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幻聴で悪口が聞こえるのはなぜ?|幻聴が聞こえる理由と対処方法を精神科専門医が解説

幻聴で悪口が聞こえる原因と対処法を徹底解説

 

はじめに

「誰もいないのに、自分の悪口が聞こえる気がする」そんな経験に心を悩ませたことはありませんか。それが実在しない声である場合、幻聴が疑われます。幻聴とは、周囲に人がいない状況でも声が聞こえる現象で、特に「悪口が聞こえる」という訴えが非常に多いです。

 

当院にも、「誰かに責められている気がしてつらい」「常に陰口を言われているように感じる」といったご相談が寄せられます。こうした症状は決して気のせいではなく、脳の機能や心理状態が深く関与している場合が多いです。

 

本ページでは、幻聴が起こる仕組みや主な原因、治療方法について解説するとともに、日常で取り入れやすい対処法についてもご紹介します。気になる症状がある方は、当院までご相談ください。

 

幻聴で「悪口が聞こえる」原因とは?

「誰かに悪口を言われている気がする」「責める声が頭から離れない」といった幻聴は、強い不安や恐怖を引き起こし、日常生活にも支障をきたすことがあります。実際に、当院にもこのような悩みを抱えて受診される方が数多くいらっしゃいます。

主な原因として以下の4つが挙げられます。

 

1. 精神的なストレスやトラウマ

心に強い負担がかかると、脳が実在しない声を「あるもの」として感じてしまうことがあります。特に、過去のいじめや虐待、職場でのパワハラなどの経験が、心理的なフラッシュバックとして蘇り、「悪口」として脳内に響くことがあるのです。

 

2. 統合失調症やうつ病との関連

幻聴は、統合失調症でよく見られる症状です。特に、「非難されている」「監視されている」といった被害的な内容が多く、本人にとって非常につらい状態となります。

また、重度のうつ病でも、思考が極端に悲観的になることで、存在しない声が聞こえることがあります。

 

3. 睡眠不足や過労

十分な休息が取れず、睡眠不足や過労が続いた場合、脳の情報処理能力が低下し、実際にはない音や声が聞こえることがあります。特に、長時間の労働や不規則な生活は脳に大きな負担を与え、幻聴の引き金となることもあります。

 

このようなケースでは、生活リズムを整え、しっかりと休息を取ることで、症状の軽減が期待できます。当院でも、睡眠や生活習慣の改善に関する指導を行っています。

 

4. 脳機能の異常や神経伝達の問題

幻聴が生じる背景には、脳内の神経伝達がうまく働かなくなることが影響している場合があります。特に、ドーパミンなどの神経伝達物質のバランスが崩れることで、存在しない声を「聞こえるもの」として脳が誤認することがあります。

また、MRIやCTといった画像検査で、脳の構造に変化が見られるケースも報告されています。当院では、必要に応じてこれらの検査を行い、症状の背景にある身体的要因も含めて丁寧に確認します。原因が明らかになることで、より適切な治療に繋がり、回復が期待できるケースも多くあります。

 

幻聴の診断方法

「悪口が聞こえる」といった幻聴の訴えには、ストレスの蓄積、精神疾患、あるいは脳機能の異常など、様々な原因が関わっている可能性があります。そのため、正確な診断には専門医による評価が欠かせません。

当院では、まず患者様の症状や背景を丁寧に伺いながら、適切な検査を行っています。以下に、代表的な診断の流れと検査方法をご紹介します。

 

1. 精神科や心療内科での問診

はじめに、症状の内容や出現時期、頻度、日常生活の状況などについて詳しくお聞きします。幻聴がどのような言葉として聞こえるのか(悪口・命令・脅迫など)、またどのような場面で現れるのかによって、診断の方向性が変わってきます。さらに、これまでの精神疾患の有無やご家族の病歴なども確認することで、より正確な診断に繋がります。

当院では、患者様が安心してお話し頂けるよう、プライバシーに配慮した環境を整えており、丁寧に問診を行っています。問診の中で、患者様ご自身でも気づいていなかった要因が見つかることもあります。

 

2. 脳の画像診断(MRI・CT検査)

幻聴の原因を詳しく調べるために、必要に応じて脳の画像検査を行います。MRIやCT検査によって、脳に形態的な異常がないか、腫瘍がないか調べます。脳内の血流や神経の伝達機能に障害があると、幻聴が起きることがあります。

これらの検査は侵襲性の低い安全な方法で、痛みも伴いません。当院では、精度の高い解析が可能な最新の装置を導入しており、詳細な所見をもとに適切な診断を行っています。

 

3. 心理テストや評価スケール

精神面の状態をより正確に評価するために、心理テストや評価スケールを用いることがあります。具体的には、次のようなテストが代表的です。

 

  • ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D):うつ病の症状の程度を数値化します。
  • PANSS(陽性・陰性症状評価尺度):統合失調症の症状を詳しく分析します。
  • BPRS(簡易精神症状評価尺度):精神症状の全体像を把握するために使用します。

 

これらの結果から、症状の性質や深刻度を明らかにし、より適切な治療方針の決定に役立てています。

正しい診断は、単なる病名の確認ではなく、治療を始めるための重要な第一歩です。次の項目では、具体的な治療法についてご紹介します。

 

 

幻聴で悪口が聞こえる場合の治療法

「悪口を言われているように聞こえる」といった幻聴は、日常生活や対人関係に大きな支障をきたすことがあります。ただし、適切な治療を受けることで、症状の軽減や回復が十分に見込まれます。

当院では、患者様の症状や背景を丁寧に把握したうえで、1人ひとりに合った治療プランをご提案しています。治療法は主に以下の3つに分かれます。

 

1. 薬物療法

幻聴の改善を図るうえで、最も基本となる治療が薬物療法です。症状や原因に応じて、以下のようなお薬が使われます。

 

  • 抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、クエチアピンなど):

幻聴や被害妄想を和らげる働きがあり、特に統合失調症に対して高い効果が期待されます。

  • 抗うつ薬(セルトラリン、パロキセチン、エスシタロプラムなど):

うつ状態が幻聴の要因となっている場合に使用され、気分の落ち込みを改善しながら症状を緩和します。

  • 抗不安薬(デパス、ソラナックス、ワイパックスなど):

不安や緊張を軽減し、心の安定を保ちます。

 

お薬は患者様ごとに適した種類・量を選定し、副作用にも注意しながら慎重に使用します。当院では定期的に診察を行い、体調や効果を確認しています。

 

2. 認知行動療法(CBT)

幻聴の治療では、薬物療法と併せて認知行動療法を取り入れるケースが多いです。この療法では、幻聴に対する捉え方や反応の仕方を見直し、現実との区別を冷静につけられるようにする訓練を行います。

 

  • 記録と振り返り:

幻聴がいつ、どのような場面で起こるのかを記録し、パターンを分析します。

  • 思考の修正:

ネガティブな考え方を意識的に書き換え、前向きな解釈を身につけていきます。

  • 現実との照合:

周囲の人に確認を取り、幻聴が事実かどうかを客観的に判断します。

 

こうしたプロセスを継続することで、幻聴に対する過度な反応が抑えられ、次第に症状の改善が見込まれます。

 

3. カウンセリングと生活指導

当院では、定期的なカウンセリングを通じて、患者様の心の負担を少しずつ軽くする取り組みを行っています。日常的な不安や過去の経験について丁寧に確認しながら、精神面の安定を目指します。

併せて、生活習慣の改善も重要な治療の1つです。十分な睡眠、適度な運動、バランスの取れた食事などを意識することで、脳の働きが整い、症状の緩和に繋がることがあります。

幻聴は早めの対応によって改善が見込めます。当院では、患者様それぞれに最適な方法を提案しておりますので、安心してご相談ください。

 

まとめ:早期の相談が重要

「悪口が聞こえる」幻聴は、決して珍しい症状ではありません。しかし、放置してしまうと日常生活に支障をきたし、社会的な孤立や精神的な負担が大きくなってしまうリスクがあります。早期に専門医へ相談することで、適切な治療を受け、症状の改善が期待できます。

当院では、患者様1人ひとりの症状に合わせた治療プランを提案し、安心して通院頂ける環境を整えております。まずはお気軽にご相談ください。

 

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1人で悩まず、まずは一歩踏み出してみましょう。私たちが全力でサポートいたします。 「悪口が聞こえる」幻聴は、心や脳からのサインです。放置せず、早めに専門医へ相談することが大切です。

 

参考文献:

  1. 統合失調症患者の幻聴に対する自己分析と対処 – J-Stage
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/43/0/43_43689/_article/-char/ja/
  2. 統合失調症の患者が「幻聴」を聞いてしまう脳のメカニズム – GIGAZINE
    https://gigazine.net/news/20241004-brain-schizophrenia-auditory-hallucinations/

 

監修者:

新宿ペリカンこころクリニック

院長 佐々木 裕人

資格等:精神保健指定医、精神科指導医・専門医

所属学会:日本精神神経学会