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【心療内科Q/A】「休職から職場復帰までの道のりを教えて下さい」

A.

医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。

 

 

どのようなタイミングで職場復帰をされるかは、休職をされているどの方にとっても非常に重要な問題ですこれは、うつ病に代表されるこころの病気に限らず、どんな病気や怪我でも共通のポイントとなると言えるでしょう。ここでは、分かり易く、“肉離れにより足を痛めてしまったマラソン選手”を例に挙げて考えてみましょう。

 

 

 

マラソン選手が肉離れを起こしてしまった場合、もしも負傷後すぐにトレーニングを再開してしまえば、怪我の具合はどんどん悪くなっていきます。また、肉離れが治癒した後、すぐにきついトレーニングを開始すれば、肉離れを再発することが想像できます。

 

 

しかし、選手の気持ちとしてはどうでしょうか。 大きな大会が目の前にあれば、例え多少痛みが残っていてもコーチに「私の足は大分良くなりましたから、そろそろ本格的な練習をさせて下さい」と言ってしまうこともあるでしょう。また、何とか大会で好成績を残して欲しいと願うコーチも、「あなたが大丈夫と言うのなら、そろそろ練習を再開しましょう」と言って、練習に送り出してしまうかもしれません。そうなると、肉離れを再発して、場合によっては、選手生命にまで影響を及ぼす危険性すら生じてくるのです。

 

 

 

このことは、うつ病等による休職者の皆様の場合でも同様ですうつ病で会社を長期休業すれば、収入が減ってしまいますし、会社の出世コースにおいても遅れをとってしまうことにもなります。そうなれば、例え回復状況が不十分であっても、主治医の先生に「家にいると仕事のことが気になってしまい、ゆっくりと休めません。だから職場にいる方が落ち着きます」「そろそろ復職をしないとクビになってしまうかもしれません」等と話し、実際の職場の状況を詳しくは聞かされていない主治医の先生は、患者様の熱意(実際は焦燥感のなのですが…)に負けて、「職場復帰可能」という診断書を発行してしまうことがあるのです。

 

 

そして、猫の手も借りたい位忙しい職場では、その主治医の先生からの診断書を「待っていました!」とばかりに、患者様の職場復帰を歓迎し、職場復帰初日から次々と休んでいた分の仕事を任せてしまい、結果的に短期間で再度の休職に追い込まれてしまうのです。

 

 

マラソン選手が肉離れを起こした際には、まずはじっくりと療養して、その後、十分な回復を待ってから、少しずつウォーキングやジョギングを開始し、専門的な知識を持ったトレーナーの指導のもとで、次第に負荷を上げていくことが重要であることは言うまでもありません。そして、うつ病等の治療の場合も、これと全く同じと言えるのです。

 

 

もし、うつ病等のこころの病気に罹ってしまったら、まずは主治医の先生の指示に従い、じっくりと病気療養をし、その後、職場復帰に関しての専門的な知識を持つスタッフのもとで、徐々に職場復帰のためのトレーニングを行ない、職場環境も十分に調整した上で、職場復帰を果たすことが望まれますして、職場復帰後も、再発の兆候に注意しながら、少しずつ本来の業務に復帰をしていくことが、理想的な職場復帰であると言えるでしょう。

 

 

このようにして見てみると、うつ病からの職場復帰に関しては、いくつかのステージ(段階)があることに気が付かれると思います。これからそのステージを4つに分けて、順番に説明をしていきます。

 

 

 

★ 第1ステージ『要治療期』:うつ病の治療を開始したばかりで、何もやる気が起きずに、気分の落ち込みも著しい時期です

➡この時期は、睡眠覚醒のリズムも安定せずに、不眠や昼夜逆転等が起こり易いのが特徴です。自律神経失調症と呼ばれる、頭痛やめまい、倦怠感等の身体的な症状を伴うこともよくあります。この時期に職場復帰を考えることは時期尚早であり、まずはじっくりと主治医の先生の指示に従い、自宅療養と薬物療養を行なう必要があります。

 

 

★ 第2ステージ『リハビリ期』:段々うつ病の症状が抜け始め、意欲や憂うつな気分が回復してきます。

 ➡この時期になると、今までは考えることすら面倒だった職場のことを意識するようになり、「あの仕事はどうなっているのかな」「残された職場の仲間は大変な思いをしているのだろうな」等の不安を強く感じるようになります。また、ずっと家にいると、罪悪感に駆られ、早く職場復帰をしなければ」と焦り始めるのがこの時期の特徴です。

 

 

★ 第3ステージ『職場環境調整期』:睡眠や覚醒のリズムも整い、まだ気分の波はあるものの、概ね気分良く過ごすことの出来る日が増えてきます。

➡職場復帰に向けての意欲も高まり、主治医の先生からも「そろそろ職場復帰が可能」と診断されます。この段階まで来ると、職場の上司や、人事・労務担当者に職場復帰可能の診断書を提出し、職場復帰の日取りや、復帰後のスケジュール等を調整します。ここで会社(職場)の協力も得ながら、どのような職場復帰支援プランを練ることが出来るのかが、再発予防の重要な分岐点となります。

 

 

★ 第4ステージ『職場復帰後・再発予防期』:職場復帰を果たし、少しずつ仕事量が増加していきます。この期間は一般的には、半年~1年程度と考えられていますが、再発を繰り返している場合には、これよりもさらに長く考えておく必要があります。

 ➡職場復帰当初は、軽減勤務・時短勤務等が可能な職場もありますが、フルタイム勤務以外の勤務形態が許されない職場もあり、この時期の過ごし方は、各職場の制度によって大きく異なります。但し、残業時間の制限などの過重労働を防止するための配慮は、殆どの職場で受けることが出来るので、この時期を慎重に乗り切ることで、完全な調子の回復が見えてきます

 

 

 

つまり、うつ病等のこころの病気からの職場復帰を試みる場合に、最初にやるべきことは、上記の4つのステージの内、自分が現在、どのステージにいるのかをしっかりと、客観的に認識することになってくるのです。

 

 

 

当院では、うつ病適応障害をはじめ、

躁うつ病(双極性障害)、自律神経失調症、不安症、

パニック症、社交不安症、恐怖症、睡眠障害(不眠症)、

大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、

摂食障害(過食症)、心身症、強迫症、統合失調症、

月経前症候群(PMS)、過敏性腸症候群(IBS)など、

皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、

心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

今後とも、医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。