「もっと知りたい!漢方薬~証をもっと知ろう①~」
医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。
以前【心療内科 Q/A】「漢方を選ぶときはどうやって選べば良いですか?」の記事で漢方を選ぶ時の選び方の一例をご紹介しました。
ただし、あれはほんの入口に過ぎず漢方を選ぶ時は更に細かい分類が存在します。
自分にあった漢方を選ぶこと、自分の状態を理解することは治療においてもとても重要な一要素です。
今回は証を更に詳しく解説していきます。
まず、漢方を用いる東洋医学では中国の易学(えきがく)にある「陰(いん)」「陽(よう)」、森羅万象はどちらかの性質に分けられると言う考え方があります。
どちらかが多すぎても少なすぎても良くなく、相互に働きあいながら健康のバランスをとっていきます。
足りないものは補う、多いものはそぎ落とす、と言うのが基本的な考えかたです。
体内における陰とは、熱を冷まし潤す、力。
陰が不足する、陰虚(いんきょ)の状態になると火照りや渇き、乾燥、充血、イライラの原因となります。
陽はその反対で体を温め、元気よく動かす、熱。
陽が不足する、陽虚(ようきょ)の状態になると体の冷え、活力の低下、内臓機能低下、精神的な落ち込みの原因となります。
そして、前回体質や体系から「証(しょう)」を判断する。とお話させていただきましたが。
ここに更に、病態に関する証である「表裏(ひょうり)」、病気のタイプをとらえる証である「寒熱(かんねつ)」が加わってきます。
「表裏(ひょうり)」とは、①病気の部位、②病気の進行の2つをあらわすものに分けられ①病気の部位は「表」なら体表部(皮膚や体の表面)、「裏」なら内臓全般を指します。
②病気の進行は表から始まり裏のほうに進むと考えられ、例えると風邪なら引き始めの悪寒や頭痛、発熱は「表」
時間経過により現れる吐き気、腹痛、下痢などは「裏」にあてはまります。
急性症状には表が多く、慢性症状には裏が多い。
病気一つを紐解いてもこのように表と裏に分けて考えていきます。
更に表から裏に進行する途中の「半表半裏(はんぴょうはんり)」と言う状態もあります。
続いて「寒熱(かんねつ)」
こちらは病気のタイプをあらわす証で、「寒(かん)」は言葉のまま冷たいものが入り込んで不調が起きている状態。
「熱(ねつ)」は熱いものが入り込んで不調が起きている状態をいいます。
寒気を感じる、顔色が悪いなら寒、火照り、発熱などは熱、と考えると分かりやすいですね。
ここまでで既に4つの新しい証をご紹介していきました。
これらを組み合わせることでその人にあった分類が更に細かく分けられていきます。
例えば前回ご紹介した、「実証(じっしょう)」と今回ご紹介した「熱証(ねっしょう)」のタイプに当てはまる方は「実熱(じつねつ)」と言う証を持つ方になります。
熱は体温維持や新陳代謝機能の調節を担いますが、これが過剰になると発汗、ほてり、体内の炎症症状が起きます。
エネルギーがありすぎて発散しきれず、内側に停滞し体温上昇している状態ですね。
病気や治療と言うと元気が無い状態を想像しがちですが、漢方ではこう言ったエネルギーがありすぎる状態もバランスを改善し健康に導いてくれます。
次回はさらに新しい証をご紹介していきます。
心療内科、精神科において、漢方薬による治療をご希望の患者様。
このコラムを読まれまして、ご自分の現在のご状況として、気になる点がありました方や、興味・関心を抱かれた方は、ご受診をお待ちしております。
出典:現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖症状からチャートで選ぶ漢方薬 杉山卓也著 翔泳社
出典:現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖症状からチャートで選ぶ漢方薬 杉山卓也著 SHOEISYA
参考資料:「Kampo View」https://www.kampo-view.com/