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【医師監修】自閉スペクトラム症の4つのタイプ!

自閉スペクトラム症の4つのタイプ

 

発達障害の人の社会性の現れ方は、特性によって大きく異なります。例えば、自閉スペクトラム症(ASD)には、孤立型」「受動型」「積極奇異型」「尊大型という4つのタイプが存在します。

 

 

「孤立型」は、人と関わらないことで安心するタイプで、周囲の人に対する関心が薄く、逆に警戒することさえあります。そのため他人がいないかのように振る舞い、視線を合わせず、親愛の情も示しません。

 

 

「受動型」は、人とは関わることができますが、積極性はないタイプです。誘われれば一緒に行動しますが、主体的に自分から誘うことはありません。従順で命令に従いやすく、嫌なことでも受け入れてしまうのも特徴です。

 

 

「積極奇異型」は、積極的に人と関わろうとしますが、やたらと距離感が近く一方的で、馴れ馴れしいタイプです。また、相手や状況を考えず一方的に話す、自分のしたいことのみ話すという特徴があります。いわゆる「空気が読めない人」で、迷惑に思われていることに気が付きません。

 

 

「尊大型」は、他人を見下す態度で接するタイプです。自分の主張を振りかざし、こだわりを押し付け、強圧的な態度で従わせようとします。

 

 

自閉スペクトラム症ひとつとっても、これほど大きな差が存在するわけです。さらに、特性の現れ方は個人差も大きいため、強く現れる人もいれば、弱く現れる人もいますので、特性は“千差万別”であり、人それぞれであることを理解しておきましょう。

 

知っておきたい発達障害の特性

 

発達障害の人は、定型発達の人とは違う特性を持っています。そのため、同じ時間と空間を共有していても、定型発達の人と発達障害の人とでは、見ていること、聞いていること、感じていることが全く違うことがよくあります。

 

 

例えば、自閉スペクトラム症の人の一部が持つ“視覚過敏”の場合、「コントラストが強い」「まぶしくて見にくい」「色がぼやけて見える」といったことが起きています。同様に、“聴覚過敏”の場合、「些細な音が爆音に聞こえる」「周囲の雑音のせいで会話が聞き取れない」など。“嗅覚過敏”の場合は、わずかな匂いでも「耐えられないほど臭い」といったこともあるのです。

 

 

つまり、定型発達の人と発達障害の人では、“見ている世界” “過ごしている世界”が大きく違うのです。まずは、この部分を理解しておきましょう。

 

 

そして、忘れてはならないのが、定型発達の人が発達障害の人の世界を理解できないのと同じように、発達障害の人は定型発達の人の世界を理解できないということです。定型発達の人からすると「空気が読めない」といわれがちな発達障害の人ですが、発達障害の人からすると「相手の気持ちを勝手に判断している」のが定型発達の人なのです。

 

 

世の中の多数派である定型発達の人の世界を“普通”とするのであれば、発達障害の人は見えている世界が違うので、その“普通”が理解を理解できないのです。

 

ASDの人が持つ様々な“感覚過敏”

 

人間には視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の五感があり、これらを通じて様々な情報を得ています。しかし自閉スペクトラム症(ASD)の方の中には、特定の感覚に偏りがあり、定型発達の人とは感じ方が違うことで、それが強いストレスになっている場合もあります。また、感覚の偏りは、敏感なだけでなく、鈍感なこともあり、中には痛覚が鈍いため、大きな怪我をしていることに気がつかないこともあるのです。

 

 

以下に、自閉スペクトラム症の方がよく口にされる感覚過敏について挙げさせて頂きました。感覚の特性を理解し、可能な範囲で配慮やフォローし合うことぜひ意識して頂きたいと思っています。

 

 

● 視覚過敏とは:周囲の明るさやチラつきに過剰に反応をしてしまいます。白や黒などの極端な色の配色・コントラストをきつく感じることもあります。

 

● 聴覚過敏とは:大きな音を聞くと強いストレスや痛み、恐怖を感じてしまいます。また沢山の音や会話を聞き分けることが苦手です。

 

● 触覚過敏とは:服の裏側にある縫い目やタグが肌に触れると痛みや痒みを感じます。服以外に、人や物が触れても嫌に感じてしまうことがあります。

 

● 嗅覚過敏とは:強い臭いを感じると拒否反応が出てしまいます。花の香りやパンの焼ける匂いなどの好ましい香りでも辛いと感じることもあります。

 

● 味覚過敏とは:一般的な味付けを濃いと感じる、特定の食感や温度を嫌がるなどの傾向が見られます。こだわりが強いと偏食になることもあります。

 

● 圧覚過敏とは:身体を抱きしめられたり、締め付けの強い服などが苦手になったりします。圧迫感を痛みとして感じてしまうこともあります。

 

● 痛覚鈍麻とは:痛みに対する感覚が鈍く、怪我をしても気づかなかったり、血が出るほど掻いたりしてしまうことなどがあります。

 

● 平衡感覚不全とは:身体のバランスを上手く取ることが出来ず、常に姿勢が悪かったり、ふらついていたりします。だらけ癖だと誤解されてしまうことがあります。

 

「脳の多様性=ニューロダイバーシティー」

 

近年広がりつつある概念として、そもそも私たちは、一人ひとり脳が異なる個性を持つ「脳の多様性=ニューロダイバーシティー」を生きている、という考え方があります。発達障害は「脳のもつ特性」であるとされていますが、これは人の持つ性格と同じことなのです。

 

 

個々の特性を正しく理解し、お互いに「こういう人なんだ」と分かり合うことが出来れば、日々の生活や仕事、コミュケーションで失敗することも減らせるはずです。大事なのは、お互いにマイナスになる先入観や偏見を持たないこと。そして理解する努力を惜しまないことです。

 

 

発達障害の特性を持つ人には、創造性・独創性といったクリエイティブな才能や人並み外れた集中力など、優れた側面を備えている人も多くいます。そうした特性を「強み」として発揮できる環境や土壌をお互いに提供し合えるような関係性を目指していきたいものです。

 

 

当院(新宿ペリカンこころクリニック)では、ご希望の患者様に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)を施行することが可能な医療機関となっております。

 

ご自身の能力の凸凹の可能性が気になられる患者様、とりわけ発達障害(ASDやADHDの可能性を危惧されている患者様は、御診察の際に、その旨を当院医師にお申し出頂けましたら幸いです。

 

 

Presented by.医療法人社団ペリカン(心療内科・精神科・内科)

監修 佐々木裕人(精神保健指定医・精神科専門医・内科医)

★参考引用文献:湯汲英史監修心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話(日本文芸社)