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安眠・快眠への“第一歩”とは…?

安眠・快眠とは?

 中々寝付けなかったり、一度寝入っても夜中に目が覚めてしまったり、ぐっすりと眠れていないなと感じた経験は、誰しもあるのではないでしょうか。

 

 

ぐっすり眠れることを、「安眠」と言ったり、「快眠」と言ったりします。そのような名称がつけられた方法やグッズも巷には沢山溢れています。個人差はありますが、1日7~8時間寝ているとすると、1日の約3分の1は睡眠の時間です。それが毎日続くとなると、私たちが生きている時間の約3分の1は寝ている時間と考えられます。そうしたこともあってか、安眠や快眠の方法やグッズへの関心は高く、それらを取り入れて実践されている方も少なくはないと思われます。

 

 

但し、そこで言えることは、自分に合った安眠や快眠の方法・グッズというのは、その当事者自身にしか分からないし、宣伝や謳い文句通りに皆が満足するわけではないということです。ごく当たり前のことかもしれませんが、まず自分の睡眠の状態について、自分自身でどの位認識できているか、そして、ぐっすり眠れていると感じる時の身体の状態を自分で把握できているかが大切なのだと思われます。

身体の感覚に注意を向けてみる

例えば、布団に入って身体を横たえた時、自分の身体の伸びを感じられるでしょうか? 起きている間に、立ち姿勢や座り姿勢など長時間同じ姿勢を続けていると、身体の関節や筋肉が縮こまり、身体を横たえた時、不快感や痛みを感じる人もいるようです。時にはそのまま眠りに落ちることもあるかもしれませんが、布団の中で関節や筋肉が緩まり、べたーっと布団に身体がくっつき、何とも言えない安心感を感じられたり、ほっとして全身の力が抜けたり、そうした感覚を感じられているでしょうか。

 

 

また、入眠時の寝姿勢も人それぞれだと思いますが、自分にとって一番心地よい体勢を知っているでしょうか? 仰向けが眠りやすい人、横向きが落ち着く人、うつ伏せが心地よく感じる人…等々、実に様々です。

 

 

身体がリラックスしている状態を自分で知っていることが、安眠や快眠のための第一歩なのかもしれません。自分の身体の感覚に注意を向けて、伸びていたり縮こまっていたりするところ、痛みや疲労感を感じる場所、力が抜けて気持ち良く脱力していく感じ、温かくなっていく手や足先の感覚を感じてみる…等々。安眠や快眠の方法・グッズは、こうした自分の身体の感覚を感じられるからこそ力を発揮し、リラックスの状態へと助けてくれるのではないでしょうか。

 

 

自分の身体に注意を向けることは、丁寧に自分に向き合うことや、自律訓練法マインドフルネスといった心理臨床の場で行われていることとも近いかもしれません。頭の中を巡る思考を一旦置いておき、自分の身体に注意を向け、身体の感覚を十分に感じます。私たちはイライラや不安などの感情も体験しますが、身体を持って生活しています。意識を手放し眠るという行為に入る前に、自分の身体の感覚に注意を向けてみるのも良いかもしれません。

睡眠休養感の重要性

日本人の睡眠時間は、6時間未満の睡眠が、男性の37.5%、女性の40.6%に達するなど、世界最低水準になっています。特に50歳代までの働き盛りの年代における睡眠不足が顕著です。厚生労働省による健康日本21(第二次)では、「睡眠による休養を十分にとれていない者の割合(20歳以上)」が増加傾向にあるとされています。

 

 

このような睡眠不足の解消に「睡眠時間の確保」が重要なのはもちろんですが、最新研究からは、健康を維持するには睡眠時間を増やすだけでは不十分なことが示唆されています。誰でも十分眠ったはずなのに、だるくてやる気が出ないという経験があるかと思いますが、睡眠時間の長さだけでなく、睡眠の質も重要であることが科学的に証明されているのです。

 

 

例えば、国立精神・神経医療研究センターなどの研究チームは、既にある『米国睡眠研究資料の疫学データ』を用いて、睡眠の質(生理的な睡眠充足度)を考慮した様々なデータ解析を行いました。「40歳以降の米国地域住民で、平均約11年にわたり参加者の健康状態を追跡して得たデータ」を抽出し、以下のような解析を行ったのです。「睡眠時間と床上時間(ベッドの中にいる時間)を別々に評価する」「睡眠時間を客観的に評価する」「睡眠充足度の指標として睡眠休養感(朝の目覚めの時に生じる休まった感覚)を評価する」。

 

 

2022年に報告された解析結果は驚くべきものでした。働き盛りの世代では「睡眠時間が短く、かつ、睡眠休養感のない睡眠」が、将来の総死亡リスクの増加と関連することが明らかになりました床上時間と死亡リスクの関連は見られませんでした。

 

 

一方、70歳以上の高齢世代では、6割以上の人が6時間以上の睡眠をとっているとされますが、「床上時間が長く、かつ睡眠休養感のない睡眠」が将来の総死亡リスクと関連していることが分かりました。

 

 

「床上時間」とはベッドやふとんに横たわっている時間のことで、実際に寝ている睡眠時間に、ベッドやふとんに入ってから寝つくまでの時間を足したものです。

 

 

中でも、睡眠休養感がなく床上時間が8時間以上の人は、睡眠休養感があって床上時間が約7時間の人と比べて、死亡リスクが1.5倍以上に上っていました。厚生労働省のデータによると、70歳以上では男性の19.4%、女性の29.4%が8時間以上の睡眠をとっているとされており、このような人で睡眠休養感が得られていない場合には、早急に生活を見直す必要があるとされています。

 

 

睡眠休養感のない睡眠が健康に悪影響を与える理由は、不十分な疲労回復、免疫低下、ホルモンバランスが崩れることによる肥満や糖尿病リスクの増加、高血圧・動脈硬化・心臓病・脳卒中のリスク増加、精神的ストレスの増加…といったことが考えられます。加えて、睡眠休養感が低いと、日中の集中力や注意力が低下し、自動車の運転や機械作業等で事故を起こすリスクも高まりますので、この機会にご自身の「睡眠休養感」を“体感”として振り返ってみられては如何でしょうか?

このコラムを読まれまして、ご自分の現在のご状況として、

気になる点がありました方や、興味・関心を抱かれた方は、

どうぞ当院まで、お気軽にお問い合わせください。

 

 

当院では、睡眠障害(不眠症)をはじめ、

うつ病、躁うつ病(双極性障害)、適応障害、不安症、

自律神経失調症、心身症、ストレス関連障害、冷え性、

パニック症、月経前症候群(PMS)、摂食障害(過食症)、

大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、

統合失調症、強迫症、過敏性腸症候群(IBS)など、

皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、

心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

参考引用文献:心理臨床の広場 Vol.18 No.1 2025・Newton別冊睡眠のサイエンス