重症なら、一時的に薬の助けを借りることも
パーソナリティ障害のために、うつ状態や強い不安感に陥っていたり、衝動的な行動をコントロールできない時には、薬の助けを借りて一時的に症状を和らげます。薬には「今現在の辛さ」を一時的に和らげることで、回復への歩みに取り組み易くする効果があります。
ただし、薬はパーソナリティ障害を根本から改善させるわけではありません。回復に向かえるよう、つらい状況を一時的に取り去るのです。パーソナリティが健康なものになっていくと辛い症状は自ずと減っていきます。
パーソナリティ障害では、不眠の訴えが出ることもよくあります。そして、他の症状が和らげば、不眠も軽くなっていきます。眠れないことを恐れずに、横になって身体をリラックスさせるだけで意味がある、と考えましょう。また、あれこれ考えるのは、昼間にするよう心がけます。
もし薬が処方がされた場合、以下の3点に留意されると良いでしょう。
➊「飲み方を守る」:飲む回数や飲む時間をきっちり守ります。また、飲む時は水か白湯で飲みましょう。アルコールやコーヒーなどで飲んではいけません。
➋「飲む量を守る」:処方された量を必ず守りましょう。飲み方を守れないなどのトラブルがあると、1~2週間の短いスパンでしか、以降の処方がされなくなってしまう場合もあります。
❸「疑問はしっかりと解消しておく」:副作用や他の薬との飲み合わせなど、気になることは医師や薬剤師に訊きましょう。効いてきたと思っても勝手にやめてはいけません。そのことで思わぬ副作用が出ることもあるので、自己判断は禁物です。
最重症なら、入院が検討されることも…!
興奮が鎮まらない、大量に薬を飲んで意識がない等の場合、入院が検討されることがあります。入院が検討されるケースは大きく2つに分かれます。一つ目のケースは、暴力や自殺企図などの差し迫った危険がある場合です。暴力がやまない、本人の興奮が激しいなど、家族だけでは対応しきれない場合のほか、自殺企図や大量服薬で健康状態が心配な場合は、緊急での入院が必要です。その際、入院に本人の同意が得られなければ、精神保健指定医の診察と保護者(または市区町村長)の同意のもとで入院することになります。
もう一つのケースとして、「治して欲しい」「家族から離れたい」などの理由で、本人が入院を希望される場合もあります。但し、この場合は、受け入れられる医療機関は限られてきます。
いずれにしても、入院をされた場合は、まずは興奮を鎮める、身体のケアをするといった優先度の高い治療から始まります。その後、うつ状態や気持ちの不安定さといった問題を解決していきます。入院期間は個人差がありますが、1ヶ月弱の短期入院から、3ヵ月程度の中期入院が一般的です。
入院中は、医師や医療スタッフとの関わりを通じて、本人が普段の対人関係の歪みに気が付くことがあります。家族と離れ、見知らぬ人と集団生活を送ることが、長い目でみればプラスになる場合もあります。また、緊急で入院が必要な場合は、それだけ抱えている問題が大きいということでもあり、入院がキッカケで医療に繋がるケースも少なくないので、当然ながら、退院後も外来での治療を続けることが必要になってきます。
パーソナリティ障害を治す上では、入院はあくまでも一時的なものとして捉えます。退院後は、入院の引き金になったトラブルへのケアを中心に外来での治療に切り替わります。その際にも、入院中と同様、「自分の苦しさは自分で治す」という意識を持つことが大切です。
時としてご家族は「入院すれば何とかなる」と思い込み、過剰な期待をされることもあります。そして退院後に「入院した効果はなかた」とがっかりする家族が多いようです。しかし、繰り返しになりますが、入院は緊急時にやむを得ず取る、治療の一つのプロセスであり、すぐに回復に結びつくものではありません。長い目で本人を見守って下さい。
このコラムを読まれまして、気になる点がありました方や、
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Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
参考引用文献:市橋秀夫監修『パーソナリティ障害』(講談社)