「雨が降ると急に体調が悪くなる人=雨ダルさん」は、周囲には想像がつかないような苦痛を味わっていることも少なくありません。「誰だって雨が降れば、気分はどんよりするのだから、そんなのは甘えだ」と言う人は、恐らく「雨ダルさん体質」とはかけ離れた体質の持ち主なのでしょう。
雨雲が近付いてくると、雨ダルさんの身体には異変が現れ始めます。身体がダルくなって、元気がなくなり、頭が痛くなる人もいれば、めまいや耳鳴りがする人もいます。台風や梅雨の時期には頭痛や倦怠感で寝込んでしまったり、うつ状態になってしまったりします。このように、天気が崩れる度に、謎の不調に見舞われる、それが雨ダルさんです。
「こんなことは起こるのは、私だけ?」と、真面目な雨ダルさんはこれらを「心の弱さ」だと思い込み、自分を責めてしまいがちです。そもそも「痛み」や「ダルさ」は、その人自身にしか分からないものです。よって、周囲に理解されず、ひとり耐え続ける雨ダルさんが、この世の中には沢山います。
雨の日に起こる頭痛やめまいの原因の一つに「気圧変化」が関係していることが近年明らかにされています。この気圧の変化で起こる不調は、「天気痛(気象病)」と呼ばれるようになりました。この天気痛(気象痛)に悩まされている人達こそ「雨ダルさん」なのです。このように、雨ダルさんは心の弱い人でも怠け者でもないということをしっかりと覚えておきましょう。
雨ダルさんの症状は多岐にわたっています。「肩が異常に凝る」「むしょうに眠くなる」「気分が憂うつになる」というのも、天気痛(気象病)の症状の一種です。特に雨ダルさんを悩ませているのが、頭痛・めまい・耳鳴りの三大症状です。
中でも頭痛の悩みが最も多く、典型的な症状です。めまいや耳鳴りもつきもので、頭痛の予兆として起こることもあります。乗り物酔いのようなめまい、身体の浮遊感、耳の違和感は、「気のせいかな?」と見逃されがちですが、れっきとした雨ダルさんの症状です。放っておくと。どんどん悪化する可能性もあり危険です。まずは、自分が雨ダルさんであることに気づいてあげることから始めましょう。
まずは「雨ダルさん診断」
こんな症状があれば、あなたは立派な「雨ダルさん」です。以下の項目に当てはまるものが多いほど、雨ダルさんの可能性が高くなります。
□① 雨が降る前(数日前~直前)、降っている時に頭が痛い。
□② 雨が降る前、眠気やめまい、肩が痛いなどの体調不良がある。
□③「もうすぐ雨が降りそう」や「天気の変化」を肌で感じる。
□④ 天気によって気分の浮き沈みがある。
□⑤ 季節の変わり目に体調を崩しがちだ。
□⑥ 夏はよくのぼせて、冬は冷え症になる。
□⑦ 昔から運動をしてこなかった。
□⑧ 最近、身体を動かす機会が減っている。
□⑨ デスクワークが多く、いつも前かがみの姿勢や猫背になりがち。
□⑩ もともと頭痛持ち(特に片頭痛)である。
□⑪ 普段から肩が凝りやすい。
□⑫ 普段から耳鳴りがする、または上手く耳抜きが出来ない。
□⑬ 交通事故などで首を痛めた経験がある。
□⑭ ストレスを感じやすい、またはストレスが多い生活を送っている。
□⑮ どちらかと言うと、几帳面な方だ。
□⑯ 職場でストレスを感じやすい“HSP(敏感過ぎる人=繊細さん)”タイプだ。
□⑰ 乗り物酔いしやすい。
□⑱ 新幹線や飛行機に乗ると、頭痛や耳鳴りが起こった経験がある。
□⑲ 車でトンネルの多い高速道路を走ると頭痛や耳鳴りがする。
★結果:①~④のうち、1つでも当てはまるものがあれば、あなたは「雨ダルさん」です。
➡①~④に当てはまるものに加えて、⑤以降に複数(3つ以上)当てはまる人は、重症の可能性があります。また、①~④に当てはまらなくても、⑤以降で複数当てはまる人は、今は軽症でも将来は重症の雨ダルさんになる可能性があるので要注意です。
雨ダル症状が多発する場所と時期は?
雨ダルさんを悩ませる天気は、季節や場所によっても変わってきます。雨ダルさんが注意しいなくてはならない季節はいつでしょうか? また、場所によって雨ダル症状が悪化したり改善したりするのでしょうか?
雨ダル症状が出やすい時期は「季節の変わり目」です。特に冬から春は、急に暖かくなったり寒さが戻ったりと、寒暖差が激しく、気圧が大きく変動します。また、新年度が始まって環境に変化があると、自律神経は乱れがちになります。そこへ天気が影響し、雨ダル症状は悪化します。
次に気を付けたいのは、低気圧が停滞し続ける梅雨時です。だらだら続く長雨に、体調だけでなく気分まで落ち込んでしまうため、うつ症状が出やすくなります。
さらに、夏から秋にかけてのゲリラ豪雨や台風も要注意です。特にゲリラ豪雨の場合、局地的に気圧が急変するため、雨ダルさんはまともに影響を受けます。どちらも近年ますます頻繁になっていて、台風は本来は熱帯地方の海上で発生するものでしたが、地球温暖化で海水温が上昇した結果、日本近海でも発生するようになりました。雨ダルさんにとって、気象状況は年々厳しいものになっています。
こう考えると、いつも雨ダルさんにとって不利な天気ばかりのようですが、冬だけは気圧が安定しています。とはいえ、それも太平洋側の地域だけであり、日本海側がくもりがちになり、雨や雪、場所によっては豪雪にも見舞われることもあるので、雨ダルさんにとっては悪条件です。雨ダル症状の原因は、気圧の低さではなく、急激な気圧変化です。たとえ気圧が低くとも、安定している方が過ごしやすいと言えるでしょう。
雨ダルさんには漢方薬もお勧め!
雨ダルさんには、内耳の血行を促し、むくみを取ってくれるような漢方薬も推奨されています。その人の体質や症状に合わせて漢方薬を処方することで、西洋薬(鎮痛薬)の量を減らすことができます。以下に、雨ダルさんに処方されることの多い漢方薬の一例を挙げておきます。
★五苓散(ごれいさん):むくみをはじめ、めまいや頭痛、吐き気、嘔吐、下痢など、漢方でいう「気・血・水」の「水」が滞った症状(=水滞・痰湿)を改善します。
★抑肝散(よくかんさん):神経の昂りを抑えたり、筋肉の緊張を緩めたりする作用があります。心身をリラックスさせ、負因などの症状に効きます。
★柴苓湯(さいれいとう):五苓散と小柴胡湯(しょうさいことう)の成分を併せた処方で、炎症を和らげる作用があります。
★半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう):水分の循環を改善し、無駄な水分を取り除く作用があります。めまいや頭痛、吐き気、嘔吐、手足の冷え等に有効です。
★当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう):血行を良くして身体を温め、手足の冷えによる痛みを和らげてくれます。しもやけや血行不良による頭痛、下腹部痛、腰痛などに用いられます。
薬に頼り過ぎない身体作りを!
上記では、雨ダルさんへのお勧めの漢方薬を記載させて頂きました。但し、本当に大切なのは薬に頼り過ぎない体質になること、つまり、体質改善を進めることです。もしも、雨ダルさんが妊娠中であったり持病があったりしたら、なおのことです。
それでは、どのように雨ダルさんの体質を体質を改善させれば良いのでしょうか? 雨ダルさんの場合、「体質を変える」中で、「自律神経を整える」ことに繋げることがとても重要です。何故なら、雨ダルさんの症状を引き起こす主な原因は、「自律神経の乱れ」にあるからです。ですから、まずは自律神経を整えるための食生活や快適な睡眠などを心掛け、なるべく過度なストレスを溜めないよう、日頃から気を配るようにして下さい。
自律神経の乱れを整えるには、「1日3食」という規則正しい食生活が基本となります。つい朝食を抜いてしまわれる人が沢山きますが、朝食を摂ることは交感神経を優位にして体温を上げ、1日の活動をスタートさせるという大切な役割を持っています。また、貧血気味の人は低気圧の影響を受けやすいので、身体にエネルギーを補給し、神経細胞に働きかける“ビタミンB群”を摂取するよう心掛けて下さい。
雨ダルさんの特徴でもある「内耳からくるめまい」に効くのは、“亜鉛”や“ビタミンB12”、“マグネシウム”です。食事で摂るのが理想ですが、それが難しい時にはサプリメントを利用しても構いません。さらに良質なたんぱく質は筋肉を作り、冷えやむくみ防止に役立ちます。
ビタミンB群が多く含まれている食材としては、ウナギ、豚肉、枝豆、ピーナッツなど。亜鉛が多く含まれている食材としては、牡蠣、アーモンド、海苔、ゴマなど。マグネシウムが多く含まれている食材としては、きな粉、納豆、油揚げ、豆腐、アサオなどが挙げられますので、ぜひ参考にされてみて下さい。
このコラムを読まれまして、気になる点がありました方や、
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皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
なお、気象病の漢方薬による治療をご希望の患者様は、診察時に医師の方にぜひご相談下さい。当院のような心療内科では、健康保険適用で処方することも可能です。
Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
参考引用文献:佐藤純著『「雨ダルさん」の本』