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「適応障害の治療に漢方薬は使われますか?」

A.

医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。

 

 

以前同コラム適応障害では投薬はされないのですか?においても記載させて頂きました通り、適応障害」と診断をされた場合、投薬は必ずしもなされるとは限りません他の精神疾患においては、往々にして投薬治療がメインになりますが、こと「適応障害」に関しましては、投薬は「補助的」なものとしての位置づけになっています。

 

 

しかし、ストレスから距離を取ったり回避したりされるだけで症状が改善をすれば問題ないのですが、そうでないことも多々あります。例えば、ストレスが余りにも強かったり、長期化・慢性化してしまっていたりされている時です。そういった時には、慎重に薬を使っていくことがあります。

 

 

では、適応障害では、どのような薬が使われるのでしょうか。まず大きな分け方としまして「漢方薬」「西洋薬」があります。両者とも必要な状況に応じて適宜用いますが、適応障害の治療においては、より副作用が少なく、多剤併用になりにくい「漢方薬」から優先的に選択さえることがあります(勿論、患者様のご希望にも拠りますが…)。

 

 

適応障害では、頭痛、めまい、倦怠感、不眠、下痢、腹痛、吐き気、月経不順、落ち込み、不安、イライラ…等々、症状が多岐に渡ります。これを西洋薬だけでカバーしようとすると、頭痛には鎮痛剤、下痢には止痢剤…等といったように、症状の数だけ薬が増えてしまいます。その点、漢方薬は、一剤で複数の症状に対応しているので、内服される薬の量が少なくて済むのです。

 

 

中医学(漢方)では、人は「気」「血」「水」のバランスの上に成り立っていると考えます。「健康」とは、これらが滞りなく循環し、かつそれぞれがバランス良く身体の隅々にまで過不足なく巡っている状態と捉えます。

 

 

一方、「病気」とは、「気」「血」「水」の流れが滞ったり、身体の一箇所に集中したり、不足したり、流れが多過ぎたり少な過ぎたりすることで、三者のバランスが崩れた状態です。適応障害の症状は、その結果として起きるのですが、漢方薬はこのバランスの崩れを正してくれます。

 

 

適応障害によく使われる代表的な漢方薬としては、以下のようなものがあります(勿論、患者様の症状によっては、これ以外の漢方薬が用いられる場合も当然あります)。

 

 

◎「加味逍遥散(かみしょうようさん)」:不安、イライラ、動悸、めまい等に対応。症状が変動しやすい女性によく使われます。月経の改善にも有効です。

 

 

◎「四逆散(しぎゃくさん)」:抑うつ、胃腸障害、筋緊張等に対応。腹直筋の緊張や手足の冷えが目立つ方に用いられます。

 

 

◎「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」:抑うつ、不安、動悸、のぼせ、不眠、便秘などに対応し、みぞおちから臍にかけて動悸がある方に用いられます。

 

 

◎「柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)」:易疲労感、動悸、不安、不眠、倦怠感などに対応し、夢に関する訴えが多い方にも用いられます。

 

 

◎「大柴胡湯(だいさいことう)」;のぼせ、イライラ、ほてり、便秘などに悩む、比較的がっちりとした体格の方に用いられます。

 

 

◎「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」:ほてり、易怒性、目の充血などの症状に対応しており、比較的即効性があります。

 

 

抑肝散(よくかんさん):イライラ、易怒性、筋緊張など、怒りが強い方、男性や高齢者の方によく用いられます。

 

 

◎「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」:イライラ、易怒性、筋緊張、抑うつ、胃腸障害など、抑うつが長引き胃腸障害にお悩みの方に用いられます。

 

 

◎「加味帰脾湯(かみきひとう)」:悩み易い、食欲低下、胃もたれ、易疲労感、不眠等に悩み、やせ型でイライラにお困りの方に用いられます。

 

 

香蘇散(こうそさん):軽い抑うつ、落ち込みなど、神経質で敏感な性格の方に効きます。

 

 

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」:喉の詰まり感、息苦しさ、動悸、不眠など、抑うつ全般に効果があります。

 

 

なお、これらの漢方薬(漢方療は、当院のような心療内科クリニックにおいて、保険適用で処方することが可能です。ご希望の患者様は、診察時に医師の方にお申し出下さい。

 

 

 

当院では、適応障害をはじめ、

うつ病、躁うつ病(双極性障害)、自律神経失調症、

睡眠障害(不眠症)、ストレス関連障害、統合失調症、

パニック症、強迫症、不安症、摂食障害(過食症)、

大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症含む)、

月経前症候群(PMS)、過敏性腸症候群、心身症など、

皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、

心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

今後とも、医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。

 

出典:現場で使える薬剤師・登録販売者のための漢方相談便利帖症状からチャートで選ぶ漢方薬 杉山卓也著 SHOEISYA

参考資料:「Kampo Viewhttps://www.kampo-view.com/