「大人の発達障害です、上手な『休日の過ごし方』を教えて下さい」
大人の発達障害の方の中には、休日の自由時間(余暇時間)を上手く使えない方も少なくはありません。
例えば、予定を詰め込み過ぎて活動し過ぎてしまったり、逆に、気分転換になるようなことを上手く組み込めず、ストレス発散が出来なかったりするのです。
発達障害の方が休日を上手に過ごされているかは、とても重要な事柄です。
実際、休日の過ごし方に悩み、ストレスを抱えている、という例は少なくありません。
これは日本だけのことではなく、海外でも同様で、発達障害の方への余暇の支援が重要視されているのです。
何故なら、余暇の充実は、上手なストレス解消にも繋がるからです。
発達障害の特性をお持ちの方が、余暇を楽しく過ごせるようになれば、仕事で苦労することがあっても、そのストレスを自分で上手に発散することが出来るようになります。
これは大切なストレスマネジメントの一環なのです。
私見ですが、もし「土日休み」というように2日間連続での休日設定の場合、1日を主に「身体のリラックス(メンテナンス)」、もう1日を主に「心のリフレッシュ」に充てることをお勧めします。
身体のリラックス(メンテナンス)として、
・疲れた身体を休ませる
・質の良い睡眠を取る
・ゆっくりお風呂に入る
・栄養価の高い美味しい食事を摂る
・見たいTVを楽しむ
・室内や身の回りの環境整備をする(掃除・洗濯)
……等といったことに充てられると良いのではないでしょうか。
一方、「心のリフレッシュ」としては、
・楽しみにしていた映画を観に行く
・芸術活動をしてみる(美術館に行く、絵を描く等)
・運動や散歩を楽しむ
・買い物に出掛けてみる
・普段作らないような凝った料理をしてみる
・友人と会う約束をしてみる
……等といった、
普段あまり頻繁にはされないような事に、
挑戦されてみられるのも良いかと思います。
そのことで、新しい楽しみや興味の発見に繋がったり、
また日頃使わない“脳の領域“を賦活させることで、
脳科学的にも“リフレッシュした状態”に至る、
といったメリットがあります。
但し、発達障害の方の特性として、「とことんやらないと気が済まない」という所がありますので、余り予定を詰め込み過ぎないようにされて下さい。
そして、「もう少しやりたかったな…」と感じられたら、それをぜひ、次の休日の楽しみとして残しておかれると良いかと思います。
このように、休日に、ご自身の趣味ややりたい事、掃除や公共料金の支払い等のやるべき事の双方を、計画的にこなせるようになると、1週間の生活リズムが安定します。
休日に生活リズムが崩れて、休み明けに遅刻や欠勤をしてしまうということが減り、仕事の安定したパフォーマンスにも繋がっていくのです。
「スポーツが苦手な場合でも、ストレス解消に繋がりますか?」
ストレスの解消方法の一つとして、スポーツを勧められることは多いことでしょう。ただ、もしかすると、「自分はスポーツが苦手だから、却ってストレスになってしまうのではないだろうか?」と心配される方もいらっしゃられるかと思われます。
ストレスを受けていますと、その初期段階で、無関心や無感動という症状が現れることがあります。スポーツはそれを改善するのに非常に良いと言われています。定められたルールの中で競い合うのは刺激的ですし、成果に対する喜びもあるからです。
それでも「人前でスポーツをするのは、下手な様子が見られて恥ずかしい」と思われる方は、一人で出来るスポーツがお勧めです。ウォーキング、ジョギング、サイクリング、ヨガ、水泳、筋トレ…等々がそれに相当するでしょう。刺激という意味では、競技よりも少なくはなりますが、単調な日常にメリハリをつけ、気分転換を図るには効果的です。また、ご自分が少しずつ上達されていかれるのを実感できることは、「スポーツが苦手」と感じられていた方ほど、時として、大きな喜びや楽しみ、達成感に繋がることもあるのです。
加えて、運動をしている時には、脳の中でβエンドルフィン等の脳内物質が、安静時の3~5倍も分泌されます。この物質は、苦痛を軽減し、多幸感をもたらすため、ストレス解消に関係すると考えられているのです。
「全ての疲れは『脳』からきているのですか?」
脳疲労は一番自覚しづらい反面、「疲れの根幹をなす重要なファクター」なのです。全ての疲れは脳の自律神経が大きく作用しているといっても過言ではありません。
自律神経は心身の状態を一定に保つため、呼吸や心拍数を常に調節する役割を担う神経です。過労やストレスにより、過度に自律神経が活動すると、大量の「活性酸素」が発生します。そして、この活性酸素が神経を傷つけるために、疲労感が生まれると言われています。
脳の神経疲労に効く成分として有名なものは、「イミダゾールジペプチド(イミダペプチド)」という成分です。鶏の胸肉、マグロやカツオといった回遊魚の赤身に多く含まれています。これらの食品はぜひとも積極的に摂っていきたいものです。
「睡眠」も脳疲労の解消には欠かせません。良い睡眠がとれていないと、脳疲労が解消せず、身体の疲れがとれないばかりか、頭も何となくスッキリしません。加えて、ポジティブな発想や考えが浮かびにくくなる一方、ネガティブな発想や考えが浮かびやすくなります。
また、同じ脳の部位ばかりを使い続けていることも、脳疲労には影響を与えます。例えば、ずっとパソコンに向かっての作業をされている場合は、時には外の景色を眺めたり、心地の良い音楽を聴いたり、軽く身体を動かして見られたり、ホッとする飲み物をゆっくりと味わってみたり……といったことを適宜取り入れられると、脳の疲労度もかなり軽減されてくることでしょう。
「『過剰適応』って何ですか?②」
職場において「過剰適応」をされてしまわれている方は、「仕事」と「人間関係」に全神経を集中していることが多いです。何とかして早く仕事を覚えよう、人の名前を覚えよう、ちゃんと笑顔で対応しよう…等々といった具合に、常に「外部」に意識を向けているのです。
その向けている意識を、少し「内方向」に、具体的には「自己開示」をすることに向けてみてはどうでしょう。自己紹介や会話のちょっとした機会に、徐々に自己開示をしていくのです。例えば、自分が気にされているようなこと(欠点)を、そういった機会にさらりと伝えておくのも良い方法です。
仕事のやりとりだけだと、その方の人柄や個性といったものは案外伝わりにくいので、業務報告をされる際に、さり気なく感想を添えてみるのも良いでしょう。
このように自己開示の方向に意識を向けることは、仕事や人間関係ばかりに集中し過ぎないという、過剰適応を防ぐメリットもあるのです。新しい環境だと、どうしても無理してまで頑張ってしまう方は、このように違う方向に意識を向けることが、「実力以上に仕事をやり過ぎてしまう」という過剰適応の方の悩みを緩和してくれるのです。
「『過剰適応』って何ですか?③」
職場において「過剰適応」をされてしまう方に共通していることが、「(周囲に)助けを求められない」という点です。
例えば、「他の人に仕事を押し付けるみたいで申し訳ない」「これ位皆自分でやっているから私も自分でやらないと」「自分以外に頼める人がいない」…等々理由は様々ですが、心当たりのある方は要注意です。解決策を「もっと自分が頑張る」という自力頼りになりがちで、ついつい一人で抱え込み、パンクしてしまう可能性があるからです。
そもそも「過剰適応」をされる方は優秀で、なまじ頑張ればできてしまう所に“落とし穴”があると言っても良いでしょう。
頑張っても定時内で終わらない、ちょっとした休憩も取れない程忙しい、毎日緊迫していて心が休まらない等といった、ご自身の過剰適応に気が付かれたら、まずは周囲の人に相談してみましょう。上司、同僚は勿論のこと、場合によってはIT技術に詳しい人に、何かしらの効率化の手段がないか聞いてみるのも良いでしょう。
業務を調整したり減らしたりすることに罪悪感を抱かれるかもしれませんが、こういった気づきや訴え、工夫や改善案を出していくことは、「働き方改革」にも繋がります。もし、合理的で効率的な他の手段や方法がある場合は、ぜひ積極的に提案していきましょう。但し、考える余力も最早なく、もう倒れるギリギリといった方は、即上司に相談されることをお勧めします。上司の側としても、「気になっているのだけれども、こちらから切り出すのも、頑張っているところに水を差してしまうかもしれないし…」と、その方ご自身が言い出してくれるのを待っていることが、かなりのケースであるのも事実なのです。
「『ライフイベント』を重ね過ぎてはいませんか?」
新年度になると、個人差はありますが、何かと「変化」が起こり易い時期になります。皆様にはどのような「変化」があったでしょうか。
この時期に気を付けたいことが「ライフイベント」を重ね過ぎないことであり、可能であるならば、「一気に」ではなく「徐々に」変化させていくことが望ましいとされています。
何故なら、「ストレス」とは、「快」「不快」といった感情に拠るものではなく、まさに「変化」そのものであるからです。ストレスは本来、「外からくる刺激に対する人間のこころの反応」を指しているため、その内容は、バラエティーに富んでいます。
例え、自分自身が「楽しい」と感じる事柄であったとしても、身体はそれを、確実に「ストレス」として受け止めます。もしも、「楽しいことは疲れを感じないから大丈夫」と認識していたとしたならば、それは誤った認識であるのと同時に、今後は、一層気をつけなくてはいけないでしょう。
アメリカの心理学者のホームズらは、「日常に起きる様々な出来事」(=前出の「ライフイベント」)が、人間に与えるストレスの程度を調査し、その結果を「社会的再適応評価尺度」としてまとめ、それぞれのストレスの強さを点数化(LCU得点)しました。それが以下になります。
LCU得点が高い順に列挙されており、第1位は「配偶者の死」であり、LCU得点は「100点」となっています。
- 配偶者の死…………………………………… 100
- 離婚……………………………………………… 73
- 夫婦別居生活………………………………… 65
- 拘留(警察に留置される)………………… 63
- 親族の死……………………………………… 63
- 個人のけがや病気…………………………… 53
- 結婚……………………………………………… 50
- 解雇・失業………………………………………47
- 夫婦の和解・調停…………………………… 45
- 退職…………………………………………………45
- 家族の健康上の大きな変化……………… 44
- 妊娠…………………………………………………40
- 性的障害………………………………………… 39
- 新たな家族構成員の増加……………………39
- 仕事の再調整……………………………………39
- 経済状況の変化…………………………………38
- 親友の死………………………………………… 37
- 転職………………………………………………… 36
- 配偶者との口論の大きな変化…………… 35
- 1万ドル(約100万円)以上の抵当(借金)… 31
- 担保、貸付金の損失……………………………30
- 仕事上の責任の大きな変化…………………29
- 息子や娘が家を離れる……………………… 29
- 親戚とのトラブル………………………………29
- 個人的な輝かしい成功……………………… 28
- 配偶者の就職や離職………………………… 26
- 就業・卒業……………………………………… 26
- 生活条件の変化…………………………………25
- 個人的習慣の修正………………………………24
- 上司とのトラブル………………………………23
- 労働条件の変化…………………………………20
- 住居の変更……………………………………… 20
- 学校を変わる…………………………………… 20
- レクリエーションの変化…………………… 19
- 教会(宗教)活動の変化……………………… 19
- 社会活動の変化………………………………… 18
- 1万ドル(約100万円)以下の抵当(借金)…17
- 睡眠習慣の変化…………………………………16
- 団らんする家族の数の変化…………………15
- 食習慣の変化…………………………………… 15
- 休暇………………………………………………… 13
- クリスマス(正月)………………………………12
- 些細な違法行為…………………………………11
過去1年間の体験した出来事のLCU得点の合計が300点を超えた場合、8割の人が翌年大きな病気に、200~299点の間では、5割近くの人が病気になると言われています(精神科・心療内科的な病気も含めます)。
先述の通り、これはアメリカ人を対象に作られた表であるため、厳密に言えば、日本人とは多少異なる点もあります。しかし、日本人がこの目安を使用したとしても、さほど誤差はないのが実際のところであり、病院やクリニック様によっては、目安として使用されている所もある程です。チェックテストはこちらのクリックから受けることが出来ます。
人生には避けては通れない変化や出来事(ライフイベント)は当然あります。ただ、一つの出来事(例えば、「地方から都会に出て就職する」)が単体の変化に留まらず、付帯的に様々な環境変化がついてきてしまうことを、頭の片隅にでも覚えて頂きければ幸いです。
「『人は人、自分は自分』~対人ストレスへの対処方略」
仕事のプレッシャーや育児・介護疲れといった精神的なストレスも、自律神経を乱す大敵です。中でも、避けて通れないのが、対人関係によるストレスでしょう。
他の人が自分の想定外の行動をされて戸惑われたり、他の人と自分を比べて劣等感を抱かれたり…等々、これらは私たちの心を蝕むストレスとなり、自律神経のバランスを崩す原因になります。何故なら、対人ストレスは自分一人では解決しづらく、その分悩みが深刻化しやすいからです。
そうしたストレスから自由になるには、「人は人、自分は自分」という考えを持つことが大切です。自分の中にブレない「軸」を持ち、他人の意見に左右されない自分自身の「価値観」を据えるのです。
とはいえ、全く人目を気にしない、コンプレックスを持たない等ということは、そう簡単に実践できるものではありませんし、TPOを考えたり向上心に繋げたりという側面では“ある程度”の意識は必要でしょう。
そこで重要になってくるのが、敢えて「気にしないように」と意識するのではなく、「放っておくこと」へと考えをシフトすることです。例えば、自分の心が乱れそうなSNSやネットの情報、ニュースは見ないようにする、自分がより楽しく興味が沸くことに関心を注ぐ…等々、自分自身を優しく慈しんでみられて下さい。他者や環境に振り回されるのではなく、自分の中に豊かな世界を築いて下さい。
それこそが、自律神経を整えるのみならず、ひいてはご自身の“人間力”を磨く第一歩であり、幸せへの近道にもなるのです。
「ストレスを緩和する性格特性・『ハーディネス』とは?」
ストレスが、心身の不調や病気の発症・憎悪に大きく影響していることは、一般的にも良く知られています。しかし、病気の発症の有無や、症状の程度には、個人差が見られます。つまり、同じストレスに曝されても、健康を維持できる人と、そうでない人が存在するのです。
米国の心理学者のKobasaは、ストレスフルな生活をしていても健康を維持している人の特徴を調べ、『ハーディネス』というストレスを緩和する性格特性を提唱しました。
『ハーディネス』とは、ストレスフルな出来事に対する“頑強さ”、“傷つきにくさ”と表現できる個人の(性格)傾向のことを指しています。そして『ハーディネス』は、次の3つの構成要素(=3つの「C」)から成り立つとされており、それが「コミットメント(Commitment)」「コントロール(Control)」「チャレンジ(Challenge)」です。
①「コミットメント」:「何事にも積極的に関わっていこうとすること」
コミットメントとは、「経験しているものに対して、疎外感を覚えるよりもむしろ、自分自身を関わらせていく傾向」のことです。つまり、自分にとって何か脅威に感じる出来事(=ストレス)が起こったとしても、自分自身の持つ能力や目標を再認識した上で、その出来事を主体的に受け入れて関わっていこうとする傾向のことを言います。
コミットメント傾向の強い人は、自分自身、そして自分の周囲の環境を興味深く、価値あるものと考え、どのような状況に対しても、好奇心をもって、その中に意義を見つけることが出来ます。
従って、対人関係においても、必要な時には他者からの援助を受けることが出来るのと同時に、自分自身の持つ資源(=サポート資源)も他者への援助として提供すべきである、という価値観をもっています。つまり、自分自身だけでなく、他人の価値観を理解し、仕事や家族等の人間関係を含む多くの生活状況に対して、積極的に自分自身を関わらせていくことができる、という特性です。
逆に、コミットメント傾向の弱い人は、出来事に対して意義を見出しにくく、他者との有意義な関わりが出来ずに、疎外感を感じやすい傾向にあると言われています。
②「コントロール」:「運命は自分次第で切り開けると考えること」
コントロールとは、「生活上、さまざまな偶発的な出来事に直面したとき、無力感を感じるよりもむしろ、自分がその出来事に影響を及ぼすことができると感じ、行動する傾向」のことです。
自分にとっての脅威(=ストレス)となる出来事に見舞われた時に、コントロール傾向の弱い人は、「自分の力ではどうしようもない」「何をしても無駄だ」「運命だから仕方がない」といった無力感に支配され、物事に対して積極的な努力をせずに、受動的・回避的になりがちです。そのことが、さらに状況を悪化させ、結果としてストレスを増幅させることもあります。
コントロール傾向の強い人は、他者の行動や運命にただ従うのではなく、自分の努力次第で、周囲に対して何かしらの影響を及ぼすことが出来ると信じて行動します。そして、それらの事象を自分の生活の中に上手く組み込んで、全体的に調和したものへと変化させることが出来るのです。
③「チャレンジ」:「変化を恐れず、自分にとってのチャンスとして捉えること」
チャレンジとは、「安定よりは、むしろ変化が生活上普通のことであり、その変化は脅威というよりも、興味深い成長への刺激であると考える傾向」のことです。
人生では、周囲の環境や自分の立場が永遠に安定しているということはあり得ません。例えば、転居・転勤・就職・結婚・家族の独立・突然の解雇など、常に環境の変化の危機に私たちは直面しており、こうした変化が、心身にマイナスの影響をもたらすことも少なくはありません。
よって、チャレンジとは、日常におけるそれらの変化を、自分をより成長させていくための“良い機会”として肯定的に受け止め、それらに積極的に向かい合っていく個人の傾向に他なりません。
チャレンジ傾向の強い人は、生活を向上させるのは、容易さや安全さではなく、変化から自分が得た成長であると信じて行動できますが、チャレンジ傾向の低い人にとっては、変化は現状を破壊する脅威以外の何物でもない、と認知されてしまうのです。
ハーディネス傾向の強い人は、例えば、職場内で全くの未知の部署に配置換えとなった場合においても、ただ戸惑いを感じるのではなく、「自分のキャリアアップのチャンスだ!」と捉えて、仕事に向き合うことが出来ます。他にも、見知らぬ土地に転居した場合でも、孤独に打ちひしがれるのではなく、積極的に地域に出て、新しい隣人たちと関わっていくなど、遭遇した出来事の中に、何らかの意義や意味を見出し、自らの為すべきことを現実的に検討し、状況に積極的に関わることができます。
逆にハーディネス傾向の弱い人は、遭遇する出来事を“脅威”として、受動的・否定的に捉えてしまい、現状を打開する方法も見出せないまま、無力感に支配され、心身両面に悪影響が生じてしまうのです。
「『月経前不快気分障害(PMDD)』を引き起こす要因と対策とは?」
「月経前気分不快気分障害(以下:PMDD)」を引き起こす要因として、大きく3つ原因が考えられます。それが「体質」「脳機能」「心理面」の3つです。
まず、「体質」に原因がある場合としては、自律神経活動に変異があったり、エストロゲン受容体αに変異があったり、正常ホルモン値への異常があったりするケースが挙げられます。PMDDを発症しやすい女性は、自律神経の活動に対する過敏な反応が見られることが分かってきています。また、環境の変化に身体がついていくのに時間が掛かったり、様々な外部の刺激に敏感に反応されたりするなど、デリケートな体質の持ち主であることも多いと言えます。また、脳内には様々なホルモンを分泌、受容する器官がありますが、その部分に先天的な変異(形の変形)がある場合には、ホルモンの活動に異常が現れます。海外の文献においても、PMDDの患者様にのみ、そのような変異や異常がある、という報告もなされています。
上記のように「体質」に原因がある場合は、「自律神経を安定させること」が最優先になります。睡眠をはじめとした生活習慣を整えること、日光をよく浴びること、上手な呼吸の体得、場合によりましては、漢方薬の処方も有効になってくることでしょう。
次に、「脳機能」に原因があるものとしては、脳細胞の機能低下や内分泌異常が見られるケース、セロトニン含有量が少ないケース、運動機能低下や血流障害があるケースが考えられます。脳の機能は生活習慣の影響を受けると言われています。特に、栄養素が足りない場合は、脳細胞が正常に機能せず、ホルモン分泌も正常になされません。また、セロトニンというホルモンは脳内でも合成、分泌され、感情バランスに大きく関わる働きをしますが、この合成量が減ることで、うつ病を発症します。運動機能低下や血流障害に関しては、基本的には全身運動を行うと脳内の血流や脳内体温は上がるのですが、この運動が十分でないことで、脳内環境が著しく低下することが知られています。
上記のように「脳機能」に原因がある場合は「体組織を再構成すること」が優先されてきます。具体的には、きちんとした栄養素の摂取、直接糖の制限、運動機会を増やすこと、などが挙げられます。
最後は「心理面」です。過去のモヤモヤが解消されないまま来られてしまわれたり、現在過度なストレスを受けてしまわれたり…等の心の問題がPMDDを引き起こす原因となり得ます。特に、PMDDにおいて、激しい怒りや不安などが起きるキッカケとなるのは、この「心理面」に拠るところが大きいとも考えられています。
上記のように「心理面」に原因がある場合は「ストレスマネジメント」が重要になってきます。対人関係の改善、過去の囚われ、将来に対する不安などを、カウンセリング等を通して、一つひとつ解決させていかれることが望ましいでしょう。
当然ながら、ストレスフルな現代社会に生きる女性たちにとって、これら3つの要素のどれか1つが原因であるとは言い切れません。大抵の場合は、この3つ複合的に関連し合いながらPMDDを引き起こしていると言えるでしょう。
そうした意味において、今の生活習慣を見直されたり、ご自身の心理的な気になりを解決されていかれたりすることは、根本的なPMDDの治療において、不可欠であるとも言えるのです。
「『精神科ショートケア・デイケア』を受けるメリットは何ですか?」
精神科ショートケア(あるいは、デイケア)を受けてから、社会復帰(復職・再就職・転職等)をされた方が良い場合としては、次のようなケースが挙げられるでしょう。
★ 休業期間が半年以上に渡るなど、職場や働くことから長期間離れていた場合
★ 以前にも、精神科・心療内科の疾病により長期間休業したことがある場合(再発の場合)
★ 職場の軽減勤務の制度がなく、職場復帰後、すぐに本来の業務の遂行が求められる場合
★ 休業中に、1人で自主的にリハビリプログラムを組み実施してみたが、上手くいかなかった場合
★ 独り暮らしで、周囲の支援が期待できない場合
…また、精神科ショーケア(あるいは、デイケア)は、専門の機関で、複数人数にて実施されるため、1人で行うリハビリプログラムでは得ることが出来ないメリット(利点)が存在します。それは以下のような事柄です。
☆ 専門的な立場から、精神科・心療内科の疾病に対する正しい知識を習得できる
☆ 常に客観的に状況を判断することが出来る専門スタッフがいる
☆ 自宅等よりも職場に近い環境でプログラムを受けることができる
☆ ご自分なりのストレス対処法を身に付けることが出来る
☆ 複数人で行うプログラムを通して、コミュニケーションスキルが向上する
☆ 同じような悩みを持つ参加者と一緒に、社会復帰を目指すことができる
☆ 自己分析や再発予防プログラムを通して、社会復帰後も安心して就労ができる
☆ 「通う場所」として機能することで、規則正しい生活リズムや体力作りに繋がる
「『マインドワンダリング』って何ですか?」
私達の心は常に何かしらの思考にとらわれており、感情(喜び、ワクワク感、楽しさ、悲しみ、不安、怒り、心配)等も同時に感じています。
例えば、未来についての思考として「夕食は何にしよう?」「明日の天気はどうだろう?」「どんなふうに相談したらよいのだろう?」…等といったものが挙げられるでしょう。
また、過去について思考として、「あの時あんなことしなければよかった」「この商品は買うべきではなかったのに…」…等といったもの挙げられるでしょう。
そういった過去や未来のことへの思考の囚われが、「マインドワンダリング(心の迷走)」です。マインドワンダリングが起きているその時、私達は「今この瞬間」への感覚(味覚、聴覚、触覚、視覚、嗅覚)をじっくりと感じて生きることが難しくなってしまいます。
すなわち、「マインドワンダリング(心の迷走)」とは、過去のストレスや未来への不安を考えるあまり、今この瞬間、今現在に注意(集中)が向けられなくなっている状態であると言えるでしょう。
人は個々人によって、「マインドワンダリング」に陥りがちな時というものが、ある程度決まっています。個人差は当然ありますが、例えば「夜中にベッドに入ったのに中々眠れない時」や「体調(心身)が優れない時」、「目下急がなくてはいけないことや、気になることがある時」、「日曜日の夕方になって、明日から始まる仕事のことを考えた時」…等々、人の数だけ様々なものが考えられます。
そして、そうなった際には、一旦過去や未来の思考から気持ちを戻すための工夫や、マインドワンダリングから抜け出すための方法、といった対処方法(ストレス対処・ストレスコントロール法)を、事前に見つけておくことが有効になってくることでしょう。実際に陥った時に活用することは勿論のこと、「例えマインドワンダリングに一時陥っても、自分は自分をコントロールすることが出来る」という気持ちを持てるようになること自体、ストレス対処において非常に意味あることなのです。
監修者 佐々木裕人 (精神科医、精神保健指定医、精神科専門医)