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【医師監修】自己愛性パーソナリティ障害ってなんですか??

境界性パーソナリティ障害と合併し得るパーソナリティ障害の代表が「自己愛性パーソナリティ障害」です。自己愛性パーソナリティ障害は、自分を愛し過ぎるための障害かと思われがちですが、それは誤解です。自己中心的で他人に共感できないのは、自分を愛せないことが根幹にあるのです。

 

 

自己愛性パーソナリティ障害の患者様には様々な特徴が見られますが、大きく3つの特徴があると言われています。それが「誇大性」「共感の欠如」「賛美されたい欲求」です。

 

 

「誇大性」とは、自分は万能で、特別な人間であり、人よりも優れていると、自分自身を大きく理想化している状態です。一方で、そのような理想の自分はいないとも感じています。

 

 

「共感性の欠如」とは、健全な自己像がないため、他人への愛や共感が持てません。他人は自分よりも劣った人間で、利用するだけの存在であり、自分こそ頂上にいるべき人間だと考えます。

 

 

「賛美されたい欲求」とは、自尊心が大きく、強迫的なほどに賞賛を求めます。目に見える結果が全てであり、そのため人の評価を気にします。失敗や挫折に弱く、抑うつに繋がることもあります。

 

 

…このように考える背景として、患者様ご自身は以下のように考える傾向があると言われれいます。

 

  • いつも自分が自分以上でないといけないという強迫観念
  • プロセスよりも結果を出すことだけが重要
  • 内的価値は無意味であり、外的価値しか信じない
  • 自分は人とは違った特別な存在である
  • 地道な努力はしない
  • 他人は敵か家族か使用人。自分と家族は王族で、あとは家来
  • 対人関係は勝つか負けるか、見下すか見下されるか
  • 他人は信じられない、自分だって信じられない
  • 愛するという言葉が知っているが、愛するとはどういうことか分からない
  • 挫折や批判に弱く、自尊心が傷つきやすい
  • 他人が自分をどう見ているか、いつも気になる
  • 愛されたいが、自分が愛されるためには、条件が必要だ

 

 

そして、些細なことで怒りを感じたり、キレたりします。目下の相手には露骨に怒鳴ったり暴力をふるったりします。一方、“取り柄のない自分”になると、抑うつ状態になったり、現実から逃避して自尊心を温存するために引きこもったりします。

 

 

その素地には、競争社会という現代社会のひずみがあるため、自己愛性パーソナリティ障害はこれからも増えるだろうと予想されています。患者様の割合は、男女ほぼ半々であり、世代層は若い世代に限りません。

 

 

多くの患者様は、抑うつ、引きこもりのほか、家庭内DV、転職を繰り返す、恋人と上手くいかない、怒りが止められない…等の症状から受診されます。

米国精神医学会の診断基準DSM-5には、「自己愛性パーソナリティ障害」の診断基準として以下の内容が定義されています。

 

 

誇大性(空想または行動における)、賛美されたい欲求、共感の欠如の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる、以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される。

 

(1) 自分が重要であるという誇大な感覚(例:業績や才能を誇示する、十分な業績がないにも関わらず優れていると認められることを期待する)

(2) 限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている

(3) 自分が“特別”であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人達(または団体)だけが理解し得る、または関係があるべきだ、と信じている

(4) 過剰な賛美を求める

(5) 特権意識(つまり、特別な計らいなどを理由なく期待する)

(6) 対人関係で相手を不当に利用する

(7) 共感性の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない

(8) しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む

(9) 尊大で傲慢な行動、または態度

本人に治す意識がないと難しい~夫婦関係の場合

自己愛性パーソナリティ障害のある人は、親密な相手に“理想の母親像”を求めます。理想の母親とは、魔法のように自分を分かってくれる人であり、自分を照らし出すのにふさわしい優れた人物です。以下のようなことが、配偶者との間に起こり得ます。

 

  • 経済力で支配する
  • 相手の痛みに鈍感
  • セックスレス
  • 浮気の頻発
  • 自己中心的
  • 共感性がない
  • 相手を思いやれない
  • 平気でうそをつく
  • 怒ると暴力をふるう
  • 自分の自尊心は傷つきやすいのに、相手を見下し、侮辱する
  • 相手に強圧的に命令し、理不尽なことでも、「自分が正しいと言い張る」

 

…しかし、妻や夫は「理想の母親」ではありません。現実の母親でさえ違うのですから当然です。失望し、相手に暴力や暴言を吐きます。まさに「ヤマアラシのジレンマ」のようです。また、理想の母親を得たと思うと、親子関係になってしまい、セックスレスになったりします。

 

 

夫や妻との間に自己愛性パーソナリティ障害の問題がある場合、どちらかが医療機関に相談にきても、本人が来て、かつ治す意識がない限り、やれることには限界があるのです。

このコラムを読まれまして、気になる点がありました方や、
興味・関心を抱かれた方は、どうぞ当院まで、
お気軽にお問い合わせください。

 

当院では、境界性パーソナリティ障害をはじめ、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
うつ病、躁うつ病(双極性障害)、不安症、
適応障害、ストレス関連疾病、睡眠障害(不眠症)、
パニック症、自律神経失調症、冷え症、摂食障害、
月経前症候群、強迫症、過敏性腸症候群、心身症など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

参考引用文献:市橋秀夫監修『パーソナリティ障害』(講談社)