自分の身体にどのような燃料(=食べ物)を投入すればよいのかについて、紹介していきます。質の良い「ガソリン」(=食べ物)を入れれば、エンジン(身体)は、病気が自己がない限り、よりスムーズに動いてくれます。
心身によい食事法は、様々な書籍で紹介されていますので、今回は「ADHDの人の脳にとって最適な燃料は何か」ということに絞って考えていきたいと思います。多動などに対しても、どのような食べ物が影響するかについて、かなり多くのことが分かってきています。しかもい、それほど複雑な食事法が求められているわけでもないのです。
まず、大まかに言ってしまうなら、「自然食品にこだわった食生活が一番」ということになります。製粉された粉よりも全粒粉の方がよく、商業保存された食品や、パッケージ化された食品よりも、新鮮なものの方が良いという訳です。そして、加工食品やジャンクフード、添加物、保存料、着色料が使われている食品は、出来るだけ避けるようにした方が良いでしょう。
野菜や果物については、ふんだんに摂るようにされると良いです。ヘルシーな油脂類を摂るのも良いでしょう。但し、トランス脂肪酸を摂取するのは、お勧めしません。フルーツジュースも避けておくようにしましょう。フルーツジュースは主に糖分で出来ており、栄養素をほぼ含んでいないからです。一方で、加工されていない肉、魚、ナッツ類、卵などに含まれている良質なたんぱく質を摂ることは欠かせません。
水は、多めに飲むようにしましょう(これは、お茶にしてもかまいません)。ADHDの人は、コーヒー好きな方も多いですが、これはカフェインという物質がどこでも入手できる集中力増強剤のようなものだからです。コーヒーを飲むなら、ほどほどの量にしておいて、副作用に注意するようにしましょう。副作用としては、心拍数が上がる、不整脈が出る、トイレの回数が増える(コーヒーには便秘薬や利尿剤のような作用があります)、不眠になる、興奮する、怒りやすくなる、といったものがあります。このような症状が現れたら、コーヒーを飲み過ぎている可能性があると言えるでしょう。
そして、これは極めて重要なアドバイスなのですが、「砂糖を避ける」ようにしましょう。何故なら砂糖は、ドーパミンの生成と放出を促し、このドーパミンの放出というのはADHDの人の脳にとっての大好物でもあります。しかし、ドーパミンは、放出され始める時こそ、元気が出て、陽気になり、満たされた気分になるのですが、残念ながらその感覚を保とうとすると、砂糖を取り続けなくてはならなくなってしまうのです。ですから、アイスクリームを夜中に大量に食べたり、何でもかんでもソースやタレまみれにしたり、クッキーを何枚も食べてしまったりするのは、そのせいなのです。こうしたことが悪影響を及ぼすのは、体型だけに留まりません。砂糖を摂って、ドーパミンを噴出させていると、うつ病など気分障害が生じたり、満腹中枢がおかしくなったりもするのです。このように、「砂糖」というものは栄養価は低いにも関わらず、ADHDの人を誘惑する存在なのです。
ADHD特性をもつ人の中には、乳製品(乳糖)の摂取を控えたり、グルテン・フリーの食事にしたりすると、上手くやれるようになる人もいます。但し、全員に一致して言えることではないので、それぞれに該当するかどうかを見極めるには、試しに抜いてみるのが一番でしょう。グルテン不耐性や乳糖不耐性を抱えていて、すでにこれらを抜くと上手くいく、と気づいている場合もあるでしょう。一方、はっきりしたグルテン不耐性や乳糖不耐性がない人の場合でも、このいずれかを抜いた食事にしてみると、遥かに良くなることがあります。
また、40年ほど前のことになりますが、ベンジャミン・ファインゴールド博士もADHDの治療に役立つという食習慣を提唱しています。それは、甘味料、添加物、着色料、そしてサリチル酸塩を含む諸々の食品(サクランボ、アーモンド、お茶、トマト等)を避けるという複合的な除去食事療法です。このような食品を除去して改善が見られたら、今度は除去した食品を一種類ずつ復活させていきます。すると、最後にはどの食品が大丈夫で、どの食品が症状を悪化させるのかが分かるようになる、というメカニズムです。このファインゴールド式プランは、その後やや廃れていってしまいましたが、彼のプランには良い点も沢山あったのも事実です。
ADHDの人の脳に効くとされるサプリメントとして、太鼓判を押せるものは、マルチビタミン、ビタミンD、マグネシウム、ビタミンB複合体、ビタミンC、カルシウム、亜鉛などが挙げられています。自然食品だけで取り切れない時の補助的なツールとして、質が良いものを選んで、適度に用いるのも良いでしょう。
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当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。
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参考引用文献:『ADHD2.0 特性をパワーに変える科学的な方法』