以前、当院のブログ「自己愛性パーソナリティ障害ってなんですか?? Ⅱ」において、自己愛性パーソナリティ障害のある人が生きづらいのは、いつも自分が自分以上でないといけないという強迫観念があるからであり、「等身大の自分」を作っていく大切さに気づくことが、回復の始まりになる旨を記載させて頂きました。本日はその続きとなります。
「等身大の自分を作ろう」と言っても、すぐに結果が現れるような効果抜群の方法があるわけでがありません。そもそも等身大の自分とは何かが分からないと作れません。
では、発想を逆転させて、等身大の自分でないとできないことから始めてみてはいかがでしょう。具体的には、「地道な努力を続けること」「結果よりもプロセスを大切にすること」「外的価値より内的価値を重視すること」です。つまり、これまで自分が目を向けてこなかったことこそを始めるのです。
等身大の自分を育てるために
万能と無能の両極端から自分を真ん中に寄せて「等身大の自分」を育てましょう。
★STEP1「小さなことからやってみる」➡仕事や勉強では、今まで見向きもしなかったような基礎や基本から、丁寧に取り組んでいきます。失敗しても構いません。少しずつ、現実的で身の丈に合った目標が見つけられるようになります。
★STEP2「内的な価値観を育てる」➡内的価値とは、他人から見える価値ではなく、自分の中にある価値のことです。小さなことをコツコツ積み重ね、達成感や遣り甲斐、充実感といった感覚を育てていきます。数字や量で評価できないことが世の中にはあるのだと認識しましょう。それこそ、相手との愛情、信頼などはその最たるものだとも言えるでしょう。
★STEP3「上昇ではなく前進を目指す」➡上昇とは今の次元を突き破って、新しい賞賛のステージに入ろうとすることですので、墜落がつきものです。前進とは、現実を踏まえ、前に進むことです。転んでも立ち上がり、また歩き出せます。
★STEP4「時にはうまくいかないことを認める」➡ひとつ失敗をしても、すべてが終わるわけではありません。うまくいかない時に「しかたない」と割り切ったり、過去の失敗に学ぶようにします。「自分には出来ることもあるし、できないこともある」「それほどすごくないけれど、それほどダメでもない」という感覚を持てるようになりましょう。
★STEP5「世の中そう捨てたものではないと考える」➡コツコツ努力し、失敗に学ぶことで、考え方に柔軟性が出てきます。成功か失敗かだけではなく、自分も世の中も、たいしたことはないかもしれないが、そう捨てたものでもないと感じられるようになります。
本人も家族もルールを守る
家族の対応は「ルールをお互いに話し合って決め、言いなりにならないこと」です。家族や周囲の人は、しばしば本人の激しい怒りや暴言などに、へりくだって従う一方になっていたり、逆に威圧的に接っしていたりなど、偏った対応に陥りがちです。まずは家族間でよく話し合ってみて下さい。そしてその決めたルールを一貫して守ることが肝要です。
問題行動を恐れてルールをなし崩しにしたり、その時々で対応がぶれると、ルールの意味が無くなってしまいます。家族がルールを守ることが、皆でプロセスを大切にすることでもあるのです。ルールを決める際は、家族と本人が皆で話し合い、全員の同意を得ることも忘れないで下さい。
そうはいっても、一度に沢山ルールを作っても、結局は何も守れずに終わってしまうことも起こり得ます。その時、本人も含めた家族みなが、一番困っていることにターゲットに絞り、具体的な内容に落とし込むことも大切です。
本人の話にきちんと耳を傾けることも欠かせません。否定をしたり説教をしたりしようとするのではなく、あくまでも本人を分かろうとする姿勢が欠かせません。過去は変えられません。未来も不確かです。しかし、「今現在」は自分たちの手で変えることができます。「過去と他人は変えられない」ということを忘れないで下さい。相手を変えようとするのではなく、自分が今できることを考えて、話し合いましょう。
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Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)
参考引用文献:市橋秀夫監修『パーソナリティ障害』(講談社)