A.
医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。
不眠は、高齢になるほど起こり易くなる傾向があります。しかし、「入眠障害」は、他の睡眠障害の種類である「中途覚醒(夜間覚醒)」や「早朝覚醒」等と比べて、年齢による顕著な差が認められず、中高年や高齢者だけでなく、若い人にもよく起こります。
では、どのような人が「入眠障害」になり易いのでしょうか。強いて挙げるとすれば、神経質でストレスを感じやすい人に入眠障害は多く起こります。
ストレスに対する耐性は、その人の性格に大きく左右されます。因みに、真面目で完璧主義の人、大人しくて自己主張が苦手な人、小さなことでもクヨクヨしてしまう人などは、概してストレスに弱い傾向があります。よって、そのような性格の人は、大きなストレスを受けると、時として寝つきが悪くなり、やがて本格的な不眠症(睡眠障害)を発症してしまうことがあるので、注意が必要です。
また、身体の痛みや痒み、足のむずむず感(=「むずむず脚症候群」)により寝つきが悪くなることがあります。普段、そうした症状に悩まされている方も、入眠障害に陥り易いと言えるでしょう。
一方の熟眠障害はどうでしょうか?
不眠の自覚がなくとも、起床直後に疲れや怠さ、身体の様々な不調を感じるような場合、睡眠障害(不眠症)の一つである「熟眠障害」である可能性も考えられます。
通常、睡眠障害や不眠症になると、寝つきが悪かったり、夜中に目が覚めたり、全く眠れなかったりされるので、“眠り”に何等かの問題があると気が付くものです。しかし、熟眠障害の場合は、ふつうに眠れていることが多く、疲れが多少たまっていても、当事者ご本人が「不眠」だと自覚されていないケースが少なくありません。
熟眠障害を察知するためには、日中の体調の変化が手掛かりになります。
毎日よく眠っているはずなのに…
① 疲労感・不快感
② 集中力・注意力・記憶力の低下
③ 日中の眠気
④ 職業能力・学力の低下
⑤ 気分障害・イライラ感
⑥ やる気のなさ
⑦ 仕事のミス・自動車の運転中のミス
⑧ 頭痛・消化器症状
「熟眠障害」は、ぐっすり眠ったという満足感が得られません。健康な人は睡眠中に、浅い眠りの「レム睡眠」と深い眠りの「ノンレム睡眠」を繰り返しています。レム睡眠とノンレム睡眠をリズムよく交互に繰り返すことで、しっかり眠ったという熟眠感と快適な目覚めが得られるのです。
熟眠障害の人は、レム睡眠(浅い眠り)が長く続いて脳が十分に休まらないため、一晩眠っても、スッキリと起きられなかったり、朝から疲れや怠さを感じたりします。また、日中の眠気に悩まされることになり、注意力や集中力、作業能力の低下など、日常生活に支障を来すようになるのです。
熟眠障害は、入眠障害や中途覚醒、早朝覚醒と併発しやすい症状です。また、加齢に伴い、眠りが浅くなる傾向にあるので、中高年や高齢者の方の中には、熟眠感の欠如を訴える人が増えてきます。
但し、「ぐっすりと眠れた感じがしない」と言われる方の中には、十分に睡眠が取れているにも関わらず、「うとうとしただけで、一晩中ほとんど眠れなかった」と訴える方も少なくありません。「ぐっすり眠れない」という悩みを持つ方の多くは、「しっかり休む生活が健康的」と考え、夜は早い時間から布団に入り、朝もゆっくりと寝床で過ごすタイプの方です。
私たちに必要な睡眠時間は脳が調整していて、必要以上に長く寝床にいると、眠りが浅くなったり、夜中に目が覚めたりして、熟睡感を得にくくなってしまいます。ぐっすりと眠れずに悩まれている場合は、まず就寝と起床の時間を見直してみることが大切です。現在の自分の心身が必要とされている以上に、長時間寝床に入ってしまわれている可能性があり得ます。また、日中に適度に身体を動かすことや、昼寝を控えることで、ぐっすり眠れるようになられる場合もあります。
しかし、熟眠感が得られない状態が、1か月以上続き、かつ、日中に不調を感じる(=日中の活動に支障を来す)場合は、不眠症(熟眠障害)の可能性がありますので、適切な医療機関を受診されることをお勧め致します。
そしてこれらは、年齢との関係性も指摘されています。
中高年になると「若い頃と比べてよく眠れなくなった…」と感じる人が増えてきます。「質の高い睡眠をとる力=睡眠力」が衰えてしまうのです。
「睡眠力」は、10代が最も高く、その後は徐々に衰え、50代に差し掛かる頃に大きく低下します。これは、脳内にある「松果体(しょうかたい)」の機能が、老化によって低下するためです。松果体は睡眠ホルモンである「メラトニン」を分泌する役割を持つ器官です。この松果体が衰え、メラトニンの分泌が減るために、脳や身体が深い眠りに入りにくくなるのです。
なお、睡眠は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類に分けられています。私たちは、寝つく時、まず浅いノンレム睡眠に入り、そこからさらに深いノンレム睡眠へ入っていきます。そして、最も深いノンレム睡眠段階である「レベル4」に達すると、また浅い眠りへと戻ってくるのです。
そして、加齢によって睡眠力が衰えることで入りにくくなるのが、このノンレム睡眠のレベル3、レベル4の深い眠りです。特に60歳以上になると、ノンレム睡眠のレベル1~2に留まることが多くなります。
このような深い眠りが減ってしまうことで、夜中に起きる「中途覚醒」をしやすくなったり、熟眠感が感じづらくなられたり、全体的に睡眠時間が短くなったりすることが、年齢を重ねるにつれて起こるようになるのです。
ただ、病院をすぐに受診することもなかなか難しいと思います。
そこで、お食事による改善方法を1つご提案させていただきます。
それは、エビ、ホタテ、イカ、カニ、カジキマグロなどの魚貝類です。
なぜなら、これらには「グリシン」がたくさん含まれているからです。
「グリシン」は、地球上で最も古いと考えられているアミノ酸のひとつであり、分子量が最小のアミノ酸でもあります。タンパク質の構成成分として、体内の様々な部位に存在しており、まさに身体の基本となる成分の一つと言えます。
グリシンは脳に作用し、手足の血管を広げて血流を良くする働きがあります。手足の血管を広げて血流を良くする働きがあります。手足の血流が良くなると、身体の深部体温が下がり、自然な眠気が訪れます。よって、就寝前にグリシンを摂ると、そうでない人と比べ、消灯から深い眠りに落ちるまでの時間が短くなります。加えて、睡眠中の脳波からは、深い睡眠にすぐ入れるだけでなく、眠りのパターンもより自然な形になることが判明しています。
グリシンは就寝前に2g程度を摂取することが望ましいと言われています。よって、夕食の食材として、グリシンを多く含んでいるエビ、ホタテ、イカ、カニ、カジキマグロなどの魚貝類を積極的に取り入れることをお勧めします。
様々なアミノ酸を研究している味の素株式会社の実験では、眠る前にグリシンを摂取することで、朝の疲労度が軽減され、日中の作業効率も上がったという結果が出ました。つまり、グリシンは、私たちが深く眠って身体をしっかり休めるサポートをしてくれているのです。
また、グリシンは、皮膚にあるコラーゲンを作っているアミノ酸のうち3分の1を占める成分でもあります。そのため、グリシンを摂ると、肌のバリア機能が高まり、敏感肌も改善されます。また手足の血流量が増えることで、肌の水分量も増す為、所謂「美白効果」も期待できるのです。
当院では、睡眠障害(不眠症)をはじめ、
うつ病、躁うつ病(双極性障害)、適応障害、パニック症、
心身症、自律神経失調症、摂食障害(過食症)、不安症、
月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
統合失調症、強迫症、過敏性腸症候群(IBS)など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
今後とも、医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。