発症しやすい精神障害
境界性パーソナリティ障害の人はストレスに弱く、精神障害を発症しやすいだけでなく、同時に複数の病気を抱えていることが非常に多いです。
1.例えば、摂食障害がまず挙げられます。境界性パーソナリティ障害の人たちは、感情のコントロールが苦手なので、強い怒りやストレスを感じると、過食発作で紛らわそうとされます。過食症だけでなく、拒食症も見られます。
2.また、境界性パーソナリティ障害とうつ病との合併率は80%にものぼります。対人関係が上手くいかないこと、また「見捨てられるのではないか?」「自分は見捨てられている」といった不安感(「見捨てられ不安」)から発症しやすいのです。
3.さらに、対人関係や仕事・学業の状況が安定しないことや、将来への不安などからパニック症などの不安症を発症することもあります。そして、思春期の頃であれば不登校、就職後は出社拒否といった形でまず現れ、その後、対人関係への不安などから、引きこもってしまうケースはとても多いです。
4.その他、自暴自棄な気持ちやうつ気分を晴らすためにアルコールに走ったり、薬物などに溺れてしまうこともあります。
他のパーソナリティ障害との関係
以前、当院のブログでもご紹介させて頂きましたが、パーソナリティ障害は一つだけに当てはまるというよりも、複数のパーソナリティ障害が重なっている場合が少なくありません。境界性パーソナリティ障害は特に他のパーソナリティ障害を合併していることが多いです。
5.一番多いのは、演技性パーソナリティ障害、次いで回避性パーソナリティ障害、失調型パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害…というようになっています。
そもそも、「パーソナリティ障害」とは、その人が持っている人格(パーソナリティ)がいきすぎて、社会生活に破綻をきたすというものです。
ここで言う「パーソナリティ(人格)」は、「性格」とほぼ同じものと考えてもいいのですが、精神医学では、中核に遺伝的な要素の強い「気質」があり、周囲を社会的・文化的な影響の強い「性格」が包んでいるとし、その「気質」と「性格」を含めた全体を「人格」としています。
現在では、精神障害はその人がもっている「素質」と、ストレスが相互に影響し合って起こると考えられています。「人格」は、この「素質」の中に入ると言えます。言い換えれば、現代の精神医学では、パーソナリティを考慮せずには、どんな治療も成り立たなくなっているのです。
現在、パーソナリティ障害は「10個」挙げられており、それぞれ、「A群」「B群」「C群」という3グループに分けられています。それは以下のような分類になっていますので、ご参照下さい。
★A群:奇妙で風変りな特徴を持つ
➡妄想性パーソナリティ障害・シゾイドパーソナリティ障害・失調型パーソナリティ障害
★B群:感情の混乱の激しさを特徴とする
➡演技性パーソナリティ障害・境界性パーソナリティ障害・自己愛性パーソナリティ障害・反社会性パーソナリティ障害
★C群:不安や恐怖感の強さを特徴とする
➡回避性パーソナリティ障害・依存性パーソナリティ障害・強迫性パーソナリティ障害
このコラムを読まれまして、気になる点がありました方や、
興味・関心を抱かれた方は、どうぞ当院まで、
お気軽にお問い合わせください。
当院では、境界性パーソナリティ障害をはじめ、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
うつ病、躁うつ病(双極性障害)、不安症、
適応障害、ストレス関連疾病、睡眠障害(不眠症)、
パニック症、自律神経失調症、冷え症、摂食障害、
月経前症候群、強迫症、過敏性腸症候群、心身症など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。
Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)
参考引用文献:町沢静夫著『図解 大切な人の心を守るためのこころの健康事典』