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医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。
うつ病や適応障害等の心の病気により休職している時には、仕事のことを思い出さずにゆっくり休養をするためにも、職場との接触は極力避けるべきである……、ということがよく指摘されているかと思います。
しかしその前に、休職中に安心して休養し、治療に専念できる環境を確保するためにも、金銭面と身分上の不安を払拭する必要があります。つまり、この2点(金銭面・身分)に関する事柄は、早めに職場に確認をし、取り除ける不安は取り除いてから、治療を行なうことが望ましいとされています。
そのため、各職場によって大きく異なる次の3点(①職場の療養制度・療養中の給与の確認、②自宅療養中の会社の窓口、③職場復帰時の手順)は、休職開始の出来るだけ早い内に職場に確認する方が良いでしょう。それではこれから、その制度について説明をします。
① 職場の療養制度・療養中の給与の確認
療養制度は、職場の規模や考え方により大きく異なります。一般的には、大企業や公務員では療養制度が手厚く設計されており、中小企業になると充分な制度設計がされていない場合が多く見受けられます。つまり、療養制度に関しては各職場の就業規則などを参照し、詳しくは人事・労務担当に確認をする必要があります。
一般的に病気療養の制度として、「通常の有給休暇を使う場合」と「社内の病気休暇・病気休職の制度を用いる場合」があります。
有給休暇に関しては、労働基準法により雇用者が労働者に与えなければならない、給与が出る休暇なので、これを利用すれば、経済的な心配をすることなく療養することが出来ます。有給休暇の“積立制度”があるような会社では、ある程度、長期間の療養期間を有給休暇で賄うことが出来ますが、全ての会社が“積立制度”を採っているとは限りません。使用しなかった有給休暇は消失する仕組みの企業も少なくはありません。そのような企業の場合、年間20日間程度(有給の日数も企業により様々ですが)では、病気療養期間をカバーすることが出来なくなってしまいます。
そうなると次に、「病気休暇や病気休職の制度が存在するかどうか」を会社に確認することになります。病気休暇は、労働基準法の定義ではありませんので、制度が存在する場合には、会社の就業規則により、取得要件や賃金の支払いの有無が決められています。もし、そのような規定がない場合には、“欠勤扱い”となり、その間は“無給”ということになります(→その際は、「傷病手当金の支払い対象」に該当してきます)。
病気休職もほぼ同様の制度ですが、業務上の傷病以外の理由によって、比較的長期間欠勤せざるを得ない場合において、雇用者が「労働契約は存続させたまま、労働義務を一定期間免除する」ことを言い、この休職期間は、賃金の支払いの有無は別として、職場において身分が保証されます。この制度も、労働基準法等の定めがないために、そのような制度を設けるか否かは職場の選択に拠りますし、賃金の支払いの有無も職場によって異なるということになります(→無給の場合、同様に「傷病手当金の支払い対象」に該当してきます)。
「傷病手当金」とは、病気や怪我によって労働者が働けなくなり、事業主(雇用者)から充分な報酬(給料)の支払いが受けられない場合に、働けない期間の生活を守るために健康保険から支払われる手当金のことです。
傷病手当金は、社会保険の中でも、企業の労働者を対象とする健康保険に加入している労働者に支払われます(従って、社会保険の内、自営業者などを対象とする国民保険に加入している労働者には支給されません)。
傷病手当金が支払われる条件は、被保険者が病気や怪我のために働くことが出来ず、会社を休んだ日が連続して3日間あった上で、4日目以降、休んだ日に対して支給されます。但し、休んだ期間について、事業主(雇用者)から傷病手当金の額よりも多い報酬額の支給を受けた場合(有給消化等)には、傷病手当金は支払われません。
傷病手当金は、病気で休んだ期間、1日につき、標準報酬日額(「標準報酬月額÷30」)の3分の2(約67%)に相当する額が支給されます。「標準報酬月額」とは、毎月の給料等の報酬の月額のことです。
② 自宅療養中の会社の窓口
療養中でも会社の事務手続きや傷病手当金の手続き等、諸手続を行なわなければなりません。また、会社の制度について何か分からないことがあった場合に、様々な問い合わせをしなければならないこともあるでしょう。そのため、休業中の事務の窓口を確認しておくと、書類のやり取り等がスムーズに行われ、手続きミスにより傷病手当金が入るのが1ヶ月遅れるというような事態を避けることが出来ます。
また、会社によっては、社内にメンタルヘルスの相談の窓口があったり、診療室や保健室等に精神科医やカウンセラーが配置されていたりすることもあります。社内にそのような機関が無かったとしても、福利厚生の一環として、カウンセリングルーム等の外部機関と契約していて、メンタルヘルスに関する相談を受けることが出来る場合もありますので、メンタルヘルスの相談窓口についても確認しておくと良いでしょう。
③ 職場復帰時の手順
職場復帰に関しては、主治医の「職場復帰可能」の診断書が提出されれば、職場復帰が認められるという、比較的手続きが簡単な職場もあれば、主治医の診断書をもとに産業医が面談を行なう職場、更には、産業医の面談後に職場復帰判定会議のような形が取られ、職場復帰が決定するようなかなり慎重な職場もあります。このように、職場復帰時の手順も職場によって制度が大きく異なるので、確認しておくようにしましょう。
というのも、慎重な職場の場合、「職場復帰可能」の診断書が提出されてから、産業医面談の予約までに2週間~1ヶ月、その後の判定会議までさらに日数が上乗せされる……といった具合に、非常に長期間、職場復帰の足止めを食らう場合がありますので、職場復帰までの手続きが煩雑な場合には、予め確認をするように心掛けましょう。
躁うつ病(双極性障害)、自律神経失調症、不安症、
パニック症、社交不安症、恐怖症、睡眠障害(不眠症)、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
摂食障害(過食症)、心身症、強迫症、統合失調症、
月経前症候群(PMS)、過敏性腸症候群(IBS)など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
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