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症状別おすすめ漢方薬&薬膳

 

今回は当院で漢方薬をご希望される際にご相談の多い病名から、おすすめの漢方薬、薬膳をまとめてみました。

 

うつ

 

うつの症状も人それぞれ様々かと思います。

なので、一口に「うつ」と言っても選ぶ漢方が変わってきます。

 

まず、うつを「肝鬱(かんうつ)」タイプと「気鬱(きうつ)」タイプに大きく分けます。

「肝鬱」とは「肝」の機能低下により気の巡りが悪くなることでイライラ、うつうつとした気持ちが出てしまうタイプ。

「気鬱」とは「脾」が弱ることで気の生成に異常が起こり、気が不足して「心」へのエネルギー供給ができなくなってしまうタイプです。

 

うつ症状と寝つきが悪い、途中で目が覚める(中途覚醒)、不安感、食欲不振、めまい、たちくらみなどの貧血症状、集中力の低下などがある方は「心脾両虚による気鬱証」タイプ。

簡単に言うと感情を司る「心」と消化吸収し、エネルギー生成の源である「脾」が弱ることで起こる「気滞(きたい)」症状が続き落ち込みなどが発生している状態です。

 

そんな方におすすめの漢方は「帰脾湯(きひとう)」

「脾」の働きを助けエネルギーを増やし、「心」を補うことでうつに脱する力を作ってくれる、そんなイメージの漢方です。

 

続いてうつ症状と喉の異物感、不安感、痰、嘔気などがある方は「痰気鬱結(たんきうっけつ)証」タイプ。

簡単に言うと、気血水の気の停滞によって痰が過剰になり喉のつかえや圧迫感、不安感などに感じられている状態です。

 

そんな方におすすめの漢方は「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」、「竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)」

喉の異物感は「ヒステリー球」、「梅核気」とも表現されます、この症状で有名なのが「半夏厚朴湯」です。

ただ、半夏厚朴湯は喉の異物感が無くても用いられる漢方薬です。

喉の異物感があって半夏厚朴湯を飲んだけどあまり効果が無かった…と言う方は「竹茹温胆湯」も候補に入れてみて下さい。

実は似た症状に適応のある漢方薬同士です。

 

続いてうつ症状と動悸、便秘、イライラ、不眠などがある方は「肝鬱心虚(かんうつしんきょ)証」タイプ。

簡単に言うと、「肝」の機能低下によって「肝鬱(かんうつ)」と呼ばれる病態が発生し。

それによって引き起こされた「心」のエネルギー不足が起こっている状態です。

 

そんな方におすすめの漢方は「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」

「肝鬱」を取り除いて体内にこもった熱、毒素を排泄します。

便秘に適応があるため、軟便の方は避けたほうが良いでしょう。

 

最後に、うつ症状とそわそわ感、不眠、日中のあくびなどがある方は「心血虚鬱(しんけつきょうつ)証」タイプ。

簡単に言うとストレスや消耗により「心」の働きが低下し、精神活動がコントロールできなくなっている状態です。

集中力の低下や、思考力、記憶力の低下は「心血」が足りていない時にみられます。

 

そんな方におすすめの漢方は「甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)」

「心血」を補い、鎮静効果、リラックス効果のある漢方です。

 

 

薬膳的に考えると、うつの症状が出ている方におすすめなのは精神安定効果のある食材たち。

 

まずおすすめしたいのは「ジャスミン」

ジャスミンは帰経が「心」「脾」「肝」に作用するため「肝鬱」「気鬱」タイプとも相性が良く、「気滞」体質の方にも合う食材。

飲料として摂取することが多いですがジャスミンの何より凄いのは香りに気を巡らす働きがあること。

同じようにイライラ解消効果のある「緑茶」や「牛乳」と味の相性も良いので体調に合わせ温度や組み合わせを変えてみてはいかがでしょうか?

疲れた時にアロマとして選ぶのも効果がありますよ。

 

次におすすめなのは「ピーマン」

ピーマンは、ストレス性の症状改善に効果的。

五性は平で他の食材とも合わせやすく、手に入りやすいのも嬉しいですね。

「パプリカ」も薬膳では同じ効果があるとされていますので料理の彩として使用してもOKです。

ピーマンは油と一緒に摂取することで吸収率がアップします。

また、ピーマンは調味料で炒めるだけでも美味しく簡単にとれるので炒めて食べるのが特におすすめです。

 

 

うつにおすすめの漢方、薬膳についてご紹介しました。

ただ、うつの症状が出た時に必要なのは「休養」すること。

体をゆっくり休めることが何よりの薬です。

 

また、そんな中でも薬膳は症状が出る前に出来る対策としても有用です。

日頃から意識的にイライラ防止の食材を取り入れることで、ストレスに強い体作りも出来ますので是非参考にしてみて下さい。

 

イライラ

 

どんな季節でもイライラはつきもの。

勿論外因的要素はあるものですが、このイライラ一つをとっても漢方薬を選ぶ際には自分のイライラにあったものを選ぶことが重要です。

 

まず、精神的な部分を担うのは五臓で言う「心」であると考えられます。

この「心」を相生(促進)してくれる「肝」に十分な血が貯蔵されしっかりと血が循環されることで心の正常な動きが保たれます。

そのため、「肝」の不調によって血の不足や循環が滞ると心への栄養である血の供給が低下しその結果精神的な症状があらわれやすくなるのです。

 

しかし、この「肝」。

五臓の中でも特にストレスの影響を受けやすいんです。

そのため、ストレスを感じられている方の多くが精神的な不調を感じられている(「心」に影響が出ている)のはこのためです。

 

さて、では実際にこのイライラを中心としてどのような症状が併発しているかを例に用い。

推定される証をご説明していきます。

併せておすすめの漢方や薬膳、食材などもご紹介出来ればと思います。

 

 

まずは、イライラに精神的な落ち込み、不安定さが出るタイプ。

身体症状としては、胸のつかえ、お腹の張りや痛み、月経周期不順などです。

そんな方は「肝鬱気滞(かんうつきたい)証タイプ」

 

ストレスを主な原因として「肝」の機能が阻害され、気の巡りが停滞する「気滞(きたい)」が生じその結果イライラ落ち込みなどが起こるタイプの方です。

 

お腹の張りや痛みが強い方におすすめな漢方薬は「四逆散(しぎゃくさん)」

ストレスを感じると胃痛、腹痛がする等、ストレス性の胃炎、腹痛、その他の痛みなど幅広く用いられます。

 

おすすめの食材は「しそ」

しその香り、精油成分に気を巡らせてイライラを改善させる効果があるので是非生で、と言いたいところですが生だけだと取りづらい部分も出てくるのでいつもの料理に付け加えてみては。

ストレスに伴う胃痛にも効果のある「そば」と併せて食べるも良し(そばのつゆに薬効が溶けるのでそば湯も是非)

それ以外でも食べやすいものに刻んだ大葉を乗せるだけでも手軽にとることが出来ますよ。

 

 

続いて、イライラに慢性的な頭痛、めまい、肩こり、高血圧などが出るタイプ。

そんな方は「肝陽上抗(かんようじょうこう)証タイプ」

ちょっと難しい組み合わせなのですが、「陰虚(いんきょ)」を背景として陽気の制御不能によって起こる病態です。

 

そんな方におすすめの漢方薬は「釣藤散(ちょうとうさん)」

高血圧や動脈硬化症でも似た症状の方へ使用することがあります。

 

おすすめの食材は「ホタテ」

ホタテはこの肝陽上抗タイプのイライラ、そしてめまい。

また、背景にある陰虚ののぼせに効果のある食材です。

 

お値段がある程度かかるものなのでおすすめ、とは言いづらいのですが。

干し貝柱などでもOKです。

干し貝柱はスープの出汁などにも使用出来ますので、そう言った形で取り入れても良いですね。

 

 

最後に、イライラに便秘、ほてり、精神不安、頭痛、充血などが出るタイプ。

そんな方は「実熱(じつねつ)証タイプ」

 

発散できない熱が体内にこもって激しいイライラ、ほてり、のぼせ、熱感があり充血を起こすこともあります。

 

そんな方におすすめの漢方薬は「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、大柴胡湯(だいさいことう)、大承気湯(だいじょうきとう)」

どれも虚証の方には向かない漢方です。

 

おすすめの食材は「セロリ」

実熱の症状に幅広く対応してくれます。

そのままでもスープにしても、口にしやすいのがセロリの良い所。

 

セロリが苦手な方はバナナと小松菜でスムージーを作ってみてはどうでしょう?

バナナも、小松菜もこの実熱証の方におすすめの食材です。

 

 

今回はイライラについて、またおすすめの漢方食材料理についてぎゅっとまとめてご紹介させていただきました。

ストレスによる自律神経症状は慢性的に感じていらっしゃる方も多いと思います。

 

やる気が出ない(意欲低下)

 

最近どうにもやる気が出ない、疲れやすい。

下痢をしたり風邪を引いたりと体調も崩しやすい…。

そんな時は「気虚」の証が体に現れているかも知れません。

 

「気」は生命活動の源。

これが不足している状態を表します。

 

そして、更にここからそれが「脾」が機能低下しているのか。

「心」が弱まっているのかで少しだけおすすめの漢方薬が変わってきます。

 

「気」は人間が先天的に持っているものと。

後天的に得られるものに分けられます。

先天的なものはいわゆる「持ち前の」と言う所にあたるのでしょうが、この後天的なものは飲食をすることで得られます。

 

まず、「脾気虚(ひききょ)」タイプの場合。

これは、消化機能が低下してそもそものエネルギーとなる気力が生成されず気が不足してしまっている状態です。

無気力に加えて、食欲不振、疲労倦怠感、下痢軟便などの症状がみられます。

 

この場合におすすめの漢方は四君子湯(しくんしとう)、六君子湯(りっくんしとう)、補中益気湯(ほちゅうえきとう)、参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)などがおすすめです。

「脾」の働きを補い気の生成を促す四君子湯。

だるさが強い場合方は六君子湯、疲労倦怠感が強い方は補中益気湯、下痢軟便の症状も出ている場合は参苓白朮散から始めてみてはいかがでしょうか?

 

 

続いて「心気虚(しんききょ)」タイプの場合。

これは先天的に「心」が弱い、ネガティブ思考の方が陥りやすいタイプです。

ただし、強いストレスなどから起こる場合も勿論あります。

不安焦燥感が強く、不眠症状が出ることも。

 

この場合におすすめの漢方は桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、帰脾湯(きひとう)などがおすすめです。

元々の「気虚」を改善させるため、体を温め精神安定の作用も持つ桂枝加竜骨牡蛎湯。

そして、この心気虚と先ほどご紹介した脾気虚どちらにも当てはまると感じる方は帰脾湯から始めてみてはいかがでしょうか?

 

 

薬膳的に考えると、気虚タイプにはやまいもやじゃがいも、かぼちゃ、栗、さつまいも等秋に美味しい食べ物が勢ぞろい。

バリエーションも豊かですが、気虚タイプの辛い所は食欲が低下している方が多い所。

ついついさっぱり食べられるものを選びがちですよね。

ただ、気虚タイプは体を冷やすものは避けたほうが良いためなるべく冷たい食べ物は控えましょう。

 

脾気虚タイプの方は特に消化機能が低下していますから、消化の良い食べ物を選びましょう。

お米も実は気虚タイプにあった食べ物です、温めてお茶漬けやおかゆにしてみても良いですね。

鮭や鯛などご飯に合うお魚も気虚タイプにはおすすめです。

 

月経不順

 

月経不順で漢方を勧められたけど、どれを飲んでいいのか分からない。

月経不順で瘀血タイプの漢方を飲んでみたけどいまいち効き目が感じられない…。

 

実は月経の悩みが人それぞれなように、その悩みによって証も変わってくるんです。

 

今回はそんな月経のお悩みをテーマにおすすめの漢方をご紹介します。

 

まず、月経不順とは月経周期を28日の理想として前後1週間以上早い、または遅い状態。

また、それが3回以上続いた場合に定義されます。

 

まず、月経が遅く乱れる方は証は「寒証」タイプ。

基礎体温は低め、陽気や気血水の気と血の不足に影響を受けているとされています。

 

そんな方には十全大補湯、当帰芍薬散、温経湯がおすすめ。

十全大補湯は気血を補う効果が高く、冷えてむくみが出やすいなら当帰芍薬散、乾燥も気になるなんて方は温経湯を試してみると良いかも知れません。

 

続いて逆に月経が早く来る方は「熱証」タイプ。

月経周期の早まりは体に過剰な熱がこもっていることで発生しやすくなります。

 

そんな方には、黄連解毒湯、温清飲、芎帰膠艾湯がおすすめ。

のぼせや火照り、イライラがある方は黄連解毒湯、温清飲。経血量が多い場合は芎帰膠艾湯を試してみると良いかも知れません。

 

続いて月経痛が強い方は「瘀血」タイプ。

月経不順の漢方として瘀血タイプの漢方が選ばれるのは月経痛に悩まれている方が多い証拠かも知れません。

周期も前後問わず乱れがち、月経が長く、経血量が少ないなんてことも。

 

そんな方には、桂枝茯苓丸、桃核承気湯がおすすめ。

下腹部の痛みが強い方には桂枝茯苓丸、月経時のイライラ便秘が気になる方は桃核承気湯を試してみると良いかも知れません。

 

最後に月経周期がまちまちな方。

こちらは証を断定するのが難しく、精神的ストレスによって周期が狂ってしまっていることが多いです。

その中でも、五臓の「肝」に不調が起きて気血水の特に気血の流れが乱れていることが多くみられます。

 

そのためそんな方には、加味逍遥散、四逆散など肝を整える漢方がおすすめ。

PMSにも効果があるとされる加味逍遥散、ストレスに伴うイライラに効果のある四逆散を試してみると良いかも知れません。

 

また、以前の記事でもご紹介したように証は複数が同時に起きることもあります。

漢方も合わせ技で症状を抑えることも出来ますので、自分のタイプ、月経の周期を改めて確認してみてはいかがでしょうか?

 

ただし、漢方には妊娠中の服薬が禁忌とされているもの。

併せることで効果が強く出過ぎて逆に不調と感じてしまうものもありますので。

飲み始める前や組み合わせる前には是非医師薬剤師にご相談下さい。

 

月経痛

 

月経痛が酷いと、精神的にも身体的にもとても辛いですよね。

日頃から生活に漢方薬や薬膳を取り入れてその月経痛を改善させてみましょう。

 

まずは、より効果のある食材を選ぶため自分の月経痛のタイプを考えます。

簡単に分けると月経痛は「血が不足して血の巡りが悪い」のか「血の巡りが悪い」のかに分けられます。

 

血が不足している方は「血虚(けっきょ)証」タイプ。

血が不足することで循環が悪くなり、月経痛が起こります。

月経痛と併せて、貧血、むくみ、耳鳴り、冷え性などが出る方はこのタイプにあてはまります。

 

そんな方におすすめの漢方薬は「四物湯(しもつとう)」、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、「芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)」など。

水の代謝にも失調がある方は当帰芍薬散、血虚に加えて気虚がありそれによって瘀血が起きている方には芎帰調血飲がおすすめ。

 

血液不足以外で血の巡りが悪い方は「瘀血(おけつ)証」タイプ。

運動不足、寝不足、ストレスなど様々な要因で血液循環が滞って月経痛が起こります。

月経痛と併せて、のぼせ、むくみ、月経不順、便秘、イライラなどが出る方はこのタイプにあてはまります。

 

そんな方におすすめの漢方薬は「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」、「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」

むくみ症状がある方は桂枝茯苓丸、便秘症状がある方には桃核承気湯がおすすめ。

 

 

そして、おすすめの食材は血虚、瘀血両方に共通している「血の巡りが悪い」と言う点にスポットを当てます。

 

生理痛におすすめの料理一つ目は「よもぎ餅」

「よもぎ」には冷えが引き起こす痛みの症状を抑える効果があるため月経痛に伴う冷え性や痛みに効果が期待出来ます。

元々が温性のため、体を温める効果も抜群です。

 

また、よもぎ餅をおすすめする理由としては黒糖と併せても美味しいと言う所。

この「黒糖」、実は気血水の巡りを良くして生理痛、頭痛などの冷え血行不良による痛み改善に効果があるんです!

なので、よもぎ餅に黒糖の蜜をかけることでより一層生理痛に効果のある一品となります。

 

更に!

そこにきな粉もかけましょう。

きな粉の原料である大豆はこちらも気と血を補う作用があるため相乗効果でより効果が感じやすくなると思います。

 

生理痛にはよもぎ餅きな粉黒糖蜜がけ、覚えておいて損はありません。

 

もう一つご紹介したい食材は「たまねぎ」

こちらも気と血の巡りを良くする作用のある食材です。

美味しくより効果的に食べる方法の一つとしては「肉じゃが」をおすすめします。

 

生理痛に肉じゃが?となるかも知れません。

確かに、生理痛に特化した食べ方ではありませんが薬膳的にとても良い食べ方なんです。

 

まず、肉じゃがは基本食材として「たまねぎ」、「じゃがいも」、「牛肉」、「糸こんにゃく」があげられると思います。

 

じゃがいもは気を補う作用、牛肉は気と血を補う作用があるためまずは必要な気と血を生成、たまねぎはそうして作られた気と血の巡りを改善、更に牛肉にも血の巡りを改善させる効果があります。

そして、たまねぎには唯一温性で熱症状がある方(充血やほてりなど)には向かない食材ですがこんにゃくの寒性がそのデメリットを相殺してくれます。

 

肉じゃが一つで気と血が補われ巡り、どんな体調でも食べられるスーパー料理なんです!

 

 

月経痛は個人差があり、痛み止めなどで対応することが多いかと思います。

ただ、そこに更に自分にあった漢方や薬膳を取り入れることでもう一つ症状の緩和に繋がるかも知れません。

 

毎月耐えているけれど、頭打ちだなと感じている時。

よろしければ漢方薬や薬膳を是非試してみて下さい。

 

不眠

 

不眠も、イライラと同じように五臓の内の「心」のバランスの乱れによって寝つけなかったりだるさを感じたり、悪夢をみたり。

また、実際に動悸やのぼせなどの身体症状で目が覚めるなど理由は様々。

 

それぞれ漢方薬を使い分けて対処してみたり、未病の状態を薬膳で改善出来るなら是非してみたい所ではありますよね。

 

今回は不眠のパターン毎に証やタイプを分け、おすすめの漢方薬をご紹介し。

効果的と呼ばれる食材を幾つかご紹介します。

 

 

まず、不眠でも寝つきが悪い、何度も目が覚める(中途覚醒)、日中も常に眠い、食欲不振、不安感、物忘れ、集中力の低下などがある方は「心脾両虚(しんぴりょうきょ)証タイプ」

「心」、「脾」の機能低下のよっておこるタイプの不眠です。

仕事中凄く眠い、と言う方は紐解いてみると寝つきが悪くてベッドでごろごろしていた、何度も目が覚めて睡眠時間が短かったなんてこともあるかも知れません。

 

そんな方におすすめの漢方は「帰脾湯(きひとう)」

「脾」の働きを改善し「気」を補う黄耆(おうぎ)、人参(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、甘草(かんぞう)、茯苓(ぶくりょう)、大棗(たいそう)、生姜(しょうきょう)と。

「血」を補う当帰(とうき)

「心」「気」を増やし精神を安定させる竜眼肉(りゅうがんにく)、酸棗仁(さんそうにん)、遠志(おんじ)

気を巡らせ腸の蠕動運動を正す木香(もっこう)が入った漢方薬です。

 

おすすめの食材は「小麦」

小麦は、「心」、「脾」どちらにも効果のある食材で麺類やパン類など取りやすさもピカイチ。

同じ「心」、「脾」に効果のある「たまご」を加えてシンプルなうどんなら食欲不振でも食べやすくまた胃に優しいのでうってつけです。

 

 

続いて、不眠でも考え事で頭が動いている、目が冴える、精神不安定、動悸、夜驚症、便秘などがある方は「肝鬱心虚(かんうつしんきょ)証タイプ」

こちらはストレスによって「肝」の作用が妨げられ、同時に「心」も弱っている状態です。

 

そんな方におすすめの漢方は「加味逍遥散(かみしょうようさん)」、「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」

 

下痢軟便を繰り返す方は加味逍遥散を。

これは、「肝」の疏泄作用を正し、肝鬱を改善する柴胡(さいこ)、薄荷(はっか)と。

「脾」の働きを改善し「気」を補う生姜(しょうきょう)、甘草(かんぞう)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)

「血」を補う当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)

熱を冷まし、出血を止め、鎮静作用のある牡丹皮(ぼたんぴ)、山梔子(さんしし)が入った漢方薬です。

 

便秘でほてりやのぼせを感じる方は、「肝」の疏泄作用を正し、肝鬱を改善する柴胡(さいこ)、黄芩(おうごん)と。

熱を冷まし、便を下す大黄(だいおう)

精神を安定させ、水分の代謝を正す茯苓(ぶくりょう)

吐き気を抑制する半夏(はんげ)、生姜(しょうきょう)

「脾」の働きを改善し「気」を補う人参(にんじん)、大棗(たいそう)、桂皮(けいひ)

精神不安定を重さのある生薬で落ち着かせる竜骨(りゅうこつ)牡蠣(ぼれい)が入っている柴胡加竜骨牡蠣湯を選んでみてはいかがでしょうか。

 

おすすめの食材は「春菊」

春菊は「肝」の働きをなだめてくれる食材です、怒りや不安などの感情を落ち着かせる効果もあります。

便秘の方は腸を潤す「ごま油」を使ってごま和えに、下痢軟便の方は体を冷やさないように豆腐と一緒にお鍋に入れて「湯豆腐」なども美味しいですね。

 

 

続いて不眠でも、心身ともに著しく疲れているのに眠れない方は「虚労虚煩(きょろうきょはん)証タイプ」

これは文字でもなんとなく分かりますね、極度の疲労で体力気力が衰えている状態の方を指します。

疲れすぎているのに眠れない、と言うのは一つの病態として存在しているんですよ。

 

そんな方におすすめの漢方は「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」です。

これは、「心」「気」を増やし精神を安定させる酸棗仁(さんそうにん)と。

水分の代謝を正し脾の働きを改善、精神を安定させる茯苓(ぶくりょう)

「気」の流れと「血」の流れを同時に改善する川芎(せんきゅう)

体内の「陰」を補い、熱を冷ます知母(ちも)

構成生薬の働きを整える甘草(かんぞう)が入った漢方薬です。

 

おすすめの食材はここは2つ選ばせていただきます。

疲労回復には「じゃがいも」、リラックスには「牛乳」

これらを合わせて「ヴィシソワーズ」はいかがでしょうか?

心身ともに疲弊していると食欲も減退しがちですので食べやすいスープを。

ヴィシソワーズなら温めても冷やしても美味しいですよ。

 

 

続いて不眠でも、イライラ、何度も目が覚める、身体がだるい、むくみ、胸焼けなどがある方は「肝胃不和(かんいふわ)証タイプ」

これは、ストレスや怒りの感情が「肝」を傷つけそれにより胃の消化機能も低下させてしまっている状態を指します。

 

おすすめの漢方は「竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)」

これは、熱を冷まして痰を除く竹茹(ちくじょ)と。

余剰な湿を取り除き、痰を除く半夏(はんげ)、陳皮(ちんぴ)、茯苓(ぶくりょう)、生姜(しょうきょう)、甘草(かんぞう)

気を巡らせ腸の蠕動運動を正す枳実(きじつ)、香附子(こうぶし)

肺を潤して咳を止める麦門冬(ばくもんどう)

膿を排出し、痰を除く桔梗(ききょう)

熱を冷まし、鎮静させる柴胡(さいこ)、黄連(おうれん)

「脾」の働きを改善し「気」を補う人参(にんじん)が入った漢方薬です。

 

おすすめの食材は「ミント」

ミントはイライラを抑え、更に「肝」の働きを正常にする作用もある正に肝胃不和証タイプの方にぴったりの食材です。

それだけだと摂り辛いのが難点ですが、ミントティーなどでも効果がありますよ。

 

 

最後に不眠でも、悪夢を見る、体がだるい、胃が持たれる方は「痰湿(たんしつ)証タイプ」

これは、湿気の多い環境(日本はとても湿気が多いです)暴飲暴食、運動不足などが原因で体液の停滞が生じ水滞が起こっている状態が長期化した状態です。

水滞は長期化すると毒性の強い痰湿となってしまいます。

 

おすすめの漢方は「温胆湯(うんたんとう)」

これは、余剰な湿を取り除き、痰を除く半夏(はんげ)、陳皮(ちんぴ)、茯苓(ぶくりょう)、生姜(しょうきょう)、甘草(かんぞう)と。

気を巡らせ腸の蠕動運動を正す枳実(きじつ)

熱を冷まして痰を除く竹茹(ちくじょ)が入った漢方です。

ただし、こちらの漢方は保険適応外の漢方なので病院での処方は難しい漢方薬です。

類似適応症のある竹茹温胆湯を試してみると良いかも知れません。

 

おすすめの食材は「えんどう豆、そら豆」

どちらも体内に溜まった余分な水分を排出する効果を持つ食材です。

この余分な熱を排出させる熱を作り出すため、身体を温める効果のある「ガーリック」で炒めて一緒に取るとより効率良く水分代謝が出来るようになります。

 

 

ここまで、パターン別に不眠に効く漢方と薬膳をご紹介しましたが。

不眠、と言うほどでは無いけれどよく眠れたら嬉しいな、そんな未病な状態の眠りのお悩みにもおすすめの食材を更にいくつかご紹介します。

 

最初にご紹介する食材は「ゆり根」

体質としては「気虚」「気滞」「陰虚」の方におすすめ。

五性は平なので他の食材とも合わせやすいです。

 

「心」の熱を収める効果があるので精神的興奮を抑える効果があり。

それによって不眠改善が期待できます。

熱を収める効果で動悸などにも対応出来ますよ。

 

おすすめは「ホイル焼き」

ゆり根が、と言うより他の食材と「合わせやすいゆり根」だからこそ付け合わせる食材に自由度の高いホイル焼きをお勧めします。

体を温める効果のあるサーモンや、不眠改善の期待出来る豚肉と一緒にお好みでどうぞ。

 

 

続いては「きくらげ」

体質としては血虚、瘀血、陰虚、陽熱タイプの方におすすめ。

中華料理ではおなじみのきくらげ、中々単品では調理することが無いかと思います。

きくらげ料理と言うよりも中華料理の食材としてきくらげを取り入れてみては。

 

きくらげは「血」に関する様々な症状に効果があります。

「心」は「血」が不足すると働きが弱くなるため「血」に効果の高いきくらげを食べることで不眠改善にも効果があると期待されます。

 

そして、このきくらげ。

先ほどご紹介したゆり根と一緒にスープにしてもとても美味しいです。

このように薬膳は効果の似た性質をもつ食材を合わせることでより効果を感じられるのです。

※熱すぎる、冷たすぎる作用を持つ食材同士は体を温めすぎる、冷やしすぎることがあるので気を付けて下さい。

 

 

最後に、おすすめの食材は「うずらの卵」です。

体質としては「気虚」、「血虚」、「陰虚」タイプの方におすすめ。

卵にも同じような効果があるのですが、うずらの卵は煮るだけ。

1日に2.3個程度で済むと言う所であえて「うずらの卵」としました。

 

いつもの食事にうずらの卵を2.3個追加する。これも立派な薬膳です。

少し身近に感じてきませんか?

 

ここまでご紹介してきた、ゆり根、きくらげ、卵は3つ一緒に調理しても美味しいです。

どれも五性の「平」である(卵白は「涼」)ことから体を温めすぎたり、冷やしすぎたりする可能性も低いです。

 

 

また、睡眠はストレスを受けやすい部分でもあるためストレス緩和の食材を日頃から取り入れることも有用です。

 

コンビニやスーパーでも手に入りやすいフルーツはイライラに効果のあるものが多くあります。

例えば、メロン、パイナップル、キウイフルーツ、ライチ、レモン、りんごなど。

 

貧血や肌荒れが気になる方はライチ。

むくみがちな方はキウイフルーツ。

メロン、パイナップル、レモン、りんごは熱症状(ほてり、のぼせ)のあるイライラにおすすめです。

飲み過ぎは禁物ですが、赤ワインや白ワインには気持ちをリラックスさせる効果があるのでフルーツと合わせてサングリアなども美味しいですね。

 

 

最後に、漢方薬や薬膳は既に不眠症状が出ている方にも効果がありますがその症状に備ええておきたい「未病」の方にも効果があります。

また、そうして未病に備える生き方を中医学では「養生(ようじょう)」といいます。

 

養生は深呼吸をすること、一息ついて伸びをすること、なども含まれる誰でも出来る病気の備えです。

 

ちなみに、今回扱っている「薬膳」は「食養生(しょくじょうじょう)」に該当します。

食べるときは腹八分目、ゆっくりよく噛んで食べることが大事ですよ。

 

食養生をする時は胃腸が動いていると睡眠の質を下げるため、就寝時間の3時間前までには食事をすませておきましょう。

寝る前にリラックスでハーブティーやホットミルクはOKです!

 

ハーブティーは「オレンジピール」、「カモミール」、「パッションフラワー」、「バレリアン」、「ホップ」、「マジョラム」、「リンデン」、「レモングラス」、「レモンバーム」、「ローズ」が不眠に効果があると言われています。

 

中でも「ローズ」は薬膳でもポピュラーな食材の一つ。

ビタミンやクエン酸も豊富でイライラの緩和や美容効果にも一役買ってくれる優れもの。

五性は温なので体を温めてくれます。

 

その香り自体にも鎮静作用があるので味が苦手な方はローズの香りのするものを取り入れると眠りやすくなるかも知れません。

 

イライラ、不安感など精神症状がある方には「パッションフラワー」もおすすめ。

神経緊張や不眠の治療に使われてきた歴史のあるハーブです。

ストレスからくる片頭痛や腹痛にも有効です。

 

眠れない時はついつい考えすぎてしまって余計に目が冴えてしまう、なんてこともあるかも知れません。

眠れない時は一度ベッドから離れてみる、朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びるなどあえて眠りの場とは違った方面からのアプローチも一つの手。

 

睡眠時間は「肝」と「胆」を養生する時間。

今、ご自身の出来ることから少しずつ「養生」を。

それでも眠れない時は、悩みすぎる前に是非ご相談にいらっしゃって下さい。

 

出典:現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖症状からチャートで選ぶ漢方薬 杉山卓也著 SHOEISHA

出典:新版 毎日使える薬膳&漢方の食材辞典 阪口珠未著 ナツメ社

 

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