演技性パーソナリティ障害とは、その名前通り、演技的で、いつも注目をされていたい、自分が中心にならなけれだ気が済まないという人たちです。人を引きつけようとし、実際に引きつけるのが上手です。境界性パーソナリティ障害と合併しやすいことでも知られています。
一般的に女性に多く見られ(男性もいない訳ではありませんが)、例えば自分の美貌によって人を引きつけ、「自分がどう振るまえば、相手の心をつかめるか」を考え、そのように振舞います。また非常に誘惑的で、人を操作するのが巧みです。ただ、感情表現は豊かで会話もなめらかですが、中身は浅いことが多いです。
このように自己中心的で「注目を集めたい」という欲求が極めて強いため、それが満たされないと怒りを爆発させます。他人が“この世を行き抜く鍵”であり、他人の愛情を得ようと、自分から積極的に働きかけます。
自分や自分の行為すべてについて、誰からも愛され賞賛される必要があると思っており、このことから逆に、拒絶されることに対し、強い恐怖を持つことになります。ある年齢を過ぎて容貌が衰えたり、能力があまり評価されないような状況になり、人を引きつける力を失ってしまうと、うつ状態になり、うつ病やアルコール使用障害に陥りやすくなります。
≪演技性パーソナリテイ障害の特徴≫
✓自分が注目を集め、中心にならないと気が済まない
✓誰からも愛されて、賞賛されるべきだと思っている
✓不適切なほどに性的に誘惑的な態度をとる
✓自分の身体的な魅力を強調して、人の関心を引こうとする
✓感情表現がオーバーな割に内容が浅い
✓芝居がかった態度をとる
✓大して親しくもない人に慣れ慣れしく振舞う
どんなパーソナリティ障害?
その名称の通り演技的で、いつも人の注目を集め、自分が中心になっていないと気が済まないという人たちです。自己中心的で、自分がその場の中心になっていないと、怒りを爆発させることがあります。
女性に多いのですが、男性にも見られます。男性の場合は能力や肉体的ま強さ、精力的な側面が賞賛されるように生きていることが多く、女性の場合は華やかな化粧や服装、愛想のよさ、可愛らしさ、美貌などで人を引きつつけようとします。
感情的に泣いてみせたり、些細なことに大袈裟に喜んでみたりもします。要は、人の心を掴むために演技することや「自分がどう振舞えば、周りの人がどう反応するか」を考えて行動することを身につけてしまっているのです。また、性的な誘惑を含め、誘惑するのが非常に上手く、人を操作することに長けています。
演技性パーソナリティ障害の診断基準(DSMより)
次の8つの基準の内、5つ以上が当てはまります。
□① 自分が注目の的になっていないと楽しくない。
□② しばしば不適切なほど性的に誘惑的・挑発的な態度をとる。
□③ 感情表現が浅く、変わりやすい。
□④ 自分の身体的な魅力を強調して、人の関心を引こうとする。
□⑤ 感情表現がオーバーなわりには内容に乏しい。
□⑥ 芝居がかった態度や感情表現をする。
□⑦ 周りの人や環境の影響を受け易い。
□⑧ 対人関係を実際以上に親密なものと思い込み、
大して親しくない人になれなれしく振舞ったりする。
表面化するキッカケは?
ある年齢を過ぎて容貌が衰えたり、能力はあまり評価されないような状況になったりして、人を引きつける力を失ってしまうと、孤独からうつ状態に沈みやすくなります。その結果、うつ病やアルコール使用障害に陥りやすくなります。また、見た目への固執から、摂食障害を併発することもあります。
治療について
どのパーソナリティ障害についてに言えることですが、当事者本人に「治そう」という自覚がない限り、極めて難しいと言えるでしょう。
演技性パーソナリティ障害の人は、多くは、うつ病やアルコール使用障害で病院にやって来られます。薬物療法は大抵、抗不安薬が中心ですが、あまり重要ではなく、むしろ治療者(医師やカウンセラー)とじっくり向き合う1対1の心理療法、特に認知行動療法を中心にして、“考え方の歪み”を正していくことが重要です。本人が自分の非現実的・依存的な思考に気づいていくよう、手助けをしていくことになります。
家族にできること
演技性パーソナリティ障害の場合、本人の自覚はもちろん不足しています。ですから、家族がそのような演技性人格、つまり人から注目を集めたがる傾向に注意深く配慮し、助長しないよう心がけなくてはなりません。
ただし、いっぺんに自己中心性や演技的な側面を無視していまうと、それはそれでまた大きなトラブルの原因になりますから、ほどほどの理解とほどほどの無関心が必要でしょう。
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Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)
参考引用文献:町沢静夫著『図解 大切な人の心を守るためのこころの健康事典』