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「愛着スタイル」と「ストレス対処戦略」

A.

成人後であってもその人の持つ「愛着スタイル」と「ストレス対処法」には密接な関係性があることが知られています。まず、愛着スタイルは、大きく3つのスタイルに分けられます。それが「安定型(安定自律型)」「不安型(囚われ型)」「回避型(愛着軽視型)」の3つです。そして、それぞれ、ストレスに対する敏感さや、反応の仕方が異なってきます。

 

 

Ⅰ「安定型愛着スタイル」の人の特徴とストレス対処戦略

 

 

安定型愛着スタイルの人は、基本的に他者を信頼し、心を開いた関係を持ちます。しかし、相手に依存し過ぎるのではなく、対等な関係性であり、主張すべきことは主張し、折り合いをつけるところは折り合いをつけて、お互いを尊重した関係性を築いていきやすいとされています。不当なことに対しては、時に怒りや攻撃も示しますが、その怒りは問題を解決し、関係をよりよいものにしていくのに役立ちます。怒りや攻撃によって、関係自体を壊してしまうという方向には作用しません。

 

 

このタイプの方のストレスに対する戦略は、感情的になるのではなく、冷静かつ柔軟なスタンスで問題解決を図ることにより、あるいは、問題を前向きに受け入れることによって、ストレスを乗り越えようとさえます。

 

 

Ⅱ「不安型愛着スタイル」の人の特徴とストレス対処戦略

 

 

不安型愛着スタイルの人は、自分が見捨てられる、嫌われる、否定される…等といった不安が強く、相手に過度に依存する一方で、依存している相手に対して、不必要な怒りや攻撃を向けがちです。相手の些細な欠点にも、過剰に非難を浴びせてしまいがちです。そのため、せっかく支えてくれる相手を疲弊させたり、自信を失わせたり、最後には信頼関係を破壊してしまうことにもなりかねません。

 

 

ストレスに対する戦略は、過剰に騒ぎ立てて周囲を巻き込むことによって、周囲の力で問題をどうにかしようとします。加えて、「対象喪失」にも敏感で、大きな影響を受け易いところがあります。しかし、自分一人では、自分を支えられず、支えてくれる他の人を見つけて、すがろうとしてしまいます。

 

 

Ⅲ「回避型愛着スタイル」の人の特徴とストレス対処戦略

 

 

回避型愛着スタイルの人は、心を開いた親密な関係を避け、表面的な関係に終始しようとします。愛着軽視型とも呼ばれているように、人との密接な関係といったものに重きを置かず、たいして重要な問題ではないという態度をとることが一つの特徴です。親との関係や、それ以外の対人関係に問題を抱えていたとしても、「何も問題ない」と思おうとします。

 

 

ストレスに対する戦略も、問題に蓋をすることによって、傷つくことを避けようとします。大きなストレスが存在しているにもかかわらず、そのことに気づいていない場合もあり、気づいた時には、身体の異変にまで至っているということにもなりやすいです。「対象喪失」に対しても、一見無関心に振舞いますが、実際には傷を受けています。そして、対象喪失を繰り返されることで、まずます回避的な傾向を強めることにもまるのです。

 

 

Ⅳ「不安型愛着スタイル」の人が留意すべきポイント

 

上述のように、愛着スタイルによって、ストレスへの耐性やストレスとの付き合い方も異なってきます。恋愛や夫婦関係において安定した関係を維持するためには、ご自身の愛着スタイルと、陥り易い罠をよく自覚されて、日々の生活において気をつけることが大切になります。

 

不安型の愛着スタイルの持ち主にとって、「安全基地(=心身共に安定して寛げる場のこと)」の存在はとりわけ重要なものとなります。成人以降は、安全基地は、親から恋人やパートナーに移っていきます。

 

 

愛着不安の強い人では、ついネガティブに反応をしてしまうのが癖になっている場合があります。頼っているのに、つい相手を貶してしまうのです。感謝より不満を抱きやすく、些細な問題にも非難や攻撃を浴びせてしまいがちです。些細な不満や問題にも過剰反応しやすく、他に良い点があっても、全て否定する方向に向かいやすくなります。

 

 

母親に頼りながら、母親が思い通りに安心感を与えてくれないと、母親に怒りをぶつけてしまっていた幼い頃のパターンが尾を引いてしまっているのです。けれどもそれは、自分自身の足に鉞(まさかり)をふるっているようなものです。せっかくその人を支えてくれている存在を失ってしまうことにもなりかねません。

 

 

ご自分の不安やストレスを周囲にぶつけてしまうというネガティブな反応パターンを自覚して減らし、ポジティブな反応や、相手の欠点を受け入れて許すという寛容な態度を心掛けられることで、対人関係やパートナーとの関係性も安定されてくることでしょう。

 

 

回避型愛着スタイル」の人が留意すべきポイント

 

 

回避型の愛着スタイルの方は、興味のあることを話せる人が1人か2人いれば十分だと感じられていることでしょう。このタイプの方は、親密な関係や家族的な繋がりを、むしろ重荷に感じてしまいます。そのため、家族サービスといったことにも消極的で、面倒に感じてしまいがちです。安定型愛着スタイルの方が、心からそういったことを楽しめるのとは、大きく違っています。

 

 

回避型の方は、他人に頼ろうとはされませんが、他人が困っていても無関心なところがあります。そうした態度が「冷たい」と受け止められてしまい、その結果として孤立を招くことも起こり得ます。

 

 

それは「配偶者」となる相手にとっても同様です。回避型の方を配偶者(あるいは、恋人やパートナー)に持つと、自分が放っておかれるように感じ、そのことでストレスを感じてしまいやすくなります。そして、それが積っていくと、回避型の方はご自身が自覚される前に、配偶者が去っていてしまうという道を歩んでしまうのです。

 

 

対人関係は、相互的・双方向的なものです。手入れを怠ってしまうと、怠った分は必ず自分に返ってきます。そして「安全基地」がもはや安全基地ではなくなり、危険な場所となってしまってからでは遅いのです。

 

 

良い仕事を成し遂げるためにも、良い安全基地を維持し、そこで上手く支えられることが必要です。安全基地を保つためにも、メンテナンスを怠らないことが大切です。パートナーがご自身にとっての安全基地であって欲しいと思われるのであれば、あなたご自身がパートナーにとっての安全基地となるよう努力されることが肝要なのです。

 

 

Ⅵ「安全基地」とは何ですか?

 

 

私たちが追い詰められてしまわない為に大事なことの一つは、「安全基地」を持つということです。「安全基地」とは、「困った時や弱った時に、あなたが助けを求めたり、心を慰めてもらえたりする存在のこと」を呼びます。幼い子どもの時の大抵の方の安全基地は「親」です。そして成長されるにつれて、親以外の存在にも、安全基地を見出すようになります。

 

 

但し、多数の知り合いや友人を持つことが、必ずしも「安全基地」を持つことになるとは限りません。友達は沢山いるけれども、本音が言えない、うわべだけの付き合いの人ばかり、ということも少なくないからです。何でも話せる、自分の弱い面や未熟な面を見せても大丈夫な関係こそが大事なのです。何でも話すことができる相談相手が1人いるだけで、自殺のリスクは半分に減少すると言われています

 

 

大人になってからは、その人の安全基地となるのは、配偶者やパートナーであることが多くなります。生活を共にする配偶者(パートナー)が良い安全基地となってくれると、仕事も頑張れる上、ストレスも減ります。しかし逆に、仕事のストレスを浴びた上に、私生活でも安全基地がないと、ストレスは溜まる一方です。

 

 

あなたの「安全基地」は誰(どこ)ですか? 安全基地というものを、外から与えられるもの、努力しても自分ではどうしようもないもの、と思われているかもしれません。確かに、小さな子どもの時は、そういった側面があるのは事実です。しかし、大人になると、周囲や誰かのせいにばかりしてはいられません。何故なら、安全基地というものは、自分で育て、手に入れていくものであり、一度手にいれても常にメンテナンスをしていく必要があるからす。

 

 

幸運にも、あなたを受け入れ愛してくれる相手(パートナー)に恵まれたとしても、その幸運に甘えてばかりいると、そのうち愛想をつかされていまします。パートナーシップとは、相互的な、持ちつ持たれつの関係性です。一方的に「私の安全基地になってよ」と要求するばかりでは、相手も疲れたり嫌気がさしたりしてしまいます。相手に安全基地となって欲しいのであれば、自分も相手の良い安全基地となる必要があるのです。

 

 

 

当院では、うつ病不安症をはじめ、

躁うつ病(双極性障害)、適応障害、パニック症、

睡眠障害(不眠症)、心身症、自律神経失調症、

摂食障害(過食症)、統合失調症、更年期障害、

月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)、

大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、

過敏性腸症候群(IBS)、強迫症、ストレス関連障害など、

皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、

心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

また当院では、診察と一緒に、カウンセリング及びショートケアを実施しております。カウンセリング、またはショートケアをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。

 

 

今後とも、医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。

 

 

★参考文献:岡田尊司著『ストレスと適応障害』

★参考HP:厚生労働省子ども・子育て支援推進調査研究事業