今回ご紹介する「うつ病認知スケール(町沢静夫医師作成)」は、うつ病の患者様によくみらる認知の3側面、すなわち「自己否定」「対人過敏」「完全癖」の側面を測ることができます。
うつ病の人はこの3つのスコアが高いのですが、境界性パーソナリティ障害(ボーダーライン)の方は、「自己否定」「対人過敏」のい2つがうつ病の方以上に高い傾向が見られます。そこで、このスケール(チェックテスト)を使って、どの側面の得点が一番高いかを調べることは、自己理解や今後の治療目標を立てる上でも役立つと言われています。
うつ病認知スケール
各質問について、「非常にそう思う(4点)」「ややそう思う(3点)」「あまりそう思わない(2点)」「まったくそう思わない(1点)」の中から最も自分に近いものを選び、合計得点をそれぞれ算出します。
1 どこか別世界にでも行けたらと、いつも思う
2 私はとても心が弱い人間だ
3 仕事や家事をやりかけのまま残すことはできない
4 いつも人の目や言葉が気になり、不自由だ
5 私は人生で失敗ばかりしている人間だ
6 自分の仕事(勉強)がうまくいっているときに限って邪魔をする人が現れたり、トラブルが起きる
7 世の中は良いか悪いかのどちらかだ
8 とにかく根性があれば何とかなるだろう
9 私はいつも公平を心がけてかえって疲れてしまう
10だれも私を理解してくれないと思う
11どんな規則でも、とにかく守るべきだ
12人がどう思っているかで自分の考えが縛られる
13私の未来はさびしい
14自分にがっかりしている
15だれかがそばにいてくれないと私は生きていけない
16時がたつのがとても遅く感じられる
17私はあまりやる気がない人間だと思う
18私の出会う偶然の出来事もコントロールできなくてはいけない
19いつも人の悪いところばかり見てしまう
20私が皆の中に入ると、大変なことが起きるようだ
21私の人生はメチャクチャである
22自分の問題を人が助けてくいれればいいのになと、いつも考えてしまう
23私は正しいことしかしない
24私は負け犬だ
25現在(今)のことより過去のことを考えがちである
26私は他の人と比べると能力が劣っている
27私の人生は自分の思った通りになっていない
28私がほめられることがあっても、それはお世辞である
29人間はすべてにおいて公平でなければならない
30私は、他人の地位や、お金、家、容貌などが気になって比較しがちである
31期限までにちゃんと仕事を終えていないと我慢できない
32いくら心配しても、心配し過ぎるということはない
結果の算出・判定
★否定的自己認知:自分を悪く捉える傾向
➡2・5・10・13・14・17・21・24・25・27の合計得点
★対人認知:他人の評価を気にする、依存性がある
➡1・4・6・12・15・19・20・22・26・28・30の合計得点
★強迫的思考:何事も完全でなければ気はすまない
➡3・7・8・9・11・16・18・23・29・31・32の合計得点
診断結果(※うつ病に関する各領域における平均点です)
☆否定的自己認知
問題なし:19.1
中程度問題あり:24.4
危険域:30.3
☆対人認知
問題なし:22.3
中程度問題あり:26.2
危険域:29.9
☆強迫的思考
問題なし:26.0
中程度問題あり:28.8
危険域:30.8
☆総得点
問題なし:67.4
中程度問題あり:79.4
危険域:91.0
境界性パーソナリティ障害の人へのアドバイス
「対人認知」が強い境界性パーソナリティ障害の人は、対人過敏が強く、そのための自分のペースを失ってしまってはいないでしょうか? 自分のやりたいことも、人の目を気にして十分に集中出来ないないのではありませんか? 人がどう見ていようと自分らしくマイペースに生きることが大切です。
「否定的自己認知」が強い境界性パーソナリティ障害の人は、「自分はダメな人間だ、価値がない、悪い人間だ…」と、自分で自分を否定してはいませんか? このままでは、自分が良くなることは難しくなってしまいます。自己否定の気持ちが強い場合には、その気持ちを捨てるように試みて9いきましょう。例えどんなに自分が人からひどく思われようとも、私は私を支えていく。私は私を受け入れる。今ここで受け入れて、ここから出発をする、という心構えでいきましょう。
「強迫的思考」が強い境界性パーソナリティ障害の人は、何でも完璧にやらないと気がすまない完全癖(完璧癖)があり、それで疲れ果ててしまってはいないでしょうか? 重要なことはちゃんとやるけれども、そうでないものは“そこそこにやる”。そのことこそ重要なのだと思いませんか? 加えて、仕事や勉強だけでなく、遊びも重視しましょう。人生には色々な側面、色々な価値観があります。遊びやユーモアも、人間にとってはとても大切なものなのです。
このコラムを読まれまして、気になる点がありました方や、
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Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
参考引用文献:町沢静夫著『図解 大切な人の心を守るためのこころの健康事典』