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医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。
「過食症(BN)」の「診断基準」や「定義」については、今まで同コラムにてご紹介してきた通りになりますが、よくある質問として、「『過食』と『食べ過ぎ』の違いがよく分からない」というものがあります。
確かに、どこまでが「食べ過ぎ」で、どこからが「過食」なのかは、とても曖昧なところがありますし、正直「当事者が『過食』と思ったのであれば『過食』ですし、『食べ過ぎ』と思うのであれば『食べ過ぎ』である」というのが、正解なのかもしれません。
ただ、もう少しイメージを持って頂く意味をこめて、この事柄について、もっと「感覚的」かつ「具体的」に記載してみようかと思います。
まず、「どれだけ食べたか」という「量」ではこの双方の違いは見極められないということは言えます。例えば、拒食症から過食症に転じた直後の方の場合は、客観的に見て「ごく少量」と捉えられる量ですら、「過食してしまった」と考えます。
また「食べ放題」に行く人は過食でしょうか? これも少し違うように思われます。何故なら、「食べ放題」に行く人の多くは、「楽しみに」「ワクワクしながら」行っているからです。そして味覚を満喫しています。
あくまでも私見ですが、過食の時には「好きで食べている訳ではないのに…」というネガティブな感覚を抱くことが非常に多いです。あるいは、「忘我」や「無心」の状態で、ただただ食べ物を口に運んでいることもあるでしょう。当然、味覚を満喫するどころではありません。ここは、「食べ過ぎ」との大きな違いとなります。
他にも、その食べ物に対しての「対価」(購入額であったり、食事代であったりですが)についての認識が「過食」と「食べ過ぎ」とでは異なる傾向があります。
「食べ過ぎ」の場合は、特にその食べ物への対価を、そこまで意識はしません。場合によっては、先述の「食べ放題」のケース等では、「得をした」とすら感じる可能性があります。一方、「過食」の場合は、その食べ物への「対価」について、非常にデリケートです。そして「こんなにお金を使ってしまって…」といった後悔や自責感すら抱きます。ここにも大きな違いが見受けられるでしょう。
加えて、「食べることを止める(ストップする)」ことへのコントロール感の程度にも差があります。「食べ過ぎ」の場合、「そろそろ止めようかな…」と思い始めた際、やや逡巡するところはあっても、最終的には自分が意識してストップをかけることが可能です。しかし、「過食」の場合は、「そろそろ止めたい(むしろ、食べたくない)」と思っていても、そう簡単にストップが出来なくなることに苦しさがあると言っても過言ではないでしょう。
そして、一番の違いは、「食べ過ぎ」は「『快』が強すぎて、ついついその行動を行った」結果ですが、「過食」は「『不快』が強すぎて、ついついその行動を行った」結果であるということです。結果だけ見ると、一見同じように見える行動かもしれませんが、ベクトルは全くといって良いほど真逆なのです。
恐らくは、このコラムを読まれて、「…結局何が違うのだろう?」と感じられた方は、「過食」とは無縁な方である可能性が高そうです。一方で、「なるほど。そのように説明されると、分かる気がする」とご自分の状況にストンと納得されていまわれた方は、もしかすると何かしらご自身の食行動に気になるところがあるのかもしれません。
過食症はきちんと治療をすれば、それだけ早く回復していく病気です。
このコラムを読まれまして、
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