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漢方薬+証タイプ+薬膳総集編

 

今回は以前ご紹介した薬膳での証タイプの解説、そして薬膳での未病改善。

それぞれの証タイプごとのおすすめ食材、料理を追加し、前回と合わせて総集編でお送りします。

 

改めて自分の証を知り、自分にあった食材で薬膳を楽しんでみて下さい。

 

 

「漢方を選ぶときはどうやって選べば良いですか?」

 

漢方を選ぶとき、勿論医師薬剤師にご相談いただくのが一番ですが。

漢方には体質や体系から判断される「証(しょう)」と、体の状態を捉える「気・血・水(き・けつ・すい)」というものがあります。

 

証は「実証(じっしょう)」と「虚証(きょしょう)」、そして双方の中間にあたる「中間証(ちゅうかんしょう)」があります。

 

実証と虚証の特徴は以下の通りです。

実証 虚証
・体力がある

・筋肉質で固太り

・血色がよく肌ツヤがある

・胃腸が丈夫で便秘ぎみ

・声が力強い

・暑がり

・体力がない

・瘦せ型で水太り

・顔色が悪く肌荒れしやすい

・胃腸が弱くて下痢しやすい

・声が弱々しい

・寒がり

 

医師は、この証を見て次にご紹介する「気・血・水」のバランスを整えます。

気は生命エネルギー、元気の素、血はそのまま血の流れ、水は血液以外の水を差します。

これら3つがバランス良くあると健康であり、これらのバランスが崩れると体に症状が現れます。

 

バランスが崩れた状態を次のように表現します。

 

血は十分だが流れが滞っている状態を「瘀血(おけつ)」

血の流れが滞り肩が凝る、手足が冷える、と言うのはこの状態を指します。

温めて血流を良くし肩こりや冷えを改善するのは瘀血を改善させていたんですね。

 

続いて「血虚(けっきょ)」これは血の量や質が不足している状態を指します。

血液検査で貧血と言われた、血が薄くて献血が出来なかった、そんな人はこのタイプに属するかも知れません。

また、肌も乾燥しやすくなります。

 

続いて「気虚(ききょ)」

気が不足している状態を言います、気力が無いと言う言葉そのままに。

原因の無い体の怠さを感じられる方もいらっしゃるでしょう。

 

続いて「気滞(きたい)」/気鬱(きうつ)、肝鬱(かんうつ)、肝鬱気滞(かんうつきたい)とも呼びます。

気の量は十分足りているが滞っている状態を指します。

不安感やのどが詰まったような感覚、体は元気なのになんだか落ち込んでいる…と言うときは気滞の状態かも知れません。

 

続いて「水滞(すいたい)」/水毒(すいどく)、痰飲(たんいん)とも呼びます。

水が滞ったり、不足している状態です。

多すぎても少なすぎてもこの水のバランスが乱れ、症状としては浮腫み、頭痛などが挙げられます。

 

これらは独立して存在している訳では無く、血虚と水毒が重なっている。

気虚と瘀血が混在している、など同時に起こることもあります。

 

自分の証が何か、今乱れている気・血・水は何かが分かると漢方は選びやすくなるかも知れません。

ただし、自分の証にあっていない漢方を服用をすると副作用が出ることもあります。

また、証は変化することもありますので病院を受診し医師に客観的に判断していただくことも必要でしょう。

 

「もっと知りたい!漢方薬~証をもっと知ろう①~」

 

以前【心療内科 Q/A】「漢方を選ぶときはどうやって選べば良いですか?」の記事で漢方を選ぶ時の選び方の一例をご紹介しました。

 

ただし、あれはほんの入口に過ぎず漢方を選ぶ時は更に細かい分類が存在します。

自分にあった漢方を選ぶこと、自分の状態を理解することは治療においてもとても重要な一要素です。

 

今回は証を更に詳しく解説していきます。

 

まず、漢方を用いる東洋医学では中国の易学(えきがく)にある「陰(いん)」「陽(よう)」、森羅万象はどちらかの性質に分けられると言う考え方があります。

どちらかが多すぎても少なすぎても良くなく、相互に働きあいながら健康のバランスをとっていきます。

足りないものは補う、多いものはそぎ落とす、と言うのが基本的な考えかたです。

 

体内における陰とは、熱を冷まし潤す、力。

陰が不足する、陰虚(いんきょ)の状態になると火照りや渇き、乾燥、充血、イライラの原因となります。

 

陽はその反対で体を温め、元気よく動かす、熱。

陽が不足する、陽虚(ようきょ)の状態になると体の冷え、活力の低下、内臓機能低下、精神的な落ち込みの原因となります。

 

そして、前回体質や体系から「証(しょう)」を判断する。とお話させていただきましたが。

ここに更に、病態に関する証である「表裏(ひょうり)」、病気のタイプをとらえる証である「寒熱(かんねつ)」が加わってきます。

 

「表裏(ひょうり)」とは、①病気の部位、②病気の進行の2つをあらわすものに分けられ①病気の部位は「表」なら体表部(皮膚や体の表面)、「裏」なら内臓全般を指します。

②病気の進行は表から始まり裏のほうに進むと考えられ例えると風邪なら引き始めの悪寒や頭痛、発熱は「表」

時間経過により現れる吐き気、腹痛、下痢などは「裏」にあてはまります。

 

急性症状には表が多く、慢性症状には裏が多い。

病気一つを紐解いてもこのように表と裏に分けて考えていきます。

 

更に表から裏に進行する途中の「半表半裏(はんぴょうはんり)」と言う状態もあります。

 

続いて「寒熱(かんねつ)」

こちらは病気のタイプをあらわす証で、「寒(かん)」は言葉のまま冷たいものが入り込んで不調が起きている状態。

「熱」は熱いものが入り込んで不調が起きている状態をいいます。

寒気を感じる、顔色が悪いなら寒、火照り、発熱などは熱、と考えると分かりやすいですね。

 

ここまでで既に4つの新しい証をご紹介していきました。

これらを組み合わせることでその人にあった分類が更に細かく分けられていきます。

 

例えば前回ご紹介した、「実証(じっしょう)」と今回ご紹介した「熱証(ねっしょう)」のタイプに当てはまる方は「実熱(じつねつ)」と言う証を持つ方になります。

 

熱は体温維持や新陳代謝機能の調節を担いますが、これが過剰になると発汗、ほてり、体内の炎症症状が起きます。

エネルギーがありすぎて発散しきれず、内側に停滞し体温上昇している状態ですね。

病気や治療と言うと元気が無い状態を想像しがちですが、漢方ではこう言ったエネルギーがありすぎる状態もバランスを改善し健康に導いてくれます。

 

次回はさらに新しい証をご紹介していきます。

 

「もっと知りたい!漢方薬~証をもっと知ろう②~」

 

【心療内科 Q/A】「漢方を選ぶときはどうやって選べば良いですか?」、「もっと知りたい!漢方薬~証をもっと知ろう①~」でかなり証に詳しくなってきました。

 

本日は更に新しい証をご紹介していきます。

 

以前の記事で東洋医学は中国の易学の考え方を用いているとご紹介させていただきましたが、まずはこちらの図をご覧ください。

もしかしたら、どこかで見たことある…と思われた方もいらっしゃるかも知れません。

こちらは陰陽五行説と言い「万物は水・金・土・木・火の5要素で構成されている」と考えた思想を人体に置き換えた図です。

 

人体を「肝(かん)」、「心(しん)」、「脾(ひ)」、「肺(はい)」、「腎(じん)」の5要素に置き換え、「五臓(ごぞう)」と呼びます。

また、この五臓には表裏の関係を持つ「胆(たん)」、「小腸(しょうちょう)」、「胃(い)」、「大腸(だいちょう)」、「膀胱(ぼうこう)」、「三焦(さんしょう)」と言う「六腑(ろっぷ)」があります。

上記の図でいうと、肝と表裏なのは胆、心と表裏なのは小腸と言った感じです。

イメージとしては表裏の関係にあるもの同士は助け合う関係である一方でどちらかが不調であるともう一方にも不調が現れるようになります。

 

五臓六腑に染み渡る…と言うのはその名の通り体中に染み渡る…と言う意味だったんですね。

 

六腑には栄養物質を摂り入れて老廃物を排泄する働きがあり、五臓は六腑が摂り入れた栄養素や呼吸で取り入れた酸素を気・血・水に転化、貯蔵、代謝させる働きがあります。

 

この五臓はそれぞれに連動し、互いの働きを促進(相生(そうせい))したり、制御(相克(そうこく))したりします。

 

図でいうと肝は心を相生させ、脾を相克させる、と言う見方です。

 

それぞれの働きを詳しく解説していきます。

 

「肝(かん)」

肝臓の機能を含み、血液の貯蔵や解毒代謝も行い。

主には気の流れを通して気持ちや情緒、自律神経の働きを整えて体全体の機能を保ちます。

 

表裏である「胆(たん)」は胆汁を生成して消化器機能を調整。

胆力、と言う言葉もありますが精神面を担う部位でもあります。

 

「心(しん)」

その名の通り「心臓」と「心(こころ)」を表します。

失調すると血液が不足して動悸、息切れなど病態になります。

精神活動をコントロールし、失調すると不安、焦燥感、記憶力、集中力の低下を招きます。

 

表裏である小腸は、一見無関係に見えますが。

心に不調があると排尿時の熱感、痛み、血尿などが出ることも。

また、舌ともつながりがあり口内炎や舌の痛み、痺れ、味覚障害などを感じることもあります。

 

「脾(ひ)」

こちらは脾臓ではなく、膵臓の働きを表す消化器の総称のようなイメージです。

食事で取り入れた栄養を消化吸収し、体を動かす気を作ります。

一方でストレスに弱く、湿気、過度の水分でも機能を失調してしまうことがあります。

 

表裏である「胃(い)」とは互いに協力し合って消化吸収を行い、気を作り出します。

脾の働きが失調すると、食欲不振、胃もたれ、嘔気、胃腸の不調などがあらわれます。

表裏であるからこそ胃に優しい食べ物を食べてあげると脾の回復には効果的です。

 

「肺(はい)」

呼吸器の機能とともに、取り入れた酸素から気を作る働きも担います。

東洋医学では皮膚、大腸機能を総括する部位とされ水分代謝や免疫機能もあるとされています。

 

表裏である「大腸(だいちょう)」は、皮膚機能、免疫機能の低下などがみられる場合に肺の不調を考えます。逆も然りで、肺の不調がある場合は大腸の働きにも影響をあたえ便秘などが起こることもあります。

 

「腎(じん)」

腎臓、膀胱系の働きを持ち、水分代謝に関わり。

また、幼児期の発育、歯、骨、髪、筋肉の生成、老化、精子卵子の生成、生殖能力、生理機能などに深くかかわっています。

 

表裏である「膀胱(ぼうこう)」は体内を巡った水分を取り込み、不要なものを尿として排泄させます。

 

ここで一つ、六腑に含まれていながらも五臓と表裏に無いものが一つだけ出てきます。

それが「三焦(さんしょう)」です。

三焦は五臓、三焦以外の六腑全てを包み通じ合わせる腑と言われています。

気や水が巡る経路として滞りなく体内への出入を支えています。

 

一気に、新しい証。

五臓六腑についてご紹介してきました。

前回までの証と合わさると、一体どうなるんだろう…と思われる方もいらっしゃると思いますので一つ例をご紹介します。

 

例えば「脾胃虚寒(ひいきょかん)」

これは、今回ご紹介した「脾」と表裏である「胃」に不調をきたしており、最初にご紹介した「虚」の証を持ち前回ご紹介した「寒」による影響を受けている状態となります。

 

実際に起こっている症状を例にすると脾、胃の機能低下で手足やお腹の冷え、腹部の鈍痛、下痢などの症状が出ている状態と考えられます。

 

消化器症状の不調は脾、胃の可能性が高く。

冷えや、下痢が出ているということは実、中間、虚でいうと虚。

実際にお腹に冷えをかんじているので寒…この場合は脾胃虚寒証に効く漢方を選ぼう!となるわけです。

 

勿論、ここまで分からなくても症状と実、中間、虚で漢方は大まかに選ぶことが出来ますので大丈夫ですよ。

 

かなり幅広く漢方に詳しくなってきました。

なんだか、漢方、ちょっと試してみたくなってきませんか?

 

「もっと知りたい!漢方薬~証をもっと知ろう③~」

 

もっと知りたい!漢方薬~証をもっと知ろう~、2回に渡ってお送りしてきましたが本日が最後です。

これを覚えれば証マスター!張り切っていきましょう。

 

本日は「六淫(りくいん)」についてご紹介していきます。

 

東洋医学では、病気を起こす外部要素。

主に気候的な要因を示す「六気(りっき)」と言う考え方があります。

それらが体の許容範囲を著しく超えると害毒となり病気の原因となると考えられているのです。

 

六気とは、「風(ふう)」、「寒(かん)」、「暑(しょ)」、「湿(しつ)」、「燥(そう)」、「熱(ねつ)」

許容範囲を超えた状態を「風邪(ふうじゃ)」、「寒邪(かんじゃ)」、「暑邪(しょじゃ)」、「湿邪(しつじゃ)」、「燥邪(そうじゃ)」、「熱邪(ねつじゃ)」と呼び。

これらを「六淫(りくいん)」と呼びます。

 

どのような状態を指すのかご説明していきます。

 

まずは、「風邪(ふうじゃ)」

春の時期に活発になりやすい邪気で、頭痛、めまい、くしゃみ、咳、鼻づまりなど上半身に不調が出ます。

感冒も、この風邪に他の熱邪や寒邪、湿邪が合わさって体内に侵入しで起こることが多く。

季節の変わり目に風邪をひきやすい、と言うのはこう言った六淫が合わさりやすいことがあるのかも知れません。

 

続いて「寒邪(かんじゃ)」

寒い時期の寒気だけでなく、夏に涼しい、冷房で体を冷やすなどでも侵入しやすい邪気です。

悪寒、発熱、頭痛などの症状が現れ、寒邪の侵入が深いとそのまま腹痛などを引き起こすこともあります。

 

続いて「暑邪(しょじゃ)」

夏に限らず許容範囲を超えた暑さが原因で侵入しやすい邪気です。

口渇、発熱、頭痛、イライラ、ヒステリーなど精神面への影響も大きいのが特徴です。

 

続いて「湿邪(しつじゃ)」

湿度の高い時期、多湿の地域で体に侵入しやすい邪気で入り込むと除去するのが大変な邪気でもあります。

水分代謝の異常から、吐き気、食欲不振、下痢、だるさ、関節痛などの症状がみられます。

 

続いて「燥邪(そうじゃ)」

体内を乾燥状態にする邪気です。

鼻、喉、口の粘膜を乾燥させ、痛み、鼻血など出血を引き起こします。

 

続いて「熱邪(ねつじゃ)」

体内の熱量を過剰にする邪気で、暑邪よりも症状が強いのが特徴です。

高熱、充血、血尿、腫れ、のぼせなど強い症状がみられ、ウイルス性発熱、熱病もこれに該当します。

 

これで、前の記事も含め全ての証をご紹介いたしました。

今回も一つ例を用いて六淫をまとめます。

 

「気虚風湿(ききょふうしつ)」

これはまず、基本的には気虚の症状があります。

気虚は気が不足している状態、原因の無い体の怠さを感じている状態ですね。

気血水のどこが不足しているのか、を見ることに加えて環境から来る証をみることで更にその人にあった漢方が選びやすくなります。

症状としては水太り、多汗、重怠さ、間接痛、むくみ、尿量減少などです。

 

 

こうした体質、病態、外的要因を合わせてその人の証を判別します。

なんとその数は100種類以上。

かつ、証はその時々で変化していくため一生決まっているものではありません。

 

自分の性格を知るように、自分の証を知ることでその不調は改善されるかも知れません。

ぜひ一度ご自分の証について考えてみてはいかがでしょうか?

 

「もっと知りたい!漢方薬~食材をもっとよく知ろう~」

 

以前より証のタイプ別おすすめ料理、また食材には五味と五性があることをご紹介させていただきました。

 

医食同源、と言う言葉があるように食べることは生きること。

勿論飲み物も含みます。

日々の生活で出来ることから、健康を意識してみませんか?

 

前回を簡単に振り返ると、まず食べ物の味と作用の「五味(ごみ)」

「酸(さん)」、「甘(かん)」、「辛(しん)」、「苦(く)」、「鹹(かん)」に分けられ、五行説では全ての食物がこの5つのどれかの属性を持っているとされています。

 

そして、そんな食べ物の性質の「五性(ごせい)」

これは、「熱(ねつ)」、「温(おん)」、「平(へい)」、「涼(りょう)」、「寒(かん)」に分けられます。

 

まずは五味から詳しくご説明していきます。

 

「五味(ごみ)」は味の効能からも分類されますが、分かりやすいのはその食材の味から分かります。

 

まずは、「酸(さん)」

酸味の酸です、すっぱい食材が多いのが特徴です。

効果としては大きく抑制引き締め効果。

体全体、発汗、便や尿、筋肉あらゆる部分を引き締めてくれます。

一方で唾液の分泌をよくする効果もあります。

 

代表的な食材は、梅、トマト、みかんなど。

どれも口に入れたことを想像するだけで唾液が出てきませんか?

 

続いて「甘(かん)」

甘味の甘です、甘味を感じられる食材が多いのが特徴です。

効果としては、緊張の緩和、滋養強壮、補気(やる気を出す)

胃腸の働きも助けてくれます。

 

代表的な食材は、とうもろこし、バナナ、なすなど。

豆類や卵なんかもここに含まれます。

 

続いて「辛(しん)」

辛味の辛です、辛い食材が多いのが特徴です。

効果としては、発汗、血行促進。

そして、気の巡り自体も改善する効果があります。

 

代表的な食材は、とうがらし、生姜、ネギなど。

香味野菜が多く含まれます。

 

続いて「苦(く)」

苦味の苦です、苦い食材が多いのが特徴です。

効果としては、排水排熱のデトックス作用。

精神安定にも効果があります。

 

代表的な食材は、にがうり、ゴーヤ、レタスなど。

食材以外だとコーヒーなんかもこの苦に含まれています。

 

続いて「鹹(かん)」

鹹、とは塩味のこと。

効果は便秘改善。

また固いものを柔らかくする作用もあります。

 

代表的な食材は、アサリ、イカ、カキなど魚介類など。

勿論ですが塩味をつける調味料の塩、醤油、味噌もここに含まれます。

 

代表的な食材はその味から五味を予測することが簡単ですが。

先ほどもご説明したようにこの五味は一つの食材が複数もっていたり、味では無く効果で分類されることもあるため意外なものが意外な五味だったんだ!と言うことも少なくありません。

 

そして、この五味と一緒に更に食材を細かく分類してくれるのが「五性(五性)」です。

「熱(ねつ)」、「温(おん)」、「平(へい)」、「涼(りょう)」、「寒(かん)」は凄く簡単に言うと熱が一番温め効果が強く、温は熱よりマイルド。

一方寒は、一番冷やす効果が強く、涼は寒よりマイルド。

平はその温めも冷やしもしないがその分、どんな体質の方でも食べやすい食材です。

 

この五味と五性が掛け合わさって、その食材の効能が決まります。

そして、それが五臓六腑のどこに行き渡るかで身体面または精神面に効果が分かります(経絡)

そして更に、食材を掛け合わせることで一つの料理で複数の効果を得ることが出来るのです!

 

例えば寒の食材に熱の食材を足して体を冷えすぎないようにする…なんてことも出来ちゃいます。

 

是非皆さんも次のお買い物の際は、五味と五性を思い出してみてくださいね。

 

「もっと知りたい!漢方薬~薬膳で未病改善!①~」

 

暑い季節になって来ましたね。

この時期はただでさえ体調を崩しやすく、食欲が減って体力も落ちやすいところ…。

 

実は漢方薬のタイプでご紹介した証ごとに、おすすめの食材があるのはご存知ですか?

一口に夏バテ、と言ってもお腹を壊している、夏風邪をひいてしまったなど症状は様々かと思います。

 

今日は、証のタイプ別おすすめ料理をご紹介していきます。

 

まず、今回のように中医学に基づき健康を促進する食事を『薬膳(やくぜん)』と言います。

薬膳、と言うとお粥や薬の入ったお鍋みたいなものを想像する方も多いかも知れません。

薬膳粥、と言う名前に使われていることからイメージがついているかも知れませんがお薬以外の食材でも似たような効果が得られるのです。

勿論、生薬に比べれば食材は穏やかな効き目ですが毎日簡単、種類豊富に続けられるのが嬉しいですね。

 

今回ご紹介するのは「気虚(ききょ)」タイプのおすすめ。

気虚とは気が不足している状態で、原因の無い体の怠さを感じられる方もいらっしゃるでしょう。

気虚の「気」は生命エネルギー、各臓器や器官を動かす力も担います。

そのため気が虚(少ない)状態は各臓器や器官の機能低下とも言えるのです。

 

まず、気虚タイプでも特に胃腸が弱く食欲不振、下痢軟便の多い方。

そんな方におすすめなのは長芋、山芋などのイモ類、豆類などです。

食欲が低下していることもありますので、長芋とそら豆をいれて『お味噌汁』にしてみてはいかがでしょうか?

味噌自体にも腸内環境を改善させる効果がありますし、食欲が無い時でも比較的口に運びやすいかと思います。

 

続いて気虚タイプでも元気が出ない、倦怠感の強い方。

そんな方におすすめなのは、牛肉、鶏肉、海老などです。

牛肉、鶏肉、海老を合わせて取るために『牛肉(又は鶏肉)のオイスター炒め』はいかがでしょうか?

やる気が出ないと食事メニューもなかなか考えつかない…そんな時はメニュー豊富な中華料理から食べられそうなものを是非選んでみてください。

 

続いて気虚タイプでも感染症にかかりやすい方。

そんな方におすすめなのは、キノコ類、ブロッコリー、アスパラガスなどです。

どの食材でも合う『アヒージョ』はいかがでしょうか?

実はアヒージョはオリーブオイルを加熱することで簡単に作れるんです、油を使うときは油跳ねと目を離さないように注意して調理して下さい。

 

最後に気虚タイプでも手足など末端に冷えを感じる方。

そんな方におすすめなのはニンニク、ショウガ、ネギ、玉ねぎ、ニラ、サンショウ、シナモンなどの香味野菜。

メインで使われる物が少ないだけに料理のメインではあまり見ませんが白米とだし醤油を一緒に炊いて『生姜ご飯』はいかがでしょうか?

実は生姜は加熱することで成分が変化し、体を温める効果を発揮します。

お好みの割合で味付けするのも楽しいですね。

 

なお、この気虚タイプの方にお勧めの漢方は全体的に気力を補ってくれるもの。

また、食欲不振改善に効果のあるものが多いです。

例)四君子湯、六君子湯、補中益気湯、参苓白朮散、玉屏風散、啓脾湯、清暑益気湯、人参湯など

 

気虚タイプの方へのおすすめ料理をご紹介してきましたが、何より気虚の状態は過労を避け十分な休息と睡眠をとること。

それによって疲労の蓄積を改善させることが不可欠です。

 

気虚タイプは胃腸が弱っていることが多いので、胃に負担はかけない程度でぜひ参考にしてみてください。

 

「もっと知りたい!漢方薬~薬膳で未病改善!②~」

 

医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。

 

薬膳で体質改善①でおすすめ料理をご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。

 

今回はそのシリーズの第二弾をお届けいたします。

今回ご紹介するのは「気滞(きたい)」タイプにおすすめの料理です。

 

まず、気滞タイプとは気の量は十分足りているが滞っている状態を指します。

不安感やのどが詰まったような感覚、体は元気なのになんだか落ち込んでいる…と言うときは気滞の状態かも知れません。

気滞による自律神経の異常が原因で体の様々な部分に異常が現れ、また精神ストレスで憂うつ、イライラなどの不調が現れることもあります。

 

気滞タイプでも片頭痛や月経不順、PMS(月経前症候群)に悩む方。

そんな方におすすめなのはミツバ、シュンギク、セリ、セロリ、パセリなどの香味野菜、柑橘類です。

お浸しなどにしてそのまま食べるのがおすすめですが、香味野菜は癖があって苦手な方も多いのではないでしょうか?

そんな方には「かきたま汁」がおすすめ香味野菜の癖がスープと卵で抑えられるので苦手なか方でも食べやすくなりますよ。

 

続いて気滞タイプでも怒りっぽい、イライラが止まらない、憂うつ、不安の強い方。

そんな方におすすめなのはレモン、ミカン、スダチ、オレンジなど酸味の強い柑橘類、お酢を使用した料理です。

料理とは言い難いですが、そのまま食べることが出来るのも嬉しいですね。

また、最近では購入しやすくなった「飲むお酢」にも柑橘類は大抜擢されていることが多いのでこの機会にチャレンジしてみても良いかも知れません。

 

続いて気滞タイプでも肝機能の失調、目のトラブル、筋肉痛けいれんのある方。

そんな方におすすめなのはレバー、シジミ、アサリ、ブルーベリーです。

ここは王道「レバニラ炒め」はいかがでしょうか?

レバーが苦手な方がシジミやアサリを「酒蒸し」、「すまし汁」、パスタの具材になんかも良いかも知れませんね。

 

続いて気滞タイプでも不眠がちな方。

そんな方におすすめなのは鎮静作用のあるハーブ、ミント、ラベンダー、ジャスミン、カモミールなどがこれに当てはまります。

寝る前に「ハーブティー」として飲用していただくのが取り入れやすい方法かと思いますがクッキーなどを作る際ティーパックの中身をすりつぶして種に混ぜるだけで簡単にお好みの「ハーブクッキー」を作ることも出来ます。

 

なお、この気滞タイプの方にお勧めの漢方は全体的に気の流れを改善するもの。

また、精神症状の改善作用に効果のある「柴胡(さいこ)」と言う生薬の入った漢方が多いです。

例)加味逍遥散、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴朴湯、大柴胡湯、女神散、半夏厚朴湯、抑肝散、抑肝散陳皮半夏など

 

気滞タイプの方へのおすすめ料理をご紹介してきましたが、何より気滞の状態は精神的ストレスが引き起こしているのでストレスの蓄積を発散させることが何より重要です。

生活リズムの見直しも、体への負担を軽くすることが出来ますよ。

 

美味しい食事は一つのストレス発散です。

こだわりすぎず、参考程度に試してみてくださいね。

 

「もっと知りたい!漢方薬~薬膳で未病改善!③~」

 

医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。

 

薬膳で体質改善①、②でおすすめ料理をご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。

 

今回はそのシリーズの第三弾をお届けいたします。

今回ご紹介するのは「血虚(けっきょ)」タイプにおすすめの料理です。

 

まず、血虚タイプとは血の量や質が不足している状態を指します。

血液検査で貧血と言われた、血が薄くて献血が出来なかった、そんな人はこのタイプに属するかも知れません。

血が不足する原因として消化器系の慢性的な機能低下だけでなく、療養による消耗。

女性ですと出産、月経なども当て嵌まります。

 

血虚タイプでも、栄養不足による疲労や立ち眩みのある方。

そんな方におすすめなのはナツメ、落花生、ニンジン、ホウレンソウ、黒ゴマ、黒砂糖、レバー、鶏肉など俗に言う「赤」と「黒」の食材。

いつもの食事の前菜に「ニンジンのピーナッツ和え」、「ホウレンソウの黒ゴマ和え」はいかがでしょうか?

他にも「ホウレンソウのピーナッツバター和え」、「鶏肉の黒糖煮」等このグループは相性の良い食材が豊富です。

 

続いて血虚タイプでも乾燥が気になる方。

そんな方におすすめなのはイチゴ、バナナ、モモ、キウイ、海藻類、豆腐、ハチミツ、卵、手羽先、豚足など。

イチゴなどのフルーツと牛乳をミキサーにかけ、ハチミツで甘さを調整した「ミックスジュース」は定番ですが。

卵をメインに使用したデザートも種類が豊富!フルーツとの相性もばっちりですので合わせてみてはいかがでしょうか?

 

続いて血虚タイプでも情緒不安定、落ち込みやすい方。

そんな方におすすめなのは小豆、ゆり根、小麦、栗など。

小麦粉で皮を作り中に餡子をいれて「あんまん」を作ってみるのはいかがでしょうか?

栗をいれて「栗あんまん」にしても美味しいです。

ちなみに皮を作るのが大変そう…と言う方は中身の入っていないまんじゅう部分だけも販売しているの知ってましたか?ぜひ活用してみてください。

 

なお、この血虚タイプの方にお勧めの漢方は血を巡らせる働きを持つ生薬と血を補給する生薬の2つを組み合わせ血液の循環を促進させるものが多いです。

例)芎帰膠艾湯、七物降下湯、四物湯、十全大補湯、参茸補血丸、大防風湯、当帰飲子、当帰芍薬散、当帰建中湯、婦宝当帰膠など

 

食事以外でも出来る対策としては適度な運動、無茶なダイエットを避ける、生活リズムを見直す、と言った健康全般に言える規則正しい生活を心がけること。

個人の感想ですが、出来ることからこつこつとやることが長く続けるコツなのでは無いかと思います。

 

また、血は飲食により生成される気と腎に貯蔵される精から生まれます。

血が不足すると気に影響し、気虚にもつながり。

逆に言えば気虚から血虚になることも。

更には気・血の両方が不足すると「気血両虚(きけつりょうきょ)」なんてことも…。

 

本来血虚の方は体が冷える冷たい食べ物は避けたほうが無難です。

ただ、食べないよりは食べて健康に。

食べるのならより体に合ったものを選んでいけると良いですね。

 

「もっと知りたい!漢方薬~薬膳で未病改善!④~」

 

医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。

 

薬膳で体質改善①②③でおすすめ料理をご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。

 

今回はそのシリーズの第四弾をお届けいたします。

今回ご紹介するのは「瘀血(おけつ)」「水滞(すいたい)」タイプにおすすめの料理です。

 

まず、瘀血タイプとは血の流れが滞り肩が凝る、手足が冷える状態を指します。

以前ご紹介した冷えのぼせ、隠れ冷えもこの瘀血タイプに出る症状です。

 

そんな方におすすめなのはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を含むイワシやアジなど青魚。

血液サラサラ効果のある、ホウレンソウやトマトなど。

更には海藻類、キノコ類、大豆類も効果的と使える食材が豊富です。

節分でもお馴染みのイワシと大豆、更にひじきもプラスして「イワシと大豆のひじき煮」はいかがでしょうか?

イワシと大豆はトマトで煮たり、ハンバーグにしたり、パスタに入れても美味しいですね。

 

なお、この血虚タイプの方にお勧めの漢方は活血化瘀剤(かっけつかおざい)、または駆瘀血剤(くおけつざい)と呼ばれる瘀血の原因となる気の巡りを改善させる効果をもつ漢方です。

例)温経湯、桂枝茯苓丸、大黄牡丹皮湯、通導散、桃核承気湯など

 

食事以外で出来る対策としては血液の停滞を防ぐ適度な運動。

ストレスの発散、十分な睡眠、冷え防止、瘀血は他の証が起きると後から起きることが殆ど。

逆に言えば対処することで発生を未然に防ぐことも出来ますよ。

 

続いて「水滞」タイプ。

水滞タイプとは、水が滞ったり、不足している状態です。

症状としては浮腫み、頭痛などが挙げられます。

 

そんな方におすすめなのは小豆、大豆、枝豆など豆類。

トウモロコシ、ナス、シソなど利尿作用のあるもの。

発汗を促してくれる辛味で体内の余分な水分を出しやすくするためトウモロコシとナスを入れて「カレー」を作ってみてはいかがでしょうか?

ちなみに、豆を使ったカレーのことを本場インドでは「ダルカレー(ダールカレー)」と呼びます。こちらもオススメです。

 

なお、水滞タイプにおすすめの漢方は先ほどもお伝えした体内の余分な水分を出しやすくするための「利水剤(りすいざい)」が含まれているもの。

 

例)胃苓湯、越婢加朮湯、五苓散、柴苓湯、猪苓湯、半夏白朮天麻湯、苓桂朮甘湯など

 

食事以外で出来る対策としては、無理のない範囲での運動で発汗すること。

また、体が冷えると水滞が悪化するので冷え対策も重要です。

日本は元々湿度が高く、湿邪の影響を受けやすい気候です。

それにより普通に暮らしているだけでも体に余分な水分が溜まりがち…。

どうしてもの時は除湿器などで余計な湿気を除去しても十分効果がありますよ。

 

今回は瘀血、水滞のおすすめ料理をご紹介させていただきました。

瘀血と水滞はどちらも他の証が発生している際に併せて出てきやすい証です。

 

どちらも体内の血液や水の巡りを良くすることで改善させることが出来ます。

血液や水の流れは目に見えないからこそ、対策が難しい所。

 

困った時は薬膳や漢方で体の内側からアプローチしてみても良いかも知れません。

 

 

心療内科、精神科において、漢方薬による治療をご希望の患者様。

このコラムを読まれまして、ご自分の現在のご状況として、気になる点がありました方や、興味・関心を抱かれた方は、ご受診をお待ちしております。

 

 

出典:現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖症状からチャートで選ぶ漢方薬 杉山卓也著

出典:「Kampo View」https://www.kampo-view.com/

その他おすすめの漢方ブログ記事→「漢方と食べ物~『薬膳』について」

 

監修 佐々木裕人(精神科医、精神保健指定医、精神科指導医)