【心療内科 Q/A】「夏バテに効く漢方を教えてください。」②
A.
医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。
前回、夏バテに効く漢方として清暑益気湯(せいしょえっきとう)。
そして、その関連方剤の人参養栄湯(にんじんようえいとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)の効果効能をご紹介しました。
今回は、更に異なる生薬が使用されているが清暑益気湯の関連方剤とされている漢方を更にご紹介します。
まずは、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
「気」が不足した「気虚」に用いられる薬です。
脈もおなかの力も弱く、全身倦怠感や食欲不振などをともなう、さまざまな不調に適応し。
気力がわかない、疲れやすいといった人から、胃腸虚弱、かぜ、寝汗など、また、病後・産後で体力が落ちているときや夏バテによる食欲不振にも使われます。
夏に限らず1年を通して用いられ、元気を補う漢方薬の代表的処方であることから、「医王湯(いおうとう)」ともいわれています。
人参(にんじん)、蒼朮(そうじゅつ)、黄耆(おうぎ)、当帰(とうき)、陳皮(ちんぴ)、大棗(たいそう)、柴胡(さいこ)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、升麻(しょうま)の生薬が使用されており。
清暑益気湯、人参養栄湯、十全大補湯と同じ人参(にんじん)、蒼朮(そうじゅつ)、黄耆(おうぎ)が使われているのが分かります。
言葉に張りが出ず全体的に力が出ない…そんな状態の方に適した漢方です。
続いて、六君子湯(りっくんしとう)
体力が中程度以下の「虚証(きょしょう)」の人の胃腸薬として処方されます。
消化器系の機能を高める処方になっており、やせ型で顔色が悪く、冷えやすく、みぞおちのつかえ、全身倦怠感のある人の食欲不振、胃もたれ、胃痛、嘔吐などが処方の目安とされています。
また、胃下垂、消化不良などにも用いられます。
人参(にんじん)、蒼朮(そうじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、半夏(はんげ)、陳皮(ちんぴ)、大棗(たいそう)、甘草(かんぞう)、 生姜(しょうきょう)の生薬が使用されており。
ここでも人参(にんじん)、蒼朮(そうじゅつ)が活躍しています。
消化器症状の不振が前面に出ている…そんな状態の方に適した漢方です。
使われている生薬を今回も図にしてみました。
前回の漢方よりも異なった生薬が多く使われていますね。
更に細かくみてみると…
清暑益気湯にのみ
麦門湯…煩わしい熱感を治し、咳嗽を止め、熱性、乾性の症候を改善する。
黄柏…胃腸の炎症性病変、熱感を伴う下痢、有熱性の疾患による目の熱感、充血を伴う痛みを治す。
五味子…咳嗽があって、頭が帽子をかぶったように重いものを治す。
補中益気湯のみ
大棗…強くひきつれるものを治す。また、咳嗽、身体の痛み、脇腹や腹の中の痛みを治す。
柴胡…心窩部より季肋部にかけて膨満感を訴え、抵抗・圧痛の認められる症状を治す。
生姜…吐き気がしてムカムカするものを治す。したがって、からえずき、おくび、しゃっくりも治す。
升麻…寒、熱、風(外邪)によるさまざまなできもの、のどの痛み、口内炎、痘瘡など皮膚の化膿性疾患を治す。
六君子湯のみ
茯苓…動悸、筋肉がピクピクと痙攣するものを治す。また、小便が出にくいもの、めまいを治す。
半夏…水分の停滞、代謝障害、嘔吐を治す。また、胸痛、下から胸腹部につき上げるような痛みを治す。
大棗…強くひきつれるものを治す。また、咳嗽、身体の痛み、脇腹や腹の中の痛みを治す。
生姜…吐き気がしてムカムカするものを治す。したがって、からえずき、おくび、しゃっくりも治す。
殆ど同じ生薬をしようしていてもそのバランス、配合、それぞれにしかない強みが現れているのが分かりますね。
体力が落ちると精神的にも不安定になりがちです。
どんな方でも疲れやすい夏だからこそ自分にあった漢方で夏を乗り切りましょう。
いつものお薬にプラスで漢方の処方も当院では行っております。
また、心療内科、精神科のお薬を始めるのに抵抗がある方もまずは漢方から始めてみませんか?
心療内科、精神科において、漢方薬による治療をご希望の患者様。
このコラムを読まれまして、ご自分の現在のご状況として、気になる点がありました方や、興味・関心を抱かれた方は、ご受診をお待ちしております。
出典:「NHKきょうの健康 漢方薬事典 改訂版」 (主婦と生活社)
「ツムラ 公式サイト」https://www.tsumura.co.jp/index.html
「Kampo View」https://www.kampo-view.com/