ADHDの人の「遅刻癖」は有名です。普通の人からしたら、「何度も注意をしてるのに、なぜ遅刻するの?」と疑問に思われることでしょう。ADHDの人が何故遅刻をしやすいのか、まずその大きな理由として、準備から出掛けるまでの時間の掛け方が一般とややズレている、という側面はあるようです。具体的には、準備や支度をしている最中で、他のことに気が取られてしまうことが圧倒的に多いのです。準備や支度の途中で、無意識に他の作業に手をつけ、それに没頭してしまう傾向があります。
加えて、準備が終わった後も大変です。大抵何かを忘れています。家を出る瞬間に、「しまった!あれを忘れていた」りなり、それを探す作業に入ります。そして、見つけたと思ったら、今度は先程まで握りしめていたスマホがありません。出ようと思って玄関にちょっと置いていたはずの鍵もありあせん。このようにいくら入念に出掛ける準備をしたつもりであっても、ADHDの方の「準備OK」は、新たな闘いの始まりなのです。
遅刻をしてしまうもう一つの理由は、時間の見積もりが甘いことにあります。ADHDの人の時間の感覚は独特だと言われます。予定管理が苦手であったり、未来のことが上手くイメージできなかったりしますが、時間の見積もりが甘いのもこうした特性の一環だと思われます。
例えば、普通の人ならば、「11時に待ち合わせだから、10時半に家を出よう。であれば、9時に起きれば余裕を持って準備ができるな」という流れをイメージすることができます。一方、ADHDの人の場合は、「11時に待ち合わせなら、走って行けば15分位で着くよね? 準備なんて30分位で出来るから、ざっくり10時半起きくらいかな?」という感じで考える方もいる、といった塩梅です。
遅刻の対策法は、調べると色々出てきます。前日に準備をしておく、作業ごとに区切ってアラームを設定する、持ち物リストを作る…等々。勿論、これで上手くいくタイプの方もいる反面、「それはちょと面倒だな…」と感じられるADHDの人がいるのも事実です。もしそのようなタイプに人には、次の方法がお勧めです。
それは、「待ち合わせ時間の1~2時間前に到着し、ご飯も現地で済ませるようにする」という方法です。何故なら、ADHDの人の多くは恐らく、待ち合わせ時間ちょうどに到着をするという芸当が苦手なのではないでしょうか。完璧主義や極端な思考にとらわれがちであるため、「0か100」即ち「遅刻するか、稀に準備し過ぎて早く着きすぎるか」の二択になりがちなのです。よって、この後者の部分の特性を利用して、待ち合わせ以外の目的も作り、敢えてかなり早く到着するように設定してしまうのです。食べることが好きな人であれば、折角なので、現地の気になるお店で食事をするようにされるのも良いでしょう。無理に飲食店でなくとも、面白そうな書店や、見てみたいと思っていた洋服店、行ってみたかった公園など、ご自身の興味のアンテナに引っかかるものであれば何でも構いません。そして、それをきちんと“ルール化する”ことです。この方法であれば、ご自身のモチベーションも上がりますし、ワクワクした気持ちになり、遅刻も防止できます。
待ち合わせている相手に電話やLINEでリマインドをしてもらう方法もありますが、これは結局そのことに甘えて遅刻をするという悪循環を招くことにもなりかねません。そういった事柄も加味すると、結果として「ものすごく早く現地についておいて、好きなことをする」が一番効果てきめんであり、楽しく取り組め、誰かの手を借りることもなくて済む、ということになるようです。
ADHDの人にとって大変なことだとは思いますが、遅刻に関しては、人間関係と信頼関係に綿密に関わる課題にもなりますので、「ADHDだから仕方ない」と割り切らずに、最後までご自身なりの対策を練る事を諦めないことが何よりも重要なのです。
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当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。
ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ADHDやASD)の可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。
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Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
参考引用文献:やしろあずき著『すごいADHD特性の使い方』