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医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。
以前同コラムにおいて、自閉スペクトラム症(以下、ASD)を理解する上で、
重要な概念の一つである「メンタライゼーション(心の理論)」について、
概説をさせて頂きました。
今回は、その第二弾として、
皆様が“イメージ(概念)”として思い浮かべやすいように、
より具体的に記述をしてみようと思います。
世界には、自分が見た世界と他の人が見た世界があり、
それらが多次元的に成り立っていると私たちは認識しています。
しかし、ASDの方にはそのように認識することが中々難しいのです。
では何故そうなのかと言いますと、
私たちが、「他者が見た世界があること」に気付く最初のキッカケは、
「母親のまなざし」であると考えられています。
母親からの視線という、自分を見るまなざしに気付くことによって、
他者から見た世界があることに気付くという、
このようなコペルニクス的転回があって初めて、
他者との関係性が芽生えていくのですが、
ASDの方はその気づきが遅れてしまう傾向があるのです。
これが、以前記載させて頂いた「メンタライゼーション(心の理論)」の獲得が、
ASDの方は遅れてしまうことに他なりません。
すると、他の人から見た世界があることへの想像力や示唆が及ばないままで、
ASDの方は育っていくことになりますので、
当然のこととして社会的コミニュケーションの機能は、
幼少時に余り必要とされていきません。
加えて、通常であれば、他の人が一体どのように世界を見ているのか、
感じているのか、といった情報を、
逐次自分の中にフィードバックして取り入れながら育っていくため、
他者と共生する“世の中”というものへの認識が出来ていきます。
しかし、ASDの方は、自分の世界のみ(自分の世界=世の中)ですので、
きわめてピュアな状態に置かれたままでいます。
このことが、世の中の有り様に縛られない、
天才的な発想に繋がる場合もあります。
しかし一方で、一般的には「こだわり」というネガティブな形になって、
周囲の人たちに受け止められてしまうことが殆どだと言えるでしょう。
但し、大抵の場合、
他者が見た世界があることへの気づきの初発年齢は遅れてしまっても、
ずっとそのまま、全く気が付かないという訳ではありません。
保育園や幼稚園に入園し、小学校に入学し……と、
他の子ども達や周囲の人々と一緒に成長していく間に、
徐々に「他の人はこうやっているのか」と気づいていきます。
ただ、気が付くのですが、時として表面的な理解に留まってしまい、
何となくぎこちなさが残ってしまうことがあります。
そういった意味において、ASDの本質は、
最初の生まれ落ちた時点での「自閉」という大きな特性、
即ち、「外界との疎隔(外の世界とは離れていること)」という特性が、
その後も影響を及ぼしていきます。
そして、その限られた世界の中をぐるぐる回っていくという、
強迫性と静的平衡の中にいるのです。
このように閉じた軌道の中に収まって、その中を回り続けている状態が、
ASDの方々の“イメージ”であるという一説があります。
では、ADHDの場合はどうでしょう。
このASDの状態のイメージに対して、
ADHDの場合は衝動性や変動性が非常に大きく、
かつASDのように輪が閉じてはいません。
外界の状況や刺激に対して、気分の揺らぎや認知の揺らぎなど、
色々な“揺らぎ”を伴っています。
いわばダイナミック(力動的)な動的平衡状態にあると考えられています。
このように様々な変動を伴いながら一定の発達特性を持つのが、
ADHDの“イメージ”ではないかと言われています。
もちろん、ASDとADHDを合併されている方もいらっしゃられるため、
この“イメージ(概念)”が適切であるかは諸説あるかと思いますが、
ASDやADHDに対する皆様のご理解の一助となりましたら幸いです。
このコラムを読まれて、
ご自分の現在のご状況として気になる点がありました方や、
興味・関心を抱かれた方は、
どうぞ当院まで、お気軽にお問い合わせください。
当院では、大人の発達障害(ASD、ADHDを含む)をはじめ、
うつ病、躁うつ病、不安障害、適応障害、摂食障害、パニック障害、
睡眠障害、自律神経失調症、月経前症候群、統合失調症、強迫性障害など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
今後とも、医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)を宜しくお願い致します。