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「逆説的不眠症」と「不眠症」について

睡眠状態誤認(逆説的不眠症)とは?

 

 

厳密な「不眠症」をお話する前に、「睡眠状態誤認」と呼ばれる現象について記載させて頂きます。これは「逆説性不眠症」とも呼ばれています。

 

 

当事者ご本人にとっては、「一晩中よく眠れなかった」「一睡も出来なかった」という認識なのですが、電極などを使って客観的に観測すると、きちんと眠っている状態が示されるのです。概して、ご本人が感じているよりはずっとよく眠られており、時には完全に熟睡されていることさえあります。

 

 

最近ではウェアラブルウォッチや、スマートフォンのアプリなどでも、厳密さには欠けるかもしれませんが、ある程度は測ることが出来るようになってきていますので、「不眠症」を疑われた際には、まずそういった簡易測定をされてみられるのも良いでしょう。

 

 

但し、そこで「睡眠状態誤認(逆説性不眠症)」の可能性が疑われたとした場合、治療は要らないという訳ではありません。この症状は、心気症の一種と考えらえており、それこそ心療内科や精神科領域での治療が必要とされてくるものだからです。「測定的では眠れているから大丈夫」とは安易に考えない方が良いでしょう。

 

 

そして、厳密な意味での「不眠症」の場合、その定義は、第一に「睡眠を発生させる能力が不十分であること」、そして第二に「自分自身に睡眠の機会を十分に与えているにも関わらず眠れないこと」が含まれてきます。つまり、十分な睡眠時間(睡眠機会)をとっても、質量ともに不十分な睡眠しか得られていない状態であり、上記の「睡眠状態誤認(逆説性不眠症)」とは異なることが分かります。

 

 

Ⅱ「不眠症」の具体的な診断基準とは?

 

 

そして、その不眠症も、ある分類法によると、「入眠障害型」「睡眠維持障害型」に分けることが可能です。「入眠障害型」では、中々寝つけないという症状、「睡眠維持障害型」では、夜の間に何度も目が覚めるという症状になります。入眠障害型と睡眠維持障害型は、どちらかだけの人も居れば、両方の症状が重複されている人も居ます。

 

 

具体的には、以下のような症状が出ていた場合、「不眠症」である可能性はかなり高いと言えます。その時は早めに医療機関を受診されることをお勧めします。

 

 

  1. 睡眠の量、または質に不満を持っている(例:寝つきが悪い、眠りが浅い、夜中に何度も起きる、早朝に目覚めてしまう…等)。
  2.  日中も極度のだるさや眠気が残る。
  3. 週に3日以上不眠の状態になり、それが3ヵ月以上続いている。
  4. 不眠症と似た症状が出るような心身の病気には罹っていない。

 

 

上記の診断の基準において、症状の出る頻度や長さ(期間)が示されているのは、睡眠の若干の不調は誰しも経験することがあるからです。大抵の場合は、直近の仕事のストレスや人間関係といった明確な“気になり”があることが多いでしょう。そして、その“気になり”が解決、あるいは解消されることで、不眠の症状も自然と消えていきます。

 

 

一方、上記の診断基準を満たすような慢性的な不眠症も決して少なくありません。道ですれ違う人の内、およそ9人に1人が医学的な不眠症と診断されます。また、診断基準を少し緩め、疫学的なデータだけで考えた場合、3人に2人が、寝つきが悪い、夜中に目が覚めるなどの症状を週に1回のペースで経験している可能性すらあるのです。

 

 

慢性的な不眠症の最も大きな要因として、精神的な要因が挙げられます。それは、悩みや心配事、落ち込みや不安です。現代社会のスピードに追い立てられ、情報の洪水で溺れている私たちにとって、布団やベッドの中だけは、何も考えずにすむ場所ということになっていますが、中々そう上手くはいきません。横になった途端に、今日の出来事や明日やるべき事柄が次々と頭に浮かび、後悔したり心配したりしてしまいます。時には、まだ起こるかも分からない遠い先の未来のことまで気に病んでしまいます。このような状態で、睡眠に向かう穏やかな脳波を出し、ひと晩ぐっすり眠るのは至難の業でしょう。

 

 

交感神経系の過活動と不眠

 

そして、これらの精神的な問題と密接に関わってくるのが、「交感神経系」の過活動にあると言われています。交感神経系が過活動になることで、脈拍が速くなり、血流が増え、代謝率が上がり、コルチゾールなどのストレスホルモンが分泌され、脳は活性化されてしまいます。そうすることで、ますます私たちは眠りにくい状態になっていってしまうのです。ある意味、不眠症の人は、脳がずっと緊張状態にあると言っても過言ではないのです。

 

 

ノートパソコンを閉じてスリープモードにしたと思っていたのに、気が付いたらずっとスリープしていなかったという経験は、恐らく誰にでもあるでしょう。その間パソコンは、ずっとスクリーンがオンで、ファンも回りっぱなしの状態ですが、こうなる原因は、大抵の場合、まだ何かの処理が続いていてスリープできないことにあります。

 

 

近年の研究報告によると、不眠症の人の脳内でも、これと同じような状態になっていることが分かってきました。感情や記憶のプログラムがずっと処理中で、いくら目を閉じても、スリープモードに入れないのです。交感神経系の過活動と、感情、記憶、注意を司る脳の間には、直接的な繋がり(リンク)があります。よって、この肉体と脳の相互作用におより、さらに緊張状態が高まり、結果として眠れなくなってしまうのです。

 

 

当院では、不眠症(睡眠障害をはじめ、

うつ病、躁うつ病(双極性障害)、パニック症、

不安症、適応障害、心身症、自律神経失調症、

摂食障害(過食症)、統合失調症、更年期障害、

月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)、

大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、

過敏性腸症候群(IBS)、強迫症、ストレス関連障害など、

皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、

心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

また当院では、診察と一緒に、カウンセリング及びショートケアを実施しております。カウンセリング、またはショートケアをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。

 

 

今後とも、医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。

 

 

★参考文献:マシュー・ウォーカー著『睡眠こそ最強の解決策である』

★参考HP:厚生労働省『e-ヘルスネット 不眠症