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【医師監修】スマホって、睡眠に悪いんですか??

上手く眠れないのは、本来覚醒すべきでない時間帯に目が覚めてしまうからです。それには、スマホ依存が深く関わっています。何しろ、日本のスマホ依存度は世界で3番目であり、これでは不眠になりたがっているようなものです。ではどうしてスマホ依存が不眠の原因になるのでしょうか。それは自律神経系が乱れるからです。ここで少し自律神経系について説明をさせて下さい。

 

 

私たちの身体には、心臓の動きや体温の調整など、自分の意志とは関係なく働く機能があります。それを司っているのが「自律神経系」です。気温の変化に対処するため、暑い時に汗をかいて体温を下げたり、夜がくると眠くなったりするのは、この自律神経の働きによります。

 

 

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」という2種類の神経が存在します。この2種類の神経は、どちらかが優位になるとどちらかが引っ込むという形でバランスをとっています。日中、活発に動いたり頭を働かせたりしている時に優位になっているのが、交感神経です。これに対して、リラックスした状態の時は、副交感神経が優位になるといった具合に、無意識の内にスイッチングが行われているのです。つまり、夜にちゃんと眠くなるためには、副交感神経が優位になる必要があるというわけです。

 

 

ところが近年、この交感神経と副交感神経のスイッチングを邪魔するものが、私たちの生活に切っても切り離せないのとして登場してきました。それがスマホです。スマホの刺激によって、本来交感神経から副交感神経に切り替わるはずのタイミングで上手く切り替わらず、交感神経が優位なままで脳が覚醒してしまっているのです。

スマホは寝床から遠ざける

実際、スマホを枕元から離すだけでも、かなり眠りやすくなると言われています。恐らく、スマホを目覚まし代わりに使うために、枕元においている人も多いかと思いますが、手元(枕元)に置いておいくとつい寝る前にも見てしまいたくなります。さらに、中途覚醒(夜間覚醒)や早朝覚醒をした時に時間確認のためスマホを見てしまうと、覚醒してしまうという悪循環に入ってしまいます。

 

 

人はスマホが近くにあるとつい触ってしまいます。ですので、スマホは寝床からすぐに見られる場所に置かないことが大切です。目覚ましには、目覚まし時計を買って使うようにし、スマホは少なくても頭から30cm以上離したところに置くようにしましょう。

 

 

これには健康上の理由があります。世界保健機構(WHO)が、スマホから出ている電磁波は「発がん性の可能性がある」と、5段階ある発がん性の上から3番目に分類しているくらいです。iPhoneの取り扱い説明書にも「枕元に充電した状態で置かないで下さい」と書いてあったこともあるようです。

 

 

寝ている時はリラックスしているので、特に電磁波を受けやすいとも言われています。起きている時にスマホが近くにある分には、ほぼ影響はないだろうと言われていますが、睡眠中は避けるに越したことはないでしょう。

スマホは段階的に遠ざけていく

前出の理由から、スマホは寝室には置かず、充電は寝室の外でするのが理想です。しかし、現実的には、なかなか一足飛びに、「スマホを寝室に持ち込まない」までたどりつくのは難しいことでしょう。そこで、3ステップぐらいで、枕元から徐々に離していくトレーニングをすることをお勧めします。

 

 

ステップ1は、枕元から離すことです。頭から30cmくらい離れたところに置くようにしましょう。もし30cm離れた場所に適当な置き場(サイドテーブルなど)がないのであれば、床に置いても構いません。

 

ステップ2は、さらに身体から離して、部屋の隅に置くようにします。最初はちょっと不便に感じるかもしれませんが、なければないで何とかなるものです。

 

それが分かった時点で、ステップ3に移行します。スマホを夜、寝室に持ち込まず、充電はリビングなどで済ませるようにしましょう。

 

デジタル依存から脱却する簡単なトレーニング

夜寝る前のデジタルは快眠の大敵ですが、それをいきなり止めるのは非常に困難です。何故ならば、夜は疲れて意志力が弱っている状態なので、そんな時にスマホやパソコンを見てはならないというのは、ハードルが高いからです。

 

 

そこでご提案したいのが、最初は「日曜日の午前10時から30分間はデジタルにさわらない」など、休日の昼間、短時間のデジタル断ちから始める方法です。休日でしたら、仕事で追い立てられることもないので、すぐに確認したり返事をしたりということも基本的にはありません。平日よりもデジタル断ちがしやすいことでしょう。この「30分間」が、1時間、2時間…と時間が長くなっていくにつれて、デジタルから解放された快さを感じられるようになっていきます。

 

 

このトレーニングを重ねるうちに、夜、寝る直前まで見ていたスマホを5分前から止められるようになり、やがてそれが10分前からになり、30分前からになり…と段階を踏んで早めに切り上げられるようになっていきます。また、休日に半日デジタルに触れずにいられるようになってくると、熟眠感を得られるようになる方が一気に増えます。

 

 

意識も大きく変わります。デジタル断ちをする前は、「今、スマホが手元にないと落ち着きません」とか「何かあった時に連絡が取れなくなったらどうすれば良いのですか?」等と言っていた人が、「スマホがないと大変!」という思い込みが取れて気持ちが安定し、落ち着いてくるのです。その精神的な落ち着きが、快眠へと繋がっていきます。

 

当院では、睡眠障害(不眠症)をはじめ、
不安症、うつ病、躁うつ病、適応障害、
自律神経失調症、パニック症、摂食障害(過食症)
月経前症候群(PMS)、統合失調症、強迫性障害、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
過敏性腸症候群、更年期障害、心身症など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。

 

今後とも、医療法人社団ペリカン(心療内科、精神科、内科)を宜しくお願い致します。

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)

参考引用文献:角谷リョウ著『超熟睡トレーニング』(学研)