寝ても寝ても眠い?隠れた原因とセルフチェック方法を精神科医が解説
はじめに
「しっかり寝ているのに、日中に強い眠気が襲ってくる」「10時間以上寝てもまだ眠い」
そんな状態が続いていませんか?
それは単なる“寝不足”ではなく、何らかの睡眠の質の低下や身体・精神の不調が背景にある可能性もあります。
本記事では、精神科専門医の視点から「寝ても寝ても眠い」状態の原因をわかりやすく解説し、セルフチェックの方法や改善のヒントをご紹介します。気になる症状がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
「寝ても寝ても眠い」とはどんな状態?
いわゆる“過眠”とは、必要な睡眠時間を超えても眠気が取れない、または日中に強い眠気を感じる状態を指します。一般的な成人に必要な睡眠時間は7〜9時間程度ですが、それ以上寝ても眠気が続く場合は、何らかの問題を抱えているかもしれません。
特に以下のような状態が続く場合は注意が必要です。
- 夜間十分に寝ているのに、昼間に居眠りしてしまう
- 睡眠時間が長いのに疲れが取れない
- 何をしていても強い眠気を感じる
- 目覚ましを何度も止めてしまい起きられない
考えられる原因は?
1. 睡眠の質の低下(睡眠時無呼吸症候群など)
「量」ではなく「質」が悪いことで眠気が残ることがあります。
特に多いのが睡眠時無呼吸症候群(SAS)で、いびきや無呼吸のために睡眠が断続的に妨げられ、十分な休息が得られません。
✔ いびきを指摘されたことがある
✔ 起床時に頭痛がある
✔ 昼間に強い眠気がある
上記に該当する方は、SASの検査を受けることをおすすめします。
2. 概日リズム障害
夜型生活や不規則な生活習慣により、体内時計がずれてしまうことで、睡眠と覚醒のリズムが乱れ、日中に眠気が出ることがあります。
夜更かし・昼夜逆転などの生活をしている人に多く見られます。
3. 精神的ストレス・うつ病
意外に見逃されがちなのがうつ病や気分障害による過眠症状です。うつ病と聞くと“不眠”をイメージする方が多いかもしれませんが、「眠りすぎてしまうタイプのうつ」も存在します(非定型うつ病など)。
✔ 何に対してもやる気が出ない
✔ 気分が重い
✔ 寝ても寝ても眠い
このような状態が続いている場合は、精神科の受診も検討しましょう。
4. 特発性過眠症・ナルコレプシー
比較的まれですが、特発性過眠症やナルコレプシーといった睡眠障害が関係していることもあります。これらは脳の睡眠制御機能の異常であり、昼夜問わず強い眠気が突然出現します。
専門の医療機関での精密な診断が必要です。
5. 薬の副作用や内科的疾患
抗ヒスタミン薬、向精神薬、抗うつ薬、糖尿病治療薬などの薬の副作用による眠気も要因のひとつです。また、甲状腺機能低下症や貧血、肝機能障害などの身体的疾患でも眠気が出ることがあります。
セルフチェックリスト
以下のような項目に心当たりがある方は、一度生活習慣や医療機関でのチェックをおすすめします。
|
□ 7時間以上寝ても眠気が取れない |
|
□ 昼間に居眠りやうたた寝が増えた |
|
□ 睡眠中のいびきを指摘された |
|
□ 起きても疲れが残っている |
|
□ 精神的に落ち込みやすくなった |
|
□ 眠気で仕事や日常生活に支障がある |
該当項目が多いほど、医学的な評価が必要な可能性があります。
改善のためにできること
1. 生活リズムの見直し
- 就寝・起床時間を固定する
- 寝る前のスマホ・カフェインを避ける
- 朝に日光を浴びることで体内時計を整える
2. 質の高い睡眠を取る
- 寝室の環境を整える(温度・光・音)
- リラクゼーション(ストレッチ、入浴)
- 睡眠時無呼吸の疑いがある場合は検査を受ける
3. 医療機関での相談
- 症状が続く場合は、睡眠専門外来や精神科での評価をおすすめします。
- 必要に応じて睡眠ポリグラフ検査(PSG)や血液検査が行われます。
精神科医からのメッセージ
「しっかり寝ているのに眠い」という状態は、本人にとって非常につらく、不安を感じるものです。しかし、多くの場合は原因を明確にすることで適切な対処が可能です。
精神的な疲労やストレスも、睡眠の質を大きく左右します。自分を責めるのではなく、「もしかして何かのサインかも」と前向きにとらえて、一度専門家に相談することをおすすめします。
まとめ:日中の眠気は心と体からのサイン
- 「寝ても眠い」状態は、生活習慣・睡眠障害・ストレス・疾患など様々な要因が関与
- セルフチェックを活用して原因の可能性を把握
- 改善しない場合は、医師による専門的な評価が重要
「おかしいな」と思ったときが相談のタイミングです。健康的な毎日のためにも、気になる症状は早めに見直しましょう。
▶新宿ペリカンこころクリニックへの来院をご希望の方はこちら
参考文献:
厚生労働省 e-ヘルスネット|睡眠と健康https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-005.html
日本睡眠学会|睡眠障害の診断と治療ガイドライン
https://www.jssr.jp/
American Academy of Sleep Medicine|Narcolepsy and Hypersomnia
医中誌Web|過眠症に関する国内研究
監修者:
新宿ペリカンこころクリニック
院長 佐々木 裕人
資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医
所属学会:日本精神神経学会



