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【医師監修】会社の休職をしたいと悩む方へ。休職制度活用と心療内科受診のポイント解説!

「会社を休職したいと考えているが、どのようにすれば良いのだろうか」

「会社を休職すると、どのようになるのだろうか」

と気になりませんか。

会社を休職するにあたっては、会社が独自で用意している休職制度の活用と、心療内科への受診がポイントとなります。

この記事を読むことにより、会社を休職する方法や、休職のメリットやデメリット、心療内科への受診のタイミング、上司への相談方法などを理解することができます。

会社を休職したいと考えている方や、心療内科を受診するかどうか悩んでいる方は、ぜひ、最後まで読んでいって下さい。

休職制度とは?

休職制度とは、労働者が一定期間、労働契約を維持したまま労務に従事せずに休むことができる制度です。この制度は、労働者が特定の事情により一時的に労働に従事できない場合に役立ちます。休職期間中の待遇について、具体的な取り決めは労働契約書や就業規則などによって定められます。休職制度の目的は、労働者が労務に従事できない期間において、雇用関係を維持しつつ、復帰のための時間や余裕を得ることです。注意点としては、休職制度を設けることは会社の義務として法律に定められているわけではないという点にあります。大阪府によれば、労働契約の締結時、つまり、入社時に休職に関する定めがある場合には明示する義務があるという説明がなされています。

参考:大阪府 休職と休業

https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/6026/00000000/034.pdf

反対に言えば、休職に関する事項を定めていない場合には明示義務もなく、特に法律的に定めなくてはならないという義務もないため、従業員が休職制度を利用するためには、会社が独自の制度として休職制度を従業員に提供している必要性があるということです。就業規則や入社時に交わした雇用契約書を確認し、制度があるのかどうかを確認してください。

社員が休職制度を利用する理由

社員が休職制度を利用する理由には、様々な理由があります。

具体的には、以下のような理由で休職制度を利用する社員がいます。

・私傷病休職

・事故欠勤休職

・起訴休職

・公職就任や海外留学などの期間中に行われる休職

・懲戒休職(出勤停止、自宅謹慎)

それぞれについて解説します。

私傷病休職

労働者が私的な理由により病気や負傷にかかり、長期間労働ができない場合に行われる休職です。この期間中、労働者は労務を提供する義務から一時的に免除されます。目的は、労働者が療養し、復職の可否を判断することです。メンタル疾患などで会社を休業する場合、傷病休職に該当することが一般的です。

事故欠勤休職

傷病以外の私的な事故により、労働者が労務に従事できない場合に行われる休職です。

起訴休職

刑事事件に関連して労働者が起訴された場合に行われる休職で、裁判所の判決が下るまでの期間、労働者が労務を提供することが制限されます。

公職就任や海外留学などの期間中に行われる休職

労働者が公職に就任したり、海外留学などの目的で一定期間労働から離れる場合に行われる休職です。

懲戒休職(出勤停止、自宅謹慎)

労働者の服務規律違反に対する制裁として行われる休職で、出勤停止や自宅謹慎などが含まれます。

休職中に得られる傷病手当金とは?

私傷病で休職する場合、健康保険組合からの支給金である傷病手当金を受け取ることができます。会社によっては、休職期間中の給与を福利厚生制度などで補償する場合もありますが、一般的にはこの傷病手当金が利用されます。傷病手当金は、被保険者が病気やケガで仕事を休み、その間の給与を受けられない場合に支給される給付金です。

傷病手当金を受給するための条件は、以下の通りです。

・4日以上の欠勤: 傷病手当金は、4日以上の仕事に就けない場合に支給されます。

・給与の支払いがないこと: 休んだ期間について給与の支払いがないことが条件です。ただし、給与の日額が傷病手当金の日額よりも少ない場合には、その差額が支給されることもあります。

・支給期間の制限: 支給される期間は、支給が始まった日(支給開始日)から支給期間(実際に支給された期間)を通算して1年6ヵ月の期間を限度としています。

参考:全国健康保険協会 岩手支部

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/iwate/20130830010/R4kamikikensyukai_syobyoteatekin1.pdf

支給金額は、1日当たりの金額 = 【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額】÷30日×(2/3)となります。

正確な金額については、休職に入る前の段階で総務や人事の担当者が伝えることが一般的です。いま貰えているお給料の約60%が支給されると考えましょう。

参考:協会けんぽ 傷病手当金の支給額は、いくらになりますか?

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r307/#q2

休職するメリット

メンタル疾患で休職することには、いくつかの重要なメリットがあります。休職によって回復のための十分な時間を確保できます。この時間を利用して、症状の管理や治療に集中することができます。また、仕事に関連するストレスやプレッシャーから解放されることで、症状の悪化を防ぐことができます。これらのメリットは、休職がメンタルヘルスの回復や安定に向けた重要なステップであることを示しています。

休職するデメリット

休職にはいくつかのデメリットも存在します。まず、経済的な負担が挙げられます。休職期間中も社会保険料(健康保険料、厚生年金)の負担があります。また、休職によって職場での地位が損なわれる可能性もあります。長期間の休職は、職場での影響力が低下し、キャリアの停滞や他の同僚との競争力の低下につながる場合があります。ただし、休職期間中も心療内科で治療を受けることが一般的であり、社会全体的にメンタル疾患の従業員をサポートしようという風潮になりつつあります。デメリットは確かに存在しますが、思い切って休むことも重要です。

休職制度を利用するタイミング

休職制度を利用するタイミングは、以下の通りです。

・長時間労働でストレスを抱えているとき

・会社に行くことが難しいと感じるようになったとき

・仕事への意欲が明らかに全く湧かなくなったとき

・私生活においてもイライラすることが増えたとき

それぞれについて解説します。

長時間労働でストレスを抱えているとき

休職制度を利用するタイミングは、長時間労働やストレスが蓄積していると感じた時です。労働者が心身の健康を損なう恐れがあり、ある程度のストレスや負荷を感じた場合、休職を検討することが重要です。これには、過度な業務負荷、精神的な疲労、身体的な症状や不調などが含まれます。例えば、仕事中にイライラが収まらなくなったり、長く働いているのに仕事が少しも進まないような状態になった時はメンタル不調を疑ってみてください。

会社に行くことが難しいと感じるようになったとき

会社に行くことが難しくなった場合、休職制度を活用するタイミングです。例えば、会社に行こうとすると吐き気がする、玄関から一歩も動けなくなるといった症状が出ている場合です。重要なことは辞めるのではなく、休職をまず検討することです。会社を辞めると、再就職に時間がかかり、経済的に困窮してしまうことも少なくありません。休職して休んで冷静になってから次のことを考えましょう。

仕事への意欲が明らかに全く湧かなくなったとき

仕事への意欲が明らかに全く湧かなくなった場合、休職制度を活用するタイミングです。例えば、仕事場に行っても何もする気がしない、あるいは、パソコンを開いているだけで書類を作成する気がしないといった症状です。仕事に対するモチベーションや興味を完全に喪失し、業務に取り組むことが困難であると感じるようになった場合、休職を検討することが重要です。

私生活においてもイライラすることが増えたとき

私生活においてイライラが増え、日常生活に支障を来たすようになった場合、休職制度を利用するタイミングです。例えばせっかくの休日なのに会社でのミスを思い出してイライラすることや、家にいてもやるべき仕事を思い出してイライラしてしまうような状態です。仕事だけでなく、個人の生活においてもストレスやイライラが蓄積し、心身のバランスが乱れていると感じる時には、一定期間の休職を検討することが重要です。

心療内科に普段から相談しておくべき理由

心療内科に普段から相談しておくべき理由には、様々な理由があります。

ここでは、心療内科に普段から相談しておくべき理由について解説します。

心療内科で自分の状態を把握してもらう必要性があるから

心療内科に普段から相談しておくべき理由の一つは、心療内科で自分の精神的な状態を専門家に把握してもらう必要性があるからです。精神的な問題や心理的な負担がある場合、それらの症状や影響を正確に評価し、適切な治療や支援を受けることが重要です。心療内科の専門家は、精神的な健康状態を詳細に理解し、患者に適切なアドバイスや治療を提供する能力を持っています。定期的な相談を通じて、自分の状態を専門家に報告し、適切なケアを受けることで、精神的な問題に対処し、健康的な生活を送るための支援を受けることができます。

飛び込みで心療内科に診察をしてもらうことは難しい

普段から心療内科で相談をしておく必要性がある理由の一つに、飛び込みでの診療が難しいことが挙げられます。心療内科では予約が必要であり、特に人気のあるクリニックや病院では予約が取りにくい場合があります。そのため、急な症状の悪化や緊急の相談に対応するのが難しい場合があります。定期的に心療内科を受診し、精神的な健康状態を定期的にチェックすることで、状態の変化や新たな問題が早期に見つかり、適切な対処が可能になります。また、定期的な受診によって、医師との信頼関係が築かれ、緊急時や急激な症状の悪化があった場合でも、よりスムーズに対応してもらえる可能性が高まります。そのため、心療内科を受診する際には、飛び込みでの診療が難しいことを考慮し、定期的な受診を心がけることが重要です。

休職時に心療内科の診断書が必要

心療内科に通っておくことの重要性の一つとして、休職時に心療内科の診断書が必要という理由があります。心療内科で定期的に受診し、精神的な健康状態を管理しておくことで、万が一休職が必要になった際に、適切な診断書を提出することができます。休職時には、会社と労働者の権利双方を保護するために、医師の診断書が必要とされる場合があります。特に精神的な問題やストレスが原因での休職の場合、心療内科の専門医が診断書を提出することが求められることがあります。この診断書は、休職の理由や期間、復帰の見込みなどを記載し、会社と労働者双方の権利を守る上で、重要な役割を果たします。

心療内科で話を聞いてもらうことがストレス対策になる

心療内科で話を聞いてもらうことは、ストレス対策として有効です。心療内科の専門家は、患者の心の健康状態を理解し、適切な支援やアドバイスを提供することができます。悩みやストレスを吐き出すことで、気持ちが軽くなり、解決策を見つけやすくなることもあります。また、心療内科でのカウンセリングは、問題解決だけでなく、ストレス管理やリラックス技術の学習、自己肯定感の向上など、総合的なメンタルヘルスケアを提供します。そのため、心療内科での受診は、精神的な健康を保つために効果的なのです。

心療内科でメンタル疾患に対する理解を深めることができる

心療内科を受診することで、自身のメンタル疾患に対する理解を深めることができます。心療内科の専門医は、メンタルヘルスに関する豊富な知識と経験を持っており、患者の症状や状態を正確に評価し、適切な治療や対処法を提供してくれます。また、心療内科では患者とのコミュニケーションを重視し、患者が抱える悩みや困難に対して理解を示し、適切なサポートを提供してくれます。これによって、患者は自身のメンタルヘルスについてより深く理解し、適切な治療や対処法を見つけることができます。

心療内科で病気の再発を防ぐ方法を学ぶことができる

心療内科を受診することで、病気の再発を防ぐ方法を学ぶことができます。心療内科医は、患者のメンタルヘルスの状態やメンタル疾患に悪影響となる考え方のクセなどを見抜き、再発を防ぐための個別のアドバイスや心の健康に良い影響を与える考え方をする方法を提供します。これには、ストレス管理の方法やリラクゼーションテクニック、適切な生活習慣の確立などが含まれます。また、必要に応じて薬物療法やカウンセリングを通じて、再発を予防するためのサポートを提供することもあります。心療内科の受診を通じて、病気の再発を防ぐための具体的な方法を学ぶことができます。

休職をするための7STEP

「どうすれば休職をすることができるのだろうか」と悩んでいる方は非常に多い傾向にあります。

ここでは、具体的に休職をするための7つのSTEPを解説します。

STEP1:心療内科で相談

まずは心療内科を受診し、自身の状況や休職の必要性について医師と相談します。例えば、休職したいのですが、いま自分自身はどのような状況なのでしょうかと聞いてみましょう。適切な治療や休職の必要性について評価を受けます。休職が必要だと判断された場合、診断書を発行してもらってください。

STEP2:会社の上司と相談し、診断書を提出

心療内科での相談後、会社の上司と直接話し合います。状況や理由を説明し、休職を検討していることを伝えます。伝え方としては朝一番誰もいない時間帯に上司が出勤してきたのを見計らって会議室などの個室に上司に来てもらい「実は、休職を考えている」と切り出す方法があります。あるいは、会社に行くことが辛く限界な場合、電話やメールなどで上司に休職の相談をしましょう。切り出しづらいですが、言わなければ始まりません。ただし、休職の原因が上司にある場合、このステップは飛ばして人事に直接休職を申し出る方法もあります。上司はあなたの人事権を保有していますが、人事部もあなたの人事権を有しているため、上司が苦手な方は変則的にはなりますが、その方法をとりましょう。ただし、上司の頭を飛び越えていきなり人事部に相談をした場合、上司が人事部から「部下のことを見ていない。管理監督者としての能力が疑わしい」と叱責される恐れがあります。また、このとき、診断書を上司か人事部に提出するようにして下さい。診断書の提出が、休職制度利用の起点となります。会社に行くことが辛い場合、診断書を郵送する形でも問題ありません。

参考:厚生労働省 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き P2

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-1.pdf

STEP3:上司が人事部に部下の休職について相談

上司は人事部に、部下の休職について相談します。この段階で上司は、休職の手続きや規定について情報を収集します。人事も上司も怒る人は存在しておらず、従業員の健康を気遣います。STEP2で上司を飛ばして人事に相談する場合は、STEP4にいきます。

STEP4:人事と本人が面談

人事担当者と、休職を希望する本人が面談を行います。休職の申し出を正式に提出し、手続きについて説明を受けます。注意点としては初回の面談の段階では上司の話だけしか人事部は聞いていないため、必ず詳細な情報を自分から伝えることです。例えば、何が原因でストレスを抱えるようになったのか、休職の原因となったトラブルは会社に入社する前から抱えていたのかといったことです。注意点としては、自分が不利になるようなことを人事に話す必要性はない、ということです。例えば、企業には安全配慮義務があり、従業員が健康で過ごせるように配慮する義務があります。しかし、入社前から別の会社などで精神疾患を負っていた、と判断されると休職に対する配慮なども変わってきてしまう可能性があります。話す内容には注意を払いつつ、面談をしましょう。最初から人事に相談した場合は、STEP5に行って下さい。

参考:厚生労働省 安全配慮義務

https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1866/

STEP5:休職期間や休職中の生活について決定が人事から本人へ伝えられる

人事の事務処理が完了次第、休職期間や休職後の生活についての決定が本人に伝えられます。いつまで休職できるのか、休職中の連絡方法、傷病手当金についてなど、様々な事項が伝えられます。また、本人が会社と連絡を取ることが辛い場合もよくあるので、その場合は、家族との連絡窓口を教えて欲しいと言われることもあります。

STEP6:休職開始

休職が開始されます。休職期間中も心療内科に通うことは忘れないようにして下さい。出来るだけ仕事のことを忘れてリフレッシュしてください。

STEP7:休職期間満了後は短時間勤務等から復職に向けて動く

休職期間が満了したら、復職に向けて準備を始めます。主治医に復職可能という診断書を書いてもらい、人事または上司に提出します。企業によってはその診断書を確認した上で産業医と面談を行い、復職することになります。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、職場復帰支援プログラムを策定し、短時間勤務や残業を禁止するなどして、負担なく職場に復帰することが望ましいとされています。

参考:厚生労働省 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-1.pdf

実務においても厚生労働省の指針を守って休職制度を運用している企業が多いため、この通りに運用される可能性が高いです。

まとめ

今回は、心療内科の受診と休職手続きについて解説しました。心療内科の受診は精神的な健康管理やストレス対策に重要です。定期的な受診によって、心の健康状態を把握し、適切な支援やアドバイスを受けることができます。また、心療内科でのカウンセリングや治療を通じて、メンタルヘルスに関する理解を深めることができます。休職に関する手続きとしては、上司や人事に対して休職をしたい旨を伝え、休職をするようにしましょう。

 

監修 佐々木裕人(精神科専門医・精神保健指定医)