コラム
News

【医師監修】パーソナリティ障害は重なることがあります!!

境界性パーソナリティ障害と一口に言っても、ベースにある性格や素質、背景などにより、その症状の現れ方や活動レベル、行動様式は様々です。当然、対応の仕方も、それぞれの特性や背景によって微妙に異なってきます。今回は、境界性パーソナリティ障害のベースに、強迫性の強さがあるケースについて言及してみようと思います。

強迫性の強いタイプ~妥協できない優等生

生真面目で、潔癖で、妥協できない性格は、程度の強さによっては「強迫性パーソナリティ障害」と呼ばれます。この傾向を持つ人も、しばしば境界性パーソナリティ障害の状態に陥ることがあります。このタイプの場合、ある時期まで、親の言いつけによく従い、優等生として過ごしていることも少なくありません。幼い頃は、頑固で手を焼くこともあったかもしれませんが、学年が上がるにつれ、勉強や一芸に秀で、真面目に頑張っていたという経緯がもっとも典型的なパターンになります。場合によっては、幼い頃に手が掛かったことは忘れられて、いい子で優等生の印象しか残っていないこともあります。

 

 

自分が決めたことは、やり抜こうとする努力家であり、滅多に弱音を吐かず、本心を言うよりも、親が安心するように振る舞います。人に対しては緊張や不安が強い方で、気軽に甘えるというよりも、怒られたり叱られたりしないように、予め気配りをして行動します。自分に厳しく、完璧を求め過ぎ、それが出来ないと、焦ってしまうところがあります。自分の責任や務めを果たすことを重んじ、いい加減なことは気持ちが許しません。きちんと出来ないと、気持ちが悪く、そんな自分に嫌悪感や罪悪感を抱くこともあります。

 

 

このタイプの人が、境界性パーソナリティ障害になると、周囲は、別人のように変わったとか、まったく性格が逆転したとった印象を持ちやすいです。しかし、実際には、本人の長年つもりに積もった無理が爆発しているのです。

 

 

このタイプは、例外なく、きちんとした両親に育てられています。愛情もあり、躾もきちんと行われており、どちらかというと厳しく育てられていることが多いです。

 

 

逆に言えば、きちんと育てられ過ぎています。子どもは「よい子」になることを求められ過ぎて、がんじがらめの中で育っています。言い換えれば、子どもは親に強く支配されています。親の価値観や期待が優先され、子ども自身の本音の気持ちや願望には、あまり関心が向けられていません。親は子どもにとっての最善の道が分かっていると思い、先にレールを敷き続けてきました。子どもは、それに沿って進んできたのです。親は本人の思いを聞いてきたと思っていますが、実は知らず知らずの内に、都合よく誘導し、子どもも親の期待に沿うように振舞ってきただけなのです。

 

 

いけないことや失敗に対しても、親は厳しい目を向けてきました。よって、子どもは失敗することは良くないこと、恥ずかしいことなのだと感じ、完璧に振る舞わないと、ダメになってしまうという思いに囚われやすくなります。勤勉な努力家で、怠けたり、決まりを破ったりすることに対して、罪悪感を抱きやすくなります。それらも実は、親から長年言われ続けたことが染みついた結果ですが、そのことはすっかりと内在化して血肉となっており、親から植え付けられた自覚することは、殆どありません。

 

 

このタイプの人は、本音を言うことを封じられてきたため、自分の気持ちを言えないということが多いです。自分の本心ではなく、決まりや指示、与えられた目標、相手の期待に従って行動し続けた結果、自分は本当は何を望んでいるのか、分からなくなっていることが非常に多いのです。

こうした子どもが、思春期、青年期、成人期を迎えた時、与えられた目標や価値観に対して違和感を覚え始めます。それは、本来の自分を確立しようとする自然な営みなのですが、親には、それが本来の路線からのドロップアウトや自分たちの期待に対する裏切りのように思えてしまうことがあります。本人自身も、そのことが分かっているだけに、迷いや不安を抱えます。今までやってきたことに疑問を感じつつも、さりとて新たに自分をイチから築き直していく自信もないのです。

 

 

勤勉だった子どもが、急に投げやりな怠け者になり、これまで見向きもしなかったような悪いことに手を染めたり、親を失望させることをし始めます。親との葛藤が、事態をさらに深刻なものにします。これまで、順風満帆に見えただけに、アイデンティティ崩壊の危機は深刻なものになります。

 

 

このタイプの人が、境界性パーソナリティ障害をきたす場合には、こうしたことが背景要因にあることが多くみられます。また、このタイプには、摂食障害(拒食症を伴うことが少なくないのも、完璧主義傾向や人の評価を気にする傾向との関係性が指摘されています。

「拒食」の要素とは?

「拒食」の要素を一言で言えば、体重を増やすことについての恐怖です。拒食症がどんな時に発症するか、というタイミングには多くの人に共通点があります。簡単に言うと、「実際の生活でそれまで通りのやり方が通用しなくなり、遭難したような気分になっているとき」です。

 

 

拒食症になる人は、基本的に「自分で努力するタイプ」です。人に頼ることは苦手で、より良い結果を出そうとします。このやり方は、思春期頃までは通用することが多いでしょう。勉強を頑張れば良い成績をとって褒められ、「いい子」にしていれば基本的には好かれます。

 

 

しかし、思春期以降に入ってくると、そうはいかなくなってきます。進学した学校、入社した会社によっては、どれほど頑張っても、かつてほどの好成績や高評価をおさめるのが難しくなってきます。また「いい子」にしていても必ずしも好感を持たれるとも限らなくなってきます。却って「いい子」ぶりが鼻について嫌われてしまうことすら起こり得ます。

 

 

こういう時は、ある意味では本人なりのルールが崩れてしまった、と言っても過言ではありません。「頑張れば報われる」「いい子にしていれば好かれる」というルールが通用しなくなるわけです。その代わりに新しいルールが見つかるわけでもなく、自分は人生をコントロールできなくなってしまった、と感じるのです。その不安を何とかするために頼るのが「拒食」という手段なのです。しかし、この方法は最終的には、安心感は与えず、より強い恐怖心へと変貌してしまうのです。

 

 

このコラムを読まれまして、気になる点がありました方や、
興味・関心を抱かれた方は、どうぞ当院まで、
お気軽にお問い合わせください。

 

当院では、境界性パーソナリティ障害をはじめ、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
うつ病、躁うつ病(双極性障害)、不安症、
適応障害、ストレス関連疾病、睡眠障害(不眠症)、
パニック症、自律神経失調症、冷え症、摂食障害、
月経前症候群、強迫症、過敏性腸症候群、心身症など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

参考引用文献:岡田尊司著境界性パーナリティ障害水島広子著「拒食症」「過食症」の正しい治し方と知識