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医療法人社団ペリカン新宿ペリカンこころクリニック(心療内科、精神科)です。
ADHDの子どもの有病率は約5%ですが、男女比では男児が圧倒的に多い数字となっています。
以前同コラムでもご紹介しました通り、この比率となってしまった最たる理由は、女児に比べて男児のADHDは、多動性や衝動性からくる様々な行動・態度に対して、親が気づきやすく、問題意識を持ちやすく、医療機関での診察に繋がりやすいからではないか、と分析されています。
また、診断基準もこうした背景から、男性を基準に作成されたものだからだ、という指摘もあります。
しかし、2010年以降に行われた、世界中の成人ADHDの方を対象とした治療研究においては、参加者の7割~8割が「女性」となっていました。
成人におけるADHDの有病率の性差は、まだ統一した見解が示されるには至ってはいないものの、成人女性の場合、ADHDであったとしても、未受診の状態の方々がかなり多く潜在しているのではないか、と考えられています。
幼年期の女児のADHDは、絶えず目の前の集中すべき事柄ではなく、他のことを空想しているとか、おしゃべりであるといったような別の表現形態をとることが多いため、診断基準においても拾い上げられにくい、といった指摘もあります。
そのため、「ちょっと変わった子」で済まされてしまい、見過ごされてきただけだとすると、幼児期・児童期におけるADHDの男女比も、これまでとは異なる数値が出てくるようになるのではないか、と推測されています。
そして、最近増えてきているのは、子どもの発達相談に一緒に来院された母親が、子どもの診断を通して、「自分もADHDなのかもしれない」と気づく現象です。
今の子育て世代の親が子どもの頃は、ADHDはまだ社会的に広く認知されていませんでした。
多少知られていたとしても、そういう子どもは、授業中に教室の内外を歩き回って、先生の言うことを聞かず、軽めの「問題行動」と見なされていた時代です。
特に女児の場合は、先述の通り、表立って行動には表れない多動のケースが多く、外見では判断できないため問題視されてきませんでした。
そのため、女児のADHDは見逃されやすい傾向にありました。
しかし、それでも、お子さんが生まれるまでは、それなりに何とか工夫をされ、社会生活においても支障をきたすことがなかったADHDの女性が、育児を機に、「もうどうにもならない」「自分には手に負えない」という感覚を持たれ、心身共に限界に来てしまうというケースが増えてきています。
当然のことながら、育児はADHDではない方にとっても大変なことです。
そのこともあってか、潜在するADHDの女性の方の頑張りや危機感は、その障害特性が無い方には、「みんな大変だけど、何とかなるものよ」といったように受け止められてしまい、中々本質的には理解して貰えないところがあります。
ここでも、気力や活力、気分の問題として“見逃されて”しまうのです。
こうした意味で、女性のADHDの周知が徐々に進む今の潮流は、これまで見逃され続けてきた事態を確実に変える、一つのチャンスやキッカケとなっていくのかもしれません。
このコラムを読まれまして、
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