コラム
News

【医師監修】パーソナリティ障害は、本人の「治したい」が大事!

パーソナリティ障害を治すために最も必要なのものは、「治りたい」という受け身の姿勢ではなく、自分の力で「治したい」という強い気持ちです。

 

 

パーソナリティ障害でつらい思いをしていても、当事者本人は誰かに責任を押しつけたり、助けて欲しいとすがる気持ちを心の中に持っているものです。パーソナリティ障害は自分の問題です。そのことに向き合うことを恐れ、誰かに責任を押しつけている限り、パーソナリティ障害からの回復は望めません。パーソナリティ障害を治すのは、医師でも家族でもありません。自分が抱えている問題や苦しさは誰のせいでもなく、自分にしか解消できないのです。そのことに本人が気づき、「治したい」と強く思って初めて、回復への一歩が始まるのです。

 

 

家族や周囲の人は、例え「助けたい」という善意からであっても、本人に関わり過ぎないようにしましょう。何故なら、手を差し伸べることは、かえって回復の妨げになります。本人は本人の問題に取り組み、家族は本人との関係を見直すなど、各々が自分の問題や課題に取り組みましょう。

回復の道のりは似ている

境界性パーソナリティ障害自己愛性パーソナリティ障害は、心の奥底にあるものも、表に現れる症状も違いますが、回復に必要なのは、どちらも「不安や幻想を自分に見えるようにすること」です。心に深く刻みこまれた“幻想”は、物事の見方や受け取り方に大きな影響を及ぼします。そのため周囲の出来事が、幻想によって歪められてしまっているのです。

 

 

見捨てられる、愛されない、自分には価値がない、といった観念は現実ではありません。それは幼い時から持ってきた幻想です。幻想は現実を書き換えてしまうので、現実より強力です。幻想の修正が治療の目標となります。精神療法(心理療法)では、自分を動かしている無意識的な衝動を自分に見えるよういし、自分で扱えるようにします。癒しを求める治療では、問題の解決になりません。

 

 

医師(あるいはカウンセラー)が精神療法(心理療法)を行う時も、医師が治すのではなく、治療の主体はあくまでご本人です。回復という山は自分で乗り越えなくてはなりません。医師やカウンセラーは、ガイドとして道案内をしますが本人の代わりに荷物を持ったり、本人を背負って歩いたりはしないのです。

 

 

回復の過程において、境界性パーソナリティ障害の場合は、その問題行動の根源にある見捨てられ不安に気づけるようになることでしょう。自己愛性パーソナリティ障害の場合は、思い描いている自分と強い自尊心の陰に、無力で弱い自分がいることを徐々に受け入れられるようになっていかれることでしょう。

 

 

このように、「見捨てられ不安」や等身大の自分がないことなど、自分のパーソナリティ障害のしくみ(病理)が見えるようになってくると、そこから起きる感情の嵐や問題行動を自分でコントロールできるようになってきます。パーソナリティは、その人の自分自身のありようであり、人との関係をつくるものです。自分の気持ちを穏やかに保つと共に、安定した対人関係を築けるように、パーソナリティの機能を健康なものにしていくのです。

 

 

誰でも、自分に向き合うのは勇気がいることです。焦りやもどかしさを感じるのはごく自然なことですし、時には後戻りしてしまうこともあるでしょう。それでも一歩前に踏み出せば、道は続きます。一歩が出ない時は休んでもいいのです。パーソナリティは、時間を掛けて少しずつ形成されてきたものです。その分、回復には時間が掛かります。個人差も当然あります。一年以上かかると思って、年単位の時間が掛かると覚悟を決めて、しっかりと健康なパーソナリティを築いていきましょう。

このコラムを読まれまして、気になる点がありました方や、
興味・関心を抱かれた方は、どうぞ当院まで、
お気軽にお問い合わせください。

 

当院では、境界性パーソナリティ障害をはじめ、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
うつ病、躁うつ病(双極性障害)、不安症、
適応障害、ストレス関連疾病、睡眠障害(不眠症)、
パニック症、自律神経失調症、冷え症、摂食障害、
月経前症候群、強迫症、過敏性腸症候群、心身症など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)

参考引用文献:市橋秀夫監修パーソナリティ障害(講談社)