でも、小青竜湯を飲んでるよ!
もしかしてこれも構成生薬が関係しているのかな?
よし、それじゃまずはこれまで飲んでいた小青竜湯の構成生薬を紐解いてみよう!
小青竜湯の構成生薬
麻黄(まおう)
麻黄は砂漠の乾燥地帯に生息し、寒暖差に強い植物です。
身体を温めたり発汗させる生薬の中では最も強力で悪寒が強く発汗しないタイプの感冒に使用されています。
インフルエンザなどで処方されることも多い麻黄湯にも入っている生薬です。
気管支拡張作用も持つことから、せき、喘息のような呼吸困難にも用いられます。
また、温めることで水を動かし痛みをとるため顔面のむくみやむくみからくる関節痛にも効果があります。
ただし、この麻黄は一般的に用いられている生薬でありながらドーピング検査では禁止薬となっているという一面も持っています。
副作用として、発汗過多、動悸、血圧上昇。
また、胃腸障害も出やすいので元々胃腸が弱い方は避けた方がよろしいでしょう。
芍薬(しゃくやく)
芍薬の基原はボタン科のシャクヤクの根です。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と美しいことの形容として用いられる芍薬。
女性の三大漢方の一つ、当帰芍薬散と加味逍遥散に配合されています。
中国では血を補う「白芍」と、流れを良くする「赤芍」で使い分けられていますが日本ではその中間的な作用を持つとされています。
芍薬の補血作用は「血の量を増やす」と言うよりも「血の少ない部分に血を集める」と言う作用が強く局所的な血不足の解決に優れています。
血の巡りが悪い「瘀血」タイプでは無く血が少ない「血虚」タイプにあった生薬であると考えられます。
乾姜(かんきょう)
乾姜の基原はショウガ科のショウガの根茎を湯通ししまたは蒸したもの。
私たちが慣れ親しんでいるショウガから作られている生薬です。
生薬には同じショウガ由来の乾姜と生姜(しょうきょう)があります。
日本では、生姜はショウガを乾燥させたもの乾姜はショウガを加熱したものとされています。
ショウガを加熱するとジンゲロールと言う成分がショウガオール、ジンゲロンと言う成分へと変化し辛味と温める作用を強めてくれます。
特に胃腸や肺、四肢を温める作用と体内の冷えた不要な水分を温め除く働きがあります。
冷えだけでなく水っぽい透明な痰や鼻水、慢性鼻炎、花粉症にも用いられます。
甘草(かんぞう)
甘草は他の生薬の働きを高めたり、毒性を緩めたりする調和の作用があります。
そのため、最も多くの漢方薬に配合されている背ようやくです。
五味の「甘」は、「気」「血」を補う作用、心身の緊張を緩める作用があり強い甘味のある甘草は心や脾胃の気を補い精神を安定させてくれます。
清熱作用も持ち、喉の腫れや痛みにも有効です。
体の各部位の緊張を緩めるためにも使われていて、先ほどもご紹介しましたが芍薬と合わせて使うことで筋弛緩作用を生み出し。
芍薬甘草湯、小建中湯などではこむらがえや腹痛の漢方薬として応用されています。
甘草は最も多く使われているだけに漢方薬を複数飲むと意図せずに甘草の摂取過多となってしまう場合があるので複数の漢方を飲むときは飲み合わせに注意しましょう。
桂皮(けいひ)
桂皮の基原はクスノキ科の樹皮または周皮の一部を除いたものです。
これだけだと桂皮は何の皮なのかな?と思いますが「クスノキ科」の「Cinnamomum cassia Blume」の樹皮と言うともしかしたらぴんと来る方もいらっしゃるかも知れません。
桂皮は別名「シナモン」と呼ばれるもので料理やお菓子にも沢山使用されていますね。
処方名に「桂枝」とつくものの多くにこの桂皮が使用されています。
主な効能は冷えを改善し、痛みを止めるなど。
桂皮はシナモンとほぼ同じ食薬と呼べるため薬膳的にも効果は同じです。
桂皮、と言っても中国では基原植物のケイの若枝を「桂枝」、樹皮を「肉桂」と呼んで区別しています。
枝である桂枝は手足、体表の発汗解熱に優れ。
肉桂は体幹を温める効果に優れています。
更に、心、脾、腎を温め気血の流れを改善し関節痛、痺れ、月経痛をも和らげてくれます。
細辛(さいしん)
細辛の基原はウマノスズクサ科のウスバサイシンまたはケイリンサイシンの根および根茎です。
肺や腎をあたため、寒邪や冷え、水湿を取り除きます。
このため、風邪(ふうじゃ)、寒邪(かんじゃ)が一緒に来る風寒による悪寒や頭痛、関節痛、鼻水などに使用されます。
また、咳を鎮める効果もありとくに水っぽい痰の出る咳、気管支喘息、慢性気管支炎に効果的です。
細辛には更に痛みを止める効果もあります。
そのため、歯の痛みにも用いられ口にしばらく含ませることで効果を発揮します。
五味子(ごみし)
五味氏の基原はマツブサ科のチョウセンゴミシの果実です。
果皮と果肉に甘味と酸味、核に辛味と苦味、全体に鹹味(しょっぱい味)と五味が揃っているため「五味子」と名前が付けられたそうです。
実際は五味子の作用のメインである「収斂」作用から酸味が強いのだとか。
収斂とは簡単に言えば「漏れ出るものを引き締める」効果です。
またその酸味は唾液を分泌させるため口の渇きを潤して津液を増やしてくれます。
レモンを食べたり、食べることを想像するだけでも唾液がじわっとわいてきますよね。
酸味にはそう言った効果があるのです。
五味子は不調が慢性化した症状に適しています、「気」が収斂することで咳を抑え。
慢性的な下痢、寝汗、暑くもないのに汗が出る、失禁などを体内に留め精神を安定させます。
半夏(はんげ)
半夏の基原はサトイモ科のカラスビシャクのコルク層を除いた塊茎です。
夏の半ばに花を咲かせることからその名がつけられました。
近年はあまり見かけませんが田畑や山の道端に自生していることもあるくらいに身近な植物です。
身体の湿気を取り除くことで「湿」と関連する痰の多い咳、嘔吐、めまい、胸のつかえなどに効果があります。
また、胃の辺りの水分の停滞を改善するのにもよく利用されています。
使用されている漢方薬で特に有名な半夏厚朴湯は検査しても異常が無いのに喉に何か詰まっているような感じを覚えるヒステリー球、梅核気の処方として使用されますが。
それは、この「つかえをとる」効果から来ています。
つかえをとることで「気」も巡らせるため、抑うつ症状にも使用されています。
小青竜湯は「寒さ」を感じてる時に使うことが多いんじゃない?
サラサラな鼻水に効果があるんだね。
じゃあ少し鼻水、鼻づまりの時の漢方を選ぶコツを勉強しよう。
同じ症状でも?
花粉症やアレルギー、感冒などで起こる鼻水、鼻づまりなどは大きく分けて2つのタイプに分類されます。
1つは「風邪」+「寒邪」の風寒タイプ、もう1つは「風邪」+「熱邪」の風熱タイプです。
風熱タイプの場合、鼻水は黄色くドロドロとしていて鼻詰まりも酷くなります。
そのため自然と口呼吸が多くなり喉が痛むことも。
また、熱っぽさ、目の充血、顔のむくみなどの症状も見られます。
逆に風寒タイプの場合は、鼻水はサラサラとしていてたれてきます。
くしゃみも多く、風熱と違って鼻詰まりは酷くないため喉の痛みもあまりありません。
このように同じ症状であってもその原因や症状から漢方の選択は変わります。
また、漢方薬の面白い所は例えば冬から春にかけては風寒タイプの漢方薬。
夏になるにつれては風熱タイプの漢方薬と切り替えていくことで効果をより強く感じることが出来ることです。
漢方薬ではその人の体質や病態を「証」と呼びますがこの証は常に一定のもの、人それぞれ固有のものではなく。
常に変わる可能性を秘め、外的要因、内的要因など様々な要因で変化していきます。
以前聞いた漢方薬が今回は効かなかった、と言う時には自分の証を整理し直してみるのも良いかも知れません。
ちなみに先生その構成生薬も・・・。
越婢加朮湯の構成生薬
麻黄(まおう)
麻黄は砂漠の乾燥地帯に生息し、寒暖差に強い植物です。
身体を温めたり発汗させる生薬の中では最も強力で悪寒が強く発汗しないタイプの感冒に使用されています。
インフルエンザなどで処方されることも多い麻黄湯にも入っている生薬です。
気管支拡張作用も持つことから、せき、喘息のような呼吸困難にも用いられます。
また、温めることで水を動かし痛みをとるため顔面のむくみやむくみからくる関節痛にも効果があります。
ただし、この麻黄は一般的に用いられている生薬でありながらドーピング検査では禁止薬となっているという一面も持っています。
副作用として、発汗過多、動悸、血圧上昇。
また、胃腸障害も出やすいので元々胃腸が弱い方は避けた方がよろしいでしょう。
石膏(せっこう)
石膏の基原は天然の含水硫酸カルシウムで組成はほぼCaSO4・2H2Oです。
こちらは、植物由来ではなく鉱物から作られる生薬で、美術室などにある「石膏像」の石膏と同じものです。
石膏は優れた清熱作用を有しますが他の生薬と異なり体の水分を保持してくれる利点があり津液不足でも使用出来ます。
知母と組み合わせて「白虎湯」(びゃっことう)と言う漢方薬がありますがこれは西方を守護する白い虎、白虎の色と石膏が同じ白色であること。
また、西は秋と関連し暑気冷ましの季節にあたることから清熱作用がある石膏と同じであると言った似通った性質を持つことから名づけられています。
白虎とつく漢方薬は他にも、白虎加桂枝湯、白虎加人参湯などがあります。
生姜(しょうきょう)
生姜の基原ははショウガ科のショウガの根茎で、ときに周皮を除いたものです。
小青竜湯の時に紹介した乾姜と同じショウガから作られている生薬ですが、その薬効には同じ所と違う所があります。
生姜、乾姜共に脾胃を温める力がありますが乾姜の方が勝ります。
ただし、生姜には発汗作用、止嘔作用、解毒作用があるのです。
軽く発汗させることで悪寒、発熱、関節痛、咳を軽減します。
またその止嘔作用は優れており、嘔吐を伴う胃腸炎やつわり、胃腸保護として多くの処方に含まれることも。
生姜がもとになっているお寿司などに添えられている「ガリ」はこの生姜の解毒作用を用いたもので、生魚によって冷えたお腹も温めてくれます。
生姜はショウガとして食材に使用出来、効果も得られます。
生活に取り入れやすい生薬とも言えるでしょう。
大棗(たいそう)
大棗はクロウメモドキかのナツメの果実です。
料理にもよく使われていますが、薬性はあまり強くなく甘味があるため漢方薬の味の調整目的で用いられることもあります。
ナツメは、日本ではあまり知られていませんが中国ではポピュラーな食材で薬膳としても漢方薬としても大棗は多く使われています。
食材のナツメは、気血水の「気」と「血」を補い、滋養強壮に効き、更にはイライラ不眠などの心身の疲れにも友好的。
日本ではあまり見ない食材でも薬膳を学習するとなると必ず登場すると言っても過言では無いほどの優秀な食材なので見つけたら取り入れてみるのが良いでしょう。
生薬としてのナツメも精神安定効果を持ちます。
ナツメの甘さは脾の気を補う働きをし、心血を補います。
気が東部、腹部に急激に上昇して起きる不安、不眠、焦燥感などに効果的です。
甘草(かんぞう)
甘草は他の生薬の働きを高めたり、毒性を緩めたりする調和の作用があります。
そのため、最も多くの漢方薬に配合されている背ようやくです。
五味の「甘」は、「気」「血」を補う作用、心身の緊張を緩める作用があり強い甘味のある甘草は心や脾胃の気を補い精神を安定させてくれます。
清熱作用も持ち、喉の腫れや痛みにも有効です。
体の各部位の緊張を緩めるためにも使われていて、先ほどもご紹介しましたが芍薬と合わせて使うことで筋弛緩作用を生み出し。
芍薬甘草湯、小建中湯などではこむらがえや腹痛の漢方薬として応用されています。
甘草は最も多く使われているだけに漢方薬を複数飲むと意図せずに甘草の摂取過多となってしまう場合があるので複数の漢方を飲むときは飲み合わせに注意しましょう。
蒼朮(そうじゅつ)
蒼朮の基原はキク科のホソバオケラの根茎です。
芳香で湿邪を取り除く芳香化湿作用を持ちます。
芳香化湿作用とは、香を有して気滞を解除し、胃腸にまとわりついた痰を除去し機能を回復する作用のことです。
湿邪による消化不良、腹部膨満、むかつき、嘔吐、下痢など胃腸トラブルで用いられます。
湿気を取り去る力が優れており、発汗、利水作用で水分代謝異常を改善。
風邪を追い払う作用もあります。
越婢加朮湯の構成生薬としては白朮か蒼朮どちらかが使用されますが。
蒼朮は白朮よりも除湿作用に優れ、白朮は蒼朮よりも消化器機能を高める作用が優れています。
症状は反対なのに同じ生薬が使われているの?
越婢加朮湯の麻黄は「利水作用」として使われているんだよ。
最後にどの生薬が何の作用を担っているのかまとめておこう。
構成生薬のまとめ
「小青竜湯」
麻黄、桂皮、細辛、乾姜→辛温解表作用 辛温薬で発汗させて風邪を除く作用
五味子、半夏→去痰作用、鎮咳作用 痰を除く、咳を鎮める作用
芍薬、甘草→調和作用、鎮痙作用 働きを整える、痙攣を止める作用
「越婢加朮湯」
麻黄、蒼朮→利水作用 水分の代謝を正す作用
石膏→清熱作用 熱を冷ます作用
蒼朮、大棗、生姜、甘草→健脾作用 脾の働きを改善する作用
【選ぶポイント】
アレルギー性鼻炎の薬としては小青竜湯が比較的有名です。
ただし、アレルギーは鼻だけでなく目や皮膚にも症状が一緒に出ることがあります。
越婢加朮湯は結膜炎に適応があるためこうした目のかゆみを感じる時には有効的です。
また、やはり重要なのはその症状が「寒」から来るものなのか「熱」から来るものなのか。
小青竜湯は「寒」に強い、越婢加朮湯は「熱」に強い、この大まかな分類から症状を分けてみるのも良いかも知れません。
まだまだペリスケ君の漢方入門の日々は続く・・・
出典:
現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 杉山卓也著 SHOEISHA
生薬と漢方薬の事典 田中耕一郎 編著 日本文芸社
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監修者 佐々木裕人(精神保健指定医、精神科専門医)