コラム
News

パーソナリティ障害が気になる方へ…!【チェックテスト付】

パーソナリティ障害とは、その人のパーソナリティ特性、すなわち、物の見方や行動(認知・行動)や感じ方(感情)、他者との関わり方(対人関係)のパターンに、著しい偏りがあり、その人の機能が損なわれている状態が暫く続いていることを特徴とする障害です。パーソナリティ障害は、他の精神障害に比べると、個々の機能の障害は軽いですが、障害の現れる領域が広く、経過が長いこと(2年以上が一つの目安)が特徴です。

 

 

パーソナリティ障害には、様々なタイプがあり、現在10の分類がなされています(DSM-5)。今回はその中でも6つのパーソナリティ障害について、取り上げていきます。具体的には、以下の6つを取り扱います。

 

  • 「反社会性パーソナリティ障害」:このタイプのパーソナリティ障害では、他者の権利を侵害する反社会的行動が繰り返されることが特徴です。衝動的、向こう見ずで思慮に欠けており、暴行や傷害、窃盗などの犯罪に走ることがあります。また他者の感情に共感を示さず、信頼や正直さに欠けるため、対人関係を長期に渡って持続することに困難を抱えています。

 

  • 「回避性パーソナリティ障害」:このタイプの特徴は、自分自身の失敗や周囲からの拒絶などの否定的評価や強い刺激をもたらす状況を避けようとすることです。彼らには、自己にまつわる不安や緊張感、さらには自己不確実感及び劣等感が認められます。その結果、対人関係に消極的になり、ひきこもりになることもあります。

 

  • 境界性(ボーダーライン)パーソナリティ障害:このパーソナリティ障害では、行動パターンや感情、自己のイメージなど広い領域の不安定さが特徴です。コントロールできない激しい怒りや、抑うつ、焦燥など、気分の著しい変動を見せます。対人関係では、孤独に耐えられず、周囲の人との関わりを強く求めようとします。これらの気分や対人関係の動揺によって、しばしば自傷行為や自殺未遂、浪費や薬物乱用など自らを危険にさらす衝動的行動が生じます。

 

  • 自己愛性パーソナリティ障害:このパーソナリティ障害の中心的特徴は、自己誇大感です。自らの重要性や業績を過大評価し、傲慢さや特権意識を見せて、注目や賞賛を求めます。また、他者には嫉妬や軽蔑といった偏った感情を抱きます。自らが常に充足していると感じていることと裏腹に、自分の失敗や周囲の批判から強い羞恥心や怒りの感情が生じることがあります。対人関係は、自己誇大感が維持されないと長続きしません。

 

  • 強迫性パーソナリティ障害」:このタイプでは、対人関係や自分自身の内面に一定の秩序を保つことに固執することが特徴です。そしてそのために、几帳面、完璧主義、頑固さを見せます。また、完璧主義で細部にこだわるため、仕事を要領よく勧める上で、困難が生じることがあります。過度に良心的、倫理的、道徳的であり、融通をきかせられず、自分のやり方を他者に押しつける偏狭さを見せることもあります。

 

  • 「統合失調型パーソナリティ障害」;これは、外見や行動に奇妙さや不適切さが見られ、対人関係が広がりに欠け、感情の幅が狭く、しばしば適切さを欠くことを特徴とするパーソナリティ障害のタイプです。関係念慮、奇異な信念や魔術的思考などの思考面の偏奇など、精神病症状に近い特徴が現れます。

 

パーソナリティ障害では、一般の人々との間にも高い頻度で見られます。従来の研究では、成人のおよそ10~15%がパーソナリティ障害と診断されることが報告されています。しかし、パーソナリティ障害は、単独ならば重症ではないことが大部分なので、治療を求めて医療機関を受診するのは、そのごく一部に過ぎません。そして、その人々の受診契機の多くは、他の精神障害の発症・増悪や、失業や離婚といった大きなライフイベントに見舞われたことがキッカケとなっています。

 

 

さらに、パーソナリティ障害では、それぞれのタイプにおいて、他の精神障害との間に密接な関連が認められます。例えば、統合失調型パーソナリティ障害は、統合失調症の家族によく見られることが指摘されています。また、社交不安障害の患者様では、大多数で回避性パーソナリティ障害が合併していることが確認されています。

 

 

実際の診療においても、パーソナリティ障害は他の精神障害と切り離して考えることはできません。何故なら、パーソナリティ障害の患者様では、ほぼ全例で他の精神障害との合併が認められるからです。例えば、全てのタイプのパーソナリティ障害において、うつ病を発症しやすい傾向があります。他にも、反社会性パーソナリティ障害、及び境界性パーソナリティ障害には、薬物乱用が多く合併していることが知られています。

パーソナリティ障害の発症過程と経過

パーソナリティ障害は、小児期後期あるいは青年期にその兆候が表れて、さらに成人期に入ってから明らかになるのが典型的です。但し、若い時期にパーソナリティ障害の兆候があったとしても、経過の中で問題が消失することも少なくありません。

 

 

また、パーソナリティ障害の特徴がはっきりしたとしても、それが人生経験を積み重ねる中で、徐々に修正されていくことが多いので、長い目でみることが重要です。特に、反社会性パーソナリティ障害、及び境界性パーソナリティ障害の特徴は、年を重ねるにつれて、その特徴が目立たなくなることがしばしばあります。他のパーソナリティ障害のタイプにおいても、様々な経験から本人が教訓を得て、その特性を修正していくことがあります。しかし反対に、自分を支える重要な人物を失うとか、生活環境が悪化するとかの変化によって、パーソナリティ障害の問題が一層深刻になる場合もあるます。

 

自分のパーソナリティ特性を調べてみよう!

現在、国際的に使われている精神障害の診断基準(アメリカ精神医学会の診断基準・DSM-5)及び、世界保健機構(WHO)の国際疾病分類の診断基準第11改訂版では、パーナリティ障害の診断において、パーソナリティ特性を評価することが求めらるようになってきています。

 

 

アメリカ精神医学会の診断基準では、5つのパーソナリティ特性(Big-5)の因子を、前出の6つのパーソナリティ特性を特徴づけるものとして配置しました。これら5つのパーソナリティ特性は、それぞれ一般の人々を対象として開発されたパーソナリティの評価方法である「性格特性5因子モデル」における5つのパーナリティ特性の極端なもの(病的なもの)とされる特性を用いています。その5つが、「否定的感情」・「離脱」・「対立」・「脱抑制」・「精神症性」です。5つの具体的内容は以下の通りです。

 

 

➊「否定的感情」…抑うつや不安を抱きやすい傾向

➋「離脱」…強い内向性を示して他者と関わろうとしない傾向

❸「対立」…周囲の人々と衝突しやすい傾向

❹「脱抑制」…衝動的行動に走りやすい傾向

❺「精神症性」…奇妙な普通でない行動や認知を示す傾向

 

 

そして、上述の6つのパーナリティ障害には、この5つの因子が、以下のように配置されていると考えられています。

 

反社会性パーソナリティ障害:❸・❹

回避性パーソナリティ障害:➊・➋

境界性(ボーダーライン)パーナリティ障害:➊・❸・❹

自己愛性パーソナリティ障害:❸

強迫性パーソナリティ障害:➊・➋・(❹)

統合失調型パーソナリティ障害:➋・❺

 

 

ではここで、上記の➊~❺の有無をチェックすることの出来るパーナリティ調査票(PID-5-BF)を実際に実施しみましょう。

 

Q.この調査票では、あなた自身がご自分をどう考えるかが質問されます。回答に良い・悪いはありませんので、できるだけ率直にお答えください。質問をよく読んで、それぞれの項目ごとに、自分に一番合った回答(数字)に〇をつけて下さい。

 

完全にまたはしばしば違う=0

時々またはどちらかといえば違う=1

時々またはどちらかといえば正しい=2

とてもまたはしばしば正しい=3

 

 

1  私は他の人から無謀だ(考えが足りない)と言われる。【0・1・2・3】

 

2  私は、全て衝動に従って行動したいと思っている。【0・1・2・3】

 

3  状況が分かっていても、私は慌てて決断することをやめられない。【0・1・2・3】

 

4  私は自分にとって大切なものはないとしばしば感じる。【0・1・2・3】

 

5  私は他の人から無責任だと言われる。【0・1・2・3】

 

6  私は前もって計画を立てるのが不得手だ。【0・1・2・3】

 

7  私の考えは他の人に理解してもらえないことがよくある。【0・1・2・3】

 

8  私は殆ど全てのことが心配になる。【0・1・2・3】

 

9  私は些細なことでもすぐに感情的になる。【0・1・2・3】

 

10 私は何より孤独を恐れている。【0・1・2・3】

 

11 私は、その方法がうまくいかないと分かっていても、それをやめられない。【0・1・2・3】

 

12 私は、実際にはそこにないものを見たことがある。【0・1・2・3】

 

13 私は恋愛関係を避けている。【0・1・2・3】

 

14 私は友人を作ることに感心がない。【0・1・2・3】

 

15 私はあらゆることにイライラしやすい。【0・1・2・3】

 

16 私は人と親密になることが好きでない。【0・1・2・3】

 

17 他の人の感情を害することは、私にとって大きな問題ではない。【0・1・2・3】

 

18 私は物事に夢中に(熱狂的に)なることは稀である。【0・1・2・3】

 

19 私は注目されたいと強く願っている。【0・1・2・3】

 

20 私は自分よりも重要でない人の相手をしなければならないことがしばしばある。【0・1・2・3】

 

21 私は、自分にとって意味があるが、他の人には奇妙だと思われてしまう考えを抱くことがある。【0・1・2・3】

 

22 私は、自分の欲しいものを得るために他の人を利用する。【0・1・2・3】

 

23 私は、「その場」から離れてしまい、その後、そこに戻って、長い時間が経っていることに気づくことがよくある。【0・1・2・3】

 

24 私の周りのものが現実でないように感じられる、またはいつもよりもリアル(現実的)に感じられることがとくある。【0・1・2・3】

 

25 私にとって他の人を利用することは簡単である。【0・1・2・3】

 

 

★採点法:否定的感情(項目8、9、10、11、15)、離脱(項目4、13、14、16、18)、対立(項目17、19、20、22、25)、脱抑制(項目1、2、3、5、6)、精神症性(項目7、12、21、23、24)の平均点(四捨五入)が「2」以上であるならば、それぞれの特性ありと評価されます。

 

★使用法:あるとされた特性と、それぞれの特性を包含するパーソナリティ障害のタイプを探してみて下さい。該当するタイプがあれば、そのように診断される可能性があります

Q&A:よくある質問例

Q.

「私の娘は、元々内気で一人でいることを好む正確でした。特に問題なく育ち、お見合い結婚をして、すぐに子どもを出産したのですが、その後、食事をとらなくなってやせ細ってしまい、さらに夫とはいさかいを起こしては、包丁で手首を切るリストカットを繰り返すようになりました。これはパーソナリティ障害ではないかといわれたのですが、どうなのでしょうか?」

 

A.

このケースの場合は、早急にご本人が精神科を受診されることが必要でしょう。パーソナリティ障害の診断は、一般にその評価するべき領域が広いために、時間を掛けて慎重に考える必要があります。この方の場合、出産後に変調が明らかになったということで、うつ病、特に出産前後のうつ病を念頭において診察をする必要はありそうです。うつ病ならば、食欲減退や体重減少、自傷行為(自殺企図)の説明がつきますし、何よりも治療の道筋の見えやすい精神障害です。その他、摂食障害の可能性も考慮する必要があるかもしれません。治療ではまず、本人の安らげる療養の場を整えることなどを目的とした家族への介入が必要でしょう。

 

パーソナリティ障害については、うつ病、もしくは摂食障害の診断と治療を進めながら、検討していくことになるでしょう。仮にパーソナリティ障害があるとしたら、そちらに関しての治療的介入は、本人が自分の問題を自覚して、治療を主体的に開始することが前提となりますので、本人の訴えを傾聴して問題点を整理しつつ、解決への優先順位付けをして、解決すべき問題点への自覚を促すことから始めることになるでしょう。

このコラムを読まれまして、気になる点がありました方や、
興味・関心を抱かれた方は、どうぞ当院まで、
お気軽にお問い合わせください。

 

 

当院では、境界性パーソナリティ障害をはじめ、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
うつ病、躁うつ病(双極性障害)、不安症、
適応障害、ストレス関連疾病、睡眠障害(不眠症)、
パニック症、自律神経失調症、冷え症、摂食障害、
月経前症候群、強迫症、過敏性腸症候群、心身症など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

参考引用文献:Newton別冊精神科医が教える心の病の説明書