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【心療内科 Q/A】「仕事における価値観の多様性を知りましょう~キャリア・アンカー」

A.

医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。

 

 

キャリア・アンカーとは、米国マサチューセッツ工科大学の経営大学院教授で、組織心理学の研究者である、エドガー・H・シャイン博士により提唱された概念です。キャリア・アンカーとは、仕事人生を続けていく上で、その人の根底となっている価値観、つまり、その人が仕事をしていく上で、拠り所としているものを指しています。

 

 

キャリア・アンカーは、直訳すると、キャリアの錨(いかり)を意味しています。概念的に言えば、「個人のキャリアのあり方を方向付ける錨(いかり)」であり、長期的な職業生活において「拠り所となるものとなるため、船で言えば「錨(いかり)」にあたるものと考えられています。

 

 

キャリア・アンカーは、才能・能力(コンピタンス)、②動機・欲求(モチベーション)、③価値観・態度この3つの要素から構成されています。そしてこの3つの要素が、個人差をもって組み合わさって、自身のキャリア・アンカーを決定していくのです。

 

 

補足となりますが、①~③を定義すると、次のような説明になります。

①才能・能力(コンピタンス):自分は何が得意か、何が有能か

②動機・欲求(モチベーション):自分の働く目的は何か

③価値観・態度:“自分はどんな判断基準を持っているのか

 

 

近年、職業(キャリア)を選択する場合の基本的な視点として、

①「できること」

②「やりたいこと」

③「やるべきこと」

 

という3点が示されることが多いのですが、これは、実はキャリア・アンカーの理論がベースとなっているのです。

 

 

 

シャイン博士の調査研究によると、労働者(社会人)のキャリア・アンカーは、8種類あることが分かってきました。その個人の中で、最も強い傾向を示したものをメイン・アンカー、次に強い傾向を示したものをサブ・アンカーと呼んでいます。

 

 

専門コンピタンス:企業、販売、人事、エンジニアリング等、特定の分野の仕事に対する高い才能と意欲を持ち、専門家として能力を発揮することに喜びを覚えるタイプです。

 

 

経営管理コンピタンス:経営者(ゼネラル・マネジャー)になることに価値を置き、経営者を目指すタイプであり、出世志向がある人たちです。組織内の機能を相互に結び付け、対人関係を処理し、集団を統率する能力や、権限を行使する能力を発揮し、組織の期待に応えることに幸せを感じるタイプです。

 

 

安定:安全・確実で、将来の変化が概ね予測でき、ゆったりとした気持ちで仕事をしたいと考えるタイプです。このタイプの人は、職業選択の際に、雇用保険、年金、退職手当、終身雇用といった側面(経済的安定)を重要視します。そして、一つの組織に勤務し、組織への忠誠や献身の姿勢を見ることができます。

 

 

起業的創造性:新しい製品やサービスを開発したり、資金を調達して組織を立ち上げたり、既存の企業を買収して再建したり、といったことに燃えるタイプです。具体的には、発明家、芸術家、あるいは、起業家を目指す人たちが該当します。このタイプの人は、結果的に独立・起業する道を選びます。

 

 

自律(自立:どんな仕事であれ、組織のルールや規則に縛られず、自分のやり方、自分のペースを守って仕事を進めることを大切と考えるタイプです。このタイプの人は、企業組織に属することは好まず、最終的に独立の道を選ぶ傾向があります。

 

 

社会への貢献:何らかの形で世の中を良くしたい、という価値観を重視するタイプです。暮らしやすい社会の実現、他者の救済や教育といったことを成し遂げることを求めます。医療、看護、社会福祉、教育などの分野を目指す人の中に、このタイプの人が多い傾向がみられます。

 

 

全体性と調和:仕事と家庭生活、つまり、公的な時間と私的な時間のどちらも大切にしたいと願い、両者の適切なバランスをとることに最も価値を置いているタイプです。「ワーク・ライフ・バランス」という言葉がぴったりくるタイプの人たちです。

 

 

チャレンジ:不可能と思われるような障害を乗り越えること、解決不可能と考えられてきた問題を解決することといった、常にあえて「困難」を探し求め、それに「挑戦」することに喜びを感じるタイプです。典型的には、冒険家、登山家、アスリートなど。中には、まれにビジネスの世界にもこのアンカーを持つ人が存在しています。

 

 

 

例え同じ職場や同じ職種で働かれていたとしても、必ずしも皆が同じ価値観(キャリア・アンカー)で仕事に取り組まれているとは限りません加えて、どの価値観(キャリア・アンカー)が適切で不適切というものではありません。

 

私たちは、つい無意識の内に、同じ職場や職種で働かれている方々に対して、「きっと自分と同じ価値観(仕事観)を持っているに違いない」と考えてしまいがちであり、時としてそれが、周囲との摩擦やご自身のストレスの原因ともなりかねません。そのことを頭の片隅に留めておいて頂けましたら幸いです。

 

 

 

 

当院では、適応障害をはじめ、

うつ病、躁うつ病(双極性障害)、睡眠障害(不眠症)、

心身症、自律神経失調症、ストレス関連障害、

大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症含む)

パニック障害、不安障害、摂食障害(過食症)、

月経前症候群、統合失調症、過敏性腸症候群、

強迫性障害、アルコール使用障害など、

皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、

心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

今後とも、医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。