ある日の新宿ペリカンこころクリニック
何をお勧めしたらいいか分からないんだよ~。
効果のある漢方薬はどうかな?
アンチエイジングに処方されることのある漢方薬とポイント生薬
六味丸(ろくみがん)
地黄、山茱萸、山薬→腎の働きを改善させ、精を増やす
牡丹皮、沢瀉、茯苓→虚熱を冷ます、水分の代謝を正す
八味地黄丸(はちみじおうがん)
地黄、山茱萸、山薬→腎の働きを改善させ、精を増やす
牡丹皮、沢瀉、茯苓→虚熱を冷ます、水分の代謝を正す
桂皮、附子→温めて腎陽を補う
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
地黄、山茱萸、山薬→腎の働きを改善させ、精を増やす
牡丹皮、沢瀉、茯苓→虚熱を冷ます、水分の代謝を正す
桂皮、附子→温めて腎陽を補う
牛膝、車前子→腎の働きを改善する、水分の代謝を正す
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
牡丹皮、桃仁、芍薬→血の汚濁を解消して血行を改善する
桂皮→体を温めて血管を広げる
茯苓→水分の代謝を正す
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
当帰、芍薬、地黄、川芎→血を補い血の流れを改善する
桂皮→陽気を補い、寒邪を除く
人参、黄耆、白朮、茯苓、甘草→脾の働きを改善し、気を補う
人参養栄湯(にんじんようえいとう)
当帰、芍薬、地黄→血を補う
人参、白朮、茯苓、黄耆、甘草→脾の働きを改善し、気を補う
遠志→鎮静させる
陳皮→気を巡らせ腸の蠕動運動を促す、痰を除く
桂皮→体を温めて血管を広げる
五味子→咳を鎮める
ポイント生薬
地黄(じおう)(六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸、十全大補湯、人参養栄湯)
地黄の基原はゴマノハグサ科のアカヤジオウの根(乾ジオウ)またはそれを蒸したもの(熟ジオウ)です。
地黄は、加齢に伴い減少するとされる「腎精」を補います。
また、身体に潤いを与え、血も補ってくれます。
腎虚、特に腎陰虚による倦怠感、めまい、のぼせ、耳鳴り、白髪、腰の怠さ、腰痛、寝汗、ほてり、泌尿器系の症状(夜間尿、頻尿、残尿、尿失禁)、生殖機能の低下(インポテンツ、月経不順、不妊)などに用いられます。
日本では一般的に根をそのまま乾燥させた「乾地黄」を指しますが、蒸してから乾燥させたものを「熟地黄」と言います。
胃もたれや下痢の原因となることがあるので胃腸が弱っている時、元々胃腸が弱い方が使用する際には注意が必要です。
山茱萸(さんしゅゆ)(六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸)
山茱萸の基原はミズキ科のサンシュユの偽果の果肉です。
山茱萸の酸味には収斂作用があり、気を引き締めることで気血が漏れ出るのを防いで補います。
それにより、声明を維持する根本的な物質と言う概念である「精」を保持しているのです。
肝血、腎精を補い滋養強壮に働きます。
加齢に伴う症状(足腰の痛み、めまい、耳鳴り、精力の減退、視力低下)によく用いられ、六味丸、八味地黄丸などといった腎虚の処方の構成生薬です。
民間では山茱萸を漬けたおさけが滋養強壮のための薬酒として知られています。
山薬(さんやく)(六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸)
山薬の基原はヤマノイモ科のヤマノイモまたはナガイモの周皮を除いた根茎です。
山で産する、と言うことから山薬と言う名前がつけられています。
食材としても滋養強壮に優れ、「腎」、「脾」、「胃」を養い消化吸収を高めスタミナ不足の改善に役立ってくれます。
腎を養うことはアンチエイジング効果にも繋がっているため、ヤマイモを積極的に食べることはアンチエイジングにも効果的。
老化予防、ホルモンバランスの調整と大活躍し更年期障害による不定愁訴にも効果が期待出来ます。また、お子様の発育も促してくれる成長を司る食材です。
生薬としても「腎」、「脾」を同時に補ってくれるので腎虚、脾虚が伴っている方に適しています。
また、他の脾虚の生薬と違い気を補う以外に下痢を止めてくれる効果もあります。
牡丹皮(六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸、桂枝茯苓丸、十全大補湯)
牡丹皮の基原はボタン科のボタンの根皮です。
牡丹は花の王とも呼ばれている美しい花ですが、古くから生薬としても栽培されていました。
香りが強いものが良品とされ、血を動かす力があります。
吐気を止める、血の巡りを良くする、熱を取り去る効果を持ち。
月経時に血の塊が生じる証を「瘀血」と呼びますが、この瘀血を取り除く活血化瘀作用があります。
月経痛や月経不順、不正性器出血、産後の衰弱にも友好です。
また、熱を取り去る清熱涼血作用もありストレスによって生じた熱にも用いることが出来ます。
更に更年期の発汗、顔面紅潮にも有効であり女性の三大漢方の一つと呼ばれる「加味逍遥散」に配合されています。
沢瀉(たくしゃ)(六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸)
沢瀉の基原はオモダカ科のサジオモダカの塊茎で、通例、周皮を除いたものです。
沢瀉、と言うのは「水を去る」と言う意味を表し、水生植物である沢瀉の植生と薬効を表しています。
体内の熱をもった余分な水分を処理して排泄すると言う高い利水効果があります。
そのため、下半身、膀胱炎、尿路関係の処方によく使われている生薬です。
利水は、体内に余分な水を血管の中に引き戻して腎臓を通し余剰分があれば利尿すると言う作用です。
利尿作用だけでは十分に排泄することができない場合に、この利水作用が使用されています。
芍薬(しゃくやく)(桂枝茯苓丸、十全大補湯、人参養栄湯)
芍薬の基原はボタン科のシャクヤクの根です。
女性の三大漢方の一つ、当帰芍薬散と加味逍遥散に配合されています。
中国では血を補う「白芍」と、流れを良くする「赤芍」で使い分けられていますが日本ではその中間的な作用を持つとされています。
芍薬の補血作用は「血の量を増やす」と言うよりも「血の少ない部分に血を集める」と言う作用が強く局所的な血不足の解決に優れています。
血の巡りが悪い「瘀血」タイプでは無く血が少ない「血虚」タイプにあった生薬であると考えられます。
また、最初の葛根湯の際にも触れましたが甘草と合わさることでのみ筋弛緩効果を発揮する珍しい効果を持つ生薬です。
人参(にんじん)(十全大補湯、人参養栄湯)
人参の基原はウコギ科のオタネニンジンの細根を除いた根またはこれを軽く湯通ししたものです。
耐寒性に強く土壌の栄養を根にため込む力があり、これが補益の源泉と言われています。
補中益気湯だけでなく六君子湯、十全大補湯にも用いられている生薬で気を補う生薬と言えば構成生薬に名を連ねるほどに重要な生薬です。
朝鮮人参と言う名で呼ばれているのがこの生薬で私たちが食べている人参とは違います。
気を補い弱った臓腑が動き、疲労倦怠、全身の機能低下を改善します。
また、脾胃の力を補う力もあるので食欲不振や胃腸虚弱の改善にも用いられます。
それだけでなく、肺気を補い風邪の予防、心に働き精神安定と一人何役もこなします。
桂皮(八味地黄丸、牛車腎気丸、桂枝茯苓丸、十全大補湯、人参養栄湯)
桂皮の基原はクスノキ科の樹皮または周皮の一部を除いたものです。
処方名に「桂枝」とつくものの多くにこの桂皮が使用されています。
主な効能は冷えを改善し、痛みを止めるなど。
桂皮はシナモンとほぼ同じ食薬と呼べるため薬膳的にも効果は同じです。
桂皮、と言っても中国では基原植物のケイの若枝を「桂枝」、樹皮を「肉桂」と呼んで区別しています。
枝である桂枝は手足、体表の発汗解熱に優れ。
肉桂は体幹を温める効果に優れています。
更に、心、脾、腎を温め気血の流れを改善し関節痛、痺れ、月経痛をも和らげてくれます。
茯苓(六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸、桂枝茯苓丸、十全大補湯、人参養栄湯)
茯苓の基原はサルノコシカケ科のマツホドの菌核で、通例、外層をほとんど除いたものです。
はれを鎮め、身体の表面の邪を払う効果があります。
茯苓はキノコの一種で、表面の皮は茯苓皮として体表部の水分を取り除く作用がありますがこれは「皮を以って皮を治療する」と言う考え方に基づくものです。
余分な水分を取り除く利水さようもあり、めまい、むくみなどの症状を改善してくれます。
また、脾の気を補う力、精神的な安定作用、食欲不振、胃もたれ、吐き気などの消化器症状にも良く組み合わされ不安、不眠、動悸にも使われています。
桃仁(とうにん)(桂枝茯苓丸)
桃仁は基原がバラ科のモモの種子、つまり桃の種です。
桃を食べていた時に出てくるアーモンドのような種が桃仁と呼ばれる生薬なのです。
勿論食べることは無いと思いますが、桃仁は瘀血による血の巡りを改善し血をよく巡らせる効果がある代表的な生薬です。
月経痛や、月経量の減少、月経停止、血塊など月経トラブルによく使われるほか外傷後の瘀血にも使用されます。
血の巡りを整えることに関して、桃仁は抜群の強さがあります。
また、桃仁は大きく油分の多いものが良品とされておりこの油分で便秘改善にも効果的です。
大丈夫使い分けも解説していくよ。
体質や目的からみるアンチエイジング
まず、生命力の源泉、気血の根本は「腎」に蓄えられている「精」と言われています。
この精は年齢を重ねるとともに減少していき、それに伴い心身も弱っていきます。
この流れを出来るだけゆっくりに引き延ばし、腎虚を起こさないようにすると言うのが漢方でのアンチエイジングの考え方です。
まずご紹介するのは、腎虚の進行をゆるやかにするため、腎の働きを保つためにおすすめなの六味丸をベースとした漢方薬です。
忘れっぽい、白髪が増えた、老眼、トイレが近い、膝が痛い、疲れやすいなど老化による諸症状は腎の低下が影響しています。
症状がひどくなる前に予防的に用いるのがよく、六味丸は温める生薬が配合されていないのでのぼせなどがある暑がりな人。
八味地黄丸は体が冷える人、さらに冷えタイプの症状がより重い場合に牛車腎気丸をおすすめします。
次に、瘀血によるしみなどの予防に桂枝茯苓丸を使用する方法です。
しみができやすい、ちょっとしたことであざができやすくなったと言う時は血行が悪くなっていると考えられます。
ここで言う血は栄養、と言う意味でもあるため血が滞ると栄養が届けられません。
老廃物の処理も出来ずシミ、くすみの原因にもなります。
桂枝茯苓丸は血行を良くしてくれる漢方薬です、頭部の血行が改善されると神にも良い影響がありまたホッとフラッシュなど更年期の症状にも効果があります。
最後に消化器を大事にして気血を補う方法です。
食事をして得る栄養は生命活動の基になる気血となります。
「脾」のはたらきをたかめて日頃から気血を補っておく必要があるのです。
疲れがとれない、身体が冷える、肌がかさつくといった症状が出始めたら黄色信号。
十全大補湯、人参養栄湯で消化機能を改善し気血を補いましょう。
人参養栄湯も十全大補湯も疲労感を感じた際に気力を補ってくれる効果もあるので疲れた時はアンチエイジング以外でもおすすめです。
と言うより養生させるってイメージなんだね。
アンチエイジングにきくものは無いの?
アンチエイジングにおすすめの食材
海老
海老には気を補う作用と、腎の機能を高める作用があり疲れ、足腰のだるさ、白髪、筋力と勢力の低下を改善する効果が期待出来ます。
殻をむいて食べる方もいらっしゃると思いますが殻は瘀血体質の方におすすめ。
血の巡りを活発にしてくれるのでシミやクスミ対策になります。
身体を温めて冷えを改善する効果もあるので、手足の冷えや、むくみ、肩こり、目の下のクマなどの改善にも有効です。
ブルーベリー
ブルーベリーには目の疲れを癒し、目の充血や目のかすみ、目の不調を和らげる作用があります。
また、血の巡りをよくするので肩こり、肌のシミ、肌のくすみが気になる人にもおすすめの食材。
「腎」と「肝」の働きを高める作用もあるため老化で出やすい症状(腰やひざのだるさ、耳鳴り、むくみ、頻尿、情緒不安)などが出やすい人にも効果が期待出来ます。
アンチエイジング効果のため旬の夏には継続して食べると良い食材です。
黒ゴマ
アンチエイジング効果の代表格。
そもそも、腎を補う食材は黒いものを食べると良いとされています。
その中でも黒ゴマは高い滋養強壮作用があり気と血の不足が引き起こす慢性的な疲労、筋力低下、ドライアイ、情緒不安といった症状の改善に有効です。
滋養強壮以外にも「肝」と「腎」の働きをたかめてくれるので足腰のだるさ、耳鳴り、脱毛、精力減退、生理不順にも。
お祖母ちゃんと仲良く食べてね。
こうしてペリスケ君の漢方薬入門の日々は続いていくのでした・・・
出典:
現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖 杉山卓也著 SHOEISHA
生薬と漢方薬の事典 田中耕一郎 編著 日本文芸社
こちらの記事もおすすめです→漢方薬入門!神田橋処方
食材で迷った時はこちらがおすすめ→
監修者 佐々木裕人(精神保健指定医、精神科専門医)