ADHDで、LINEやメールの未読が100件単位で溜まっている人は少なくないと思います。これは、ADHDの特性である「先延ばし癖」の典型例です。
何となく億劫で「後で返信しよう」と放置していたら、そのまま忘れてしまったり、返信メッセージを打っている途中で他のことについ気が取られて、未送信のままにしてしまったり…。あるいは、別の作業に集中していて、LINEの通知に気づかず、「いけない!返信しないと」と気づいた時には何週間も経っており、気まずくなってそのままスルーしてしまったり……。このようなパターンに心当たりがある人も多いのではないでしょうか。
ADHDの人がLINEを未読スルーするのは、決して相手のことが嫌いなわけではありません。むしろ「きちんと返信しないと」と思っているからこそ、敢えて未読の状態を保っている節があります。それは、既読にしてしまうと返信するのを完全に忘れてしまうからという理由のようですが、未読のままでもそもまま放置されてしまうこともあり得るようです。
理想的な解決法としては、「即レス」を習慣づけることです。LINEも仕事のメールも、見たらその瞬間に返信をします。ここでのポイントは、完璧な文面を目指さないことです。「了解です!」「OK」の一言でも良いですし、何ならスタンプ1つでも構わないので、とにかく「即レス」という行為を身体に染みつけることが重要です。
例えば、誕生日の「おめでとう」メッセージでも同じことが言えます。誕生日でよく、日付が変わる0時ちょうどにお祝いのメッセージを送ろうとされる方は少なくないかと思います。しかし、ADHDの人の場合、日付が変わる直前まで「あと10分で送ろう!」と息巻いていても、ネットを眺めていて気づいたら寝てしまっており、送るのをそのまま忘れてしまう、ということは珍しいことではありません。それを防ぐためにの、0時の10分前であろうと、誕生日前日であろうと、「ちょっと早いけれど、おめでとう!」とメッセージを送ってしまいましょう。思いついた瞬間に、完璧を捨てて即行動を意識されてみて下さい。
しかしそうは言っても「…それができたら苦労しないのだけれども」という気持ちが大半のADHDの人にとっての本音であるようです。そこで、もっと現実的な解決法としてご提案したいのが、1日1回「強制返信タイム」を設けることです。朝の通勤中やランチ休憩、寝る前の時間などに「今から本腰を入れてLINEとメールの返信をするぞ!」という時間を「予定」として組み込んでしまうのです。リマインド機能などを活用しながら実践されるのも良いでしょう。
先延ばしをしてしまうのは、やるかやらないか迷う選択肢があるからです。ここでのポイントは、脳に「どうしようか?」と疑う余地を与えないことです。「返信する」という時間を強制的に確保すうことによって、余計なことを考えずに実践できるはずです。
気を付けたいのが、この方法を使うのであれば、メッセージは返信タイムまで開封・既読をしないことを意識して下さい。何故まら、読んでしまうと返信するのを忘れるリスクがあるので、返信タイムに一気に既読にするようにしましょう。逆に言えば、返信タイム以外の時間でメッセージに既読をつけてしまった場合は「即レス」することを心がけましょう。
返信タイムを毎日の歯磨きのように習慣づけられたら、即レスとまではいかずとも、きちんと返信が出来る人になれます。ADHDの人にとって、決まった時間に一気に返信することは案外快感のようで、ちょっとしたゲーム感覚で取り組めるため、この方法で問題(お困り)が解決される方も少なくないようです。
即レスも無理、返信タイムも無理……という人のLINE対策としては、まずは企業の公式LINEや広告のアカウントをブロックしてみましょう。すると、通知の煩わしさや不要の未読メッセージからは解放されるので、ほんの少しだけ「LINEと向き合ってみようか」という気持ちになれるかもしれません。あるいは、大事な連絡をやり取りする特定の人・相手は、ピン止め機能を使って、常に画面の一番上に表示されるようにするなど、1アクションでできるような工夫を実践されてみて下さい。
ここで忘れないで欲しいことは、ADHDの人が悪意なく未読スルーをしてしまうことで、「嫌われたかな?」「大丈夫かな?」と相手が不安になっているかもしれない、ということです。過剰な気遣いを不要ですが、誰かに心配をかけている可能性があることは、頭に置いておいても良いかもしれません。返事はしていないのに、インスタやXはしっかり更新するということは、失礼にあたるということにも気を付けられて下さい。
このコラムを読まれまして、気になる点がありました方や、
興味・関心を抱かれた方は、どうぞ当院まで、
お気軽にお問い合わせください。
当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。
ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ADHDやASD)の可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。
また当院では、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。
Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
参考引用文献:やしろあずき著『すごいADHD特性の使い方』