ご自身がPMS(月経前症候群)かどうか知る上で、「最初に甲状腺障害の有無を調べる必要がある」と聞いて驚かれる人は少なくありません。以前、当院のブログでPMSについて書かせて頂いた際にも、「PMSの主要因」の筆頭として「甲状腺機能不全」を挙げさせて頂いたのは、大袈裟なことではないのです。
実は、PMSの存在が確認された頃の初期の研究では、PMS女性の6人に1人が甲状腺障害を持っているという結果報告がされており、もっと高い確率で甲状腺障害が起きていると指摘する医師もいるほどなのです。
ブレイショー・ノラ医学博士は『ニューイングランド医学ジャーナル』で、PMSの女性54名を対象に甲状腺刺激ホルモンの反応検査を行ったところ、実に54名中51名に甲状腺異常が認められた、ということを発表しています。
甲状腺機能不全は、症状によって、識別することも可能です。甲状腺は、生理、体重、体温(新陳代謝)、エネルギー、気分の落ち込み、抜け毛、免疫システムなどの体内機能と関係しています。この分野での先駆者であるブローダ・バーンズ医学博士は、生理トラブルのある女性143人にテストをしたところ、その内85%の女性の甲状腺機能が弱っていることを発見しました。このように甲状腺機能不全は、以前からPMSと結びつけて考えられてきたのです。
月経周期にみられる症状のうち、以下のものは甲状腺機能不全が原因と考えられています。
□1 酷い腹痛、生理痛
□2 不規則な月経
□3 過少月経
□4 不正出血
□5 過量月経
□6 不妊症、流産
甲状腺の主な機能の一つに、代謝機能と体温調節を正常に維持することが挙げられます。手足や全身の“冷え”を感じるのが、甲状腺機能低下の最も一般的な症状のひとつです。また、甲状腺機能が低下している人の多くが、気力の減退を感じたり失望感を抱いたりします。
もちろん、血液検査によっても、甲状腺機能不全が起きているかどうか測ることは可能です。ただ、バーンズ博士は「バーンズ-バーサル体温テスト」という、誰にでも簡単にできる検査法を考案しています。検査方法は極めてシンプルで、まず寝る前に体温計をベッドの横に置いておきます。そして朝起きら、身体を動かす前に脇の下の体温を測ります。一般的にはこの時測った体温が、一日で最も低い体温とされており、その体温を記録表に書き込んで、「自分の体温表」を作ってみて下さい。
何日間か、起床時の体温を測って記録していきます。脇の下の正常な体温は、約36.5度~36.8度です。甲状腺機能不全の患者様は、新陳代謝が上手く行われず、体温が低くなることがよくあります。平熱が36.3度以下であれば、何らかの甲状腺治療が必要だと主張する医師もいるくらいです。
体温の測定は、月経周期の2日目に始めるのが最適です。何故なら、排卵日や生理前は、女性には体温の変化がつきものだからです。
血縁者に甲状腺機能低下症の人がいる場合や、または自分自身のその疑いが出た場合は、例え血液検査で異常がなかったとしても、体温を測ることをお勧めします。体温測定は、体内でその時に起きていることを知る上で、とても貴重な手がかりなのです。
このコラムを読まれて、ご自分の現在のご状況として、
気になる点がありました方や、興味・関心を抱かれた方は、
どうぞ当院まで、お気軽にお問い合わせください。
当院では、
月経前症候群(PMS)、PMDD(月経前不快気分障害)、
自律神経失調症、心身症、更年期障害、冷え性、
うつ病、躁うつ病(双極性障害)、不安症、適応障害、
睡眠障害(不眠症)、摂食障害(過食症)、パニック症、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
統合失調症、強迫症、過敏性腸症候群(IBS)など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
なお、PMSの漢方薬による治療をご希望の患者様は、診察時に医師の方にぜひご相談下さい。当院のような心療内科では、健康保険適用で処方することも可能です。
Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
参考引用文献:リネヤ・ハーン著『PMS(月経前症候群)を知っていますか?』(朝日新聞社)