カタプレキシーとは?原因・症状・治療法を精神科専門医がわかりやすく解説
はじめに
突然、笑ったり驚いたりした瞬間に、体の力が抜けてしまう―。
意識ははっきりしているのに、膝が崩れたり、声が出なくなったりする。このような症状がある場合、「カタプレキシー(情動脱力発作)」の可能性があります。
カタプレキシーは決して“気のせい”の症状ではなく、ナルコレプシーという睡眠障害と深く関係する医学的な症状です。しかし、周囲から理解されにくく、本人も長年原因がわからず悩んでいるケースが少なくありません。
本記事では、精神科専門医の立場から、カタプレキシーの特徴、原因、治療法、受診の目安について詳しく解説します。
カタプレキシーとは?
カタプレキシーとは、強い感情をきっかけに、突然筋肉の力が抜ける発作を指します。
日本語では「情動脱力発作」とも呼ばれます。
最大の特徴は、意識がはっきり保たれたまま、体の力だけが抜けるという点です。
発作は数秒から数分で自然に回復し、後遺症は残りません。
どのような症状が起こるのか
症状の出方や重さには個人差がありますが、以下のような例がよく見られます。
- 笑った瞬間に膝がカクッと崩れる
- 驚いたときに首や顎の力が抜ける
- 怒りや興奮で声が出なくなる
- 重い場合は全身の力が抜け、その場に倒れ込む
多くの場合、感情が高ぶったとき(喜び・笑い・驚き・怒りなど)に誘発されます。
カタプレキシーの原因
カタプレキシーの主な原因は、脳内のオレキシン(ヒポクレチン)という物質の不足です。
オレキシンは、
- 覚醒を保つ
- 筋肉の緊張を調整する
といった重要な役割を担っています。
このオレキシンが不足すると、本来は睡眠中だけ起こる「筋肉の脱力」が、起きている状態でも突然出現してしまいます。
ナルコレプシーとの関係
カタプレキシーは、ナルコレプシー1型の中核症状です。
ナルコレプシーでは、
- 日中の強い眠気
- 居眠り発作
- 入眠時幻覚
- 睡眠麻痺(金縛り)
などが見られますが、カタプレキシーがあるかどうかが診断上の重要なポイントになります。
なお、カタプレキシーは単独で起こることはまれで、多くの場合、他の睡眠症状を伴います。
てんかんや失神との違い
カタプレキシーは誤解されやすく、
- てんかん発作
- 失神
- 心因性の症状
と間違われることがあります。
しかし、以下の点が大きな違いです。
- 意識消失がない
- 発作中の記憶が保たれている
- 感情が引き金になる
- 数秒〜数分で自然に回復する
これらの特徴は、診断の重要な手がかりになります。
放置するとどうなる?
カタプレキシー自体は命に関わる発作ではありませんが、放置すると以下の問題が生じることがあります。
- 転倒によるけが
- 人前での発作への恐怖
- 社会生活・仕事への支障
- 強いストレスや自己否定感
また、ナルコレプシーが未治療のままだと、日中の眠気による事故リスクも高まります。
診断方法
カタプレキシーが疑われる場合、以下のような評価が行われます。
- 詳細な問診(発作のきっかけ・意識の有無など)
- 睡眠ポリグラフ検査(PSG)
- 反復睡眠潜時検査(MSLT)
- 必要に応じて血液検査・脳画像検査
精神科や睡眠外来、神経内科での専門的な評価が重要です。
治療法について
薬物療法
カタプレキシーは、薬物治療によって症状の頻度や重さを軽減することが可能です。
主に使用されるのは、
- 抗うつ薬(SSRI・SNRIなど)
- ナルコレプシー治療薬
これらは、感情による筋脱力を抑える効果があります。
※薬は医師の指導のもと正しく使用すれば、安全性の高い治療法です。
生活上の工夫
- 強い感情が出やすい場面を把握する
- 周囲に病気を理解してもらう
- 無理なスケジュールを避ける
こうした工夫も、発作による不安を軽減します。
精神科専門医からのメッセージ
カタプレキシーは、本人の努力や気合で防げるものではありません。
脳の機能に由来する医学的な症状です。
「変に思われるのが怖い」「説明できない」と一人で抱え込まず、ぜひ専門医に相談してください。正しい診断と治療によって、生活の質は大きく改善します。
まとめ:カタプレキシーは早期診断と治療が重要
- 感情をきっかけに筋力が抜ける発作
- ナルコレプシーと強く関連する症状
- 意識は保たれる
- 治療によってコントロール可能
気になる症状がある場合は、早めに専門医を受診しましょう。
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参考文献:
日本睡眠学会|ナルコレプシー・カタプレキシー
厚生労働省 難病情報センター|ナルコレプシー
https://www.nanbyou.or.jp/entry/101
MSDマニュアル家庭版|ナルコレプシー
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/sleep-disorders
American Academy of Sleep Medicine
Mayo Clinic|Narcolepsy
監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会



