事等)を医師にお伝え頂くことで、

より適切で有用な診察や治療方針を立てることに繋がりますので、

心に留めておいて頂けましたら幸いです。

 

「睡眠障害です、上手な『昼寝』の取り方を教えて下さい」

 

睡眠障害(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠困難)に悩まされている方から、

よく伺う言葉としまして、

「自分は、日中(昼間)の眠い時に、『寝てはいけない』と思って耐えています」

という事柄があります。

 

睡眠障害を克服しようとされている方の多くは、

「昼寝は大敵!」という認識をお持ちでいらっしゃられますし、

実際そうしないように心掛けていらっしゃられる方も少なくはありません。

 

確かに、日中の長時間の「昼寝」は、

その後の睡眠リズムを崩してしまうことにも繋がりますので、

避けるに越したことはないでしょう。

 

しかし、日中の「適度な昼寝」は、上手に取ることで、

却って、その後のパフォーマンスを上げるだけでなく、

夜の入眠にも影響が出ないことが知られています。

 

その「適度な昼寝」は、

脳の「DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)」状態を、

上手に使ったやり方として知られています。

 

まず、昼寝の時間は「20分」が最適とされています。

それより長く(例:30分以上)なってしまうと、

今度は本格的な睡眠モードに入ってしまいますので、

スマホのアラーム機能等を用いて、予め「20分後」にセットしておきます。

そして、可能ならば、静かで少し暗くしたような部屋で、目を閉じます。

横になっても良いし、ゆったりと座れてさえいれば充分です。

 

人が受け取る情報の内、視覚(目)から入る情報は、実に8割以上と言われており、

目を閉じることで、余計な情報が入ってこないようにします。

 

そしてこの「20分」という時間は、丁度うつらうつらし始める状態ですので、

タイマーが鳴って起きる時も、さほど苦なく起きられると言われています。

30分以上経った、本格的な睡眠モードに入ってしまうと、

起きることに辛さやしんどさが出てしまったり、

眠気がその後残ってしまうことがあるので、要注意です。

 

また、この「20分」の間に、例え眠れなかったとしても、

上述のように、視覚情報をシャットアウトしている状態であったことが、

脳の疲労軽減に非常に役立ちます。

その後「スッキリした」状態で、仕事や家事に戻っていけることでしょう。

 

また、20分間、もしウトウトし掛けていたとするならば、

脳内は、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」がよく分泌されていた筈です。

私たちは「半覚醒状態」の際、最もセロトニン分泌が活性化します。

 

「朝の目覚ましのタイマーは、本当に起きたい時刻の『20分前』に、

1ベル目を鳴らすように設定すると良い(2ベル目は起きたい時刻に設定する)」

とよく言われているのも、朝のまどろむ半覚醒状態を恣意的に作ることで、

朝から質の良いセロトニンを充分に浴びることを意図しているのです。

 

これらの事柄は、睡眠障害でお困りの方のみならず、

一般にどなたが試されても同様の効果が出ることが知られています。

 

「睡眠薬は、一度飲んだらずっと飲み続ける必要があるのですか?」

 

「睡眠薬」は、入眠時に「眠れなかったらどうしよう」という予期不安や、

緊張状態を和らげるために用いられます。

睡眠薬を服用することで、入眠時の「神経の興奮」を抑え、

リラックスさせることで、自然な眠りを発現させるように、

睡眠薬はデザインされているのです。

 

医師の服薬指導のもと、

睡眠薬には大きく分かれて2種類の使われ方(服用の仕方)があります。

① 眠れない時のみ「頓服薬」として処方されている場合

② 「就寝前」など毎日服用指示がされている場合(連用処方)

 

「①」の患者様に対しては、そのまま「眠れない時のみ」服用をされ、

睡眠が改善されていくに従い、そのまま服用が自然となくなっていく、

というパターンで問題ないでしょう。

 

しかし、睡眠薬を中断(中止)する際、

「②」のように、連用処方であったり、毎日必ず服用されている場合には、

医師としっかり相談をされて、

計画的に徐々に減薬をしていくことが大切です。

 

なぜなら、これは睡眠薬のみに限ったことではありませんが、

連用処方であったものを、自己判断で中断してしまわれると、

「副作用」が生じることが有り得るからです。

 

睡眠薬の場合は、“リバウンド現象”としての不眠が起こることがあり、

これを「反跳性不眠」と呼んでいます。

また、頭痛、めまい、焦燥感が現れることもあり、

これを「退薬症候群」と呼びます。

 

もし、睡眠薬を長期間、連用処方をされていらした患者様は、

睡眠薬の必要を感じなくなってきましたら、そのことを医師にお伝えし、

医師の指示のもと、前述のような副作用が起きないように、

ゆっくりと徐々に減薬をしていくことになります。

 

具体的な方法としては、

1回の処方されている量を徐々に減らしていく「用量漸減法」、

服用回数をへらしていく「回数漸減法、隔日法」…等といった方法を、

その患者様のご様子を診て、医師が判断して行っていくことで、

睡眠薬を上手に止めること出来るのです。

用量漸減法や回数漸減法(隔日法)をご希望される場合は、

どうか必ず主治医の医師にしっかりとその旨をご相談をされて下さい。

 

「『睡眠』と『免疫力』とは関連があるのでしょうか?」

 

新型コロナウィルス関連のニュースが席巻する昨今では、その予防対策として「免疫力」という言葉を耳にする機会も随分増えました。

 

この「免疫力」と「睡眠」とは、非常に深い関係性があります。

 

睡眠が持つ大切な役割の1つに、「免疫力を上げて、病気を遠ざける」というものがあります。

 

睡眠が乱れると、ホルモンバランスが崩れることで、免疫の働きまで乱れます。

恐ろしいことに、風邪やインフルエンザといったウィルス性感染症やがんといった免疫に関係する病気になる可能性が高まってしまうのです。

 

実際、インフルエンザの予防接種を受けても、睡眠が乱れていると、「免疫が確立せず、予防効果が認められない」という調査報告もあるほど、睡眠と身体の免疫力は、切っても切れない関係にあります。

 

また、しっかりと眠らないと免疫が正常に作用しないばかりか、逆にアレルギーが悪化する危険すらあり、(アレルギー反応というのは、免疫系の異常反応のことを呼びます)万病を予防するためにも、しっかりと「寝る」に越したことはないのです。

 

「睡眠障害です、『朝太陽の光を浴びると良い』のは何故ですか?」

 

睡眠障害(不眠症)で、現在治療を受けていらっしゃられる方は、恐らく、主治医の先生から、「朝、一度は太陽の光を浴びて下さい」といった指導を、既にお受けになられていることかと思われます。

 

睡眠障害(不眠症)を患うと、人間の「体内時計」がずれてしまい、夜になっても眠れない、朝になっても目が覚めないといった、生活リズム(睡眠-覚醒リズム)の乱れを生んでしまいます。

 

そして、この体内時計を司っているのが、「メラトニン」と呼ばれる眠りを誘う脳内ホルモンなのです。

 

メラトニンは、脈拍・体温・血圧を低下させることによって、睡眠と覚醒のリズムを上手に調整し、自然な眠りを誘う作用があります。

 

このメラトニンは、脳の松果体(しょうかたい)と呼ばれる部分から分泌されますが、松果体は、目に入る光の量をもとに、メラトニンの分泌量を決定します。

 

太陽の光を浴びることによって、メラトニンが減退し、夕方になり、目に入る光の量が減ってくると、それを感知した松果体がメラトニンを分泌するのです。

 

また、メラトニンは、太陽の光が目に入ってから、15時間程度経たないと分泌されない、という性質があります。

 

つまり、外が明るい時間には殆ど分泌されずに、夕方以降、暗くなってくると分泌量が増加し、夜になるとさらに増えて、午前2時頃に分泌量のピークを迎えます。その後、朝に向かって徐々に覚醒に近づくことになります。

 

そこで、睡眠障害(不眠)に悩まされている人の場合は、まず一度起床して、太陽の光を目に入れることから始めるわけです。

 

それにより、メラトニン分泌のリズムが正常化し、少しずつ通常の生活リズムを取り戻していくことが出来るようになるのです。

 

最初は、朝身体を起こすことが中々難しいという方は、寝床を窓の傍に設定し、窓にはカーテンではなく、ブラインドを掛けておくという方法でも良いと思われます。

 

朝になって太陽が昇り、外界が明るくなるにつれて、自然にブラインドから入ってくる光を浴びる(目に入れる)だけでも、ある程度の効果が期待できるということが言われていますので、ぜひ試してみて下さい。

 

「睡眠障害で悩んでいます、『睡眠禁止ゾーン』って何ですか?」

 

睡眠障害(不眠症)の方の中には、「今夜は沢山寝ようと思って早くベッドに入ったのに、却って目が冴えてしまって、よく眠れませんでした」という訴えをされる方も少なくはありません。

 

これは「睡眠禁止ゾーン(フォビドンゾーン)」というものと深く関連しています。

 

睡眠研究者らによると、「通常就寝をする時刻の直前~2時間前辺りまでが、最も眠りにくい」ということが知られています。

 

これを実際の睡眠に当てはめて考えると、「毎日決まって午前0時に眠る人は、22時~午前0時までの2時間が最も眠りにくい」ということになります。

 

私たちの一般的なイメージとしては、通常就寝をする時刻に向かって、「眠さが徐々に増していく」ように思ってしまいます。

 

しかし実際は、この寝る直前の時間帯が最も眠りにくくなっており、専門家たちは、この「入眠直前の脳が眠りを拒む時間帯」のことを、「睡眠禁止ゾーン(フォビドンゾーン)」と呼んでいるようです。

 

よって先述の例にもありましたように、例えば、次の日の朝が早いからと言って、「いつもより1時間早く寝ることは非常に難しい」と言わざるを得ないでしょう。

 

何故ならば、この「1時間早く寝る」というのは、「睡眠禁止ゾーン(フォビドンソーン)」への侵入だからです。

 

「後ろにずらすことは簡単、前倒しするのは困難」という睡眠の性格が、非常によく表れた現象だとも言えるでしょう。

 

このことを踏まえますと、「明日早く起きなければならない」という日は、「無理をせずいつも通りの時間に寝て、睡眠時間を1時間削る」方が、結果として、すんなりと入眠でき、その上、良質の睡眠が確保できる可能性が高くなるのです。

 

「『日本人は世界でも睡眠時間が短い』って本当ですか?」

 

「世界一睡眠偏差値が低い国、日本」。そんな目を背けたくなるような事実が近年指摘されています。

 

フィンランドの平均睡眠時間は、7.9時間。

フランスの平均睡眠時間は、7.3時間。

日本の平均睡眠時間は、6.3時間、

となっています。

 

日本人に限った調査ですと、「睡眠時間が6時間未満の人は、全体の約40%」といった報告もあります。

 

因みに、この「6時間未満睡眠」とは、アメリカにおいては「短時間睡眠」の域に入る数値です。

 

ミシガン大学が2016年に行った、別の調査においては、日本人の睡眠時間は「100か国中最下位」にランクされていました。

 

勿論「適切な睡眠時間」には個人差があります。

「5時間睡眠でも充分に足りている」という方も、

中にはいらっしゃられることでしょう。

 

しかし、次のような調査報告もされているのです。

 

「6時間未満しか寝ていない日本人も、『7.2時間位寝たい』と感じている」というものです。

 

この「眠りたい時間と、実際の睡眠時間の差」も諸外国に比べて日本は大きくなっており、端的に言うと、「眠りたいのに、眠れていない日本人」になってしまっているのです。

 

さらに、これが東京に限れば、平日の平均睡眠時間は、5.59時間であり、短時間睡眠とされる「6時間」を、平均の数値で切ってしまっています。

 

世界の国と比べて、睡眠時間が断トツで少ない国、日本。

 

そして、都会で暮らす人たちほど「眠りたいのに、眠れていない」実像が浮かび上がってくるのです。

 

これはあくまで大規模データ(マスデータ)ではありますが、一人ひとりの眠りの問題を考えた時、皆様の睡眠時間は果たして大丈夫でしょうか。

 

「眠りたい」という欲求に対して、いつの間にか鈍麻になってはいませんか。

 

「眠れていない」自覚がないまま、徐々に身体に睡眠不足の影響が出てきてしまってはいないでしょうか。

 

「『睡眠負債』って何なのでしょうか?」

 

近年の最新の睡眠研究においては、睡眠が足りていない状態を、「睡眠不足」ではなく「睡眠負債」という言葉で表現するようになりました。

 

何故かと言いますと、「借金」と同様に、「睡眠」も不足して返済が滞ると首が回らなくなり、しまいには、脳も身体も思うようにならない「眠りの自己破産」を引き起こすからです。

 

ちょっと多めに眠った位では、簡単には睡眠負債は返せません。

単純に「借りた元金」を返せば良いというわけではなく、そこには「法外な利子」がつくとイメージして下さい。

 

睡眠負債があると、日中の行動に大きなマイナスの影響が及びます。

一見すると普通に起きているように見えても、実は脳と身体は、正常に働いていない可能性があるのです。

 

これが「睡眠負債」と呼ぶようになった所以です。

睡眠負債が蓄積してしまい、取返しがつかない状況に陥る前に、ご自分がそういった危機的状況に陥ってはいないか、「たかが睡眠不足」と甘く考えてしまってはいなかったか、この機会にいま一度よく振り返ってみられては如何でしょうか。

 

「『寝逃げ』って何故起こるのでしょう?」

 

ストレスがかかった時、人はとても不思議な反応を示すことがあります。

 

人が何かのストレスを感じ、その場から立ち去りたいという欲求に駆られた時、いつもより睡眠が多くなってしまったり、会社の方向とは別の電車に飛び乗ってしまったり、という行動が見られることがあります。

 

睡眠は心身の疲労の回復にとても役立ちますので、決して悪いことではなく、ある意味では疲れを取るのに必要としているからこそ過眠になっているとも言えます。実際に、6時間睡眠者で有意に自殺率が高いという調査結果が出され、7時間の睡眠時間においてうつ病は最も低いと発表されています。

 

それだけ睡眠は健康維持に欠かせないものとなります。しかし、本人の意思とは関係なく、あまりに寝すぎてしまったり、ストレスから回避しようとして寝ることをひたすら選んでしまうようになったりすると、何も解決に結びつかず問題の先送りのみでかえってストレスになるという心理状態となり、不安になるでしょう。

 

精神分析的立場では、人間には無意識、前意識(普段から常々意識はしていないけれども、何かのきっかけで意識されるもの)といわれる存在があることを想定しており、本人は大きく意識していなくとも、身体が勝手に反応して、そのストレスから回避しようとするメカニズムが働くことがあります。

 

加えて自分で辛い気持ちを抱え、それについて考えるということはとても忍耐力のいることです。その営み自体がとてもしんどくて悩みに向き合うことが出来ず、てっとりばやくお酒を飲んだり、お菓子を食べたり、寝てしまったりという行動を伴いやすくもなります。

 

そういった行動は軽度であれば、ストレス発散になりとても良いのですが、メンタルの調子が悪い時や、ストレス耐性があまり高くない方がそういった方法に頼ってしまうと、社会生活を脅かすほどの引きこもりや過食、過度な飲酒、過眠状態、逃避などに陥ってしまうことがあります。

 

普段何気なく寝逃げがあるものの、社会生活に影響は及ぼさない程度であれば、それは健康を維持するために体が必要としている睡眠なのかもしれないので、無理にご自分を追い詰めず、適度に寝逃げされてみて下さい。そして寝たあとは、ストレスについてもう一度違う角度から見直してみる、書き出してみる、「ま、仕方ないか」と割り切ってみる、などそのストレスの内容によって対処を考えてみられては如何でしょうか。

 

また、普段から余暇や趣味のバリエーションを豊富にし、悩みを打ち明けられる人、サポートしてくれる人の存在を大切にしましょう。元々の人間関係で信頼できる他者との関係を築いている人は、PTSDなどの発症時も症状が悪化しにくいことが言われています。人間関係をこれから築いていく方はぜひアサーションなども活用しながら、一緒に考えていきましょう。

 

「自律神経失調症の具体的な症状Ⅰ~全身症状編」

 

自律神経失調症の様々な症状の内、「全身症状」の代表的なものが、慢性的な疲労感、倦怠感(けんたいかん)、睡眠障害、めまい、ほてり等です。

 

全身症状は比較的初期の段階から現れるため、これによって自律神経失調症に気づかれる方も少なくはありません。

 

健康な方は、多少疲れていても2~3日で回復しますが、自律神経の失調による疲労は、日を追うごとに酷くなり、何をするにも億劫な気分になるのが特徴です。

 

自律神経失調症の様々な症状は、交感神経と副交感失敬の切り替えが上手くいかずに起こる場合と、自律神経を管理している視床下部に混乱が生じて起こる場合があります。全身症状が出るのは、後者のタイプと言われています。

 

また、30代後半以降の女性の場合、更年期障害によるホルモン分泌の減少が影響し、自律神経失調症が起こり、このような全身症状が出現することもあります。

 

全身症状の具体的な内容を以下に記載させて頂きます。ご参考となりましたら幸いです。

 

倦怠感・疲労感:自律神経失調症の中でも、非常に多くの方が訴えられる症状です。特別体力を消耗するようなことをしていないのに、いつも全身がだるい、疲労感が続く、全身に力が入らない等の不調が見られます。酷くなると、起きることが出来なくなる程の疲労感を覚えます。

 

めまい・立ちくらみ:めまいには、①周囲がグルグル回るようなめまい、②自分自身がフラフラするめまい、の2種類があります。自律神経失調症に多いのは「②」のタイプです。急に立ち上がった時にふらついたりする「立ちくらみ」もよく見られる症状の一つです。

 

微熱:女性の妊娠中や生理前約2週間は、平熱よりもやや体温が高くなることが知られています。そうした期間ではなく、また特に身体の異常がないにも関わらず、だるさを伴う37℃位の微熱が毎日続いてしまいます。

 

全身のほてり・冷え:気温や室温に関係なく、突然身体が熱くなり、その後大量の汗をかいてしまいます(=全身のほてり)。逆に、他の人が寒く感じない時に寒気を覚えたり、身体が急に冷えたりするという不調が起こることもあります(=全身の冷え)。

 

食欲不振:お腹が空いているにも関わらず、食べ物を見ても食べたくない、食べ物を見ると吐き気がする、食べても胃がムカムカする等といった諸症状が起こり得ます。

 

睡眠障害:ベッドに入っても中々寝つけない(=入眠困難)、眠りが浅くすぐに目が覚めてしまう(=中途覚醒)、朝目が覚めた時に疲労感が残っている(=熟眠困難)等といった諸症状が起こり得ます。また、不眠とは逆に、四六時中眠い(=過眠・日中の眠気)という症状が現れることもあります。

 

筋肉痛:運動をしていないにも関わらず、身体の筋肉が重く感じます。時として、筋肉や関節が歩けなくなるほど痛む場合もあります。

 

「女性の自閉スペクトラム症の『二次障害』とは…?」

 

自閉スペクトラム症(以下、ASD)の方は、様々な特性から生活上の困難が生じやすいため、総じてストレスの多い生活を送りがちです。そのストレスが積み重なっていき、「二次的な障害(二次障害)」が起こることもあります。

 

二次障害として、男性・女性問わずに多いのは、まず睡眠障害です。元々時間の感覚を持ちにくい上に、ストレスによる不眠もあり、生活リズムが崩れてしまいやすい傾向があります。

 

他にも、うつ病や統合失調症、強迫性障害等の心の病気も、男性・女性ともに起こりやすいと言われており、これにはストレスの影響が強く出ていると考えられています。

 

そして、女性のASDの方に多い病気として第一に挙げられるのが「心身症」です。胃腸の不調や貧血、疲労感等が頻発し、何度も内科を受診される方も少なくはありません。

 

しかし、対症療法的に薬を飲むだけでは状態はよくならず、その背景にあるASDに気が付かれるまで、悩み続けてしまわれます。「難治性の心身症に掛かってしまっている」というご自覚をお持ちの場合は、ASDが潜んでいる可能性があるかもしれません。

 

他にも、女性のASDの場合、摂食障害や境界性パーソナリティ障害等が併発しやすい傾向も指摘されています。

 

「『うつ病』について教えて下さい①~症状・原因編」

 

うつ病になると、意欲や気力が衰えて、感情や興味が失われ、家事や仕事が手につかなくなってしまいます。また、そんな自分自身に対して、焦りや罪悪感を抱くようになり、「いっそのこと消えていなくなってしまいたい」とまで思うようになることさえあります。

 

うつ病の症状として、具体的には次のようなものが挙げられます。

 

  • 憂うつで元気が出ない
  • 物事に対して興味・関心が持てない
  • 不眠(または、過眠)
  • 食欲減退と体重の減少(または、食欲増加や過食)
  • 疲れ易さ・気力が出ない
  • 強い焦燥感がある
  • 思考力・集中力・決断力等の低下
  • 自分への無価値観や罪悪感を抱く
  • 死を度々考えてしまう

 

これらの項目の内、「① 憂うつで元気が出ない」、または「② 物事に対して興味・関心が持てない」のどちらかを含む5つ以上の項目が、2週間以上続いた場合、うつ病である可能性が出てきます。

 

うつ病の初期症状として、一番気付きやすいものが「③不眠(または、過眠)」といった「睡眠障害」だと言われています。実際、うつ病と診断をされた患者様の内、9割以上の方が、何らかの睡眠障害に悩まされているというデータがある程です。よって、睡眠障害の治療がキッカケとなり、うつ病の早期発見に繋がることも少なくはありません。うつ病は「早期発見・早期治療開始」が、何よりも重要視されています。

 

まれに、精神症状が現れにくいタイプのうつ病の方もいらっしゃられます。うつ病は、一般的には、気分の落ち込みや意欲の低下といった、精神面の症状が強く現れる病気です。しかし近年では、うつ病が身体化する方も少なくありません。

 

具体的には、精神症状よりも、倦怠感、頭痛、動悸、食欲不振、息苦しさといった身体面の不調が強く出てしまうタイプの方です。このように、身体症状が前面に出て、精神症状を見えにくくしていることから、通称「仮面うつ病」と呼ばれています。このタイプのうつ病の方は、まさかご自分がうつ病だとは思われず、多くの科や病院を巡られ、心療内科や精神科にたどり着くまで、かなり労力や時間を費やされてしまうこともあります。

 

うつ病はなぜ起こるのか、その原因やメカニズムは未だ解明されていない部分が多々あります。「内因性」「心因性」「身体因性」という要因で考えられる場合もありますし、脳内の神経伝達物質が関連しているとされる説(「神経伝達物質仮説」)も提唱されてきています。

 

「内因性」が示すような遺伝的な素因は確かにあるようです。しかし、それよりもむしろ、掛かってくるストレスの大きさ(量・質)と、そのストレスをどのように受け止めるか(知覚・認知)といった「心因性」の方が、より大きな要因となり得るという考え方が優勢であると言えるでしょう。

 

「『うつ病』について教えて下さい②~治療編」

 

うつ病の治療で、まず重要になるのが、うつ病によって起こった睡眠障害(特に不眠の場合)の治療です。この睡眠の問題が改善するだけで、かなり症状が軽快される方も少なくありません。

 

まずは、ご自分の心身をゆっくり休めるようにすることが、何よりも優先されます。そこでは、医師による支持的かつ受容的な精神療法が行われ、その方の症状や必要に応じて、投薬治療(薬物療法)がなされます。投薬治療の目的は、患者様の憂うつな気持ちや、不安や焦りの気持ちを和らげたり、時には、気力や意欲を高めたりするために行われます。

 

加えて、心理師による心理療法が併用されることがあります。心理療法は実に多種多様なものがありますが、うつ病に対しては「認知行動療法」が高い効果が期待できる、という効果実証研究(エビデンス)が出ています。

 

うつ病は、正しい治療を行うことで、多くの方はきちんと回復(寛解)することが出来ます。但し、「再発リスク」というものは存在します。その点は、治療が一旦終結された後も、患者様の日々の自助努力(セルフモニタリング・セルフコントロール)が欠かせません。その具体例を、以下に挙げさせて頂きます。

 

✓「うつ病」についての正しい知識を持つ(=心理教育)。

 

✓適度な睡眠・栄養・休養・運動を取るように心掛ける。

 

✓日光をよく浴びるようにする。

 

✓ご自身のストレス因を把握し、対処法を見つけておく(=ストレスコーピング)。

 

✓困ったことがあったら、一人で抱え込まないよう、相談相手を作っておく。

 

✓心から楽しめる趣味や、気分転換できる手段を幾つか見つけておく。

 

✓ご自分なりのリラックス法・リフレッシュ法を見つけてみる。

 

✓ご自分の不調に気づくサイン(=兆候)を幾つか知っておく。

 

✓物事の受け取り方や考え方(=認知)の幅を拡げてみる。

 

✓定期的に第三者からご自分についての客観的な見解(体調・様子・雰囲気等)を聞く。

 

✓仕事とプライベートの気持ちの切り替え(オンオフ)を意識する。

 

✓無理をし過ぎず、頑張り過ぎない。自分で自分を追い込まない。

 

勿論、これらは一例に過ぎません。他にも様々な再発防止(再発予防)の方法が存在します。治療を進められていかれる内に、きっとご自分に最適なものが見つかることでしょう。

 

「ゲーム依存(ネット依存)の弊害について~心の健康面」

 

ネット依存(ゲーム依存)になってしまうと、精神面・身体面・行動面それぞれにおいて様々な弊害が出てきてしまうことが知られています。今回は「精神面(心理面)」について記載させて頂きます。

 

ネット依存(ゲーム依存)にまで陥ってしまうと、ネットやゲームをしている時は、楽しくて気分が高揚し、集中力を発揮する反面、今度はそれをしていないと、著しくイライラしてしたり落ち込んだりします。ネットやゲームを止めるように注意をされると、怒りを露わにされる方も少なくありません。

 

こうした状態は、他の依存でいうところの「離脱症状」に似たもので、このような状態が見られるようであれば、早めの治療が必要になってくることでしょう。

 

また、ネット依存(ゲーム依存)の患者様の大半の方が、睡眠障害を併発されています。深夜、あるいは明け方までネットやゲームを続けていると、交感神経が過剰に優位になってしまっていることやブルーライトを長時間浴び続けている影響等もあって、眠ろうとしても中々寝つけない入眠障害や、眠ったとしても朝起きられない、昼間に居眠りをしてしまうといったことが起こります。やがてこれが、昼夜の逆転した生活リズムとなってしまい、様々な問題の元にもなってしまいます。

 

ネット依存(ゲーム依存)による、精神面の影響、つまり心の健康に関する問題をまとめると以下のようなものが挙げられることでしょう。そして、こういった症状が見られた場合には、「気のせいだ」「たまたまだ」と放っておかず、適切な医療機関を受診することをお勧めします。

 

  • 感情をコントロールできなくなる
  • ネットやゲームをしていない時の意欲低下が著しい
  • ネットやゲームを行うことで引き起こされる問題を過小評価する
  • 自己中心的な考えに傾く
  • 他の人との話がかみ合わない
  • 思考能力が低下してボーッとしていることが多い
  • ちょっとしたことでもキレやすくなる
  • 睡眠時間が短い
  • 睡眠時間帯が(一般的なものとは)ずれてくる
  • 睡眠不足でいつも居眠りをしてしまう
  • 無感情・無感動になる
  • いつもイライラしている
  • 劣等感や抑うつ感が強くなる
  • 人付き合いが煩わしくなる

 

「 難しい本を読むと眠くなるって本当ですか?」

 

日中に難しい本を読んでいる際に、ついウトウトと眠くなってしまった経験がある方も少なくはないでしょう。それを逆に利用して、睡眠障害(不眠症)の中でも、特に「入眠困難(ベッドに入ってから中々寝つけない)」に悩まれている方が、「枕元には難しい書籍(哲学書等)を置いて眠れない時に読むようにする」という習慣を通して、入眠困難を解消された例もあるのです(但し、スマホやタブレット端末での読書は、ブルーライトにより却って覚醒を促してしまうので、あくまで「紙の本」にされて下さい)。

 

何故、難しい本を読むと眠くなるのでしょうか。難しい本を読みますと、脳内で苦痛を取り除く「βエンドルフィン」という物質が分泌されます。この物質には、鎮静効果・リラックス効果などがあるため、それが眠気や眠りに繋がることが知られています。

 

このことと原理は異なりますが、眠ることを目的とした“読むだけで眠くなる本”というものも発売されています。これは眠たくなるように、「メタファー(暗喩)」と呼ばれる自己暗示の言葉・単語が文章に散りばめられており、読んでいる内に不思議と眠たくなるというものです(「sleep(スリープ)」・「sheep(シープ)」…を繰り返すのも同じ原理の一つです)。

 

大人向けのものとしては『読むだけで深~い眠りにつける10の話』、子ども向けですと『おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本』といったものが、日本ではよく知られています。

 

もし眠れなくとも、目を閉じて横になっているだけで脳は「休息モード」に入ってくれています。「眠れない。どうしよう」と思わず、「脳を休めることは大切だよね」と思って、リラックスしてベッドに入られて下さい。

 

「目覚ましのスヌーズ機能は自律神経に負担を掛けるのですか?」

 

1回止めても、5分後等に鳴る目覚ましの「スヌーズ機能」を、朝使われている方はきっと少なくはないことでしょう。

 

「もうちょっとだけ寝たい」「でもそのまま寝てしまうと困る」という時には、便利なこの機能ですが、実はこのスムーズ機能は、下手をすると自律神経には悪影響を与えかねません。

 

自律神経には、活動状態を作り出す「交感神経」と、リラックス状態を作り出す「副交感神経」があります。

 

目覚ましのアラームが鳴ると、その瞬間に交感神経の働きが高まり、身体は活動状態に入ります。しかし、「どうせスヌーズ機能をつけているから、まだ起きなくてもいいや」と再び寝てしまうと、今度は副交感神経が高まります。このサイクルを何度も繰り返してしまうと、自律神経系の混乱を招き、知らず知らずのうちに、心身に大きな負担を掛けることになるのです。

 

よって、出来れば目覚まし時計のスヌーズ機能は使わず、一度アラームが鳴ったら起きるようにすることがベストです。それを習慣づけると、自律神経の切り替えも上手くいきやすくなります。

 

但し、どうしてもそれが難しい場合は、以前同コラムでご紹介させて頂きました「起きたい時間と、その20分前の“2回だけ”、アラームをセットする方法」を使われるようにされてみられて下さい。

 

「『春眠暁を覚えず』~春はなぜ眠いのですか?」

 

私たちが常に体温を約36℃に維持するためには、実は大量のエネルギーを必要とします。日照時間が短くて寒い「冬」は特に体温維持に多くのエネルギーを使いますので、それ以外の活動は全体的に”省エネモード”に入ります。

 

基本的に、私たちは体力や気力が少ない時(不足している時)には、それを回復するために睡眠が増えます。他にも、満腹になると眠くなる方や、甘い物の摂取が増える方もいらっしゃいます。

 

そして、春になって、日照時間が延びてくると、活動しやすい環境となり、身体は”活動モード”に切り替わります。そのために、睡眠時間も減っていくのが通常なのですが、冬の身体の消耗が残っている(持ち越されてしまう)と、身体が”省エネモード”の状態のまま春を迎えてしまい、「朝起きられない」「日中も眠い」等々の症状が現れるのです。

 

春は「三寒四温」の言葉通り、日よって寒暖差が生じやすく、自律神経が乱れやすいのも、その症状に拍車を掛けていると言ってもよいでしょう。

 

冬から春の変化についていくためには、以下の事柄の実践が効果的です。

 

★質の良い睡眠をとるように心掛けること。

 

★朝日をしっかり浴びて、幸せホルモンであるセロトニンを分泌させ、体内時計をリセットさせること。

 

★消化の良い食事を、腹八分とって、胃の負担を減らすこと。

 

★漢方の考え方ですと、春は酸っぱい食べ物(酸味)を積極的に摂取することが推奨されています。具体的には、梅干しやレモン、イチゴ、酢の物やヨーグルトなどです。

 

「『慢性疲労症候群』と『うつ病』の違いを教えて下さい」

 

慢性疲労症候群」は、原因不明の強い疲労感が長期に渡って継続する病態です。身体面でも精神面でも激しく疲労してしまい、日常生活に支障をきたします。

 

強い疲労感のほかには、微熱、喉の痛み、リンパ節の腫れ、原因不明の筋力低下、関節痛といった症状が現れます。精神面では、物忘れ、思考力・集中力の低下、抑うつ状態、睡眠障害などの症状が現れます。

 

慢性疲労症候群のこうした症状は、「うつ病」の症状と非常によく似ており、その鑑別(見分けること)は簡単ではありません。ただ、慢性疲労症候群うつ病の異なる点として、以下の3点が挙げられています。

 

◎ 慢性疲労症候群の場合、意欲や気力の低下よりも、疲労感や倦怠感の方が強い。

 

◎ 慢性疲労症候群の場合、うつ病で見られる「日内変動」が余り顕著ではない。

 

 慢性疲労症候群の場合、自責感・イライラ感・非哀感は少ない。

 

「『全般性不安症(全般性不安障害)』の診断基準を教えて下さい」

 

今回はその中にありました「全般性不安症(全般性不安障害:GAD)」について詳しく書かせて頂きます。

 

★以下の1~3の項目が当て嵌まる際に、全般性不安症が疑われます。

 

1.自分でもコントロールできない程、強い不安や心配が原因で、6か月以上、日常生活や社会生活に支障が出てしまっている(=「何でもかんでも、半年以上ずっと、いつも不安でしかない」)。

 

2.また、細かい症状としては、次の項目の内、3つ以上が当て嵌まります。

 

□ 落ち着きのなさ、緊張感や過敏性。

□ 疲れ易い(疲労感)。

□ 集中力の低下や集中困難、頭が真っ白になる。

□ 苛立たしさ(イライラしている)や易怒性。

□ 筋肉の緊張。

□ 睡眠障害(不眠や入眠・熟眠困難など)。

 

3.不安と心配の対象が、その他の不安症等に見られるような特定的・限定的・具体的な対象ではないこと。物質や他の医学的な疾病により引き起こされたものではないこと。

 

このように1~3の項目を参考に、全般性不安症か否かが判断されます。

 

「3」は、具体的にはパニック症におけるパニック発作や、社交不安症における人前で注目を浴びる場面、といったような「こういった具体的な場面や状況に陥ることが不安(心配)である」といった時は、「全般性不安症」とは言わないことを意味しています。全般性不安症の方は「漠然とした不安」を常に抱えてしまわれていることが大きな特徴の一つなのです。

 

「『足がムズムズして眠れない』ことはありませんか?」

 

主に夜、眠ろうとする時間帯になると、足がムズムズしてしまい、足を動かさずにはいられなくなってしまうことで入眠困難(睡眠障害)が生じるというケースが実は存在します。それは「レストレスレッグス症候群」、別名「むずむず脚症候群」といわれる疾病になります。

 

これと似た症状に「アカシジア」と呼ばれる、抗精神病薬による副作用がありますが、この場合は、そういった処方が出ていることが前提となるのと同時に、服用する時間帯によっては、必ずしも夜にのみ生じるという訳ではありません。

 

この「レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)」は、妊娠されている方や高齢者に生じやすい傾向があり、その背景には「鉄欠乏」や「腎機能低下」との関係性が指摘されています。

 

ですので、もし入眠困難を感じられている方で、上記の症状(夜寝る頃になると足がムズムズする)に拠る場合は、主治医の先生に、必ずそのことをお伝え下さい。何故なら、治療法や処方されるお薬が異なってくる可能性が出てくるからです。

 

「『月経前不快気分障害(PMDD)』の身体症状を教えて下さい」

 

PMDDの症状は、精神症状と身体症状に大別されています。今回は「身体症状」についてです。PMDDでよく現れる身体の症状は、「睡眠の障害」と「食欲の異常」です。

 

「睡眠の障害」は、昼夜を問わず、1日中眠くて仕方がないといった「過眠(睡眠過多)」が出現します。但し、一部のPMDDの患者様の中には、不眠になることもあります。また、昼間は過眠を、夜間は不眠を、それぞれ認めることもあります。

 

「食欲」は、一般には過食になります。異常に食欲が出たり、間食が増加したり、甘い物や炭水化物のみを欲したりされることが多く見られます。それに伴い体重増加が出ることもあります。但し、一部のPMDDの患者様の中には、食欲不振傾向が強く出るケースもあります。

 

その他の身体症状としては、乳房の疼痛や膨満感、頭痛、筋肉痛、腹痛、下腹部の疼痛や膨満感、便秘や下痢、冷えやのぼせ、浮腫(むくみ)、膨らんでいるような感覚…などが見られることがあります。

 

「『睡眠相前進症候群』について教えて下さい」

 

以前同コラムにて「睡眠相後退症候群」という睡眠の「位相」が後ろにずれてしまうことにより、「極端な夜型」になってしまう睡眠障害について説明をさせて頂きました。一方、それとは真逆である「極端な朝型」になってしまう睡眠障害が「睡眠相前進症候群」と言われる睡眠障害です。前者は、比較的若年層や若者に多くみられる一方で、後者は年齢が上がるにつれて起こり易くなり、主に中高年や高齢者の方々にみられる睡眠障害であると言えるでしょう。

 

「睡眠相前進症候群」になると、睡眠の時間帯が、通常の社会生活に適した時間帯よりも前にずれて、夕方頃から眠くなって、夜の9時前に就寝し、まだ暗い早朝の3時頃に目が覚めてしまいます。いわゆる「極端な朝型タイプ」です。高齢者の方に多くみられ、夕方以降の社会生活や娯楽活動を行うことが困難になります。

 

この「睡眠相前進症候群」は、加齢に伴う体内時計のズレが原因で起こります。加齢に伴う変化が原因で、体内時計が少しずつ前に進んでいくそうです。中高年の方は、若い頃と比べて、眠くなるタイミングが1時間ほど早まると言われており、全体的に早寝早起きになります。よって、これらは睡眠薬を使えば治る、というものとは異なります。

 

「睡眠相前進症候群」の場合、「光」に気を付けられる必要があります。早朝の光は体内時計のリズムを一層早めてしまうことになるからです。朝早く目が覚めた時は、カーテンは閉めたままにされたり、ブルーライトカットのサングラスを掛けられたりされて、早過ぎる時間には、太陽の光を浴びないようしましょう。夜は、明るいところで過ごすようにされて、「これ以上は起きているのは辛い」と感じられてから、寝室に行かれるようにされて下さい。

 

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監修者 佐々木裕人(精神科専門医、精神保健指定医)