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【医師監修】依存性パーソナリティ障害って何ですか??

依存性パーソナリティ障害とは?

依存性パーソナリテイ障害は、境界性パーソナリテイ障害とも合併しやすい傾向があります。では、依存性パーソナリテイ障害とはどんなものなのでしょうか? 依存性パーソナリテイ障害とは、何でも人に頼らずにはいれず、自分のことであっても人に決めてもらいます。このパーソナリテイ障害の人たちは、うつ病ということで外来にやってくることも多く、治療を進める内に、その根底に依存性パーソナリティ障害があることに気づく場合も少なくありません。

 

 

表面的には人当たりの良い雰囲気があるのですが、心の底では自分が無力で、自分自身が何かをやっていくことに対する恐怖を持っています。他人のアドバイスなしでは普通の事柄を決定することができず、また自分が支持されなかったり、愛情を受け入れてもらえなかった場合には急に緊張感が強くなり、塞ぎこんでしまうことが見られます。

 

 

頼れる人が入れば社交的になりますが、その相手を失うと、うつ病不安症になってしまうことがあります。しかし、他のパーソナリティ障害に比べると、治りやすく、心理療法に効果が出やすいと言われています。

 

 

他人の承認や愛情を強く求めること、他人の願望と一致して生きようとする点で、演技性パーソナリティ障害と共通する点がある人格です。

 

 

依存性パーソナリティ障害演技性パーソナリティ障害の「共通点」は以下の通りです。

 

➊ 他人の承認や愛情を強く求めます

➋ 他人の願望と一致して生きようとします

 

即ち「他人の中に重心の中心があり、自分の中にはない」ということが共通しています。

 

 

一方で、双方の決定的に異なる点は、依存性パーソナリティ障害の人は終始「受け身のスタンス」でありのに対し、演技性パーソナリテイ障害の人は「積極的なスタンス」を取っているということです。

 

 

具体的な「受け身のスタンス」とは、「他人に寄り掛かる」「他人が自分の人生を支配してくれることを望む」という事柄を指します。反して「積極的なスタンス」を具体的に説明すると「他人の承認と気遣いを得ようとする」「自分の人生の責任を取る意志と能力を持っている」という特徴を持っています。

依存性パーソナリテイ障害の診断基準(DSM)

以下の8つの基準のうち、5つ以上が当てはまります。

 

□①日常のことでも、人からありあまるほどのアドバイスと「大丈夫だよ」「何かあったら助けてあげるよ」といった保証をもらわないと決められない。

 

□②自分の生活上の重要なことでも、人に責任を持ってもらいたがる。

 

□③人の支持を失うのが怖くて、人の意見に反対できない。

 

□④自信がないために、自分の考えを計画的に始めたり、物事を行うことができない。

 

□⑤ 人から愛情や支持を得るために、不快なことまでやってしまうことがある。

 

□⑥ 「自分で自分のことができない」という、強い恐怖や無力感を感じている。

 

□⑦親しい関係が終わった時に、自分を支えてくれる別の関係を必死に求める。

 

□⑧ 「誰にも世話されずに放っておかれる」という恐怖にとらわれている。

依存性と境界性パーソナリティ障害が合併すると…

依存性パーソナリティ障害がベースにあり、境界性パーソナリティ障害になっている人は、愛情が乏しい気まぐれで不安定な環境で育っていることが少なくありません。親自身が不安定であったり、自分勝手な性格であったり、子どものゆっくりと関心を払うゆとりがない状況であったりというケースが大半を占めます。

 

 

このタイプの人は、ある時期まで、親の顔色や機嫌を伺いながら、親に気に入ってもらおうと生きてきます。相手の気持ちを察して分かってしまうので、先回りをして、それに合わせてしまうとうことが当たり前になっています。しかし、それが限界を突破してしまい、もはや続けられなくなっているのは目前です。そのような親の呪縛から逃れて、外の世界で自分が受け入れられた時、これまでに味わったことのないような自由と解放感を覚えることもあります。場合によっては、家に帰らずに、悪い友人と遊んだり、アルコール等に酔いしれることもあります。

 

 

但し、このタイプの人は自分で自分を支え、コントロールすることには慣れていないため、外でも何かに頼ろうとします。そこにしばしば危険が待ち構えています。

 

 

また、このタイプの人では、自分一人で孤独や苦悩を抱えきれず、それを共有し、支えてくれる人を絶えず求めています。このタイプの人が求めるものは、究極的には、全ての関心と時間を捧げて関わってくれる完璧な母親や父親のような存在です。しかし、その人自身が、既に幼い子どもではない以上、その願望が叶えられることは困難です。自分を持て余し、それを満たしてもらうことが叶わないと悟ると、最後に求めるのは、せめてこの人生を一緒に終わらせてくれる人になります。このように、このタイプの依存欲求の根底には、このような心理が潜んでいます。このタイプの人は、一人では何もできないが、相手と一緒なら何も怖くない、という心理を抱きやすい、危険な側面があります。このタイプの人が回復する上では、安定し、安心できる人との出会いが欠かせないのは言うまでもないのです。

このコラムを読まれまして。
気になる点がありました方や、興味・関心を抱かれた方は、
どうぞ当院まで、お気軽にお問い合わせください。

 

 

当院では、境界性パーソナリティ障害をはじめ、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
うつ病、躁うつ病(双極性障害)、不安症、
適応障害、ストレス関連疾病、睡眠障害(不眠症)、
パニック症、自律神経失調症、冷え症、摂食障害、
月経前症候群、強迫症、過敏性腸症候群、心身症など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)

参考引用文献:町沢静夫著『図解 大切な人の心を守るためのこころの健康事典』・岡田尊司著境界性パーナリティ障害