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セロトニンとメラトニンの違いと関係性|睡眠・心の健康との関わりを精神科専門医が解説

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セロトニンとメラトニンの違いと関係性|睡眠・心の健康との関わりを精神科専門医が解説

セロトニンとメラトニンの関係とは?睡眠や心の健康への影響を精神科医が解説

はじめに

「なかなか眠れない」「気分が沈みがちになる」といった悩みの背後には、脳内で働く神経伝達物質であるセロトニンやメラトニンのバランスが影響している可能性があります。

これらの物質は、心と体の健康を支えるうえで重要な役割を担っています。

本記事では、精神科医の視点から、セロトニンとメラトニンの働きや相違点、睡眠やメンタルヘルスへの関係、そしてそれらを自然に整える方法について、丁寧に説明します。

 

セロトニンとは?

セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、感情や気分、意欲、衝動などのコントロールを通じて、精神の安定に深く関与している神経伝達物質です。

実は脳内だけでなく、体内に存在するセロトニンの約9割以上が腸に存在しており、消化機能や免疫機能にも影響しているとされています。

また、交感神経と副交感神経のバランスを保つ作用もあるため、自律神経の安定にも欠かせない存在です。セロトニンの働きが乱れると、気分の落ち込みや不安感だけでなく、睡眠障害や過敏性腸症候群といった身体的な不調にも繋がることがあります。

 

主な働き

  • 気分の安定を保ち、不安やイライラを和らげる
  • 自律神経のバランスを整える
  • 睡眠リズムに関与(メラトニンの材料になる)
  • 腸内にも多く存在し、消化や免疫にも関与する

 

メラトニンとは?

メラトニンは「睡眠ホルモン」と呼ばれ、体内時計(概日リズム)を整える重要な役割を果たします。

脳の松果体という部位から分泌され、日が沈んで暗くなると分泌量が増え、自然な眠気を促してくれます。

この分泌は光の刺激によって左右されるため、特にスマートフォンやパソコンなどのブルーライトはメラトニンの生成を妨げる要因となります。メラトニンの分泌が遅れると、寝つきの悪さや夜中に目が覚めるといった睡眠の質の低下に繋がります。

 

主な働き

  • 体内時計を調整し、自然な眠気を促す
  • 強い抗酸化作用を持ち、老化防止にも寄与
  • 光の刺激(特にブルーライト)によって分泌が抑制される

※就寝前のスマートフォンやパソコンの使用は、メラトニンの分泌を妨げるため注意が必要です。

 

セロトニンとメラトニンの関係

セロトニンとメラトニンは、それぞれ異なる役割を担う神経伝達物質・ホルモンですが、実は互いに深く結びついています。メラトニンは、セロトニンをもとに体内で合成されるため、セロトニンが不足すると、メラトニンの生成もうまく進まなくなります。

この変換は、日中に活発に分泌されたセロトニンが、夜になるとメラトニンへと変化するという仕組みで成り立っています。つまり、日中にしっかりとセロトニンが分泌されていることが、夜の自然な眠りへと繋がる重要なポイントとなるのです。

気分の安定や睡眠の質を保つためには、セロトニンとメラトニンの連携が欠かせません。しかし、慢性的なストレスや生活リズムの乱れが続くと、このバランスが崩れ、不眠や情緒不安定といった様々な心身の不調を引き起こす可能性があります。

そのため、質の良い睡眠を得るためには、セロトニンの分泌を促し、それをもとにしたメラトニンの働きが円滑に行われるよう、日中の過ごし方やストレス管理がとても大切です。

 

セロトニン・メラトニンを自然に整える方法

お薬を使った治療を始める前に、まずは日常生活の中でセロトニンやメラトニンの働きを整える習慣を取り入れてみましょう。ちょっとした工夫によって、心身のバランスが改善される可能性があります。

 

日光を浴びる

起床後すぐに日光を浴びることで、セロトニンの分泌が活性化されます。毎朝15〜30分ほど、屋外での散歩や軽い運動を行うのが理想的です。

 

リズム運動をする

ウォーキングや軽いジョギング、ガムを噛むといった一定のリズムを伴う運動は、セロトニンの分泌を促すとされています。

 

バランスの良い食事

セロトニンの材料となるトリプトファンという必須アミノ酸は、食事から摂取する必要があります。バナナ、豆類、乳製品、ナッツなどの食品に多く含まれているため、こうした食材を意識的に取り入れたバランスの良い食事を心がけましょう。

 

就寝前の環境づくり

メラトニンの分泌を妨げないよう、就寝前はスマートフォンやパソコンの使用を控え、部屋の照明もできるだけ暗くしておくことが大切です。

 

精神科医としての見解

セロトニンやメラトニンの機能は、うつ病や不眠症、ストレスによる心身の不調と密接に関係しています。これらの物質のバランスが崩れることで、気分の落ち込みや睡眠の質の低下など、様々な症状が現れやすくなります。

実際の治療現場では、うつ病の治療において「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」と呼ばれる薬剤を使用し、脳内のセロトニン濃度を安定させることが一般的です。また、メラトニンの不足に対しては、「ロゼレム」などメラトニンの分泌を補うお薬が処方されることもあります。

大切なのは、お薬を一律に「避けるべきもの」と捉えるのではなく、医師とよく相談した上で、適切に使用することです。独断での服用や中止は、症状の悪化に繋がる恐れがあるため、必ず専門医の指導のもとで判断しましょう。

 

まとめ:セロトニンとメラトニンの調和が心身を整える

セロトニンとメラトニンは、それぞれ異なる役割を持ちながらも、互いに補い合うように働き、私たちの心身の健康を支えています。

こうしたホルモンのバランスを保つためには、まず日常生活を整えることが欠かせません。睡眠リズムやストレス管理、食生活の見直しなど、できることから取り組んでみましょう。

不安感や不眠といった不調を感じる場合は、生活習慣の改善と併せて、早めに専門医へ相談することをお勧めします。

 

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参考文献:

厚生労働省 e-ヘルスネット「セロトニン」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-036.html

UpToDate: Melatonin: Pharmacology, efficacy, and safety

医中誌Web:セロトニンとメラトニンに関する最新研究

日本うつ病学会:気分障害の診療ガイドライン

アメリカ国立睡眠財団(NSF)
https://www.sleepfoundation.org/

 

監修者:

新宿ペリカンこころクリニック

院長 佐々木 裕人

資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医

所属学会:日本精神神経学会