イフェクサーの副作用とは?注意点と対処法を精神科医が解説
はじめに
抗うつ薬「イフェクサー(一般名:ベンラファキシン)」は、うつ病や不安障害の治療において、世界的に広く処方されている薬剤です。その効果の高さから信頼される一方で、「副作用が心配」「やめるときに離脱症状が出ると聞いた」といった不安を抱く方も少なくありません。
本記事では、精神科医の視点から、イフェクサーの作用メカニズムや主な副作用、服用時の注意点、そして副作用への具体的な対応方法まで、丁寧に解説します。お薬への不安を軽減し、安心して治療に臨むための一助となれば幸いです。
イフェクサーとは?|作用と特徴
イフェクサーは、「SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)」に分類される抗うつ薬です。神経伝達物質であるセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、これらの濃度を脳内で高めることで、気分の落ち込みや意欲の低下といった症状を緩和します。
主な適応症
- うつ病
- 全般性不安障害(GAD)
特徴
- セロトニンのみに作用するSSRIと比べ、意欲や活動性の改善に対する効果がより期待できる
- 効果が現れるまでには、一般的に2週間程度を要することが多い
イフェクサーの主な副作用
イフェクサーの副作用は個人差が大きく、全ての人に現れるわけではありませんが、比較的よく報告される症状についてご紹介します。
吐き気・胃の不快感
服用初期や用量を増やした直後に、吐き気や胃のむかつきを感じることがあります。これらの症状は一過性であることが多く、数日から1週間ほどで自然に落ち着くケースが一般的です。
頭痛・めまい
一部の方では、軽度の頭痛やめまい、ふらつきを感じることがあります。特に急に立ち上がった際に起こる起立性低血圧には注意が必要です。
口の渇き・便秘
ノルアドレナリンの作用によって、唾液の分泌が減少し口が渇いたり、腸の動きが鈍くなって便秘を引き起こすことがあります。水分補給や食物繊維の摂取を意識することで、ある程度の予防が可能です。
眠気 or 不眠
日中の強い眠気を訴える方もいれば、夜に寝つきが悪くなる方もいます。こうした症状は、服用時間の調整や生活リズムの見直しで改善が見込める場合があります。
発汗・動悸
交感神経の活性化により、手のひらや足の裏に汗をかきやすくなったり、心臓がドキドキするような動悸を感じることがあります。軽度であれば経過観察で問題ないことが多いですが、症状が強いときは医師への相談をお勧めします。
離脱症状(中止時の注意点)
イフェクサーの服用を自己判断で急にやめてしまうと、体がお薬の変化に追いつかず、「離脱症状」と呼ばれる不調が現れることがあります。これはお薬への依存とは異なり、脳内の神経伝達バランスが急激に変化することによって起こる一時的な反応です。
離脱症状の例
- めまいや体のふらつき
- 電気が走るような感覚(いわゆる「シャンビリ感」)
- 強い倦怠感や吐き気
- 不安感の増加やイライラする気分
イフェクサーを中止する際には、必ず医師の指導のもとで、少しずつ服用量を減らしていく段階的な調整が必要です。
副作用が出た場合の対処法
以下のポイントを押さえておくことで、過度に不安になることなく、安心して治療を継続することができます。
服用初期は経過を見る
多くの副作用は、お薬に体が慣れていない服用初期や増量直後に起こりやすく、数日から1週間ほどで自然と軽減する傾向があります。すぐに服用をやめるのではなく、まずは医師に状況を伝えて相談しましょう。
服用時間を調整する
眠気や不眠といった症状が出た場合は、朝または夜のどちらかに服用時間を調整することで、症状が和らぐケースがあります。医師と相談しながら、ライフスタイルに合った服薬タイミングを模索することが重要です。
副作用の記録をつける
症状がいつ、どのように現れたのかをメモしておくと、診察時に状況を正確に伝えやすくなります。記録は、より適切な処方や対応策を見つけるための手がかりにもなります。
自己判断で中止しない
副作用が気になるからといって、自分の判断でお薬の服用をやめるのは非常に危険です。特にイフェクサーのように離脱症状が出やすいお薬は、必ず医師の管理のもとで慎重に減量・中止する必要があります。
精神科医からのメッセージ
イフェクサーは、うつ病や不安障害の改善に有効な薬剤であり、多くの方にとって大きな助けとなる治療選択肢です。しかしながら、副作用や離脱症状といった懸念もあるため、慎重な対応が求められます。
大切なのは、「副作用がある=使うべきでないお薬」と捉えるのではなく、副作用をきちんと理解し、適切に対処しながら活用していくことです。医師の指導のもとで丁寧に調整を重ねることで、不安を抑えつつ、治療効果を最大限に引き出すことが可能になります。
まとめ:副作用への理解と対処が安心につながる
イフェクサーは効果の高い抗うつ薬でありながら、副作用や中止時の注意点もあるお薬です。しかし、正しい知識と医師のサポートがあれば、無理なく治療を継続することができます。
副作用が気になる場合も、1人で抱え込まず、まずは医師に相談しましょう。必要に応じて用量を調整したり、別の薬剤に切り替えたりすることで、症状の改善とQOL(生活の質)向上を目指すことができます。
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参考文献:
ファイザー株式会社:イフェクサーSRカプセル添付文書https://www.pfizerpro.jp/product/effexor-sr
National Institute for Health and Care Excellence (NICE): Depression in adults: treatment and management
https://www.nice.org.uk/guidance/ng222
Preskorn SH, “Clinical pharmacology of venlafaxine.” J Clin Psychiatry.
医中誌Web:SNRIの副作用に関する国内臨床研究
厚生労働省 e-ヘルスネット:うつ病と抗うつ薬の副作用https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html
監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会



