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【医師監修】心療内科に行った方がいい人の目安は?チェック方法と受診の流れを解説

【医師監修】心療内科に行った方がいい人の目安は?チェック方法と受診の流れを解説

「最近、疲れているのに眠れなくなった…」
「気分が落ち込んでしまう…」

心の不調が表れると、日常生活に支障をきたすことがあります。ストレスによる心の不調には、心療内科での治療がおすすめです。しかし、「こんな症状でも受診してもいいのか…」と迷うこともあるのではないでしょうか。

本記事では、受診を迷っている人に向けて、心療内科に行った方がいい症状の目安や受診の流れを解説します。受診の目安となる症状をチェックできるような内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

心療内科に行った方がいい症状の目安は?

ストレスによる心の不調は、身体面や精神面などさまざまな影響を及ぼします。ストレスに対抗するための反応として生じるものといえますが、過剰になると生活に支障をきたします。精神疾患の兆候である可能性もあるため、早めに気づいて対処することが大切です。

では、具体的にはどのような症状があると心療内科に行った方がよいのでしょうか。以下の4つの症状に分けて解説します。

  1. 身体面の不調
  2. 精神面の症状
  3. 考え方や判断力の変化
  4. 行動に表れる変化

1.身体面の不調

ストレスが過度になると、心だけでなく身体にも症状が起こります。倦怠感を中心とした全身症状、頭痛やめまい、胃腸の不調などの各部位の症状、睡眠の問題が生じます。

全身症状:倦怠感や食欲低下、体重減少

少し動いただけでも身体がだるく、疲れてしまうことが続くのは、うつ病の症状である可能性があります。

食欲の低下も受診の目安となる症状です。うつ病では、以前よりも食事量が減り、体重が落ちてしまうことがあります。とくに、6~12カ月にかけて体重の5%以上が減少している場合は、医学的な体重減少に該当するため、対処が必要です。

倦怠感や食欲の低下は、うつ病の兆候かもしれないため、2週間以上症状が続いている場合には、受診を検討するとよいでしょう。

参考:日本臨床検査学会「臨床検査のガイドライン2005/2006」

各部位の症状:頭痛、耳鳴り、動悸など

ストレスが過度になると、自律神経系のバランスが乱れ、身体症状が表れます。自律神経系は、心臓や呼吸器、消化器、血管などの機能を調整しているため、ストレス症状としてさまざまな影響を及ぼします。代表的なのは、以下のような症状です。

  • 頭痛、肩こり
  • めまい、耳鳴り
  • 動悸、息苦しさ
  • 喉に何か詰まった感じがする
  • 胃痛、腹痛、下痢
  • 吐き気

とくに、電車や職場などの公共の場所で強い動悸が何度かみられた場合は、パニック障害の可能性があります。また、ストレス性の下痢が続き、出勤や移動に支障をきたしているときは、過敏性腸症候群によるものかもしれません。

身体症状が過度になり、日常生活に支障を及ぼしている場合、受診を検討するとよいでしょう。

睡眠の問題:不眠、熟睡感の低下

ストレスによって、睡眠の問題が生じることがあります。よくみられるのは、「疲れているのに寝つけない」「夜中に目が覚めてしまう」といった不眠の問題です。

また、睡眠時間は取れているはずなのに、熟睡感が得られなくなることもあります。ストレスによる緊張状態が続いていたり、背景に睡眠障害が隠れていたりするなど、いくつかの原因が考えられます。

不眠や熟睡感の低下は、日中活動のパフォーマンスに大きく影響する症状です。眠気が強く、仕事の効率が低下しているという場合は、心療内科への受診を考えてみましょう。

2.精神面の症状

ストレスが強い状態が続くと、意欲が低下し何事もおっくうに感じたり、情緒が乱れやすくなったりします。また、それまでは気にならなかった些細な不安が目につくようになるなど、感情の変化が起こります。

おっくうに感じることが多くなった

ストレスに対抗する状態が続くと、エネルギーが低下し、何事もおっくうに感じてしまうことがあります。エネルギー不足の状態であるため、何かを始めるのに苦痛が伴いやすいのです。

とくに、興味を持って取り組めていた活動にもやる気が出なかったり、楽しめなくなったりした場合は注意が必要です。

情緒が乱れやすくなった

ストレス反応により、情緒が不安定になることもあります。イライラしやすくなったり、泣いてしまったりするなど、普段よりも感情の振れ幅が大きくなります。

少しの刺激でも怒りが爆発してしまうときや、理由もなく泣いてしまう場合は、ストレスに耐えられなくなっている状態かもしれません。生活にも支障をきたしている場合は、心療内科を受診し、気分を安定させるお薬を処方してもらうことも一つの方法です。

些細なことが不安になってしまう

ストレスに対処しようとするあまり、警戒して些細なことが不安になることがあります。不安が日常生活に支障をきたすものでなければ、重症度は高くないといえます。

しかし、以下のような症状がみられる場合、不安障害という精神疾患の兆候かもしれません。過度な不安を落ち着かせるための治療が必要でしょう。

  • 恥ずかしい思いをすることが怖く、人前で話せなくなった
  • あらゆる物事に対する不安が強くなった
  • 鍵の確認や手洗いなど、特定の行為を止められなくなった
  • 公共の場所で強い動悸が起きた

3.考え方や集中力の変化

ネガティブな考えが浮かびやすかったり、集中力や判断力が低下したりする場合、何らかの精神症状である可能性があります。

ネガティブな考えが止められない

自分を否定するようなネガティブな考えが止められない場合、精神的な疲労が蓄積しているかもしれません。例えば、「自分は価値のない存在だ」「どうせ上手くいかない」と悲観的になるような考え方です。

以前の自分よりもネガティブに考えることが増え、ひどく落ち込んでしまう状態が続くときには、専門的な治療が必要でしょう。

作業や会話に集中できなくなった

集中力の低下も、ストレスが過度になった場合に生じる症状の一つです。作業に長時間集中できなくなったり、話を聞けなくなったりするなどの症状が続く場合があります。

急に集中力が低下すると、日常生活でできないことが増えてしまいます。そのため、「自分はダメな存在だ」とネガティブな考えを強めてしまいやすいでしょう。

集中力の低下が続く場合、何らかの精神疾患の兆候である可能性もあります。病気のせいかもしれないと考え、早めに対処できると問題がひどくならないうちに解決できるかもしれません。

4.行動に表れる変化

身体面や精神面、認知面の症状により、行動にも影響が出る場合があります。とくに、意欲の低下から、身だしなみに気を遣わなくなったり、引きこもりがちになったりします。行動に表われる変化はみえやすく、受診に迷った際の判断基準として分かりやすいでしょう。

身だしなみを気にしなくなった

意欲が低下すると、身だしなみを気にしなくなることがあります。入浴や歯磨きなどを行うことがおっくうに感じてしまうために起こります。また、化粧やファッションを楽しむためのエネルギーがなくなるために生じることもあるでしょう。

やる気が出ず、他者の目を気にしなくなるほど気を遣わなくなった場合、何らかの精神的不調が生じている可能性があります。

人との接触を避けるようになった

うつ病の兆候の一つとして、人との接触を避けて家に閉じこもりがちになることがあります。意欲が低下し、人と会話しようとしても言葉が出てこず、コミュニケーションを取る気力がわかなくなるためです。

閉じこもり状態が続くと、人との接触が怖くなってくることもあるため、早めに対処することが大切です。気力がわかずに家から出られない場合は、無理をせずに治療や休養に専念する方がよいでしょう。

心療内科とはどんなところ?

心療内科への受診をする目安となる症状について説明しましたが、心療内科とはどのような治療を受けられるところなのでしょうか。

心と身体の両面から治療する診療科

心療内科は、心理的な原因から生じる身体の病気を、心と身体の両面から治療していく診療科です。身体の病気は、ストレスや不安、緊張などの心理的な原因から生じたり、悪化の一因となったりすることがあります。

身体面の治療に加え、カウンセリングなどの心理的ケアを含めて治療していくことで、症状の軽減を目指していくのが心療内科です。

参考:e-ヘルスネット(厚生労働省)「心療内科」

精神科との違い

精神科も心の不調が生じたときに受診を検討することがあります。精神科は、心療内科よりも精神的な問題が強く出ている場合に適した診療科です。

例えば、うつ病の場合でも「自分は大きな罪を犯した」と事実と異なるような強い思い込みがみられるときは、精神科が適しています。

そのため、身体症状が強く生じていて、精神的な問題が重くない場合は心療内科を受診するとよいでしょう。

心療内科ではどんな病気が治療できる?

心療内科への受診は、心の不調が生じ、身体面に強く症状が出ているときに適しているといえます。では、どのような病気が治療できるのでしょうか。

1.心身症

ストレスが身体の症状として表れる病気です。日本心身医学会の定義では、「身体障害で、その発症や経過に心理社会的因子の関与が認められる病態」とされています。ストレスをはじめとする精神的な原因により、身体の症状が発症する、または悪くなる病気です。

代表的な疾患としては、以下のものが挙げられます。以下の疾患が必ずしも心身症とは限りませんが、ストレスが発症に影響している場合に診断されることがあります。

  • 呼吸器系:気管支喘息、過換気症候群など
  • 循環器系:高血圧、低血圧、狭心症、心筋梗塞など
  • 消化器系:過敏性腸症候群、慢性胃炎など
  • 神経系:片頭痛、めまい、自律神経失調症など
  • 皮膚科系:アトピー性皮膚炎、円形脱毛症など
  • 整形外科系:関節リウマチ、腰痛、肩こりなど
  • 婦人科系:更年期障害、月経前症候群など

引用:心身医学 1991年 31巻 1号「心身医学の新しい診療指針(案)」

2.適応障害

適応障害とは、強いストレスが原因で生じる症状により、日常生活を送るのが困難となる疾患です。ストレスを受けるとそれを乗り越えるために緊張状態になるのが正常な反応です。
ただ、ストレスが強すぎると心身のバランスを崩すことがあり、その状態を適応障害といいます。

例えば、憂うつな気分が回復しなかったり、些細なことで不安になり泣いてしまったりするなどの症状です。原因が明確であることが多いため、心療内科ではストレスの原因を取り除く治療を行います。

具体的には、カウンセリングを行い、物事の捉え方の癖や対人関係のパターンを把握し、ストレスを受けにくくしていきます。症状が強く出ている場合には、必要に応じて薬物治療を行うこともあるでしょう。

参考:e-ヘルスネット(厚生労働省)「適応障害」

3.うつ病

うつ病とは、意欲が低下したり、興味関心が失われたりする気分の障害です。国際的な診断基準であるDSM-5では、以下のような症状が特徴として挙げられています。

  • 抑うつ気分:憂うつな気分がほぼ1日中、毎日続く
  • 興味または喜びの喪失:以前興味のあった活動に関心がなくなる
  • 体重変化:ダイエットをしていないのに体重が減少する
  • 不眠または過眠:ほとんど毎日眠れなかったり、寝過ぎたりする
  • 疲労感や気力減退:疲れやすく、やる気が出ない
  • 無価値感や罪責感:「自分に価値がない」「自分が悪い」と考えてしまう
  • 思考力や集中力の減退:一つのことに集中できなかったり、一人で決断できなかったりする
  • 死についての反復思考:死にたい気持ちがある

発症の原因にストレスが関係している場合、心療内科の適応となります。ストレス要因が強いと、薬で症状が緩和しても再発してしまう可能性もあるため、再発予防も含めて治療していくことが大切です。

参考:アメリカ精神医学会「DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引」

4.摂食障害

食事のとり方や摂取量などの食行動の異常がみられる病気です。食事を制限する神経性無食欲症と、食べ吐きを繰り返す神経性過食症に分けられます。異常なやせや体重増加など、身体に症状が表れるため、心療内科で扱われることが多い疾患です。

体型に対するこだわりや、誤ったストレス対処から症状が起こることが多く、薬物治療だけでは治りにくい特徴があります。そのため、心療内科では心理的なアプローチを行いながら、改善を目指します。

ただ、過食と嘔吐を繰り返したり、体重低下が深刻であったりする場合は、摂食障害専門の医療機関への受診が必要かもしれません。

参考:e-ヘルスネット(厚生労働省)「摂食障害:神経性やせ症(AN)と神経性過食症(BN)」

5.睡眠障害

睡眠に関するさまざまな症状は睡眠障害と呼ばれます。睡眠の異常は以下の6つに分けられ、日中の集中力が低下するなどの支障をきたします。

  • 不眠症:寝つきが悪かったり、夜中に目が覚めたりする
  • 睡眠時無呼吸症候群:睡眠中に呼吸が一時的に止まるなどの症状がある
  • 中枢性過眠症:日中に急激な眠気に襲われる(ナルコレプシー)
  • 概日リズム睡眠・覚醒障害:睡眠サイクルがずれてしまう
  • 睡眠時随伴症:睡眠中に動き回る、叫ぶなどの行動がみられる
  • 睡眠関連運動障害:足がむずむずして眠れなくなる(レストレッグス症候群)

睡眠障害は、発症にストレスが関係していることが少なくありません。とくに、生活のストレスから生じる不眠症は、心理的な原因を把握することが重要です。心療内科にて、睡眠の妨げとなっているストレスや生活習慣を見直していくとよいでしょう。

一方で、身体的原因が影響する睡眠関連呼吸障害群やナルコレプシーなどは、専門の睡眠外来を受診することがおすすめです。

参考:国立精神・神経医療研究センター「睡眠障害・睡眠問題に対する支援マニュアル―保健師・対人援助職向け―」

心療内科を受診するときに気になるポイント

心療内科を受診したことがないと、どのような流れで通院できるのか分からず、受診を迷う人もいるのではないでしょうか。心療内科に受診する際に気になるポイントを3つ紹介しますので、参考にしてみてください。

Q.費用はどれくらいかかる?

処方される薬や必要な検査に応じて異なりますが、3割負担で以下の費用がかかります。費用が心配な場合、自立支援医療制度という費用負担を軽減できる制度が利用できることもあります。利用したい場合は、診察で相談してみましょう。

  • 初診(最初の診察):3,000~5,000円
  • 再診(2回目以降):2,000~3,000円

Q.初診のときはどんな流れ?

初診時には、以下の流れで行われるのが一般的です。

  • 問診票の記入
  • 予診(病院による)
  • 医師による診察
  • 血液検査、心理検査(必要に応じて)
  • 会計と薬の処方

来院して始めに行うのは問診票の記入です。現在困っている症状やその出現時期など、詳しい経緯を書きます。順番が来ると呼ばれ、医師による診察を受けます。病院によっては、他の医療スタッフが診察の前に予診を行うこともあるでしょう。

診察では、症状や経緯について詳しく問診されます。あらかじめ、詳しい症状や考えられる原因、希望する治療についてまとめておくとスムーズです。状態を詳しく調べるために、血液検査や心理検査が行われることもあります。

診察が終了すると、会計をし、薬が処方されていれば薬局で受け取って終了となります。

Q.治療内容や通院の頻度は?

心療内科では、薬物治療とカウンセリングを並行して行うことが多いでしょう。ストレスの原因を把握し、心理的な側面からも治療していきます。

通院の頻度については、週に1回から月に1回まで個人差があります。最初は、薬の効果をみるために短い間隔で通院し、徐々に一定の間隔に落ち着くことが多いでしょう。症状が改善しても、3カ月~半年に1回は再発予防として受診することがおすすめです。

不調を感じたら早めに受診してみましょう

心療内科は、ストレスが原因となる心の不調を扱うところです。心の不調は、できるだけ早く対処した方が、症状も重くならずに治りやすいとされています。受診するべきかどうか迷ったときは、一度病院に相談してみましょう。