四季の過ごし方
二十四節気について
皆さんは「二十四節気」と言うものをご存知ですか?
二十四節気は節分を基準に一年を24等分して約15日ごとに分けたものです。
「春分」や「夏至」などはこの二十四節気に含まれています。
この、二十四節気を知りその季節の特徴と体調の変化を理解すること。
また、食材選びに活かすことは漢方。
すなわち、漢方薬、薬膳などの「養生学」に繋がっていくのです。
以下が二十四節気の名前と時期です。
春の養生
まず、春は五行説で言う所の「木」にあたる季節です。
木は「生長、発展、のびやか、円滑」などの意味合いを持ちます。
この季節に不調が起きやすいのは「肝」
ここで言う「肝」とは肝臓では無く、「気血水」の「血」の貯蔵と調節。
そして、「気」を巡らせる働きを持つ五臓の一つであり。
自律神経や、情緒に影響を大きく与えます。
そのため、春は情緒不安定になりやすい→ストレスを感じやすく季節なのです。
この「肝」に生じやすい不調、高ぶりに影響が出るのは「脾」
「脾」は消化吸収、水分栄養の代謝を担います。
「肝」と相克関係、相手を抑制させる関係にある「脾」は「肝」の高ぶりにより弱くなってしまい。
そのため、春は胃腸が弱くなる季節でもあるのです。
立春
節分の翌日、暦上での春の始まりです。
陰陽説の「陰」が減り「陽」が増え陽気も暖かくなるのがこの時期。
陽気は安定しても、いわゆる「季節の変わり目」なので心身ともに不安定になりやすい時期でもあります。
切り替える際は「ゆっくり」と、季節に体を慣らしていくことが肝心です。
また、春全体に言えることですが立春は「風邪(ふうじゃ)」と呼ばれる邪気が起こりやすい季節。
風邪によって冷えや熱が起こり、感冒症状(頭痛、めまい)を引き起こすことも。
更に、風は花粉も連れてくるのでこの時期は加えて花粉症に悩まされる方も多いでしょう。
風邪には葛根湯?
漢方薬では感冒は初期、中期、後期などの経過期間、体力などを考慮して複数の物から適したものを選びます。
今回お話している立春の風邪の冷えによって引き起こされているとみられる感冒は「風寒」と言う種類になります。
風邪の引き始めに葛根湯、と言いますが。
その名の通り葛根湯は感冒初期の体力的な消耗が少ない時に使用する漢方薬です。
ただし。
汗をかいておらず、肩こり、緊張性頭痛がある場合…葛根湯(かっこんとう)
汗をかいていて、肩こり、緊張性頭痛がある場合…桂枝湯(けいしとう)
汗をかいておらず、悪寒、発熱が強く、咳、関節痛がある場合…麻黄湯(まおうとう)
汗をかいておらず透明な鼻水や痰が出ている場合…小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
と、風邪の症状によっても選択肢が様々あります。
自分の感冒に適した漢方薬を選択出来ると、風邪の引き始めをより早く乗り切れるかも知れないですね。
風邪の引き始めは「からしな」
この立春の時期に旬の素材、からしな。
旬の素材はその時期に体に不調をきたしやすい部分を補ってくれる食材が豊富です。
これは、薬膳が日本で生まれ、日本人に合うように作られた養生学であることも理由の一つです。
からしなは五味の辛、五性の温を持つ食材。
そのため、風邪の連れてきた体の冷えを体内から追い払い。
冷えが原因の腹痛や食欲不振にも効果があります。
食べる時は炒めるだけ、茹でるだけでOK。
味付けも火を通したからしなに醤油を混ぜるだけで美味しく食べられます。
アクセントとしてかつお節があるとより美味しいですね。
花粉症はタイプ別に
花粉症は冷えタイプと、熱タイプでおすすめの食材が異なります。
冷えタイプは水っぽい鼻水、くしゃみが出るタイプ。
熱タイプは目の充血、肌のかゆみがあるタイプです。
冷えタイプの方は、身体の冷えを取る食材がおすすめです。
春が旬の食材なら「玉ねぎ」がおすすめ。
この時期の玉ねぎは秋の旬のものより体を温める効果が高いとされています。
そのため、熱タイプの方が食べると症状が強まってしまう可能性があるので逆に避けた方が無難です。
冷えを解消するのであれば更に体を温める効果のある食材。
例えば、鶏肉やエビなどと一緒に調理したり。
調理方法を暖かいスープにしてみるとより体を温めてくれるでしょう。
熱タイプの方は逆に熱を冷ます食材がおすすめです。
春が旬の食材なら「たけのこ」
また、このたけのこはイライラも抑えてくれるので春の不調でストレスがかかりイライラしてしまうなんて方にもおすすめです。
たけのこは、かつお節、ごま、梅、わかめと和え物にしやすい食材が豊富。
ご飯と一緒に炊いて炊き込みご飯にすれば主食としても楽しめます。
雨水
立春で増え始めた陽気がさらに活発になっていく時期です。
その分波に乗って活動的になる方が出る一方、変化に追いつけず体が弱る、またはイライラなどの精神的な不調を感じやすくなる方も増える時期です。
この時期は「肝」を特に大事にしてあげることがポイント。
実はこの「肝」はイライラにとっても弱いのでイライラを感じるとすぐに弱ってしまいます。
イライラを回避することは難しいことです。
イライラしやすい季節だからこそ、その分多くリラックス出来る時間を取り入れましょう。
仕事や家事、生活のちょっとした隙間でストレッチを挟むなどでも十分にリラックス効果があり、気持ちの切り替えにも役立ちます。
イライラに効く薬ってあるの?
どんなにリラックスを挟んでも、イライラしてしまうことは誰にでもあります。
このイライラにどういった症状が一緒に出ているかで漢方薬も選択肢が広がってきます。
イライラ+胸脇部のつかえ、腹部の張り…四逆散(しぎゃくさん)
イライラ+精神不安定、ため息、月経周期不順…加味逍遥散(かみしょうようさん)
イライラ+慢性頭痛、めまい、肩こり、高血圧…釣藤散(ちょうとうさん)
イライラ+強い熱感、充血…黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
イライラ+胃部周辺の張り、便秘…大柴胡湯(だいさいことう)
イライラ+激しい便秘…大承気湯(だいじょうきとう)
と、まとめてみるとイライラの症状を呈する状態がとても多いことが分かりますね。
そして、「イライラ 漢方薬」で検索するとトップに出てくる漢方薬が「抑肝散」、「抑肝散陳皮半夏」です。
この二つの違いは「陳皮半夏」の部分の生薬が含まれているかいないかで陳皮半夏の方がより体力が低下し症状が慢性化している方に使われます。
これらの漢方薬はストレスをため込み神経が興奮してしまう方に使用されます。
神経が興奮してしまう→イライラ、と言う解釈です。
イライラが止まらない、ストレスが溜まりやすい、ストレスが溜まっているのは分かっているが発散が上手く出来ない、と言う方におすすめの漢方です。
お体の不調よりもイライラが強い方はまずこの抑肝散から始めてみても良いかも知れません。
春菊の香りでリラックス
イライラにおすすめの春の食材は「春菊」
独特の香りを持つ春菊はその香りもリラックス効果を高めています。
また、胃腸を整える効果もあるためこの時期の胃腸の弱まり+イライラにぴったりです。
また、精神不安定には青(緑)の食材が効果的。
春の食材ですと、キャベツ、セロリ、ブロッコリーなど。
春菊の香りが苦手な方は代わりに青の食材を取り入れてみても良いかも知れません。
「肝」に効果のある食材は?
では、この時期に大切な「肝」に効果のある食材をご紹介します。
ここで言う効果がある、と言うのは「帰経」と表現します。
「帰経(きけい)」とは、食材が優先してどの五臓に働くかを示します。
肝に帰経する春の食材は「セロリ」
一つ前の項目でもお伝えしましたが、精神不安定に効果のある青の食材のため体内の余分な熱を冷ます。
すなわち、イライラ、怒りなどの感情を落ち着かせることが出来ます。
また、体内の余分な水運を取り除く作用があるためむくみや頭痛などの症状改善にも効く食材です。
春菊と同じように特有の匂いにはストレス緩和効果もあり。
また、実は茎よりも葉の方が栄養成分が多く含まれているため、食べる時は葉っぱまで美味しくいただくのがおすすめです。
啓蟄
この頃になって来ると実際の気温も春に近づいて暖かくなってきます。
ただし、その分朝晩の冷え込みとの寒暖差が激しくなる時期です。
外気温に合わせ、身体は体温調節を行いますがこの体温調節を行っているのは自律神経。
つまりこの時期に弱まりやすい「肝」が担っている部分です。
弱まりやすい時期に、さらに追い打ちをかけるように寒暖差を感じることで調整に混乱が生じ心身ともに負担がかかりやすい時期なのです。
また、この啓蟄の時期は花粉症などのアレルギーも悪化しやすくなります。
「肝」の不調でメンタル不調が起きた時は
「肝」の機能が低下することで不調が出た場合、イライラもそうですが落ち込みなど憂うつ感も同時に感じる場合があります。
そのような場合には漢方薬の使用も効果的です。
そう言った「肝」の不調から出てくるメンタル面の不調でよく使われるのが「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」です。
イライラ、落ち込みなどの憂うつ感以外にも動悸、不眠などにも効果のある漢方薬で。
この漢方薬に含まれる生薬である柴胡(さいこ)、黄岑(おうごん)は自律神経を調整してくれる働きがあります。
気分安定には「レタス」
では、こうしたイライラと同時に落ち込みを感じる時。
どういった食材を選ぶと効果的なのでしょうか?
おすすめの食材は「レタス」
これも青の食材の一員ですね。
レタスをおすすめするのはレタスの五味に起因しています。
レタスは「苦」と「甘」を併せ持つ食材です。
苦みにはイライラ、などの興奮を抑える効果が。
甘味には気分を穏やかにする効果があります。
そのため、両方を併せ持つレタスはストレスを和らげてくれる食材と言えるでしょう。
また、レタス自体もビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富で栄養満点。
生のままだと内臓を冷やす可能性があるので、冷え性の方は火を通してから召し上がってください。
花粉症対策は身体のバリアを回復
特に皮膚や粘膜を守る「気」のことを「衛気」(えき)と呼びます。
花粉で粘膜がやられ鼻水が出る、肌がかゆくなると言った症状はこの衛気不足が大きく関わっています。
この衛気不足の解消には気を補ってくれる食材を取り入れてみましょう。
今回おすすめするのは「じゃがいも」
じゃがいもは気を補う作用がある食材でありながら、この時期に弱りやすい胃の痛みを和らげてくれる作用もあるのです。
また、そこに更に気を補う作用をプラスしたいのならタコと一緒に。
気を補う作用同士が相乗効果で高まります。
春分
昼と夜の時間がほぼ同じになる、馴染みのある日です。
この日を境に段々と昼が長くなって、陽の時間が増えていきます。
また、3/21~4/4までのこの期間は新生活がこれから始まる時期。
体調を整えて、次の時期に備えることも重要です。
昼と夜がほぼ同じ長さになっていることもあり、昼に活動し、夜に寝る。
三食きちんと食べる、と言う規則正しい生活も陰陽を体に取り入れる大事なことです。
ご自身の生活を陰陽論で見た時にバランス良くなっているのが理想的です。
季節の変わり目でバテてしまったら
どんな時期でも、季節の変わり目。
新しい環境に変わる前後はどうしても気力が衰えてしまいがちですよね。
そんな時、漢方薬で気力を回復したいと思ったら…。
おすすめの漢方は「補中益気湯」です。
この漢方は体力、免疫力向上におすすめの漢方薬。
春だけでなくどの季節でも、「なんだかやる気が出ない…」、「体が怠い…」といった「気」
つまりエネルギーが不足しがちな時に「気」を補ってくれる漢方薬です。
また、胃腸の働きも良くしてくれるので春で胃腸が弱って。
更に、気力も落ちている…と言う時には選んでみても良いかも知れません。
よく活動するために食材をチョイス
では、昼に活動して夜に寝るため食べ物は何に気を付けたら良いのでしょうか?
今回おすすめしたい春の食材は「しらす」
しらすは「脾」の機能をととのえて「気」を補うので体力不足、疲労回復に効果が期待出来ます。
また、脳の働きを活発にする効果もあるので子供でも取り入れやすい食材です。
パスタや、ご飯に混ぜて取り入れるのも良いですし。
卵焼きや、和え物、サラダにも良いですね。
一品加えやすいしらすを使って、この時期の「気」不足を解消、日中の活動に役立ててみて下さい。
よく眠るために食材をチョイス
では、今度は寝るためにどんな食べ物をとると良いのでしょうか?
一般的に、不眠に効く食べ物は乳製品・青魚・大豆・バナナ・玄米などが知られています。
ただ、気を付けてほしいのは食事は睡眠の3時間前までにすませること。
それ以上超えると睡眠の質を下げてしまいます。
夜になって眠ろうとしているのに、眠れない!
そんな時はハーブティーでリラックスしてみましょう。
不眠に効果のあるハーブの一つに「オレンジピール」があります。
オレンジピールはハーブティーとしても、その精油をお風呂に数滴垂らして入浴して香りを楽しんでも不安や不眠に効果抜群。
腸の動きを正常に保ってくれるので、便秘や下痢などの消化器トラブルのある方でも飲んでいただけます。
清明
この時期になると陽気がかなり強まり、それに伴って「肝」も昂ぶりやすくなります。
昂りやすくなった「肝」を、適度な運動で巡らせてあげることが重要。
昂りやすくなったとは言え、陽気を貯めること。
太陽を浴び、日光浴をすることは養生の大事なポイントの一つ。
朝起きたらまずカーテンを開け、朝日を浴びることも体をリセットして一日を始めるのに最適です。
しかし、「肝」が昂りやすい季節は同時に興奮しやすい季節。
なかなか寝付けなかったり、胃もたれを起こしたりといった症状が出やすくなる時期でもあります。
イライラ、カッカする時に
以前、「雨水」でイライラに効く漢方薬をご紹介しましたが。
この時期の興奮から来るイライラは、身体が火照る感覚(カッカする)感覚を伴うこともあります。
こう言った熱証を持つ方に効く漢方薬でオススメなのが「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」です。
これは、熱証の症状である喉の渇きやのぼせがありつつイライラなどの興奮を感じている方に効果があるとされている漢方薬です。
目の充血などにも効果があります。
入っている生薬の黄連、山梔子、黄岑、黄柏すべてに清熱解毒作用。
脳の充血や自律神経の興奮鎮静の作用を持つ漢方薬です。
イライラして体もカッカする時はこちらの漢方も検討してみてください。
イライラにおすすめの食材は
イライラしている→精神が興奮している、と捉えた時にやはり有効になってくるのは精神安定作用の高い食材たちです。
ここでおすすめしたい春の食材は「グレープフルーツ」
実も、体内の気の巡りを活発にして胃の働きを調整してくれる作用があるためこの時期の胃もたれに効果的なのですが。
その香りには精神を鎮めてくれる効果があります。
胃の調子を整えながら、精神を落ち着かせてくれるグレープフルーツはまさに清明向きの食材だと言えるでしょう。
胃もたれしたらこの野菜を
胃もたれ、胃痛、げっぷ、消化不良。
そんな胃腸トラブルに効果のある万能野菜があるのをご存知でしょうか?
それは、今回おすすめする野菜が「キャベツ」です。
キャベツは春夏冬と旬があり季節を選ぶことなく、一年中食べられる「平」に属する野菜。
胃腸トラブルの解決だけでなく、五臓の機能を高める効果もあります。
また、アンチエイジング効果も期待出来るため。
胃腸トラブルを抱える以前に、積極的に摂取していきたい食材の一つです。
穀雨
いよいよ春の終わりの時期です。
この後にやってくる、梅雨、夏に向けて今一度体をしっかり休めておきたい所。
春の間昂っていた「肝」の疲れ、ストレスなどを整理し。
次の季節への切り替えが重要です。
引き続き胃腸のトラブル、不眠、情緒不安定などの春に多い症状が出やすいため体を休めつつ出来る養生を行っていくことが大切です。
新しい環境に慣れ、悩みも多くなってくるのもこの時期。
どんな時でも季節の変わり目は「ゆっくり」と。
出来ることから養生していきましょう。
イライラが胃に来たら
これまで春の間特に起こりやすかった症状と言えば「イライラ」、「胃痛(胃のトラブル)」であったかと思います。
では、この2つが同時に起こった場合どう言った漢方薬を選ぶと良いのでしょうか?
今回おすすめしたいのは「四逆散(しぎゃくさん)」です。
この漢方薬はイライラ、胃炎、胃痛、腹痛に適応のある漢方薬ですが。
神経性の脇や胸の痛みにも効果があり、幅広く使える漢方薬です。
疏肝解鬱(肝の気の流れを正し、肝鬱を解消させる)作用がある柴胡(さいこ)と芍薬(しゃくやく)の生薬が含まれているため精神的な緊張、情緒不安定による自律神経系トラブルを改善させてくれます。
身体を休めるリラックスタイム
この時期は体を休めることが重要であるとご説明しましたが。
そんな時に助けてくれるのがハーブティーやフレーバーティーなどの暖かい飲み物。
手軽に効果を得やすく、またホッと一息つかせてくれる効果もあります。
春の旬の素材だと「いちご」、「ライチ」がおすすめ。
いちごはストレスが作り出した熱をクールダウンさせてくれる作用がありストレス性の不眠に効果があります。
五性の「寒」に属しているためそのまま量を食べると体が冷えてしまうので、冷え性な方はストロベリーティーにしたり、ジャムにしたりして摂取するのがおすすめです。
ライチは、「腎」と「脾」を炊変える作用と補血作用を持つ果物。
不眠だけでなく貧血にも効果があります。
また、いちご、ライチどちらもうるおいを与えてくれる効果があるため喉や肌の乾燥が気になる方は是非取り入れてみて下さい。
夏に向けて胃腸も「ゆっくり」と
では、夏に向けてスタミナ回復、胃腸の回復に取り組むには何の食材を食べると良いのでしょうか?
今回おすすめするのは「鶏肉」です。
鶏肉は「気」と「血」を補う作用があり、スタミナ回復にも効果的。
「脾」と「胃」を温めて働きを良くしてくれる作用もあります。
取り入れる際にはこれまでご紹介した野菜と合わせて摂取するのも良いでしょう。
鶏肉は消化吸収も良いので胃腸トラブルに効果のある野菜とはより相性が抜群。
一緒に煮込んでスープにすると胃腸も温まって更に効果抜群です。
夏の養生
まず、夏は五行説で言う所の「火」にあたる季節です。
火は「炎上、発熱」などの意味合いを持ちます。
この季節に不調が起きやすいのは「心」
「心」は、「気血水」の「血」を体に巡らすポンプ役。
「血」には栄養が含まれていますので体のすみずみまで栄養を運んで、精神も安定させてくれます。
そもそも夏は暑さによって気血が不足しやすい季節。
気血が消耗すると熱を持ち不眠、動悸、口渇(口の渇き)、火照り、口内炎、不安感、焦燥感などの症状が出やすくなります。
また、梅雨に多い湿気で余計な水分がたまり疲労感、むくみ。
冷たい食べ物、飲み物の摂り過ぎ、冷房などでの冷えにより血行不良やめまい、食欲不振などいわゆる「夏バテ」を起こしやすいのもこの季節の特徴です。
立夏
暦上での夏の始まりです、陽のエネルギーがぐんぐん増えていきます。
ゴールデンウィークがあるのもこの立夏の時期、新生活などで疲れた体を休めるには最適の期間ですがこう言った長い休みは生活リズムを乱し、心身のバランスを失わせるきっかけでもあります。
ゴールデンウィーク後に五月病になってしまった・・・なんてことにならないためにも食事をきちんととって「血(栄養)」を養いながら心身をしっかりと休めましょう。
この後に来る梅雨の時期は湿気が強まりどうしても体調に不調が出やすい季節。
この立夏でバランスを崩すとそのまま梅雨に突入してしまうので、季節の変わり目と言うことを踏まえてもしっかり養生して下さい。
夏バテと言えばこの漢方薬
夏はどうしても体力が落ちる、食欲不振になる、と言った「夏バテ」症状。
病院に行っても「夏バテですね」で終わってしまい毎年何とか乗り越えて気付いたら夏が終わっている…なんてことはありませんか?
漢方薬には、そんな夏バテ予防に効く漢方薬があるのです。
それが「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」
漢方薬には他にも補気作用(気を補う作用)がある漢方薬がありますが、清暑益気湯は中でも清熱作用(熱を冷ます作用)を含む夏にぴったりの漢方薬です。
更に体力消耗から来る貧血、食欲不振、暑さから来る動悸にも効果的。
これまで夏のなんとなくだるい感じ、に悩まされていた方は予防的に本格的な夏が始まる前のこの時期から取り入れてみると良いかも知れません。
まずは体力不足解消!
夏に向けて体力を増やしておこうと思った時。
食材では何を取り入れて行けば良いのでしょうか?
ここでおススメする夏の旬の食材は「えだまめ」
枝豆は「脾」の消化吸収を高め気を補う作用があるため「脾」の働きが弱くスタミナ不足の人に適した食材です。
また、立夏の項でもお伝えした通りこの時期の「血(栄養)」はとても重要。
このえだまめは「血」を補う作用もあるため夏の体力不足と血不足の両方に対処出来る食材です。
茹でて塩を振るだけでも出来る簡単調理で美味しくいただけますので、夏を迎える前にえだまめで体の準備体操をしてみませんか?
次は夏バテを予防しよう!
では、続いて体力の基礎作りが終わったら。
今度は夏バテを予防してみましょう。
夏バテ予防に良いとされている旬の食材は「冬瓜」
冬瓜には体にこもった熱を取り去り、津液を増やす働きがあります。
効果も様々で夏バテ、喉の渇き、多汗、乾燥タイプの便秘、イライラ、不眠など。
利尿作用もあるのでむくみ、水虫にも効果的です。
こうした夏バテに効く食材を積極的に取り入れておくことで、夏バテになりにくい体を作ることが出来ます。
食べたことのない方は生のシャキッとした歯ごたえと煮物などにしたときのトロっとした食感を是非楽しんでみて下さい。
小満
気温があがり、湿気も増えてくる季節です。
仕事、プライベート、学校、それぞれが始まりから発展へ、忙しくなってくる時期だと思います。
こう言った時期は忙しさ、疲れから胃腸に不調が出やすい季節。
飲み会、食事会の誘いなども、暖かくなって来ると増えてくるかも知れませんね。
また、この頃から「熱中症」が発生し始めます。
熱中症は、水分不足も勿論のこと不眠や栄養不足などからも引き起こされやすいもの。
なってしまった時の対応は大事ですが、熱中症を起こしにくい体作りを日々の睡眠と食事から作っていきましょう。
二日酔いになってしまったら
実は熱中症になりやすい要因の一つに「二日酔い」があります。
飲んでいる時は楽しいですが、その後にめまいや嘔吐、腹痛、下痢など様々な症状に悩まされるのがお酒の難しい所。
では、二日酔いになってしまった時、漢方薬で対処することは出来ないのでしょうか?
漢方薬で二日酔いに効くとされているのは「五苓散(ごれいさん)」です。
五苓散は、二日酔いと言うより利水(水分の代謝を正す作用)に優れている漢方薬と言えます。
また、暑気あたりにも適応があるため軽度の熱中症でも使用できる漢方薬です。
二日酔いに強いのは理由がある
駅の自販機でしじみのお味噌汁が売っているのを見かけたことはありませんか?
また、二日酔いにはしじみの味噌汁・・・なんてことも。
二日酔いの時は吐き気があり、食べ物を食べる気にならず汁物ならなんて気持ちになることもそうですが。
しじみが入っているのには実は薬膳的にも意味があることなんです。
しじみは酒の毒を弱める働きがあるのです。
そのため、二日酔いの時は摂取すると症状を和らげてくれます。
他にもしじみは熱を鎮め、炎症を抑える作用があり。
ほてり、喉の渇き、皮膚の腫れにも適している食材のため夏の暑さにも大変効果的。
二日酔い以外でも夏に積極的に取り入れていきたい食材の一つです。
胃の働きを強くするなら
この時期に出やすい胃の不調。
では、その胃の不調に対応する食材は無いのでしょうか?
夏の食材でおススメしたいのが「オクラ」
オクラは、「脾」と「胃」の消化吸収能力を高めてくれる食材です。
そのため、食欲不振、消化不良、胃炎の改善に適しています。
余談ですが、ねばねば繋がりの「納豆オクラ」
このメニュー、実はどちらも便秘を解消させる効果を持った食材の合わせ技。
便秘に悩んでいる方は納豆オクラを是非召し上がってみて下さい。
芒種
6月に入るこの時期は、季節で言う「梅雨」にあたります。
梅雨は誰でもご存知の通り雨の日が増え、それに伴い湿気も多くなります。
この湿気に「脾」は、とても弱く、不調が出やすい時期です。
「脾」とは消化吸収を担う器官のためここに不調が出ると胃腸に影響が出ます。
また、水分や栄養の代謝も担っているため代謝が悪くなり体もむくみやすくなります。
体内の湿気、水分を払うには適度な運動で汗を流すこと。
また、発汗を促す効果のある食材を摂る、水分代謝を整える食材を摂るなどで対処していきましょう。
実証?虚証?重要なのは使い分け
身体がむくむ、と言う症状は湿度の高い梅雨~夏の季節に大変多い症状です。
そして、このむくみを解消させる漢方薬も複数存在しています。
複数存在している→選び方が重要、と言うのがポイント。
むくみに使える漢方に防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)と、防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)と言う漢方薬があります。
これらはどちらもむくみに適用のある漢方薬なのですが、重要なのはそれぞれが全く真逆の「証」(体質)にあった漢方薬であるということ。
防風通聖散は、「実証」の方に有効的な漢方薬です。
便秘がちで食欲がある場合に使用し、身体が冷えたり食が細く虚弱な方は使ってはなりません。
逆に防己黄耆湯は汗かき、水太り傾向。
身体、膝に怠さを感じる人に有効的な漢方薬です。
名前も似ていて同じ「防」から始まるため。
間違えて使用してしまうことの無いように注意してください。
発汗を促す食材とは?
では、発汗を促す食材とはどのようなものがあるでしょうか。
この季節が旬の食材からオススメするとそれは「みょうが」です。
みょうがは、血行を良くして発汗を促し食欲増進、消化を助けるなどの効果があります。
この時期に気を付けたい冷たいものの摂り過ぎによる胃腸不調にも効果を発揮する食材です。
発汗を促しつつ、身体も温めてくれるので冷えからくる症状にも効果的。
生理痛、肩こりなどの改善にも役立ってくれます。
みょうが料理を作ったことが無い!と言う方はみょうがの漬物がそのまま売られていることもあるのでお近くのスーパーを探してみて下さい。
水分代謝を整えてくれる食材とは?
続いて水分代謝を整えてくれる食材です。
この季節のおすすめの食材は「とうもろこし」
とうもろこしは高い利尿作用を持つ食材です。
そのため、慢性的なむくみ、身体のだるさ、湿疹などの症状改善に効果的です。
また、食べる時には使用していない芯やひげの部分も同様の働きがあります。
ひげは特に「南蛮毛(なんばんげ)」と呼ばれる生薬になります。
フライパンなどで炒ると香ばしく食べやすくなるそうですが…私もまだ試したことがありません、とうもろこしは夏バテにも効果的な食材なので食べる時にはちょっと試してみても面白いかも知れないですね。
なお、とうもろこしには「脾」と「胃」を整えて消化吸収を高めるので消化不良食欲不振の改善にも適しています。
夏バテ気味の方にも最適の食材です。
夏至
一年の中で昼が長く、夜が短い「夏至」を含む時期です。
陽気もこの夏至が一番高まっている時期とされています。
梅雨を超え、本格的な夏に入り体も心も活発になる時期。
外出する機会も増えてくる頃ですが、夏の暑さ、熱が「心」はとても苦手。
陽気のまま活動していると「心」は弱ってしまいます。
身体にため込んだ熱や湿気は食べ物で代謝を促してあげることが重要。
また、この時期は湿邪、熱邪が混在しているため湿邪による下痢軟便。
熱邪による肌荒れ(ニキビ)、湿疹、アトピー性皮膚炎なども起こりやすくなる時期なので要注意です。
あせもに困ったらこの漢方薬
この時期に出来やすい湿疹と言えば、あせも。
汗をかく機会も多くなると汗が溜まりやすい所に出来やすくなります。
あせもにも赤みとかゆみを感じるものと、そうでないものがあると思いますが。
中でも赤みとかゆみが強く、分泌物の多い湿疹に効果的なのが「消風散(しょうふうさん)」です。
消風散は「皮膚風湿熱(ひふふうしつねつ)」と言う証に適応しています。
これは、風邪、湿邪、熱邪の3つが外から体内に侵入してきた時、または風邪と熱邪が体内で熱を起こした時に起こる病態。
湿邪と熱邪が多い夏には起こりやすい証と言えますね。
「心」の強い味方
「心」が弱りやすいこの季節。
「心」を助ける食材は無いのか?…あります。
まず、すもも、なつめ、もも、くり、あんずの5つは五臓の働きを整える「五果」と呼ばれています。
(ちなみに、春→すもも、夏→あんず、土用→なつめ、秋→もも、冬→くり)
夏のあんずはそのまま「心」の働きを高めてくれる食材。
不眠、物忘れ、情緒不安定などの症状を和らげてくれます。
また、あんずは他にも身体の潤い不足の解消に効果的。
酸と甘の五味を持つので津液を作り、喉の渇きや身体の潤い不足にも良いです。
ニキビに効く食材はありますか?
夏になり、身体にこもった熱によりニキビなど吹き出物も出来やすくなる季節。
そんな時におすすめの食材が「茄子」です。
この食材をおすすめするのは茄子がまず夏におきやすい口やのどの渇き、ほてり、イライラ。
利尿作用で消化不良や食欲不振、むくみ。
血の滞りをなくし、のぼせによる鼻血をとめる、など夏に起こりやすい症状に広く対応しているから。
そして、なんとニキビ(吹き出物)にも効果的だからです。
熱による腫れや嫌みが出た方は夏野菜を美味しく取りつつ改善が期待出来ますよ?
小暑
梅雨が明け、暑さがより強まっていくこの時期。
陽気の高まりで元気に過ごせる時期ではありますが、冷房を本格的に使用し始めるのもこの時期からでは無いでしょうか?
冷房は適度に使うことで熱中症対策になるため、必要なものですが。
直接当たったり、過度に冷やしすぎるのは体の冷えを招きます。
冷房を直接浴びることは体温調節機能の働きを弱めてしまうので使い方をよく考慮しながら使用していきましょう。
また、引き続き湿気は残っているため湿気を取る作用を持つ食材は積極的に取り入れていきましょう。
冷房病に効く漢方薬⁉
強い冷房で体が冷えてくると、頭痛がしたり腰痛がしたりお腹が痛くなったり…そんな症状を経験されたことのある方はいらっしゃいませんか?
そんな方におすすめしたいのが「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」
冷房にあたっていると夏なのに手指が氷のように冷たい!と言う方にもこちらの漢方がおすすめです。
この漢方薬を構成している殆どが体を温める、血行を促進する効果を持っているため冷えから来る腹痛、手指の冷えに効果があります。
この漢方薬は「しもやけ」にも効果があります。
冬に起きることが殆どのしもやけと、冷房で起きる冷えはどちらも寒冷によるものが原因。
夏の冷えも冬の冷えにも効果の期待出来るのが漢方薬の面白い所ですね。
冷房でお腹が冷えてしまったら
冷房に直接当たった後、その場を離れたのになんだか体に冷たさが残っているような気がする…そんな状況ありますよね。
そんな時、お腹を温めてくれる夏の食材が「らっきょう」です。
気の流れを活発にさせる効果のあるらっきょう。
気の巡りの滞りによって起こる症状の改善が得意な食材ですが、注目したいのは「温性」の食材であるということ。
食べると冷えが原因の症状を和らげてくれます。
特にお腹を温める作用が強く、毎日食べることで下痢や腹痛の予防にもなります。
夏だけど身体を温めてくれる野菜
夏に体が冷えてしまう原因の一つが、食材の涼性、寒性の多さにもあると思います。
旬の食材は季節を乗り越えるために必要な力を蓄えて生まれてきます。
なので、暑くて湿気の多い夏に熱や湿気をとる食材や体に涼しさや冷たさを与えてくれる食材やメニューが多いのは致し方ないことなのです。
しかし、食材で涼をとらずとも環境で涼をとれるようになった現代。
そう言った夏定番のメニューばかり食べているとお腹を冷やしてしまいがち。
そんな時におすすめなのが夏の旬野菜「かぼちゃ」です。
かぼちゃは、「脾」の消化吸収をサポートし気を補う作用があり。
そして、「温」性の食材で、冷えを改善する効果があります。
夏に冷えを感じる時はかぼちゃを取り入れて冷え対策をしていきましょう。
大暑
「大暑」は一年で最も暑い時期です。
学生の皆様は夏休み期間に入る方も多いのではないでしょうか?
冷たいもの、冷たい食べ物が特に美味しい季節ですが胃腸を冷やし過ぎないように要注意。
常温、または暖かいものも摂る様に心がけましょう。
この時期は「土用」と呼ばれる時期であり、簡単に言うと季節の変わり目です。
二十四節気には含まれていませんが、年に4回訪れます。
この土用はどのタイミングでも「脾」がとても弱まりやすい時期。
更に夏は季節柄「脾」が苦手としている湿気も多いため余計に負担がかかりやすくなる時期です。
冷え下痢の漢方 人参湯
外を歩いて暑かったのでキンキンに冷えたアイスを食べた、かき氷を食べた、ジュースを飲んだ。
その後すぐにお腹が下って下痢を起こしてしまった。
そんな夏によくある失敗に効くのが「人参湯(にんじんとう)」です。
下痢はストレス、ウィルス、慢性、急性、と原因や症状が多く分かれるため適用出来る漢方も多種多様にあります。
そんな中でも人参湯は冷たいものを食べるとすぐにお腹が下る、そんな症状の方に効果的です。
この漢方薬はメインの生薬が乾姜(かんきょう)、つまりショウガを使用していて体を内側から温めてくれます。
そのため、冷たいものを食べたことによる冷えに大変効果的なのです。
お腹が冷えて胃痛、下痢したら
美味しいメニューを食べて、冷えて、胃が痛くなって、下痢になって…楽しい思い出がちょっと残念な思い出になってしまいますね。
では、人参湯以外、食材で何か対策は出来ないのでしょうか?
この時期でそんな冷えから来る胃痛、下痢におすすめなのが「あじ」です。
あじは「温」性の魚で、身体を温める作用があります。
特に、胃の冷えを改善してくれるので先ほどから話題に出ている冷たいものを食べたらお腹が痛くなった!と言う腹痛、下痢、便秘に効果的。
「脾」と「胃」の働きも高めてくれるので消化不良や食欲不振の時に食べるのもおすすめです。
「熱」性果物とは?
では、何なら体を冷やさずに食べられるのか?
冷たいものがどうしても食べたくなりますよね、実は夏に旬を迎えるフルーツも寒性、涼性のものが多くお腹を冷やしやすいのです。
凄く暑い時はそう言ったもので食材で体を冷やしてもらうことは重要ですが、どうしても冷たいものを食べるとお腹が痛くなりやすい方は「さくらんぼ」を召し上がってみて下さい。
さくらんぼは時期的には大暑の頃からは外れていますが、果物の中では珍しい「熱」性の食べ物です。
温める作用で「血」の巡りが良くなり血行不良の改善にも役立ちます。
秋の養生
まず、秋は五行説で言う所の「金」にあたる季節です。
金は「清涼、清潔」などの意味合いを持ちます。
この季節に不調が起きやすいのは「肺」
「肺」は、呼吸を司り「気血水」の「気」と「水」を体全体に届けます。
この中でも空気を吸い込み、「気」を作り出すことは大変重要な役割です。
ただし、外気に一番近いため寒さ、暑さ、乾燥に弱いのが難点。
「肺」はウィルス、最近、花粉などの侵入を防ぐバリア→「衛気」を作る働きがありますが。
秋は、肌、喉、鼻の粘膜の乾燥により「肺」の働きが弱まり衛気のバリア機能が低下します。
また、腸の乾燥により便秘が起こることもあります。
気温も大きく変化がみられるため寒暖差によって体調を崩したり感染症にかかりやすいのもこの季節です。
立秋
まだまだ夏の暑さが残るのがこの立秋。
暦上では秋に入りましたが、気温的にも、世の中的にも秋とは思いづらいかも知れませんね。
立秋の養生方法も形としては夏の続き。
身体にこもった熱を摂るために適度な運動で汗をかきましょう。
食材も引き続き体の熱を取ってくれるものを選ぶと良いです。
夏の暑さが残っているため、夏バテ防止とスタミナのつく食事をとりがちですが。
胃が負けてしまわないように注意して下さい。
食べすぎ、飲み過ぎに
スタミナを食べ物で補うこと、また楽しい食事をとることはメンタルでも重要なことです。
しかし、食べすぎ、飲みすぎで胃が痛くなってしまったら。
そんな時におすすめの漢方薬が「平胃散(へいいさん)」です。
これは字のまま、胃を平(正常)にしてくれる漢方薬で。
入っている生薬の効果は大きく分けて2つだけ。
燥湿健脾作用と、脾胃調和作用の2つ。
燥湿健脾作用は、余剰な湿を取り除き脾の働きを正す作用。
脾胃調和作用は、脾胃の消化機能を正す作用のこと。
どちらも胃を良くしてくれる作用です。
ただし、平胃散は慢性的な胃痛にはあまり効果がありません。
あくまで食べすぎ、飲みすぎた時の急性胃炎症状に効果のある漢方薬です。
食べ過ぎた時は鮭を
では、食べすぎてしまった時に体に良い食材は何なのでしょうか。
食べ過ぎにおすすめしたい秋の食材は「鮭」です。
鮭は、内臓を温め「脾」と「胃」の働きを回復する作用があります。
そのため、食べすぎ以外の腹痛や食欲不振にも効果があります。
五性も温のため、身体を冷やしすぎることもありません。
食べ過ぎでお腹が痛くなってしまった時は鮭を積極的に摂ると良いかも知れません。
飲み過ぎた時はかりんを
今度は飲み過ぎた時です。
飲み過ぎた時は、何を食べるのも辛いと言うのが正直な所かとは思いますが。
おすすめしたい食材は「かりん」です。
かりんはどちらかと言うと肺を潤し、乾燥を防ぐ喉に優しい食材なのですが。
酒の毒を消す働きもあります。
このかりんをハチミツにつけてお湯で割って飲む。
これで、十分二日酔いにも効果抜群です。
飲み物なので吐き気が酷い時に、口に出来るのも良いですよね。
処暑
ようやく朝晩に涼しさが見え始めてきます。
こうした季節の変わり目に当たる時期は、前の季節の疲労や気温変化で体調を崩しやすくなるためより一層注意が必要です。
身体の怠さ、鼻水、喉の痛み、咳など感冒症状も良く見られます。
また、この頃は秋雨前線が出てくる時期。
天候の変化によって頭痛を感じる方もいらっしゃるでしょう。
夏から秋にかけて乾燥を防ぎ、不調になりやすい「肺」を補うよう気を付けてみて下さい。
「肺」の不調から来る感冒に
感冒に効く漢方薬は春の養生でもご紹介しましたが。
今回は感冒でも、「透明な鼻水」、「痰」、「悪寒」、「発汗していない」と言う症状が出ている方に向けた漢方薬をおすすめします。
おすすめの漢方薬は「小青龍湯(しょうせいりゅうとう)」
これは、「肺」の働きが弱いために肺に水滞が生じることで鼻水や痰が出ている方に用います。
小青龍湯を使うポイントは「発汗がないこと」と「悪寒があること」
再度いかに感冒初期の漢方薬の選び方を記載しておきますので、自分の症状にあった漢方薬を選んで使用してみてください。
汗をかいておらず、肩こり、緊張性頭痛がある場合…葛根湯(かっこんとう)
汗をかいていて、肩こり、緊張性頭痛がある場合…桂枝湯(けいしとう)
汗をかいておらず、悪寒、発熱が強く、咳、関節痛がある場合…麻黄湯(まおうとう)
汗をかいておらず透明な鼻水や痰が出ている場合…小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
秋と言えば銀杏
道に銀杏が落ちて独特の匂いがする、それも秋の光景の一つですね。
養生では季節を五感で感じることも、大事な一要素です。
では、そんな五感を賑わせてくれる銀杏はどんな効果のある食材なのでしょうか?
実は、「銀杏」はこの季節に弱くなりやすい「肺」に潤いを与えてくれる食材なのです。
食べると、咳、痰、かすれ声、喘息症状を和らげてくれます。
更に、銀杏は「白果」と呼ばれる生薬でもあるのです。
いつもの暮らしに生薬があるなんて少し驚きですね。
銀杏が苦手な方は
では、「肺」を潤すために銀杏を…となったは良いものの苦手な方って多いのではないでしょうか?
そんな時、代わりでは無いですが似た効果を持つ食材をあげるとすると「落花生」
落花生も肺を潤し、秋の乾燥を防いでくれます。
咳を止めて、喉の渇きや、声枯れを和らげる効果を持つのです。
また、落花生には「胃」と「脾」を丈夫にし消化吸収を高める作用。
不足した血を補う働きと止血作用と沢山の作用が豊富につまった食材。
止血作用は薄皮に多いので、食べる時は是非むかずに召し上がってください。
白露
この頃からは暑さが落ち着きますが、代わりに要注意なのが冷えと乾燥。
最初にもお伝えしましたが、「肺」は乾燥にとても弱く。
「肺」が弱まると衛気→体のバリアは低下してしまいます。
そのため、咳やのどの痛みなど呼吸器系のトラブルが発生しやすくなります。
身体の内側から潤いを補給することも重要ですが、加湿器などで外側から補給することでも十分対策になりますよ。
また、「肺」は感情の「悲」を司る臓器。
「肺」が弱ると気分の落ち込みや不安などメンタル的な不調も出やすいです。
梅核気ってご存知ですか?
メンタル的な不調を感じると、喉に異物感を感じる。
まるで、喉の部分にボールが入っているようで息苦しさを感じる方もいらっしゃるかも知れません。
そのような喉の違和感を、ヒステリー球、梅核気(ばいかくき)と言います。
原因は様々ですが、多くは精神的ストレスや自律神経の乱れから生じます。
このヒステリー球、梅核気に効くとされているのが「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」です。
異物感以外にも、咳、しわがれ声、不安神経症に効果があり精神的な緊張を和らげてくれます。
秋で何かと落ち込みやすい、落ち込むと息苦しさを感じる、と言う方は一度試してみても良いかも知れません。
喉のトラブルならきんかん
この季節に不調が生じやすい呼吸器。
その呼吸器のトラブルの強い味方が、秋に美味しい「きんかん」です。
きんかんは、昔から民間薬としてカゼやのどの痛みに使用されてきました。
喉を潤す作用があり、乾燥を癒してくれます。
また、きんかんはそのさわやかな香りで気の巡りを活発にさせる作用もあるのでメンタル的な不調を感じた際に香りをかいでリラックスするのにも効果的です。
海のミルクと呼ばれてます
身体の内側から潤いを与えてくれる食材で今回おすすめしたいのは「牡蠣」
身体の乾燥を潤し、血を補う作用があります。
肌の潤いがアップするので、肌ツヤがよくなり小じわ、肌荒れ、たるみ防止にもバッチリ。
また、今回おすすめしたのは牡蠣のもう一つの強みから。
牡蠣は情緒不安定や不眠にも効果的な食べ物なのです。
体の外も中も潤して、かつ心も穏やかにしてくれる牡蠣でこの時期の不調を乗り切りましょう。
秋分
春分と同じく昼と夜の時間がほぼ等しくなります。
秋分を過ぎると段々と夜の時間が長くなり、陽気から陰気へと転じていきます。
食欲の秋、とはよく言いますが実は消化吸収を担う「脾」は乾燥が大好物。
良く働いて、消化吸収が向上します。
食事もとりやすく、気温も安定しているのでこの秋は1年を通して一番養生しやすい季節でもあります。
しかし、引き続き「乾燥」、「気温低下」、「悲しみ」の要素があるため「肺」が弱りやすく気分が塞ぎやすい季節。
未病は未病の内に、弱くなりやすいポイントを絞ってしっかり対策をしていきましょう。
コロコロ便に効く漢方薬
秋は「乾燥」の季節、とお伝えしましたが。
乾燥が起きるのは肌などの外側だけではありません。
実は体の中も乾燥を起こしてしまうのです。
そこで起こってくるのが腸の乾燥からくる「便秘」
今回は便が出てもうさぎの便のようにコロコロとしたものしか出ない、それによってお腹が張っている感じがする、と言う症状におすすめの漢方薬をご紹介します。
それが「麻子仁丸(ましにんがん)」
腸管内を潤すことで便に潤いを与えてくれます。
便が固くて出づらい場合は「調胃承気湯(ちょういじょうきとう)」を使用してみてください。
便秘の味方 その①
では、便秘に効く食材はないのでしょうか?
勿論あります、今回おすすめしたいのは「チンゲンサイ」です。
チンゲンサイは、「脾」と「胃」の機能をサポートし便意を促す働きがあります。
そのため、食欲不振、消化不良、便秘に効果的です。
また、胃の張りやガスの発生も防いでくれます。
ちなみにチンゲンサイは塩で茹でて醤油とラー油をあえるだけでも非常に美味しいです。
火の通りが速いので茹で過ぎにはご注意ください。
便秘の味方 慢性的な便秘
続いても便秘に効果的な食材です。
こちらは、慢性的な便秘に効果的な食材「さといも」
「脾」と「胃」を丈夫にし、消化吸収を高める作用があります。
そのため、便秘だけでなく下痢にも効果があります。
余談ですが、さといもは体内の悪い水分を取り除く作用があり咳、痰、腫れの改善にも有効。
さらに生のさといもには消炎作用があり、すりおろしたものを湿布代わりに使うこともあります。
便秘の味方 ころころ便
おまけでもう一つ。
コロコロ便に効く食材があるのでご紹介させてください。
それが「くるみ」です。
腸を潤してくれるため、コロコロ便の便秘に良く聞きます。
また、肺を潤す効果もあるためこの時期にはぴったりの食材です。
寒露
気候が安定していると活動的になりがちな季節ですが、気を付けて欲しいのが「気」と「陰」が不足していないかどうか。
遊びに行くのに夜更かしをしたり、食事を抜いたりとしていると楽しい時間は良くてもこの後に待つ冬に向けての「気」と「陰」の補給が足りなくなってしまいます。
「気血水」「陰陽」はバランス良くあることが健康にとって重要な部分です。
「陰」を養うために少し早めに寝るのはこの時期の養生として問題ありません。
朝も陽が上がってから目覚めてもOKです。
また、台風も多い季節のため秋雨前線の時のように天候変化に伴う片頭痛。
寒暖差によるストレス、精神の昂ぶりによるイライラを感じやすい時期でもあります。
気圧の変化に伴う頭痛 苓桂朮甘湯
台風や、秋雨前線など天気が崩れると頭が痛い、めまいがする、と言った症状を感じる方が多くいらっしゃいます。
これは、こう言った不安定な天候の時期は低気圧により雨が多いため過剰な湿気の影響が出ていると言われています。
そのため、身体には「水滞」と呼ばれる「気血水」の「水」が滞った状態が起きそれに伴ってずつうやめまいが起こるのです。
こうした、停滞した水分を取り除くことでめまいを改善してくれるのが「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」
頭痛や、不安感も同時に解消してくれます。
この「水」によるめまい頭痛には「五苓散(ごれいさん)」も効果的です。
「水」に強い果物
水滞など、「水」が滞った時助けてくれるのが水分代謝を上げてくれる食材たちです。
その中で今回おすすめしたい秋の食材は「ぶどう」
利尿作用があり、むくみを改善。
余分な水分が体に溜まっている、そんな時に大活躍してくれます。
また、ブドウ自体も「気」と「血」を補い、「肝」と「腎」の働きを高めてくれるスーパーフルーツ。
力が出ない、食欲不振、息切れ、貧血、目のかすみ、めまい、生理不順などはばひろい症状を手助けしてくれます。
天気が悪い時はホッとひといき
気圧の変化に伴う頭痛が起きている時は体調が悪いのもそうですが、天候が悪いことも多いと思います。
そんな時はゆっくり体を養生させるのにぴったりの時間です。
リラックスした時間をとってしっかり身体を休めてあげましょう。
そんな時におすすめのハーブティーが「リンデン」
リンデンは元々が木なのですが、花、苞、木のあらゆる部位を用いることが出来ます。
そして、ハーブティーで使用する花と木の部分では効能が違うのです。
花の部分は、精神的なストレスの緩和に優れておりイライラして落ち着かない時、緊張や不安感を感じている時に有効的。
勿論眠れない夜にもOKです。
木の部分は、優れた利尿作用があります。
そのため、体中の水分老廃物の排出を促しむくみの改善に役立ちます。
つまり、リンデン一つで気圧変化に伴う精神的な不調と「水」の滞りに対応出来るのです。
天気が悪い日は家でゆっくり養生しながらホッとひといきつくときにリンデンを選んでみて下さい。
霜降
いよいよ冬に向けて気温がぐっと下がってくる時期。
寒さに対応しようとすることでエネルギーや血液も消耗します。
秋の養生のポイントは乾燥から身を守ること、食事をしっかりとること、質の良い睡眠をとること。
この3つをしっかり守って来るべき冬に備えましょう。
また、「肺」は「悲しみ」を司るとお話しましたが冷たい寒気を吸い込むこの季節は更に「肺」に負担がかかる季節。
肺に潤いを与えてあげることで心身を落ち着かせる効果があるので、寝つきの悪さ、眠りが浅く途中で目が覚めるなどの症状が出た時は潤いのある食材を取り入れてみましょう。
不眠の漢方薬はまずここから
体が疲れているのになぜか眠れない、本来なら眠れるはずなのに眠れない。
そんな、不眠の入口に最初に選ばれることが多い漢方薬が「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」です。
肺に潤いを与えて落ち着かせる、と一つ前にお話ししましたが。
この漢方薬にも精神の興奮を鎮静させる効果があり安眠をもたらしてくれます。
勿論、暖かい飲み物をとって体をリラックスさせて相乗効果を狙うのも効果的です。
秋の美味しい効果
食欲の秋は本当に美味しいものがたくさんあります。
食事をしっかりとることも食養生の一つ。
今回は秋に美味しい食べ物の持つ嬉しい効果や作用、働きをご紹介します。
まず最初にご紹介するのは「くり」
栗は五性の「温」のため、身体を温める作用があります。
帰経は「脾」、「腎」、「胃」
脾と胃を丈夫にしてくれるので冷えが起こす慢性的な下痢に効果的です。
血の巡りも活発にし、止血作用があるので鼻血や内出血の改善にも適しています。
腎を補うためアンチエイジングにも効果がありますね。
ただ、一つ難点は消化があまりよくないこと。
食べ過ぎないように気を付けて食べましょう。
秋の美味しい効果2
次にご紹介するのは「さつまいも」
五性は「平」、帰経は「脾」、「胃」、「腎」です。
さつまいもは胃腸の働きを高めてくれます。
また、気を補ってくれるエネルギー源でもあります。
疲れを感じている時、食欲が無い時に選ぶと良い食べ物ですが「さつまいもを食べておならが出る」で有名なように腸にガスがたまりやすい食材でもあるため食べ過ぎには注意が必要です。
ただし、腸を潤して便意を促してもくれるので秋の乾燥が引き起こす便秘や腸の働きが弱っていて起こる便秘には効果的です。
冬の養生
まず、冬は五行説で言う所の「水」にあたる季節です。
水は「寒湿、下行、滋潤」などの意味合いを持ちます。
この季節に不調が起きやすいのは「腎」
「腎」は、「精」を貯蔵し発育をコントロールします。
「精」とは、生命活動を維持するためのエネルギー源。
身長が伸びたり、髪が伸びるのはこの腎が健康で充実しているから。
それだけでなく、水分調節、血を作る指令、呼気によって得た気を肺から腎におろすなど沢山の役割を担っています。
「腎」は泌尿器系、生殖器系、内分泌系の一部を司っており、冷えによって「腎」の働きが弱くなると腰痛や下半身の怠さ、冷え症、下痢、頻尿、白髪の急増などが起こります。
何をするにもエネルギーと潤いを奪われやすい季節なので要注意が必要。
食べ物から潤いを摂取するように心がけ。
「陰」が増える季節だからこそ「陽」である日光浴も忘れないようにしましょう。
立冬
ちょうど11月の頭にあたる時期、寒さもまだ秋色です。
そもそも、冬と言うのが「腎」が活発な季節であり春に向けてエネルギーを蓄える季節に当たります。
そのため、この立冬から活動も「蓄える」ことを意識して活動していきましょう。
例えば朝、日が上がる前から活動するとエネルギーを消耗してしまいます。
なので立冬を過ぎ、暦上で冬に入ったらなるべく日が上がってから活動するように切り替えていきましょう。
また、この時期は体調を崩しやすく落ち込みやすい時期でもあります。
寒暖差による感冒や、気力減退の起こりやすい時期です。
インフルエンザに漢方薬は効きますか?
冬の時期に流行する疾患と言えば「インフルエンザ」
このインフルエンザにかかった際に漢方薬の「麻黄湯」(まおうとう)が処方されることがあります。
これは、麻黄湯がインフルエンザに対する効果があると言う訳では無く。
インフルエンザの初期に出る症状が麻黄湯の適応する症状である、と言うことから処方されています。
そのため、インフルエンザでも麻黄湯の適応と異なった症状が出ている場合は処方されません。
では、麻黄湯の適応症状は何かと言うと「強い悪寒発熱」、「咳」、「関節痛」などの感冒初期です。
これを聞くと、インフルエンザで処方されるのも納得ですよね。
感冒は影響を与えている六気によって適応「証」が異なります。
この時期は「寒」から来る感冒が多いので「風寒証」の漢方薬が多く用いられます。
冬に大活躍の食材
では、そのような悪寒関節痛を感じる感冒に効果のある食材はないのでしょうか?
よく風邪を引いた時に「ネギを首に巻く」と言うことがありますがその「ネギ」こそ感冒に効果のある食材の一つです。
ネギは身体を温めて体内の巡りを活発にし、冷えが引き起こす痛みの症状改善に効果があります。
その中でも発汗作用が特に強いため、冬の風邪症状に強いのです。
胃腸を温める効果もあるので寒さによる下痢や便秘、腹痛などにも効果的。
まさにこれからの季節の諸症状に強い食材と言えるでしょう。
外邪から身を守る強い味方
続いてご紹介するのは「白菜」です。
こちらは外邪(外から来る病をもたらすもの)の排出をサポートしてくれます。
また、身体を冷やす作用があるため熱を鎮めてくれる効果もあります。
風邪の熱っぽさから、感情の昂りのイライラなども抑えてくれる優れもの。
「脾」と「胃」の働きを強めてくれるので利尿、便意を促す効果もあります。
そのためむくみなどにも効果的です。
冬は渇きやすい季節なので食材で潤いを摂るのが良いですが、摂り過ぎはNG。
水分の豊富な食材と一緒に白菜を合わせることで適度な潤いを与えられますよ。
小雪
いよいよ寒暖差も激しく冬の気候に変わる時期です。
体温の調節には自律神経が深く関わっており、その調節にエネルギーを多く消費します。
寒さに耐えるためにはこの消耗した分のエネルギーを補うことが重要。
睡眠、食事といった生活習慣を見直し。
睡眠時間を伸ばす、睡眠の質を改善する、3食きちんと摂る、等意識してエネルギーを補っていきましょう。
また、冬に不調の出やすい「腎」は冷えに弱い臓器。
腎が冷える→気を消耗する→体が冷える→体を温めようとエネルギーを消耗すると言う悪循環に陥りがちです。
これにより気力、エネルギー不足が起こり体が動かない、やる気が出ない。
また、消化不良、食欲不振なども起こりやすくなります。
陽気不足の冷えに
冬は「陽」気が不足しがちな時期。
そのため、陽気が不足した状態である「陽虚」(ようきょ)証。
また、冬に不調の出やすい「腎」と合わせ「腎陽虚」(じんようきょ)証になりやすい時期です。
今回ご紹介する「八味地黄丸」(はちみじおうがん)は、そんな腎陽虚の改善のために開発された漢方薬と言われています。
腰から下の冷え、重怠さなどがある方におすすめの漢方薬です。
元々は「六味丸」(ろくみがん)と呼ばれる漢方薬に温めて腎陽を補う温捕腎陽(おんほじんよう)作用を加えたものです。
慢性的な冷え性は治すのに時間を要しますが、気になる方は試してみてはいかがでしょうか?
冬の最強メニューとは?
身体がどうしても冷えてしまう冬の時期。
どのような食事を摂ればよいのでしょうか?
今回おすすめするのは「豚肉の生姜焼き」です。
まず「豚肉」にはこの季節に不調が出やすい「腎」の機能を高め、不足しがちな「気」と「血」を補ってくれる効果があります。
正に冬にぴったりの食材と言えますね。
なので、豚肉を中心にメニューを考えて頂いてももちろん良いのですが今回はここに「生姜」を足して体を温める効果を足していきます。
「生姜」は、冷えの症状全般に効果があります。
手足の冷えなど冷え性の方にも効果がありますよ。
豚肉の生姜焼きはメニューとして取り入れやすい冷え性対策メニュー代表です。
冬の食卓に迷った時は、是非選んでみて下さい。
温める力がナンバーワンのお肉
では、強まっていく冷えに備えるため身体を温める食材をもう1点。
次にご紹介するのは「ラム肉」です。
実は、肉類はそれぞれの種類で効果が異なっておりこのラム肉は肉類の中でも五性の「熱」を持ち特に高い身体を温める効果を持っています。
そのため、食べ過ぎると過剰な熱を生み出しかねないため注意が必要です。
また、「腎」の働きを高め「気」「血」を補う効果も持つためこちらも冬にとても強い食材です。
ラムしゃぶなどで食べる時は「涼」性の小松菜と一緒に食べるなどすると暖め過ぎの対策になるかも知れませんね。
大雪
夏とは変わって陰気が増えていく冬。
大雪の頃には冬至が近づき日照時間も短くなってきます。
そうすると「陽」気が減って気分も塞ぎがちに。
引き続き「腎」の消耗を避けつつ、睡眠時間や睡眠の質には注意が必要です。
また、この時期に不足しがちな「気」「血」を補う食材を積極的に取り入れることは有効です。
また、夏にもありましたが「冷え」は体をこわばらせ肩こり首こりなどを悪化させます。
年末年始の忙しい時期にも入ってきますので、ここで年末年始に備えた養生を改めて心がけましょう。
女性の三大漢方、当帰芍薬散
肩こりや腰痛を感じた時、飲める漢方薬があるのでしょうか?
実は、漢方薬には肩こりに効くものが沢山あります。
「葛根湯」(かっこんとう)、「二朮湯」(にじゅつとう)、「釣藤散」(ちょうとうさん)、「当帰芍薬散」(とうきしゃくやくさん)、「桂枝茯苓丸」(けいしぶくりょうがん)、「加味逍遙散」(かみしょうようさん)、「大柴胡湯」(だいさいことう)、「防風通聖散」(ぼうふうつうしょうさん)、「桃核承気湯」(とうかくじょうきとう)、「通導散」(つうどうさん)など
今回はその中でも冷え性+肩こり腰痛に効果のある「当帰芍薬散」(とうきしゃくやくさん)をご紹介します。
当帰芍薬散は、女性の三大漢方とも呼ばれている漢方薬です。
その名の通り月経不順や月経異常などの月経トラブルにも効果があります。
また、当帰芍薬散は対応する作用も多く他にもめまい、立ち眩み、むくみ、耳鳴り、腹痛にも効果あり。
冬に限らず冷え性で月経トラブルがある、と言う方は一度試してみるのはいかがでしょうか?
肩こり予防に「にら」を
では、肩こりを防ぐために食べるべき食材はなんなのか。
そんな時は「にら」を是非召し上がってみて下さい。
にらは、この時期に不足しがちな「陽」を補う働きがあります。
血の巡りを活発にするので肩こり予防に効果的です。
また、身体を温める作用もあるので冷えが引き起こす腹痛、下痢、便秘、消化不良の改善にも効果的です。
また、このにらの良い所は「腎」も補ってくれるところ。
腰や膝の怠さも一緒に防いでくれますよ。
血を補う立役者
月経不順を漢方薬の項目で触れましたが、では月経不順の改善に効果のある食材はないのでしょうか?
そんな時に効果を発揮してくれるのが「人参」です。
人参は、「脾」の働きを高め消化不良を解消する作用があります。
そのため、胃もたれや食欲不振などに効果的です。
そして、月経不順と関係が深いのはもう一つの特徴。
人参は「血」と「津液」を補う作用があるためめまい、月経不順などの栄養不足が原因の症状を改善してくれます。
「血」を補う作用から貧血の改善にも期待出来ます。
生理になると貧血を起こしやすい、と言う方は人参を積極的に取り入れてみて下さい。
冬至
いよいよ「陰」気がピークになる冬至です。
ここからは春分に向け陽気がまた段々と増えていきます。
しかし、逆に考えれば「陰」気が最も強く心身への負担が一年で最も強い時期。
身体を冷やさないように温かい飲み物、食べ物をとる機会も増えると思いますが摂り過ぎはかえって体を冷やすのでほどほどに。
「陽」気が減ると心臓を動かすエネルギーも減少するため、動悸、息切れ、胸の圧迫感など心臓周りの不調が出やすくなります。
また、年末年始の疲れとぶつかるのもこの冬至の時期。
暴飲暴食や、睡眠不足、逆に寝すぎてしまうことによる「陽」気不足など。
時期的なイベント毎も無理をしすぎないように気を付けましょう。
漢方薬の名前の秘密
冬至に起きやすい症状で出た「動悸がする」、とは症状でよくありますが動悸とはどのような状態を指すのでしょうか。
動悸とは、自分の心臓の拍動(ドキドキ)に敏感になり、深い違和感を感じている状態を指します。
そのような動悸がする時は、以前にご紹介した「柴胡加竜骨牡蠣湯」(さいこかりゅうこつぼれいとう)が用いられることがあります。
そして、この柴胡加竜骨牡蠣湯に名前が似ている桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)も動悸(心悸亢進、動悸が激しい状態)の漢方薬として用いられます。
ただし、この2つは適応「証」が異なるため間違えると効果を感じられない可能性がありますので選ぶ際には注意して選ぶようにして下さい。
柴胡加竜骨牡蠣湯は「小柴胡湯」がベース、桂枝加竜骨牡蠣湯は「桂枝湯」がベースの漢方薬です。
どちらもそのベースの漢方薬に「竜骨」(りゅうこつ)と「牡蠣」(ぼれい)が加わっています。
つまり、小「柴胡」湯に「加」える「竜骨」と「牡蠣」で「柴胡加竜骨牡蠣湯」
「桂枝」湯に「加」える「竜骨」と「牡蠣」で「桂枝加竜骨牡蠣湯」
こうして、漢方薬の名前を紐解いてみても選ぶ選択肢が広がっていくかもしれませんね。
なお、竜骨と牡蠣はどちらも精神不安定を重さのある生薬でおさえる「重鎮安神」(じゅうちんあんじん)作用のある生薬です。
冬至 ゆず 湯治 融通
今回ご紹介する食材は、季節的なものを2つ。
まずご紹介するのは冬至に入るお風呂に浮かべるもので有名な「柚子」
この冬至にゆず湯に入るのは「冬至」と「湯治」、「柚子」と「融通(がきく)」をかけた語呂合わせからと言われています。
では、このゆず。
薬膳的にはどのような効果のある食材なのでしょうか?
ゆずは実と皮で作用が異なる食材です。
実には胃を整えて消化を高める働きがあります。
また、酒や魚の毒を抑える作用もあります。
皮には気を全身に巡らせる作用があり、イライラ、不眠などに効果あり。
咳や痰なども抑えてくれます。
コンビニなどでホットのゆず茶が販売されていますが、気を巡らせつつ、喉も守ってくれるので喉の痛みを感じた時は是非飲んでみて下さい。
お正月の風物詩
お正月ならだれでも1度くらいは食べる機会が多いであろう「お餅」
では、このお餅を薬膳的に見るとどういった効果があるのでしょうか。
お餅の効果はその原材料の「もち米」とほぼ同じと言われています。
もち米は気を補い、冷えを解消する効果のある食材です。
元気の出る食材、として昔から利用されてきました。
慢性的な疲労改善、冷え性から来る下痢にも有効的です。
また、消化が悪いイメージを持たれがちなお餅ですが実は消化の悪い食べ物ではありません。
食べる時は温めて、どんな食材とも同じように食べ過ぎないようによく噛んで食べれば問題ありません。
気になるようであれば「白玉」など元から小さくなっているものを選んでも良いかも知れませんね。
小寒
この時期から大寒にかけ、一年で最も寒い季節となります。
前にも書きましたが寒さは「腎」の大敵です。
新たな一年の始まり、仕事始め、学期始めなど気持ち的な切替の上手くいきやすい小寒の時期。
上手に栄養を補給することで身体的にも活動的に切り替えるチャンスです。
正月疲れで疲れた胃は、食事量を少なめにして休ませてあげましょう。
ただでさえ、冬は「陰」気が増えメンタル的な不調が出やすくなります。
胃腸が弱ることもメンタル的な不調を呼びやすいので胃腸の疲れは早めに休ませてあげて下さい。
休み明けのやる気をチャージ
しかし、養生を心がけていてもどうしても長い休みの後は体が動かない、すぐに疲れてしまうなど休みとのギャップに悩みやすい時期ですよね。
そんな時に、気力をチャージしてくれる代表的な漢方薬が補中益気湯と十全大補湯の二つ。
春の項目で補中益気湯はご紹介しているので今回は「十全大補湯」(じゅうぜんたいほとう)をご紹介したいと思います。
十全大補湯は、冬に起きやすい「気」と「血」の不足に最適な漢方薬です。
補中益気湯よりも補血効果に優れています。
元は「四物湯」(しもつとう)と言う、補血、活血に優れた漢方薬に陽気を補い寒邪を除く捕陽散寒(ほようさんかんさよう)と気を補い脾の働きを改善する補気健脾(ほきけんぴ)作用を加えたものです。
どちらも気の補充に強い漢方薬です。
十全大補湯も食欲不振に適応がありますが、食欲不振が強い場合は補中益気湯。
貧血症状がある場合は十全大補湯をお使いになってみて下さい。
アンチエイジング、滋養強壮と言えば
今回は、この季節に不調が出やすい「腎」に補う食材を2点ご紹介します。
まず一つ目は「ヤマイモ」です。
ヤマイモは、腎の他にも「脾」と「胃」を養い消化吸収を高めスタミナ不足の改善に役立ってくれる食材でもあります。
中国では「山薬」(さんやく)と呼ばれる滋養強壮薬としても知られます。
腎を養うことはアンチエイジング効果にも繋がっているため、ヤマイモを積極的に食べることはアンチエイジングにも効果的。
老化予防、ホルモンバランスの調整と大活躍し更年期障害による不定愁訴にも効果が期待出来ます。
また、お子様の発育も促してくれる成長を司る食材です。
どの海老の種類でも大丈夫
続いてご紹介するのは「海老」です。
こちらも「腎」の機能を高める作用を持ち、更に気を補ってもくれます。
そのため、疲れ、足腰の怠さ、白髪、筋力精力の低下の改善に効果が期待出来ます。
こちらも、アンチエイジング効果。
また、お子様にもおすすめの食材。
継続して食べることでその効果をより感じられます。
また、海老は身体を温めて冷えを改善する作用もあるのでこの季節にもピッタリ。
殻には血の巡りを活発にする作用もあるので血の巡りがあまり良くない「瘀血」(おけつ)体質の方は殻ごと食べられる調理方法で摂取するとより良いでしょう。
大寒
暦上、冬の最後の節気です。
一つ前の小寒から引き続き1年で最も寒い時期が続きます。
大寒は「気」「血」の巡りが滞りやすくなるとも言われています。
最初に冬は「蓄える」時期とお話しましたが、この最後の節気もしっかり蓄えていきます。
新しい活動や、運動で汗をかくことは次の「春」まで待つのが良いでしょう。
また、気温の低い時期が続きますので気血の巡りの悪さにより関節痛、足腰の痛み、肩、首こりの悪化。
免疫機能の低下、菌への抵抗力の低下に伴う感染症などもおきやすいので注意しましょう。
漢方を選ぶ時のポイントとは?
漢方薬を用いられる時に、大きく体質を分ける参考として「虚証」、「中間証」「実証」と言うものが用いられます。
簡単に説明すると虚証は、瘦せていて抵抗力の弱そうな方。
実証は、がっちりしていて抵抗力が強そうな人、中間証はその中間にあたる人と表現されることがあります。
見た目の印象で?と思われるかも知れませんが、まずはこのような大まかな分類から症状を確認しその人にあった漢方薬を見つけていくためこの虚実はとても重要です。
そのため、漢方薬でもこの虚実が合わない漢方薬はオススメされません。
今回虚実のお話をしたのはご紹介する「桂枝加朮附湯」(けいしかじゅつぶとう)が虚実を問わずに使うことが出来る漢方薬だからです。
桂枝加朮附湯は寒さが原因、また陽気不足が原因の神経痛、関節痛に効果のある漢方薬です。
患部が冷えて重苦しい痛みを感じる人に用いられます。
自分がどの体質か、分からないと言う時でも虚実を問わない漢方は選択しやすいものです。
症状が一致している、と言う時のファーストチョイスとして選んでみてもよろしいかも知れません。
慢性疲労にかぶを
大寒は「気」と「血」が最も不足しやすい時期であるとお話しましたが、春に向け万全の準備をするため今回は気血を補ってくれる食材をご紹介します。
まず、ご紹介するのは「かぶ」です。
カブは気と血を補う、と言うより慢性的な疲れを感じている「気虚」(ききょ)、「血虚」(けっきょ)の体質の方にお勧めの食材です。
どちらも「気」、「血」が不足している方に出る体質です。
かぶ自体には胃を温める作用があり、腹痛、下痢、便秘などの症状に効果的。
また、温めながらも身体に潤いを与え熱を抑えてくれるのでどちらか一方の効果が強く出てしまうと言うことが無い珍しい食材です。
春に向け「気」が不足している、「血」が不足していると感じる時はかぶを食べてまずは慢性的な疲労を補ってみてはいかがでしょうか?
たら 気血不足
身が雪のように白いことから漢字が作られている「鱈」
また、「たらふく食べる」の「たら」もこの「鱈」から来ているそうです。
そんな鱈は、「気」と「血」を補ってくれる作用があります。
そのため、こちらも気虚と血虚体質の方にお勧めの食材です。
全身の疲れ、息切れ、食欲不振、情緒不安などに効果があります。
血の巡りを活発にして出血を抑える作用もあるため、肩こり生理痛などにも有効的。
最も気血が不足する大寒の時期だからこそ、鱈を使ったメニューを選んでみて下さい。
鱈自体は五性の「平」のためどの食材とも合わせやすい食材。
今回冬でご紹介した他の食材と合わせてお鍋の具材として取り入れてみてはいかがでしょうか?
出典:現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖症状からチャートで選ぶ漢方薬 杉山卓也著
出典:新版 毎日使える薬膳&漢方の食材辞典 阪口珠未著 ナツメ社
出典:食べて体と心をととのえる二十四節気の漢方食材 櫻井大典著 株式会社晋遊社
食材で迷った時はこちらがおすすめ→
監修者 佐々木裕人(精神保健指定医、精神科専門医)