以前、当院ブログ『自分の恋人はエネルギーバンパイヤ!?』内でエネルギーバンパイヤとなり得る精神障害として、境界性パーソナリティ障害・演技性パーソナリティ障害・自己愛性パーソナリティ障害…等々が考えられるということを記載させて頂きました。今回は、『職場の上司(または同僚)がエネルギーバンパイヤ』である場合の接し方のコツを記載させて頂きます。
もし自己愛性パーソナリティ障害の人が、職場の上司や同僚である場合、部下や周囲の人は何かと苦労することになります。何故なら、自己愛性パーソナリティ障害の人は、仕事の中身よりも、それが個人の手柄として、どう評価されるかばかりを気にしているので、本当に改善を図っていこうと地道に努力している人とは、ギャップが生じてしまいます。
自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分の手柄にならないことには、無関心ですし、得点にならない雑用は、できるだけ早く他人に押しつけて知らん顔をするところがあります。ある意味、美味しい所だけを取って、面倒な仕事や得にならない仕事には、近寄ろうともしません。
自己愛性パーソナリティ障害の人は、気まぐれで、気分が良いとべらべらと調子のいい長口舌を振る舞いますが、機嫌が悪いと、些細なことでも、ヒステリックに怒鳴り声を上げ、耳を疑うような言葉で怒鳴ったり、見当はずれな説教をしたりするのです。
自己愛性パーソナリティ障害の人はにとっては、自分の都合が何よりも優先されて当然だと思っているので、周りの人たちの迷惑などお構いなしに、列に割り込もうとしたり、順番が待てずに、自分を特別扱いするように要求したり、約束を一方的に変更したりしても、当然だと思っています。相手がミスや過ちを犯したりすれば、大騒ぎをして糾弾するのですが、自分がミスをしても、何とも思いません。セクハラやDVが多いのも、自分は偉く、自分のすることは、どんなことでも特別に許されるという「思い込み」があるためなのです。
このような性格傾向をもつ自己愛性パーソナリティ障害の人が、地位や権力を得ると、周囲は散々な思いをします。権限をかさに言う事を聞くように迫られたり、自分にこびへつらわない者は、冷たく無視されたり、いじめるように仕向けたり、まるで子どものような真似を、権力のもとに行うのです。
自己愛性パーソナリティ障害の人は、「自分はあくまで正しい」と思っているので、自分を省みるということは非常に難しいです。明らかに過ちを起こした時であっても、謝罪は口先だけのもので、心の中では、自分が正しいと思っています。
したがって、気分を害さないように忠告するのは、至難の業となります。本人のためを思って欠点を指摘する場合も、例え表面は平静を装っていても、心の中では憤っていて、何かの拍子に言われたことに対する怒りが噴出してきます。よく「クラッシャー上司」という言葉も耳にしますが、そのクラッシャー上司(部下の心身を壊してしまう上司)には、かなりの確率で、自己愛性パーソナリティ障害の人がいるものと推察されます。
自己愛性パーソナリティ障害の人にとって、他者は自らを賛美し、利用するものでしかありません。少しでも賛美の仕方が足りなかったりすると、彼は激しい憤慨を覚えます。ましてや、批判したり、欠点でも指摘しようものなら、あなたは彼から全存在を否定されることでしょう。欠点を述べる時には、まさに絶交覚悟でなければならないのです。
…こうした特性のいため、自己愛性パーソナリティ障害の人と、うまくやっていくのは大変です。但し、自己愛性パーソナリティ障害の人には“二面性”があり、日向と日陰の部分で、全く態度が違います。よって、うまくやっていく秘訣の一つは、その人の日向側に身を置くということです。それはつまり、相手の嫌な側面のことは一旦問題にせず、賞賛する側に回るということです。相手を、本人が望んでいるように、帝王が不世出の天才のように扱う方に徹するということです。
そうすると、彼は自分の中の、素晴らしい部分を、あなたにも投影して、「自分のすばらしさが分かる人物」として、あなたも、その二段階下位には、列せられることでしょう。こうして、あなたが、素晴らしい自分を映し出す、賞賛の鏡のような存在になると、あなたの言葉は、彼にとって、次第に特別な重みを持つようになります。あなたが、たまに彼の意志とは、多少異なる進言を付け加えても、彼は反発せずに耳を貸すことでしょう。ただし、常に当人の偉大さを傷つけないような言葉と態度を用いる必要があります。
自己愛性パーソナリティ障害の人を動かす有効な手段は、義務や道理を説くより、不安や嫉妬心、功名心を刺激することです。自己愛性パーソナリティ障害の人は、基本的には小心で、嫉妬深く、負けん気が強いので、さりげなく行動しなかった場合に生じる不利益な事態(デメリット)について触れたり、競争心をつつくだけで、有効な動機づけにもなるのです。
このコラムを読まれまして、
気になる点がありました方や、興味・関心を抱かれた方は、
どうぞ当院まで、お気軽にお問い合わせください。
当院では、適応障害をやうつ病をはじめ、
心身症、躁うつ病(双極性障害)、自律神経失調症、
睡眠障害(不眠症)、ストレス関連障害、統合失調症、
パニック症、強迫症、摂食障害(過食症)、不安症、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症含む)、
月経前症候群(PMS)、過敏性腸症候群(IBS)など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。
Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)
参考引用文献:岡田尊司著『パーソナリティ障害』