髪の毛や眉を抜く、ニキビの後をいじる…。退屈な時や、落ち着かない時などに、そんなことをする人は案外多いものです。しかし、止めようと思っても止められなかったり、症状のせいで人前に出られなくなったりした場合は、「抜毛症」、「皮膚むしり症」という病名がつきます。「毛を抜く」「皮膚をむしる」は、一種の強迫行為であるとも考えられます。
1日に何時間も体毛を抜く抜毛症
症状としては、ムダ毛の処理や美容が目的ではないのに、自分の髪の毛や眉、まつ毛などを抜き続けるのが、抜毛症です。退屈や不安だという感覚をキッカケに「抜きたい」という感情が高まり、いったん始めると中々止められません。1日に何回となく抜く人、何時間も抜き続ける人もいます。
有病率としては、子どもから大人まで見られますが、思春期頃に発症する例が多く、ストレスが増すと症状が悪化しやすいと報告されています。子どもの場合、男女比はほぼ同数、成人では圧倒的に女性に多く認められます。成人の有病率は1~2%とも言われています。
抜毛が進むと抜毛している部分が目立つようになるため、学校や職場に行きづらくなる人がいます。よって、背景にある要因を探って解決することと同時に、本人が暮らしやすいように環境を整えることが大切になってきます。
皮膚をいじり続ける皮膚むしり症
症状としては、ニキビのあと、指先のささくれ、小さな傷などにとらわれて、繰り返しその部分の皮膚をむしったり、指先でほじくったりすることが止められない場合、皮膚むしり症だと考えられます。数時間も行為を続ける人もいます。有病率は1~2%か、それ以上とする説もあります。
自分でも「やめたい」「恥ずかしい」と思いながら、止められません。抜毛症同様、むしった部分を隠そうとたり、人目を避けようとしたりすることがあります。ストレスや不安が関与していることが多いと指摘されており、皮膚の治療をしながら、精神面のケアをしていくことになります。
治療の柱は薬物療法と認知行動療法
医療機関で行われる強迫症の治療の柱は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という薬を使う薬物療法と、精神療法(心理療法)の一種の認知行動療法、この2つです。認知行動療法では曝露反応妨害法(エクスポージャー&レスポンス・プリベンション)という方法が主に用いられます。
これらの治療が登場して以降、強迫症の改善率は向上しました。しかし、それぞれにメリットとデメリットがあることも知っておきましょう。薬物療法は治療を開始しやすく比較的早い効果の発現が期待できますが、副作用や中断時の再発の可能性が指摘されます。認知行動療法は効果が高く、かつ持続し再発予防も期待できると言われますが、患者様の状況によっては開始や継続が難しい場合もあります。加えて、実施している医療機関が多くはありません。
一般的な診療の流れとして、多くは薬物療法を先行させます。それで症状をある程度落ち着かせてから認知行動療法を開始します。患者様の重症度によって、そのタイミングは若干異なりますが、いずれにしても、通常は通院(外来)で治療をします。並行して、患者様ご本人に対して、病気についての理解を促す「心理教育」の時間がもたれます。
このコラムを読まれまして、興味・関心を抱かれた方、
ご自分の現在のご状況として気になる点がありました方は、
どうぞ当院まで、お気軽にお問い合わせください。
当院では、強迫症(強迫性障害)をはじめ、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症含む)、
うつ病、躁うつ病、不安障害、適応障害、摂食障害、
パニック症、睡眠障害、自律神経失調症、心身症、
月経前症候群、統合失調症、社交不安症、
過敏性腸症候群、アルコール使用障害など、
皆様の抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
また、診察と一緒に、専門の心理士(臨床心理士・公認心理師)資格を持ったカウンセラーによるカウンセリング(心理療法)も行っております。カウンセリングをご希望される患者様は、診察時に医師にご相談下さい。
Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)
引用参考文献:上島国利監修『本人も家族もラクになる 強迫症がわかる本』(翔泳社)