働きながら家事も育児もするという女性は、睡眠不足になりがちです。また、夜勤や、日によって出勤時間が変わるフレックスタイム、裁量労働などの人も、ともすれば身体のリズムが不規則になって、寝たいときに眠れず、睡眠不足になりやすいと言えます。
人間は、一般的には、夜の遅い時刻に働くと、身体の働きのリズム(日内リズム)が乱れ、時差ボケのようなことが起こります。加えて、そうあってはならない時にお腹が減ったり、トイレに行きにくいタイミングでトイレに行きたくなったりすることで便秘になったりと、内臓の働きにも乱れが起こりやすくなります。
このように、睡眠不足が健康や美容に良くないということは何となく分かっていても、仕事への悪影響は意外に知られていません。寝不足になると、注意力の低下や仕事中の居眠りが起こりやすくなり、ミスや事故が増えていきます。ヒューマンエラーの対策を考えていく上でも、睡眠をしっかりと取ることが大切です。
さらに言えば、眠りは単なる休息ではありません。命を守るための大事な働きを担っています。また、寝不足はイライラの原因になったり、年配の人には意欲の低下や抑うつ状態すら引き起こしかねません。若い人では、記憶力や集中力が落ちて学習機能が低下したり、感情をコントロールしにくくなったり…ということも起こるのです。
「眠れない」と感じられた方の大半は、最初は一般内科に掛かられることが多いようです。しかし、ここで気をつけて頂きたいのが、実は不眠症の訴えの方の5割はうつ病であり、わすか2割が本物の不眠症だという事実です。もちろん、うつ病によって引き起こされる不眠であった場合、睡眠薬(一般内科で処方されます)はあまり効きません。眠れないために内科にかかったのに、「相変わらずよく眠れないままだ」という人はいらっしゃいませんか?
そんな時、諦めたり、自分の判断で睡眠薬を増やしたりしないで、勇気をもって心療内科や精神科にかかりましょう。不眠症を治さないで放っておくと、その結果としてうつ病になることもあり、「病院や薬には頼りたくない」等と言っている場合ではなくなってしまう恐れもあるのです。
近年では、遅くまで働くだけでなく、帰宅してからも(あるいは勤務時間が終わっても)パソコンなどで仕事をする方が増えています。そういう人は寝不足になりがちで、実は不眠症にもなりやすいのです。もし、遅くまで働けば疲れて眠りやすくなると思っているのであれば、それは逆です。
眠るためには脳の興奮が冷める必要があり、それには一定の時間がかかります。夜遅くまで働きくことが続くと、眠りたい時間に目様としても、まだ脳が興奮しているので寝付けません。当然、興奮が覚めてから寝つくまでに時間が掛かります。
すぐに眠れない人の中には、眠気がくるまで布団(ベッド)の中で読書するとか、テレビを見る人がいますが、脳が興奮するので逆効果です。眠りを誘うためには、布団に入る30分~60分前からは何もしない方は良いのです。本やテレビを見たいのであれば、いっそのことしっかり起きて見ましょう。「布団(ベッド)=寝る場所(眠れる場所)」と条件付け(=不眠の認知行動療法・「刺激制限法」)をすることが大切なのです。
「眠れならアルコールを飲めば良いのでは?」と思われている方が案外多いのですが、これは完全に「誤解」ですので、気を付けて下さい。確かにアルコールには眠りを誘う働きはありますが、眠り全体が浅くなってしまいます。端的に言うと、夜中にお酒が切れて目が覚めて、また眠れなくなってしまうのです。そして、酒量が徐々に増えていってしまい、依存症になってしまう危険があります。もしも「眠れないからお酒を飲まざるを得ない」という方であるならば、既に何かしらの疾病を負っている可能性が高いとすら言えますので、すぐに病院に繋がることをお勧めします。
当院では、睡眠障害(不眠症)をはじめ、
うつ病、躁うつ病、適応障害、不安症、
自律神経失調症、パニック症、摂食障害(過食症)
月経前症候群(PMS)、統合失調症、強迫性障害、
大人の発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症)、
過敏性腸症候群、更年期障害、心身症など、
皆さまの抱えるこころのお悩みに対して、
心身両面からの治療とサポートを行っております。
今後とも、医療法人社団ペリカン(心療内科、精神科、内科)を宜しくお願い致します。
Presented by 医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)
監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)
参考引用文献:鈴木安名著『働く女性のメンタルヘルスがとことんわかる本』(あけび書房)