ADHDを持っているとは、一体どういうことなのでしょうか? それは、何事にも従うことのできない性質を備えていることです。そして、早の片づけ、皿洗いなど、頼まれた仕事をこなす能力が十分でないことでもあります。また、人の邪魔をし続けたり、仕事が終わっていないことについて言い訳をしていたりすることも多々あります。殆どの側面で、潜在能力を大きく下回る能力しか発揮できていない場合もままあります。生まれもった能力をもってすれば上手くやれるはずの最高のチャンスをふいにしていたり、あるいは両親から与えられた資質をことごとく使いこなせていなかったりもします。
それでも時には、才能に溢れた経営者になることもあります。しかし、締め切りに間に合わない、約束を忘れる、失礼な振る舞いをする、チャンスを無駄にするといったことが重なって、失敗を繰り返してしまうような場合もあります。あるいは、依存症になったり、環境に適応できなかったり、失職の憂き目に遭ったりするようなことも度々起こってしまいます。「確かにチャンスをものにできたはずだったのに…」と、何とも多くのADHDの人達が嘆いているのです。
「成績不良児」と言われる場合も多いのですが、適切な支援を受ければ才能を開花させることができ、波乱に満ちた学歴を経たとしても、その後に信じられないような成功を見出せる人たち、それがADHDの人々なのです。実際、ADHDの人々は挑戦者であり、勝利者ともなり得る存在なのです。
ADHDの人は、想像力に富んで活力に溢れた教師やお笑い芸人であったりすることもあります。あるいは、発明家や流行の仕掛け人となっている場合もあります。中にはたたき上げで億万長者にまで上り詰めるような人もいれば、ノーベル賞、アカデミー賞、トニー賞、エミー賞、グラミー賞の受賞者となる人だっています。一流の弁護士、脳外科医、トレーダー、投資銀行家として働いている人もいます。そして、何よりADHDの人たちは「起業家」であることが多いのです。起業家精神とは、ADHDの人たちそのものなのです。
ADHDだからといって、他の人と姿かたちが異なるわけではないので、ADHDの症状は外見からは分かりません。しかし、ADHDの人たちの頭の中を覗くことができたならば、その中はかなり異なる光景が広がっていることでしょう。ポップコーン・マシーンの中のとうもろこしの粒のようにアイディアが跳ね回っているのが見えるかもしれません。そこには、アイディアが機関銃のような速さで生み出されていて、スケジュールのようなものは何も見当たりません。アイディアがまるで規則性のない爆発であるかのように自然発生しています。そして、このポップコーン・マシーンのスイッチを切ることは出来ません。よって、夜を迎えても湧き出るアイディアを止める術がないこともしばしばです。ADHDの人たちの心は休まる暇がないようです。
実際、ADHDの人の心というのは、そこここに散在する状態です。突然、「どこか別の場所にあるようだ」と気づくこともあるようです。それによって、チャンスの船に乗り遅れてしまうことも度々です。しかし、そのような事態になってしまった後で、ADHDの人たちは何をしているかというと、気がつけば飛行機を設計していたり、ホッピングの玩具を考案していたりするようなことがあるのです。これはどういうことかというと、就職面接の最中に心がさまよってしまったために、就活面接の成功には至らないが、一方で、その時に利用した人事部門の待合室のポスターから新たなアイディアをひらめき、発明で特許をとるというようなことなのです。
ADHDをもつ人たちは、名前や約束を忘れて相手を怒らせてしまう一方で、誰も気づかないようなことを掴んで、成果へと繋げるのです。墓穴を掘ってしまったまさにその場所で、苦なく穴を埋める方法を思いつかれます。偉大な数学者アラン・チューリング氏が遺した言葉に「時に想像もつかない偉業をやってのけるのは、誰も想像のつかないような人物だ」というものがありますが、ADHDの人たちのことを、まさにこの言葉が言い尽くしているといっても過言ではないのです。
つまり、ADHDとは、世間一般の人が想像するような単純化され過ぎた症状ではありません。それよりもずっと豊かで、とても複雑で、矛盾も危険もはらんでいる反面、有利な立場になる可能性も生まれる、といった状態なのです。このように、ADHDは“障害”と言い切れるものではなく、かと言って“才能”だと言い切れるものでもありません。これは「ユニークな心に宿っている一連の特性」とでもいうべきものなのです。そうした一連の特性が、明確な長所にも短所にもなり得る訳なのですが、それもこれも、ADHDをどのように管理していくのかに関わっていると言えるのです。
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当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。
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Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
参考引用文献:『ADHD2.0 特性をパワーに変える科学的な方法』